love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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出来ました!投稿します!今回のノンたんSR間に合うか微妙です!


#16 海未アンセラン

「だめだ、ことりちゃん、もう無理……」

「穂乃果ちゃん、あと一問、頑張って!」

「おやすみ……」

「ああ~穂乃果ちゃ~ん!」

どうやら穂乃果ちゃんはもうギブアップみたいだな。テスト勉強をするために放課後アイドル研究部の部室で集まっているが、勉強は遅々として進まない。特に赤点候補組は軒並みだ。

「う~これが毎日続くのかにゃ~」

「当たり前でしょ?」

「あっ!白いご飯が!」

「引っかかると思ってるわけ?」

ビシッと西木野の脳天唐竹割りが星空に炸裂。ジャイアント馬場が得意とした技である。ちなみに力道山は馬場がこの技を思いついた時に「相手が死ぬからやめろ」と禁忌の技としていたらしい。

「えっ!ご飯!どこどこ?炊きたてかな~?」

いや、小泉、そんなわけ無いだろう。どんだけシュールな絵なんだ。青空の中の炊きたてごはん。

「それで、にこっち、次の問題の答えは……?」

「答えは……『にっこにっこに~!』」

「ふふふっ……」

「いや、やめて……!」

とわしわしのポーズで矢澤に忍び寄る東條。こちらはこちらで百合百合しい感じ。それにしても駄目だわ。分かってはいたが、勉強の仕方が分かっていない……

「穂乃果ちゃん、矢澤、お前ら根本的に数学の勉強の仕方間違ってるから。まずは例題を解き方から暗記しろ。そのあと暗記できたかのテストをする。取り敢えず例題10個分な。解き方が分からなかったらことりか東條に聞け。」

以外に思われるかも知れないがある程度のレベルまでなら数学は暗記でどうにかなる。そこを理解できてない生徒があまりにも多すぎる。

「星空、授業の時に言ったと思うが、文法が理解できないなら最低構文と単語暗記はやっておけ。並び替えと英文和訳さえ出来ればテストで赤点を取ることはないし、そんな問題そもそも僕は作らない。」

高校1年生で日本語能力が問われるような複雑な長文を出すテストは作らない。何事も暗記だ。

「それが出来たら苦労しないよ~。」

「そうだにゃ~。」

「そうよ!そんなの出来る人の考え方よ!」

「うるさい。」

と、赤点候補組を一括。

「お前ら大会出たいんだろ?それなら必要最低限のノルマはクリアしろ。曲に合わせたフリを覚えれるんだから、そのくらいの暗記は出来るだろ。ごちゃごちゃ言わずにテストやるぞ。あと30分後な。ちゃんと書いて覚えろよ。出来たら帰してやる。他の皆は自分の勉強をして、手助けが必要なら助けてやれ。」

「横暴だにゃ~!!」

と星空の声が響く。すると、園田が軽く溜息をつき、

「先生、ことり、後は任せました。私は弓道部の方に顔を出さないといけないので……」

「あれ?部活は休みになってないのか?」

と尋ねると、

「いいえ、休みではあるんですが、オープンハイスクールの時の演武披露の練習が出来ていないので……」

掛け持ち組は大変だな。荷物をまとめる園田は皆のためにどれほどの苦労をしているのだろうか、その事を思うと園田を少しだけ褒めてあげたくなった。

「園田は頑張ってるな、偉いよ。」

と素直に言うと園田は顔を真っ赤にしながら

「そ、そんなことないです!き、急に何を言ってるんですか!失礼します!」

とプリプリ怒って部屋を出ていく。手を振りながら見送ると、部屋中のジトーっとした目線が僕に刺さってくる。それを代表するかのように隣に座っていた西木野が

「……先生って口が上手いんですね。」

と怒るように言ってきた。なんで僕が責められるような流れになってるんだよ……気を取り直すように

「はいはい、自分の勉強に移る!質問あったら質問する!」

と呼びかける。前途は多難だな……

 

 

#16 海未アンセラン

 

 

 

「じゃあ、僕は職員室に戻るから、お疲れ様。来週もこれ続けていくからな。」

「「「お疲れ様でした……」」」

と三羽カラスが机に突っ伏す。ただ、彼女らはこの後も近くのファーストフードで勉強するらしい。勤勉な事だ。財布から野口さん2人を取り出し、ことりに渡す。

「これでなんかで甘いものでも食ってけ。それだけあれば足りるだろう。」

と言うと、

「大人だ……」

「大人がいるにゃ~」

と疲れた脳で頭が回ってない穂乃果ちゃんと星空がキラキラした目でこちらを見てくる。何事も飴と鞭なのだ。

「3人はよく頑張ったな。まさかテストを一発で合格できるとは思ってなかったよ。この調子で頑張れよ!」

と飴の第二弾。すると、むすっとしたような西木野とことり。ん?と彼女らに注目すると、

「私達も頑張ったんですけど……」

「そうですよ~。穂乃果ちゃん達ばっかりずるいです~。」

と高らかに主張する。

「……ことり、西木野、小泉、手伝ってくれて有難う、助かったよ。」

と言う。小泉は机の向こうでモジモジしていたので同じ様に主張したいのだろう、と思ったのでついでに言ってみる。そういえば、以前ホワイトデーのお返し、もちろん義理だが、聡子に「お前もついでに」とマシュマロを渡した時には「ついで」という表現が気に食わなかったのか強烈なローキックからのシャイニングウィザードでKOをもらってしまったことがあった。それ以降、女性には「ついで」という言葉を言わない、と心に決めている。ちなみにミニスカを履いていたその時の聡子のパンツの色は赤だった。このお嬢さまビッチめ。

「ふん、当然でしょ?」

「えへへへ……」

「あ、ありがとうございます!」

と、三者三様のテレ具合。やはりこれくらいの年の子は褒められなれていないのだろう、初々しさがにじみ出ている。みんな可愛いな、と思いながら部屋を出ていく。さて、テスト作成に勤しもうかな、っと。

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中間テストも無事作り終わり、ピーターソン先生(僕の上司)に提出をすませ、チェックも済んだ。後はのらりくらりと日々の仕事を片付けるのみ、となった。その代わり退社時間が遅くなってしまったが。椅子にもたれかかり、ぎゅっと背を伸ばす。職員室の天井を見上げると、あたりは茜色に染まっていた。園田はもう帰っただろうか、と考える。不思議とまとまりのあるアイドル研究部の中で、彼女の立ち位置はリーダーのそれに近い。弓道部にも顔を出し、作詞をし、ダンスリーダーもする。どれだけの責任とプレッシャーを抱えているのか。彼女の負担を減らせる人間がいたら良いのだが……他のメンバーにそれは望めないな、と思った。

 

「お疲れ様でした!」

 

と残っている教師皆に宣言する。

 

「えっ!もう終わったの?」

 

聡子が隣から声を掛けてくる。ふふふ、残念だがもう終わったのだよ。雑務は明日やるけどな!

 

「おう、普段から出すとこ決めてたし、2割は入試から引っ張ってきたし。英語はその辺り楽だからな。じゃあ、お疲れ。」

 

後ろから「薄情者〜!!」という声が聞こえてくるが無視だ。さっさと帰って寝よう。校門を出て、帰路につく。辺りはもう薄暗く、しかし何処か昼間の熱を持っていた。もう夏は近い、と思いながら歩く。アメリカ留学中は夏は北部にいることが多かったので、暑さを感じるのは久しい気がした。

 

暫く街灯の明かりを追いかけながら歩いていると、反対側から園田が下を向いてとぼとぼ歩いてくるのが見えた。

 

「よっ、園田。お疲れ。こんな時間にどこ行くんだ?」

 

「先生……」

 

顔を上げた園田は何か納得行かないような、それでいて静かな怒りを感じているようだった。その表情からただならぬ何かを感じ取った。

 

「こんな時間にどっか行くのは教師としては止めないといけないんだろうけど、事情がありそうだな。どこ行こうとしてるんだ?」

 

「……希先輩に会いに行こうと思っています。神田明神でアルバイトされているでしょうから、そこへ……」

 

ふむ、まぁ、近場だけど……

 

「そうか、じゃあ、送って行くよ。」

 

「えっ…?有り難いんですけど、大丈夫ですよ。」

 

「いや、女の子1人をこんな時間に歩いてウロウロさせるのもどうかと思って。それに園田に何かあったらと考えると気が気じゃないからな。」

 

「でも、私多分先生より強いですよ?」

 

と訝しむような園田。確かにそうだけど。

 

「それでも、心配だからね。万が一の壁にはなるだろう?」

 

というと、クスリと微笑む園田。

 

「分かりました。ではお願いしますね。」

 

と少しだけ笑顔を見せた。

 

 

 

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神田明神に着く。僕は席を外しておくよ、と伝え、男坂の中段で園田を待つ。暫くぼうっと町の明かりを眺める。その光の下には数多くの生活があり、ドラマがあるのだろう。そんな事を考えたいた。今明かりの少ないこの階段の上ではどんなドラマが繰り広げられているのか、少しだけ覗いてみたい気もした。どーしよーかなー、覗いて園田にばれたら変態認定されるだろうしー。でも、園田に冷たい目で「変態です……」って罵られるのは業界人からは御褒美なんだろーなー。などと思っていると、園田が降りてきた。

 

「終わった?」

 

「はい、お待たせしました。」

 

「じゃ、行こうか。」

 

何も言わずとも着いてくる園田。その顔からは、先程の怒りが抜け落ちた代わりに思案する割合が増えているような気がした。

 

「先生。」

 

「ん?」

 

1m斜め後ろの園田が僕に問う。

 

「先生は自分より演奏が上手い人がいたら、どうします?」

 

なんだ?その質問。そんなの当たり前に、

 

「尊敬する。っていうか、僕はそこそこ弾けるだけで、別に上手くないよ?」

 

僕の持論は『心を動かせる音楽が世界最高の音楽だ。』である。正直どれだけ素晴らしい歌姫の歌だろうが、親にとって、自分の子供が歌ってくれるバースデーソング以上の感動を味あわせるものは無いのではないだろうか。そういう事だ。

 

「それで、尊敬するだけですか?もしその人が自分の近くにいたら、どうしますか?」

 

なおも続ける園田。それに答えるように、

 

「一緒に演奏するか、教わる、かなぁ。」

 

と伝えるとパァッと顔を明るくさせて、

 

「そうですよね……!」

 

と何かを決めた様子。

 

「おっ、いいね、今日一の笑顔、頂きました。」

 

と茶化すと、一方の園田は真面目に、

 

「先生。この間の作詞の時もそうでしたけど、先生は私が悩んでいるときに前に進む言葉をくれます。これからも私に、いえ、私達に御指導よろしくお願いします!」

 

と頭を下げる。その下げた頭に掌を乗せ、軽くポンポンと叩く。

 

「こっちこそ、まだまだ、君達から学ぶ事も多いよ。よろしくね。」

 

と伝えると、園田は叩かれた部分を冷ますように、両手を重ねながら赤面した顔で僕に笑顔を向けるのだった。

 

園田を家まで送り、改めて家路につく。あの短い時間で何が変わったのかは分からないが、確かに最後に見せた園田の顔は軽やかなものだった。少しは彼女の抱えている荷物を減らせたのかな、と思い嬉しくなる。湿度が少しだけ高い、夏の予感を感じさせる空気もなぜか不快ではなかった。

 

 

 




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