love live!! そして彼女達の青春が始まる   作:二階堂吉四六

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本日2本目です!♯8も上げていますので、そちらの方からお読みください!

誤字訂正です!

綾瀬→絢瀬

なんたる失態!ご指摘ただいた蒼空様、有難うございました!!



♯9 μ's,№1 ,『commencez la course folle』

少しだけ重たいドアを開け、部屋の中に入る。スーツを脱ぎ、ロフトに上がるとパソコンを起動。USBの中に入っている音楽データをパソコンに取り込む。DTMソフトを立ちあげると、MIDIキーボードを取り出す。ヘッドフォンをさせばそこは僕だけのスタジオに変わる。確かにあの時感じた色を再現する作業に入る。近年稀に見るくらい、僕は集中した。

#9 μ's,№1 ,『commencez la course folle』

帰宅が7時だったからそこから5時間ぶっ通しで作業をしていた計算になる。日付が変わる頃、取り敢えずの形が出来た。ちょうどその時、猛烈な空腹に襲われているのに気づいた。ケータイを見ると聡子と京子さんからそれぞれ『晩ご飯どう(ですか)?』というLineが届いていた。未読無視をしていた事に気付き、すぐさまLine。スミマセンでした。少し作業に没頭していました。ご飯はまた今度にでも行きましょう。お休みなさい。という趣旨を二人に送る。するとピコン、と通知。どっちかな?と思うと、京子さんからだ。

京子『今度晩ご飯作りに行きましょうか?』

これは……テンション上がる一方際どい質問!返信は慎重にせねば……と考えている途中、またしてもピコンと通知。聡子か。

みゃー『今度作りに行ってあげよっか??』

なん……だと……これはまた際どい質問!さて、これを避けるための言い訳は……やばい思いつかない。幸いにも通知だけの表示なのでタバコでも吸って落ち着くか、と窓を開ける。酒を飲んでも無いのにタバコ吸うのは久々だな。ショートサイズのタバコに火をつける。ゆっくりと深呼吸すれば煙と一緒に夜の空気が入ってくる。達成感とともに襲いかかる疲労感がニコチンの毒とともに体中を行き渡る。体が沈みゆく感覚に目眩を覚えながら、ぼうっと町を見渡す。コンロに火をかけ、コーヒーを入れる。僕はコーヒーは布フィルター派だ。紙より手間をかけている、という事実がコーヒーを美味くさせる、様な気がするからだ。まあ、自己満足だね。

2本目のタバコに火をつけ、空腹感をコーヒーとタバコの煙と夜の空気で誤魔化しながら曲の出来映えを考える。なかなかいい仕上がりだと思った。彼女達のイメージに合うように、始まりの歌に相応しいように、軽快でそれでいてどこか切ない曲。彼女達が気に入ってくれるといいのだが……

さて、何か食べにいこう。聡子と京子さんに返事もしないといけないし。テーブルの上に置いてあった携帯を掴んで、僕は夜の神田に飛び出した。まるでこの曲のタイトルと同じように。

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僕の財布が潤い、桜の花も散り終わろうとする頃、GWの一歩前、いよいよ新入生歓迎式典が行われた。この後はいよいよ新入生への部活紹介の時間だ。結果から言うと、穂乃果ちゃん達が講堂を使う様にねじ込んだ。少しだけ強引だったが、東條がこちら側だったので問題無かった。絢瀬には「どうして分かってくれないのよ……」と絞り出すような声で言われてしまったが。また悪印象になったかな?

そして吹奏楽部と合唱部の問題も時間をずらして音楽室を使う、もっと正確に言えば、吹奏楽部と合唱部が合同で音楽室を使うことで合意してもらった。勿論、これには僕が介入させてもらった。ほら、グルーヴとかコラボとかケミストリーとか、女子高生好きやん??それを横で見ていた東條に「ペテン師がおる……」って言われて海よりも深く傷ついた。

海、と言えばμ'sの3人だ。編曲を仕上げた次の日の朝、ホームルームで彼女らに曲が入ったUSBを渡すと、放課後には「練習も見て下さい!」って言われてびっくりした。屋上に見に行ってみると、曲に合わせて踊る3人。どうやらフリはある程度決めていたらしい。誰が考えたの?と聞いたら南が恥ずかしそうに「えへへ……私です……」と答えた。衣装も作り、フリも作る。溢れる才能に白目をむきそうになった。「南は凄いな!」と伝えると、「ことりって呼んでって言いましたよね?」と言われた。笑ってるのに笑ってない雰囲気に一瞬止まったが「……ことりは凄いな。」と言いなおすと「ハイ!」と元気に答える。それを聞いた穂乃果ちゃんが「私も穂乃果ってよんでよー!!!」とプンプン怒っていた。どうにかこうにか今後は穂乃果と呼ぶことで気分は治まったようだ。ついでに園田に「海未もダンス指導とかして偉いな。」と伝えると顔を真っ赤にして「えっ……私も名前で呼ぶんですか!!」とか突っ込んでたな。可愛い。

その後は、積極的にライブのチラシを配る彼女らを横目に見つつ、朝練にも付き合わされながら歓迎式典を迎えた。そうそう、西木野にも編曲したものを渡した。最初は僕が編曲したことに驚いていたようだが、特に何も言ってこなかった事を考えると彼女のお眼鏡には叶ったようだ。原作レ〇プが流行る昨今、原曲者の反対に会わなかったことはありがたい。

同じく1年生の小泉は相変わらずもじもじしているようだ。友達の星空がそれを気にかけているようだが、どうにも一歩を踏み出せないでいるようだ。自分を主張するのが苦手な子だが、もう高校生。ちゃんと自分で言うんだぞ。頑張れ、女の子。

さらに、聡子と京子さんにがご飯を作りに来てくれる件に関しては有り難く来ていただいた。ちゃんと2人には説明した上で、だ。断られるかもしれないと思ったが、2人にそういう感じで作りに行くわけではない、と言われた。なんか言葉にすると僕がとんでもなくイヤらしいやつに聞こえるな。彼女でもない女の人2人を家にあげて、しかもご飯まで作ってもらうとか。これがモテ期か……!!ちなみに聡子はエビチリを、京子さんはビーフシチューを作ってくれた。有り難うございます!!うまかったっす!

兎にも角にも今日は式典の日、彼女達の初ライブだ。

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「これで、新入生歓迎式典を終わります。この後、各部活が体験入部を行ないますので、皆さん積極的に参加してください。」

絢瀬が閉会の言葉を言う。新入生生はこの後自分が入りたい部活に体験入部に行く。その裏で、果たしてμ'sはライブを成功させる事が出来るのだろうか。小泉が来たら、多分成功する。彼女達は講堂を満員にする、と意気込んでいるが、現実はそんなに甘くない。でも、誰か自分の事を見てくれる人がいるなら、現実はそんなに苦くもない。結局は心の持ちようなのだ。過度の期待は裏切られた時の衝撃で立ち直れなくなる可能性を秘めているが、それでもその期待がなければ今の立っているところから進めない。

では、どうするか。自分の持っている希望的な観測を、それでもいい、と割り切る強さが必要なのだ、と思う。

『μ's、ファーストライブ、この後行動で行いまーす。皆さん是非参加してくださーい。』

放送が入る。穂乃果ちゃんにも手伝ってくれる友達はいるようだ。それだけでも救いだ。

騒がしくなる学校の廊下を生徒会室に向かって歩く。途中で東條とすれ違った。

「帰るのか?ライブ、見にいかないのか?」

「先生、エリチが生徒会室におるから行ってやって。私は……まあ、外から聞いとくわ。」

とミステリアスな笑みで答える。彼女もあの3人を気にかけていた。なら心配は無いだろう。ただ、積極的に介入する気はないようだ。

「……分かった。答え合わせもまだだしな。じゃあ、講堂で。」

軽く目を合わせてお互いに背を向けて歩く。生徒会室のドアを開けると、そこには外を物憂げな様子で見る絢瀬がいた。

「お疲れ様、良い式だったよ。」

「先生……お疲れ様でした。議事録は出来ています。生徒会のファイルに挟みました。これ、コピーです。」

今回の議事録のコピーを受け取る。彼女の目は揺らいでいた。

「まだ、歓迎式典は終わってないだろ?特に『君にとっては』。」

絢瀬は視線を逸らす。自分の中で1つ疑問だったのが、なぜ、彼女は穂乃果ちゃん達に対してこれまで反発するのか、ということだった。理由は彼女の口から聞いていたが、それは本心では無いだろう。ここにはもう東條はいない。なら、僕が彼女に近づくより外ない。

「さて、絢瀬、答え合わせをしようか。君はこの学院を廃校にしないために、何をする?」

「……分かりません。でも、彼女達がアイドルをする事が正解だとは思えません。」

「なぜだい?」

「だって……好き勝手に、自分のやりたいことをやって、それで自分の望みが叶うなら、一生懸命皆の為を思って動いた私は、どう報われるんですか?」

 

やはり、そうか。彼女は真面目だから気付かなかったのだ。他人の為を思って自分が動く、ということは報われることを期待してはいけないのだ。彼女の為にピアノを弾いている時だって、僕は自分が報われようとは思っていない。どこまでいっても、あの行為は自己満足でしかないのだ。だからこそ、前に彼女に問いかけたテーマ。その答えが彼女のセリフにはあった。

「絢瀬、それが答えだよ。『自分の楽しいことを他の人に共有してもらう』、言い換えると『自分のしたいことをやって相手にも共感してもらう』ことが大事なんだ。それが人を導く、良いリーダーの資質なんだ。」

2年間、色々な所で働いた。ピアノを 弾きながらアメリカの町を転々とし、色々な人に出会ってきた。良いボス、というのは自分の仕事を楽しんでいる人が多かった。そうすれば、下で働いている人も仕事に充実感を得られる。シンパシーというのは生きていく上で欠かせないものなのだ。それが例えこの世に一人しかいなくても、それでも生きていける。

「……私はそれでも納得いきません。」

うつむいたままの絢瀬。ピアノを弾けなくなったとき、僕もこういう気分になった。この世のすべてが自分を否定しているような気分になる。大きく、違うんだ、と叫びたかった。だが、目の前で殻に閉じこもるこの子を救うのは僕ではない、と思った。僕では『(かなで)』になり得ない。

「ライブを見に行くといい。そうしたら、何か分かることがあるかもしれない。」

酷くもどかしい気持ちを抱えながら、目の前で苦しんでいるこの子に何かをしてあげたい、と思った。

 

 

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職員室で議事録のコピーを机の上に置き、講堂へ向かう。もうライブは始まっている時間だ。急がねば……と思っていると、途中で小泉が走って講堂に向かっているのが見えた。

おい、もしかして、今、講堂、0人じゃないのーーーー

最悪の絵が目に浮かぶ。泣きじゃくる穂乃果ちゃんがステージの上にいる。それを慰めるようにことりと海未が穂乃果ちゃんに抱きついているーーーー

僕も走った。やばいやばい、それだけは避けないと!小泉に続くように入ると、大きな声で、

「歌おう!全力で!!だって、今日のために頑張ってきたんだから!!」

と大きく宣言する穂乃果ちゃん。間に合った、よかった……と安堵するのも束の間、音楽が始まった。たった2分半のらいぶ。講堂の最後尾で見る。サイリウムは無いけれど、心の中では精一杯、彼女達を応援した。彼女達の歌を聞きながら、初めて店で演奏したことを思い出した。今考えると下手くそなピアノだったけれど、褒めてくれた人がいたのだ。それは父の友人の娘さんで、元気にパフェを食べていた、サイドポニーが似合う可愛い女の子だった。

『穂乃果、お兄ちゃんのピアノ好き!とってもきれいでキラキラなんだもん!』

穂乃果ちゃん、ことり、園田。今この瞬間、君達は綺麗で輝いてるよ、とライブが終わったら伝えてあげよう。そう、心に誓った。

 




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