love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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すみません!お待たせ致しました!仕事がファッキンビジーくそ忙しくて全く書けませんでした!SR絵里ち、間に合わない可能性大です!


#20 穂乃果アレルト

「「「「「「ええ~!私達のグッズがアイドルショップに~!?」」」」」」

 

「うん。そうみたい、それで君達の……」

 

「どこよどこよどこよ!!そんなことならはやくいいなさいよ!!!」

 

とテンションが上がる矢澤。僕の胸倉を掴んで前後に揺さぶる。こんなちっさいのにどこにこんなパワーが……」

 

「声に出てんのよー!!ちっさいはよけいじゃー!!」

 

とボディブローを繰り出す。ぐふっ……見事だ……痛みに悶えていると、星空が、

 

「はぁ~、凛たちもアイドルみたいだにゃ~。」

 

とうっとりとした表情。

 

「そうだね……人気があるのは知ってたけど、グッズがあるなんて……」

 

小泉もどこかに意識を飛ばしてるようだ。

 

「は……は……そんな、私のあんな格好が全国に……」

 

目が虚ろな園田。大丈夫。秋葉原限定だ。今の所。

 

「驚いたわね……そんなことまでやるのね、スクールアイドルって……」

 

「ほんまやね~。ちょっと恥ずかしいわ~。」

 

と年長組は落ち着いている。年長組って表現するとどうしても園児服を連想しがちだが、あのスモックという服は元々農民が着ていた物らしい。絢瀬と東條のスモック姿……ありです。主に胸部が。

 

「で、それがどうしたんですか?」

 

と髪をくるくるいじる西木野。落ち着きない時の癖が出てるぞ。

 

「そうそう、単純に聞くと、それってあ……」

 

「見に行こう!!」

 

と元気よくこちらの言葉を遮る穂乃果ちゃん。

 

「そうね!まずはクオリティの確認よ!!」

 

と乗っかる矢澤。おい、どんだけテンション高いんだよ……

 

 

 

#20 穂乃果アレルト

 

 

 

はい、というわけでやってきました、秋葉原。それにしても……

 

 

「君ら、暑くない?」

僕以外は全員冬服コートにサングラス、マスク装備だ。見た目から暑苦しい。

 

「顔バレしたらどうすんのよ!人だかりが出来るかもしれないでしょ!?」

 

と矢澤。大丈夫。東京の人はそんなに他人に関心ないから。それがアイドルであっても。

 

「確かに……このカッコやる意味あるのかにゃ~?」

 

と星空。声から元気がない。大丈夫。多分無いと思う。

 

「そうね……この暑さは……正直……雪国育ちには辛いわ……」

 

ロシアを雪国扱いする絢瀬ぱねぇ。試される大地より緯度高いぞ。下手すると氷国だろうが。

 

「よーし、それじゃあ行くわよー!」

 

おー、と何ともやる気のない一行。僕は後ろから皆が補導されないようについて行くことにした。

 

 

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冷房が聞いた店内では店員さんが商品を陳列していた。それにしても、壁一面にグッズが!写真ベタベタ貼り付けられてるし!これ全部スクールアイドルなのか!?

 

「はぁ~、やっとここまで来たのね、にこ……」

 

矢澤は自分のグッズのところを必死で写真に撮っている。他の皆は自分達のグッズを見てにこやかに話している。所々、「かよちんかわいいにゃ~。」とか「凛ちゃんもかわいいよ~!」とかの百合百合しい展開があるが、それは無視だ!どうでもいいけど、女の子が言う「可愛い」ってあんまり信用ならないよね。以前、某女友達が「南海〇ャンデーズのし〇ちゃん可愛いよね~!」と言ってたので、「そうだな、お前、似てるもんな。」って言ったら滅茶苦茶怒っていた。具体的には顔が無表情になり無言で地獄突きをしてきた。下手するとあの世行きだったな。クソ……お嬢さまの癖にプロレス技ばっかり使いやがって……

 

そんな青春の1ページを思い出していると、ふとある写真が目に留まる。目下、日本で一番のスクールアイドル、『A-RISE』だ。私立UTX学院が誇るスクールアイドル。どうやらUTXには『A-RISE』というグループがあり、そのメンバーを入れ替える事で人気を保っているようだ。早い話が世代交代だな。そう言えばμ'sも今の3年生が卒業したらそのままグループを残すのだろうか。あと卒業まで9ヶ月しかない。それ以前に、夏のラブライブが終われば自動的に3年生の3人は引退するだろうし。

 

そんなことを考えていると西木野が、

 

「……先生、お目当ての子は見つかりましたか?」

 

と声をかけてきた。

 

「うん、そうだね、この優木あんじゅって子は可愛いな。是非生写真買って帰ろう……って何を言わせるんだ、お前は。」

 

思わず本音を漏らしてしまうと、こちらを白けた目で見る七人。矢澤は相変わらず自分のグッズに夢中だ。

 

「……お兄ちゃん。」

 

声が低いよ、穂乃果ちゃん。お兄ちゃん怖いな。テへペロ。どうでもいいけど、テへペロって新種の香辛料みたいだよね。あ、ハバネロか。

 

「……はい、何でしょう。穂乃果ちゃんさん。」

 

思わずさんを付ける。デコスケ野郎呼ばわりはマジ勘弁。

 

「ここにある私達のグッズ、買ってくれるよね?」

 

「えっ……」

 

「あ~あ、お兄ちゃんは私達よりA-RISEの方が好きなんだ~。穂乃果ショック~。」

 

いや、全然ショック受けてないよ!てか怖いよ!

 

「いや、昨日新しいヘッドホン買ったばっかりで……」

 

「先生、往生際が悪いんと違う?」

 

いや、東條、僕はまだ往生する気なんてないよ!?

 

「そうですね、こんなに可愛い凛ちゃんの缶バッチ買わないなんて嘘ですよね~?」

 

「かよちんの言う通りにゃ!先生はここにある分全部買わなきゃにゃ!」

 

おい、いつもの引っ込み思案はどこに行った、小泉。そして星空、全部って、財布の中身足りないよ!

 

「絢瀬、たすけ……」

 

「……私もそう思います。顧問としてこれは見過ごせないかと。」

 

おいぃぃぃぃぃぃ!いつもの冷静なエリーチカはどうしたぁぁぁぁ!?

 

「で、買うんですか?買わないんですか?」

 

西木野、お前も怖いから!?しかし矢澤は相変わらず写真を撮りまくっている。ブレないな。素敵だよ。

 

じーっと、穴があきそうな目線の中、焦りだけが疾走する。そんな時、外から慣れ親しんだ甘い声がした!

 

「あの!この店に私の生写真があるって聞いたんですけど!あれはダメなんです!今すぐ無くしてください!」

 

その声に全員外を注目する。

 

「ことりちゃん……?」

 

穂乃果ちゃんが声をかける。まぁ、ことりさんですね。

 

「はわっ!?」

 

固まることり。

 

「ことり、何をしているんですか……?」

 

と園田がさらに突っ込む。すると、ことりは足元にあったガチャガチャの空き容器を取り出して目に当てる。

 

「わっつ!?ことりぃ~?誰ディスか~??」

おい、昨日の焼き増しか。

 

「はっ!外国人!?」

 

星空が本気で焦る。そんなわけないだろ。

 

「そんなわけないでしょ……」

 

西木野と声が被る。

 

「こちりちゃん……だよね?」

 

と穂乃果ちゃんが重ねて言う。するとことり(仮)は

 

「いいえ~違いまァーす!それでは、ごきげんよう~。よきにはからえ~。」

 

とデュークウォークっぽい動きをしながらフェードアウト。ある程度離れると、

 

「さらばっ!!」

 

と一気にダッシュした。

 

「あっ!ことりちゃん、待ってよ!」

 

穂乃果ちゃんと園田が追いかける。残された僕たちは戸惑うばかり。

 

「凛ちゃん、どうしよう?」

 

「凛達も追いかけた方がいいのかにゃ~?」

 

「……希、どのあたりで捕まえられそう?」

 

「たぶん、アキバの裏路地やろね。皆で手分けして張り込みしよか、誰が見つけるかは運次第。」

 

なるほど、人海戦術。ぱっ、と思いつくあたりが素晴らしい。

 

「……その前に、」

 

こちらをくるり、と振り向く東條。

 

「先生?皆のグッズ買っていこか?」

 

とにこやかに言った。はい、買いましたとも!クリアファイル9人分!部屋においとこ……

 

「使わんかったらお仕置きするよ?」

 

と東條。自分の生徒が移ったクリアファイルとか何で使うんだよ!職員室でのいい晒しものじゃないか!?しかし、必死の抵抗虚しくも使うことを約束させられました。白目むくわ。ちなみに矢澤はデジカメのメモリが無くなったらしく、携帯で自分のグッズの写真を撮っていた。おい、どんだけ撮ってんだよ。

 

 

 

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「え~っ!それじゃあ、ことり先輩が秋葉原の伝説のメイド、ミナリンスキーさんだったんですか!?」

 

「はい、そうです……」

 

東條がことりを捕まえたようで、全員でことりのバイト先のメイド喫茶に集合をした。その時にブロマイド写真に書いてあった『ミナリンスキー』のサインを見て、小泉が騒ぎ出したのだ。流石アイドルオタク。ん?同じアイドルオタクの矢澤はどうしたって?デジカメの写真見てニヤニヤしてるよ。

 

「それにしても、何でバイトなんかしてるの!?バイトしてるなら言ってよ~!もっと早くご馳走になりに行ったのに~!!」

 

と、たかる気満々の穂乃果ちゃん。

 

「そうですよ、ことり、どうして言ってくれなかったんですか。水臭いですよ。」

 

と心配する園田。園田が穂乃果ちゃんのどちらに賛同したかは言うまでもあるまい。

 

「自分を……変えたかったの……」

 

えっ、とその場にいた皆が反応した。

 

「私は、穂乃果ちゃんや海未ちゃんに比べたら、何も持ってないから……ここに、この街にいたら自分が変えられるかなって思ったの……」

 

昨日は聞けなかったことりの本音が垣間見えた。彼女は彼女で素晴らしいものを持っているのに、それを「何も持っていない」と表現した。彼女の弱気はどこから来るのだろうか、それを知る術は僕にはない。

 

「そんなこと無いです!」

 

園田が声を上げる。

 

「衣装だって、振り付けだって考えてくれてるの、ことりですよ!」

 

「……それでも、なの……ただ、私は穂乃果ちゃんと海未ちゃんの二人に着いて来ただけ……」

 

少しの沈黙。

 

「そっか……」

 

友達として、何か感じることがあったのだろう、穂乃果ちゃんはことりの様子に何か納得した様子で深く頷いた。

 

 

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「それじゃあね~!!ことりちゃん、また遊びに行くよ~!!」

 

と大きく手を振る穂乃果ちゃん。胸の前で小さく手を振ることりは、どこか寂しげだ。各々が帰路に着く。秋葉原から南下し、橋を渡る組は一緒に帰る事になった。穂乃果ちゃん、園田、絢瀬、矢澤と別れた僕らは、西日の強い町をゆっくりと歩いていた。

 

 

「……それにしても以外とだったわね、南先輩があんな悩みを抱えているだなんて、正直2年生組の中で一番まともだと思ってたわ。」

 

西木野がぽつり、と呟く。

 

「私は、少しわかる気がするな……」

 

「ん?かよちん、どういうことにゃ?」

 

「私も、最初は凛ちゃんと真姫ちゃんに背中を押してもらったから……」

 

アイドル研究部に入る前、彼女は迷いを持っていた。それがいつの間にか解消していたのは西木野と星空が働きかけたから、というのは容易に想像がついた。

 

「でも、そんなものかもしれへんね……」

 

と、東條が会話を繋げる。1年生3人組は?マークを頭の上につけながら東條をみる。

 

「誰だって、自分が『出来る』なんて思ってないやろ?やから、ことりちゃんは皆が頑張ってるのを見て自分も頑張らなきゃ、そう思ってるんやないやろうか。」

 

出来ることじゃなく、出来ないことに人はコンプレックスを感じるものだ。そのコンプレックスを跳ね除けようとする意識こそ、尊いものだと思うが。

 

「……受身な自分を変えること、か。」

 

自分の夢を語っていた、いつかのことりを思い出す。

 

「いや、ライバルがいるのはいい事だな。お互いがお互いを意識して、もっと向上しようとしてる。正直羨ましいね。」

 

僕の何気ない一言に皆が注目する。その視線にたじろくと、西木野が、

 

「先生……意外といい事言いますね。」

 

と酷い言葉。皆はうんうん、と頷いていた。泣きたくなった。

 

 

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無事、グッズ関係についての了承が取れた次の日、報告のために学院長室へ向かう。荘厳な作りのドアをノックすると、中からは涼しげな声で

 

「どうぞ。」

 

という声。相変わらずの美声だな。ずっと聞いていたくなるな。

 

「失礼します。」

 

と気合を入れて入室。昨日の件を報告することにした。

 

「グッズの件、全員の了解と、保護者の了承が取れました。こちらから小売に言うべきことは無さそうです。」

 

「そう、ありがとう。助かったわ。ガミガミ言わなくて済んだもの。」

 

「ええ、保護者も大いに賛成する意見がほとんどでした。」

 

意外だったのは穂乃果ちゃんのお父さん、穂高さんだな。あの人は職人気質だからこういうのは気に入らないかと思ったんだけど。

 

「そうよね、やっぱり子どもが注目されて嫌な親なんかいないわよね。それで、神波先生……」

 

少し上目遣いでこちらを向く学院長。ヤメロ!惚れてまうやろ!

 

「ことりのグッズ、どんなのがあったの?教えて貰える?」

 

「はは……沢山ありましたよ。缶バッジとか、クリアファイルとか、生写真とか……」

 

ミナリンスキーの生写真を思い出す。あれはなかなかに堂に入った出来だった。

 

「そうなの!?それは買いに行かなくちゃ……」

 

「頑張ってください……」

 

少しの疲労感を感じながら退出する。

 

廊下に出ると、考え事をしている穂乃果ちゃんと会う。

 

「よっ、どうしたの?考え事?」

 

「お兄ちゃん……うん……」

 

どこか元気が無さそう。

 

「購買行こうか、ジュースでも飲む?」

 

「うん……」

 

連れ立って購買へ。短い昼休みだが、それくらいの余裕はあるだろう。

 

「ねぇ、お兄ちゃん……ことりちゃんは何であんな事言ったのかな……?」

 

どこか寂しげな様子。

 

「絵里先輩には、『ライバルがいるから頑張れる』って言われたけど……」

 

「まさか、絢瀬が僕と同じ事言うなんて……」

 

「えっ?」

 

「昨日全く同じ事を、西木野達に言ったよ。皆で高めあってるよね、って。」

 

「……」

 

「穂乃果ちゃんは、ことりに、どうあって欲しい?」

 

いつか、東條にした質問を彼女にぶつける。さぁ、果たして彼女はどんな答えを出すのか。

 

「どうあって欲しいかなんて分からない。でも、ことりちゃんを応援したい。」

 

はっきりとこちらを向いて答える穂乃果ちゃん。

 

「じゃあ、応援してあげよう。彼女が、なりたい自分になれるように。」

 

「ありがとう!私、ことりちゃんと話してくる!」

 

大きく声を出し、何かに気付いたように、購買へ着く直前、180°回転して廊下を駆け出して行く穂乃果ちゃん。振り返り、走り去っていくその背中を見つめながら、目に飛び込んできた強い光に目を細める。夏はもう、すぐそこまで来ていた。




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