love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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出来ました!投稿します!


#15 Love Live!タン・ルヴェ

世の中のブルーカラーにとって、最も嫌いな曜日はいつか?と聞くと多くの人が「月曜日」と答えるだろう。しかし、僕は違う。間違いなく水曜日だろう。だって、まだ休みまで三日あるんだぜ!気が遠くなるわ……

そんなブルーウェンズデーのランチタイム。四時間目の授業が終わり、今日の放課後のスケジュールを頭の中で確認しながら職員室に向かっていると、3年生の教室前の廊下で後ろからドン、と体を結構な勢いでぶつけられた。

「ガハッ!」

ぶつかった子は身長が低かったためかちょうど腰の辺りに肘が入る形になった。腰に走る激痛に思わず前屈みです。

「あっ、ごめん。」

後ろを向くと矢澤だった。この当たり屋が……頭の中のスケジュール吹っ飛んだだろ。気を取直して立ち上がり、矢澤の方を向く。右の手のひらを、矢澤の頭を撫でるようにポンと乗せる。矢澤は固まっているようだ。

「な……何すんのよ……」

いきなりの状況に顔を赤らめてギュッと目をつぶる矢澤。おい、照れるな。可愛いだろうが。まぁ、都合がいいが。そのまま顔の前に手を移動させ、頭を掴んで、思いっきり力を込める。残念だが、今から行うのは頭ポンポンなどという色気のある技ではない。AWA世界ヘビー級第9代王者、フリッツ・フォン・エリックのフィニッシュブロー、

「痛い痛い痛い!!!!」

アイアンクローである。そのまま葉隠Ⅱに持ち込まなかっただけでも有り難く思うといい。

「おい、矢澤、廊下は走るな、って言われなかったか??」

「ごめんなさいごめんなさい!」

3年生は何事か、と廊下を見る。技をかけられているのが矢澤だと分かったら、「なんだ、にこっちか。」と皆帰っていった。穂乃果ちゃんといい、矢澤といい、どんだけ人望ないんだ。パッと手を離すと、頭を抱えながら塞ぎ込む矢澤。

「あんた、どんだけ握力あんのよ……」

「まぁ、小さい頃からグランドピアノ弾いてたからな。実際叩きつけるような音出すことも多いし。」

人によって様々だが、僕は基本的に演奏時には体を揺らす人なので、体幹、柔軟、握力は鍛えられている。自慢じゃないが、左右ともに80は軽く超える。け、決して筋トレが趣味だからとかじゃないんだからね!ワンモアセッ!

「で、なんでそんなに急いでたんだ?」

と尋ねる。すると、矢澤はパアッと顔を明るくして、

「そうよ!実は遂に開催されるの!」

「何が。」

「ラブライブよ!ラブライブ!」

ん?なにそれ。美味しいの???マークを浮かべる僕に、ふふん、というドヤ顔で答える矢澤。だからラブライブ!ってなんだよ!

#15 Love Live!タン・ルヴェ

 

 

ふーん、スクールアイドルの全国大会ねー。

職員室に戻って仕事を片付けている放課後、先程の矢澤が言っていた単語が気になるので調べてみた。

どうやら全国各地で活動しているスクールアイドルがお互いのパフォーマンスを競うための大会らしい。七月末のネット予選を通過したグループは東京で開かれる決勝大会に参加できるようだ。時期は8月末、会場は……中野サンプラザ……だと……アイドルの聖地で開催とかどんだけ金かけてんだよ、このイベント。共催をみると、出てくるわ出てくるわ芸能事務所の名前。なるほど、この大会からスカウトするつもりなのか……と少し大人の事情を垣間見た気がする。

「何見てんの?エロサイト?」

と聡子が椅子をこちらに滑らせて来た。いちいち僕をエロキャラ認定したがるやつだ。反対側からは

「へぇ、こんな大会あるんですね。」

と京子さんが体を寄せてきた。二人とも近い近いいい匂いがするおっぱいあたってる!

と前後不覚になってると、聡子が京子さんをにらみながら

「京子、だから樹に近寄ったら寿退社だって言ったでしょ。離れた方がいいわよ。」

と半目でいう。

「そう?樹さんはそんな人じゃないわよ。とても紳士的だったわ。それに聡子こそ離れた方がいいんじゃない?」

と聡子を見て余裕の表情。僕は聡子に頬をつねられ

「あんた……京子に何したの……怒らないから言ってみなさい……」

と、言われた。もう怒ってるし!京子さんは僕の腕を掴み、聡子から引き離すように引っ張ると、

「もう、樹さん困ってるじゃない、やめて上げなさいよ、聡子。」

と不敵に言う。やばいやばい柔らかい。

「樹ィ……あんた覚えてなさい。」

「具体的にいつまでですかね……」

「今日の晩までね。」

ああ、僕のお財布が軽くなる……

「ゴホンッ!」

と咳払いがした方向をみると園田がこちらを見ていた。ヤベェ。

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「ラブライブに出場したい?」

「はい、音ノ木坂学院アイドル研究部として私達はラブライブに参加したいと思っています。」

先程の醜態をまるでなかったかのように振舞う僕をジトっとした目で見る園田。ごめんなさい、僕が悪かったです。そして、聡子と京子さんはさっさと退出して自分達が顧問をしている部活に行ってしまった。この薄情者め。

「うーん、別に顧問としては全然ありなんだけど……」

「ありなんだけど、何ですか?」

冷たく言い放つ園田。こうやって生徒との信頼関係って崩れていくのね……

「出場要項見た?」

「いいえ。まだ。」

「いくつかあるけど、君達はほとんどクリアしてるね。ただ、『学校の推薦ないしは学校長の許可を得たること。』とある。ということで、僕の許可を取るより生徒会長か南先生に直接お願いした方がいいと思うよ。」

実権なんかないよ!何せ副顧問だしね!

「そうですか……」

「どうする?僕から南先生にお願いしとこうか?」

「いえ、大丈夫です。私達だけでお願いしにいきます。」

と園田はキッパリ言う。

「……それに、『おもてになる』神波先生は随分と『お忙しそう』ですからね。」

と強調して言う。やめて!ライフ削れちゃう!あはは、と愛想笑いを浮かべると、

「不潔です……」

と言い残して去っていった。

残された僕はがっくりと肩を落とす。それを見ていた山田先生が爆笑していた。ちくしょう。

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次の日、理事会はオープンハイスクールの結果や、夏の進路希望調査で音ノ木坂学院が定員割れをした場合は来期新入生の受け入れをしない事を正式決定した。そのニュースは生徒には通達していない。どうやら中間テスト開けに発表するようだ。

テストが来週に迫った木曜日の放課後、生徒会の方は一時的に活動休止、ということで、アイドル研究部の部室を訪れた。

久しぶりに来た部室、ドアを叩く。すると、以前とは違ってすんなりドアが開いた。

「よっ、頑張ってるかい?」

と明るく入室すると、そこでは星空と穂乃果ちゃんがほかの子達に土下座をしていた。

「「ほんとーに、申し訳ない。」」

「あれ?どうしたの?」

と不思議がっているとことりがすかさず説明してくれた。

「実はお母さんに『テストで赤点取ったらラブライブ出場は認められない』って言われて……」

「なるほど、この二人が赤点筆頭候補、というわけか。」

「小学校から知ってはいましたが、まさかここまでとは……」

と園田が諦めたようにため息をつく。

「そうだよ!知ってるでしょ!私小学校の頃から算数苦手なんだよー!」

と高らかに主張する穂乃果ちゃん。すかさず小泉が

「しちし」

と質問。

「にじゅう……ろく」

あかん。末期や。(白目)

「かなりの重症ですね……」

園田もあきれ顔だ。続いて小泉が、

「凛ちゃんは?」

と星空に聞く。

「凛は英語!どうしても昔から英語だけは肌に合わなくて……」

おい、担当の前で言う事じゃねーぞ!

「そうだよね、難しいよね!」

おい、小泉、お前もか!僕の授業がわかりにくいみたいじゃないか!しまいには泣くぞ!

「そもそも、先生!なんで凛たちは日本人なのに英語を勉強しなくちゃいけないの!」

「戦争に負けたから。」

と言うと、他のメンバーは絶句。

「……ともかく、屁理屈はいいから。赤点なんかで出場不可でした、なんて笑えないわよ!」

と西木野が星空に顔を寄せる。

「真姫ちゃん、こわいにゃ~……」

「まったく、せっかく生徒会長を突破したって言うのに……」

「そ、その通りよ!」

星空と西木野のやり取りに割り込む矢澤。残念ながら声の震えが抑えきれてない。

「にこ先輩、成績は……?」

と、ことりが無情にもつっこむ。おい、察しろよ!

「にこ……?にこは……『にっこにっこにー!』赤点なんか取るわけないじゃない!」

おい、何だそのポーズ。ふざけてるのか?」

「うっさいわね!ふざけてなんかないわよー!!」

あ、まだ心の声がもれた。気を付けなければ。

「おい、ふざけてるのか?」

「いい直さなくていいわよ!!」

矢澤はやっぱり面白いなぁ。天性のツッコミキャラだわ。と感心していると、

「ともかく、私とことりは穂乃果の、花陽と真姫は凛の勉強を見て、弱点の底上げをしましょう。」

うぐっ、との声を揃える2人。

「神波先生……手伝ってにゃ~。」

「いや、俺が手伝ったらダメだろう。常識的に。」

「そうですね、それに神波先生は『色々と』お忙しそうですから手伝っていただかなくても大丈夫ですよ。」

おい、園田、さっきのことまだ気にしてんのか。一瞬漂った園田の不機嫌な雰囲気に敏感に反応したのはことりだった。

「……先生、『色々』ってなんですかぁ~?ことり、教えてほしいなぁ??」

ことりちゃん、目のハイライト、少なめだよ。気をつけて!

「いや、それは……」

「深山先生や笹原先生と仲が良さそうですね?」

おぃぃぃぃぃぃぃ!!!園田ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

とんでもなくデカイ爆弾を放り投げる。

「へぇ……」

「ふぅん……」

「はゎゎゎ……」

ことり、西木野、小泉、がジト目でこちらを見る。

「いや、だから、そんな色っぽい話では……」

「お兄ちゃん!!」

「はぃぃぃ!!」

声がでかいよ!穂乃果ちゃん!

「穂乃果達が苦しい思いをしてるのに、お兄ちゃんが他の女の人とイチャイチャするのは許せません!よって、私達の勉強の面倒を見なければなりません!顧問として!!」

フッーと毛を逆立てて主張する穂乃果ちゃん。

「穂乃果ちゃん、それいいね。樹先生にも手伝ってもらおうよ!」

「そうね、実際、私も自分の勉強をしなくちゃいけないし、凛は英語苦手だし、手伝ってもらいましょうよ。」

「そうだね、真姫ちゃん!やっぱりここは先生にも手伝ってもらうべきだよね!」

ことり、西木野、小泉が激しく主張する。はい、分かりました。手伝います……

「それで、肝心の矢澤は誰が教えるんだ?僕だけだと無理あるぞ。」

もう半ば諦めの境地で投げやりに言う。するとガチャっという音ともに東條が入ってくる。

「それはうちが担当するわ。」

「希……だから、言ってるでしょ?にこは赤点なんか……」

と言いかけると東條は矢澤に抱きつく。胸を鷲掴みにすると、

「嘘つくとわしわしするよ??」

矢澤は観念したのか、

「分かりました、お願いします……」

と細い声で答えた。他の皆は生暖かい目で見てる。僕はびっくりした目で見る。女子校や男子校はともすれば同性愛と捉えられてしまう行動をよくするものだ、と聞いたことがある。コレもその内の一つか。おっぱい鷲掴みとか、僕もしたいです。思わず前屈み。ウソだけど。

「それじゃあ、明日から頑張ろう!」

「今日からです。」

という園田の一言に穂乃果ちゃんはがっくりと肩を落とした。

 

 

 

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時計の針を1日戻そう。聡子に誘われて、食事をした後、二人で軽く酔いを冷ましていた時の話だ。

「はー、美味しかったわね。」

「そりゃ、あんだけ食えばさぞ美味かっただろうな。」

ふふん、と鼻を鳴らす聡子。どうやら昼の鬱憤は晴れたようだ。

「でも、京子も大胆ね、まさかそんなことしてたなんて。」

「まあ、未遂だからな。あんまり責めてやるなよ。」

「もちろんよ、私達話し合ったの。樹がどちらを選ぼうが恨みっこなしにしよう、って。付き合いだけで言うと樹よりずっと長いんだから。」

「よく聞くけどな。男の趣味が似ると女の友情は壊れる、って。」

「思春期じゃあるまいし、そんなこと無いわよ。それに、あんたのこと趣味じゃないし。そりゃ、ピアノも弾けて、少しかっこいいとは思うけど。」

少しムッとしながら

「じゃあ、なんで名前で呼んで、なんて言ったんだ?」

彼女の言を借りれば「男女の不文律」に抵触するはずだが。

「そんなの決まってるじゃない。好きになったからよ。」

「……」

「でも、勘違いしないでね。私も、もちろん京子も答えが今すぐ欲しいわけじゃないの。今貴方が割り切れない気持ちを抱えてるのを知ってるわ。京子は京子で貴方と真剣に向き合おうとしている。私もそう。だからーーーーこのことだけは知っていて欲しいの。」

 

聡子は僕を真剣な面持ちで見つめる。

「私は臆病だったわ。大学生の時、少しでも貴方に踏み出すことが出来ていたら、今は全く違う景色が見えていたかもしれない。でも、無くしたくはなかったの。貴方との繋がりが、その一言で潰えてしまうんじゃないか、って。」

「その割りに、さっきはあっさり言ったな。自信あるのか?」

今僕はどんな顔をしているのだろうか。彼女は笑って

「自信なんてないわよ。でも、友達が頑張ってるのに、私が頑張らない訳はいかないでしょ?」

と答えた。

「だから、貴方も真剣に向き合って欲しいの。いつもの飄々とした神波 樹としてでなく、ありのままの神波 樹として。」

「できるかどうかは分からないけど……頑張ってみるよ。お前も頑張ってるし。」

「もし、出来なかったらはっ倒すから気をつけてね。」

弱気な所を見せた彼女の、いつもの強気さがどこかアンバランスで思わず笑ってしまった。

聡子と分かれた後、1人町を歩く。さっきの聡子との会話が頭の中でリフレインする。その裏ではライブの時の穂乃果ちゃんが大きな声で「皆に気持ちを伝えたい」と主張していた、その場面が再生されていた。あの時の穂乃果ちゃんと、先程の聡子。似ても似つかないはずの二人がなぜこんなにも重なってしまうのか。

この時の僕は混乱していたのだ、と今になって思う。自分の本当の大事なことは何なのか、考え過ぎていて分からなくなっていたのだ。もっと早く「ありのまま」であることを選択出来ていれば、彼女達を傷付けることはなかったのに。

家に着く。僕は少しだけ重たいドアを開け、中に入る。鍵を締めたときのガチャン、と言う音が心の奥底に響いた。

 




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