love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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出来ました!投稿します!


#17 μ'sデビュ・ドゥ・ミュジーク

ようやくテスト期間も終わり、アイドル研究部は無事全員赤点を回避したようだ。テスト返却の際、星空に回答用紙を渡すと、くるくる回って喜んでいたな。各部活は来週に迫ったオープンハイスクールの部活紹介のために練習を重ねているようだ。テスト前の放課後の喧騒が戻ってきた。もちろん、生徒会はオープンハイスクールのために動きだし、アイドル研究部もラブライブのために活動を開始したようだ。

廊下を歩き、生徒会室へ向かう。オープンハイスクールの段取りはテスト前に済んでいるので、後は式のリハーサルと各部活の微調整だけだ。これからの段取りを整理していると、理事長室の扉に星空、西木野、そして小泉が張り付いているのが見えた。

「あれ?何してるんだ??」

と声を掛けると

「「「シィー!!」」」

と3人揃って内緒のポーズ。なんだ、西木野も友達が出来てノリノリじゃないか、と思っていると、急に扉が開いた。

「失礼します!!」

と出てきたのは絢瀬。遅れて東條も出てくる。1年生の3人は道を開け、その背中を見送るばかりだ。何があったんだろう?と思い、理事長室を除くと穂乃果ちゃんが肩を落とし、じっと床を見つめながら

「なんとか……なんとかしなくっちゃ……!!」

と力強く宣言していた。

#17 μ'sデビュ・ドゥ・ミュジーク

どうやら先程のやりとりは新入生募集の停止に関しての事だったらしい。現に生徒会室では

「これから生徒会は廃校阻止に向けて、独自に活動していきます!皆、案を出して下さい!」

と絢瀬が息巻いている。壁に寄っていた僕は心の中で大きく溜息をつく。

「じゃあ、今日は僕に出来ることは無いだろうね。アイドル研究部の方もあるし、今日の会議は頼んだよ。」

と言い放つ。絢瀬はこちらの助けなど要らない、と主張するかのように睨んでくる。

「分かりました。何をするか決まったら報告します。」

無言で部屋を出る。東條の縋るような目線が僕を追いかけるが、正直今回は僕は手助けを出来そうに無い。絢瀬が傷つくことを見過ごすしか出来ない不甲斐なさに嫌気がさす。確かにあの時伝えたいことを伝えたはずなのに。

廊下を歩いていると、部活に勤しむ生徒たちの騒音の中で、園田がリズムを取る声が聞こえた。足は自然と屋上へ向かう。果たして、扉を開けると全員でダンスを合わせていたようだ。

「やった!バッチリ!これでオープンハイスクールに間に合うね!」

穂乃果ちゃんはガッツポーズ。他の皆もうまく踊れたのか、満足気だ。一人を除いて。

「……まだです。まだズレています。」

園田は静かに主張する。

「もーこれ以上は上手くなりようがないにゃ……」

とがっくり肩を落とす星空。

「何がいけないんだ?」

と園田に向けて質問する。その時に僕がいたのに気付いたのか全員がこちらを注目する。ことりが少し落胆した様子で言う、

「先生~。実は私達オープンハイスクールの部活紹介のときにライブをやろう、って話になったんです~。でも……」

園田がばっさりと、

「……感動出来ないんです。今のままでは……」

と言う。ふむ。感動出来ない、と来たか。ダンスには造形が深く無いので、良く分からない。

「ちょっと最初から踊ってみてよ。」

今度は園田も入れて踊って見せる。すると、どうだろう。確かに園田が言うように何かピンと来ない。全員が最後のポーズを取る。西木野が

「どう?なかなか上手く行けたと思うんだけど……」

「どうでしょう?私も上手く踊れたと思うんですが……」

西木野も小泉も今の出来に満足しているようだ。

「実際これに何を付け足せばいいのよ……」

と矢澤。園田は相変わらず思案顔だ。園田が発言しないので変わりに言う。

「うーん、1つ疑問なんだけど、君達、踊ってて楽しい?」

どうにも上手く踊ることに意識を向けすぎてるような気がしたのだ。

「……」

穂乃果ちゃんは無言だ。西木野は僕の一言に気付いたことがあったのだろうか、ハッとした顔をしている。

「まぁ、踊りに限らずそうなんだけど、芸術ってまずは自分が楽しむ事だと、僕は理解しているんだ。楽しんでる人を見るのが楽しい。そういう意味で、君達は今、楽しめてる?」

その問に、そこいた全員が沈黙した。ここに来れば講堂のライブの時と同じように、元気が貰えるかな、と思った自分を恥じた。彼女達はまだ子どもなのだ。自分達の悩みで精一杯になることもあるのだ、そんなに人に元気を与えてばかりではない。無意識に彼女達を頼っている自分がいた事にも嫌気がさした。ただ、この場はしっかり収めよう、と

「まぁ、今この瞬間が全てではないから、ライブまでに『楽しむ』ようになれたらいいんじゃないか?ところでさっき踊ってもらったフリ初めて見るやつだね。今度のライブはこれで踊るの?」

と何気なく質問。すると、ことりが

「あっ、そうなんです、実はまた新曲が出来まして~。」

耳を疑う。続いて穂乃果ちゃんが

「あっ!言うの忘れてた!先生、編曲お願いします!」

と取って付けたように言う。他の皆は、も~、しっかりしてよ~、って感じの空気を漂わせている。おい、またしても新曲かよ。思わず西木野に

「……お前、才能あるわ……」

と呆れ顔で言うと、

「はぁ?何言ってるの?そんなの当たり前でしょ?」

とドヤ顔で言われた。だから可愛くてイラつくからヤメロ!!

「出来るだけ速くしなさいよ!明後日までとかね!」

と矢澤が言う。おい、マジか。睡眠不足で頭が痛くなっちゃうよ。

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非常に困った問題が起きた。西木野の曲は確かに素晴らしいのだが、園田の歌詞も素敵なのだが、全く持って曲のイメージが湧かなかった。あの後USBに音楽データをコピーして帰って編曲作業をしようと思ったのだが、昼の出来事が頭に引っかかって先に進めないでいた。

こういう時は気分を変えよう、と思い、久々に親父のローストビーフでも食おうかと、財布と煙草、ライターを掴み、外に出る。車のライトに照らされながら町を歩く。この町は夜でも賑やかだ。平日でも日々の鬱憤を晴らすため、アルコールの手助けを必要としている企業戦士が肝臓を喜ばせている。商店街に入り、いつもの階段を降り、店に入る。

「いらっしゃい……なんだ、樹か。」

「ローストビーフ定食。ご飯大盛りで。」

と、ダンディズム溢れる父親が出迎えてくれた。ちなみに本当はローストビーフ定食なんていうものは存在しない。要はライス大盛りを付けただけだ。小学生からの定位置である、カウンター最奥、ステージに一番近い場所に座ろうと思い、目を向ける。そこには黒髪ロングの美人が居た。

「京子さん……」

「あら、樹さん。こんばんは。」

そこにはカクテルグラスを傾ける、京子さんが居た。

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「実はあれ以来、ここにはちょくちょく来てるんです。」

 

僕がローストビーフ定食を食べている間に一杯をゆっくり飲み干し、二杯目のホワイトレディをゆっくりと飲んでいる時、ぼそっと京子さんが呟いた。バックではトランペット、ベース、ドラム、ピアノのカルテットがalone togetherをスローテンポで演奏していた。

「それは有り難うございます。親父も喜んでるでしょ?」

「ええ、昔の樹さんの話が聞けて面白いですよ?」

とクスクス笑う。相変わらず大人なのに少女のように笑う人だ。それにしても親父ェ……何を言っているんだ……カウンターの向こうを睨みつけると僕が注文したカクテルを作りながら、常連のおじさん達と談笑しているようだ。軽くウィンクをしてくる。いや、勘違いしてるし、そもそもキモいし。

と親子で良く分からないアイコンタクトを広げていると、京子さんが

「お父様と仲がよろしいんですね。」

とにこやかに言う。

「そうですね、僕は反抗期らしい反抗期が無かった子どもだったんです。なので父親との関係は良好ですね。正直言うと父親、というより頼れる大人、って感じでしたね。」

「へぇ……じゃあ、今まで喧嘩とかしたこと無いんですか?」

「いえ、一度とんでもなく喧嘩をしたことはありました。それが覚えている唯一の諍いでしたね。」

注文したロングアイランドアイスティーを親父が持ってくる。

「なぁ、あの時の喧嘩は凄かったよな。」

「いや、あれはそもそも喧嘩じゃ無いだろう。ただの殴り合いだ。」

と同意を求める僕に父がもっと過激な発言。

「お二人が殴り合うなんて想像出来ません。因みにどんな事で喧嘩されたんですか?」

あの時の自分には笑えてくる。僕にも多感な時期はあったのだ。

「いや、憧れのお姉さんがいまして。そのお姉さんを親父が攫って行ったんですよ。」

と苦笑いしながら答える。

「あ、それって、今の奥さまですか?」

と京子さんは茶目っ気たっぷりに親父に向かって言う。

「そうなんだよ、ちょうどこいつも色々上手くいかなくてイラついてた時だったから、心の糸がプチンと切れたんだろうね、家内と結婚する、って言ったときは殴りかかってきたよ。泣きながらね。」

「いや、恥ずかしいからヤメロよ……そこまで言わなくて良いだろう……」

頭を抱えながら落ち込む。二人はそれを見て笑っていた。

「っていう顛末なんだ。どうだい?面白い話だっただろう?」

「はい!」

と言い合っている。人の黒歴史を掘り返すなよ……

「そう言えば、どちらが勝ったんですか?」

と無邪気に京子さんが質問すると、僕と父親は声を揃えて

「俺だね。」

「僕だね。」

と答えた。全くタイミングが同じだったので、それさえも可笑しくて、3人で笑いあった。穏やかな時間に、懐かしい感情。確かにあの時は自分の事で精一杯だった。今の彼女達も現状の打破に精一杯なのだろう。それはそれでいい事なのだが、今回はそれが原因で楽しめていないような気がする。果たして彼女達はどのような答えを出すのだろうか。明日以降に期待しよう。

どうやら京子さんはホワイトレディを飲み終えたようだ。僕も同時にカクテルを飲み終える。

「どうします?もう帰りますか?」

「そうですね、じゃあ、明日もありますし、送って頂きますね。」

二人分の伝票を取ろうと思うと、カウンターの向こうから手が伸びてきて、父親がそれを掴んだ。

「ここは俺のおごりでいいよ。樹にはこの間店手伝ってもらったし。」

「おっ、親父殿、有り難うございます。ゴチになります。」

「いえいえ、いいですよ。自分の分は自分で払います。」

と僕と京子さんで対照的な回答。

「いや、良いですよ、その代わり、コイツと仲良くしてやって下さい。コイツなかなか面倒なやつなんで。」

おい、実の息子捕まえて面倒なやつって何だよ。ジト目で父親を見る。京子さんは僕らのやりとりを見て笑っていた。バックで流れる曲はもう変わっていた。

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帰り道。京子さんを地下鉄の駅まで送る。この間とは違って穏やかな空気が流れていた。

「何か悩み事ですか?」

「えっ?」

「ここ最近眉間にシワ寄せてることが多かったですし、今日お店に入って来た時はひどい顔でしたよ?」

「あー、いや、アイドル研究部ご存知ですか?」

「はい、2年生の子達が中心に活動してるものですよね、確か、『μ's』でしたっけ。それがどうかしたんですか?」

「はい、実は……」

今までの経緯、僕の立ち位置、穂乃果ちゃん達の頑張り、生徒会との確執、絢瀬の頑固さ、そして僕の迷い。全てを話した。その間、京子さんはじっとこちらの話を聞いていた。真剣な顔をしていたかと思うと、話が終わるとまたしても少女のように笑っていた。

「なんだ、簡単な話じゃないですか。あの子達がどうあるべきかを迷っているから樹さんはどんな風に編曲したらいいか分からないんですよね?それなら、樹さんがあの子達にどうあって欲しいのか、を考えて編曲したらいいんじゃないでしょうか?」

「どう、あってほしいか……ですか。」

「ええ、あの子達もああ見えて女の子です。女の子なら、少し男の子の目線を向けてあげるだけで結構頑張るものですよ?」

とお茶目に言う京子さん。続けて、

「だから、樹さんがあの子達を見てあげて、あの子達が期待されている、望まれているって思えたなら、自然と魅力的なものが出来上がりますよ。」

「そういうものですか……」

憮然とした顔をしているであろう僕を見て、京子さんは少し目を細めながら、

「はい、そういうものです。だから、私の事もちゃんと見てくださいね?」

とドキリとすることを言うのだった。思わず彼女の目を見る、

「やっと、こっちを見てくれた。」

と本当に幸せそうに笑うのだった。

 

 

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彼女達にどうあって欲しいか、それを考えた末に出した結論、その欠片である編曲済みの音楽データが入ったUSBをもって屋上に行く。少しだけ重いドアを開けると、そこには思わぬ光景が広がっていた。絢瀬がダンス指導をしているのだった。

「よし!よくできました!」

一時期の沈痛な表情はどこに行ったのか、晴れやかな顔で皆に向き合う絢瀬。すると穂乃果ちゃんとことりがこちらに気付いた。

「あっ、お兄ちゃん!」

「先生!」

その状況に戸惑いながらも、日陰で休んでいた残りのメンバーにUSBを放り投げる。

「で、これは一体どういうことなんだ……?」

訝しむ僕に穂乃果ちゃんが答える。

「お兄ちゃん知ってる?実は絵理先輩ダンスがすっごく上手いんだよ!だから、μ'sに入ってもらったの!」

その言葉を聞き、思わず絢瀬を見る。すると照れくさそうに

「ええ、そうなんです。先生に答え合わせをしてもらった時から、私は頑なに『生徒会長としての自分』を守ってきました。」

胸に手をあてる絢瀬、そこから言葉を探すように

「でも、気付いたんです。先生が仰ってた『自分の楽しいことを他の人に共有してもらう』という事の意味を。私にとって、それがコレなんです。ここで、私は精一杯楽しんでみたいと思います。」

彼女も、自分らしくあるための一歩を踏み出したのだろう。ここにいる他の七人とともに。すると後ろから声をかけられた。

「そうなんよ、エリチが頑張ってるから、ウチも頑張る事にしたんや。」

動きやすい格好の東條がこちらに歩いてくる。まさか、東條もアイドル研究部に入るとは。

思わぬ展開に笑ってしまう。

「そうか、東條、絢瀬、いいんじゃないか。応援するよ。実はこの子達、いや、今は君達の曲を編曲してるのは僕なんだ。今回の曲もいいものが出来上がったと思う。気に入らないなら言ってくれ。編曲しなおすから。」

と言うと、二人はにこやかに

「そんなこと、あらへんよ。」

「先生が私達をちゃんと見てくれていたこと、分かってますから。」

と答える。その信頼がどこかこそばゆく、フェンスの向こうを見る。空は大きく晴れ渡り、遠くの景色まで見えていた。その景色の中に、確かな今と、新しい夢が響いていた。




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