第一幕 戦いの終わった世界
【ホメオスタシス】
「第一次ルーチェモン戦役が終結してから、一か月が経過しました」
「原初のデジタルワールド、The ORIGIN。かつて一体の天使によって統一された世界は、その天使を失い、新たな時代を迎えようとしていました」
(中央聖域には、穏やかな朝日が差し込んでいた。戦争によって破壊された建造物の修復が進み、石畳の広場には資材を運ぶデジモンたちの姿がある)
(その中には、かつてルーチェモンの軍に所属していた者も、北方抵抗軍として戦った者もいた)
(互いに武器を向け合っていた彼らが、今は同じ建物を修復している)
【中央軍の元兵士】
「おい、そっちの柱を支えてくれ! まだ固定が終わってない!」
【北方のデジモン】
「分かってる! そっちこそ手を離すなよ!」
(重い柱が、ゆっくりと持ち上がる)
(数体のデジモンが力を合わせ、崩れた建物の骨組みを元の位置へ戻していく)
【中央軍の元兵士】
「……助かった」
【北方のデジモン】
「礼なら、修理が終わってからにしてくれ」
(そう言って笑う北方のデジモンに、元兵士も小さく笑い返した)
【ホメオスタシス】
「もちろん、すべての対立が消えたわけではありません。戦争で家族を失った者、故郷を追われた者、長く続いた支配に怒りを抱く者もいました」
「ですが、少なくとも今、この世界には、自分たちの未来を自分たちで決める機会が生まれていたのです」
(中央聖域の最も高い塔。その一室には、三体の天使が集まっていた)
【ホーリーエンジェモン】
「北方への交易路は、ほぼ復旧したようですね」
(ホーリーエンジェモンが、各地から届けられた報告を確認している)
【エンジェウーモン】
「はい。食料の輸送も再開されています。東方の集落からは、医療物資を提供したいという申し出もありました」
【アルケーエンジェモン】
「南方の防衛拠点も武装解除を終えた。残された兵士たちには、復興作業への参加を呼びかけている」
【ホーリーエンジェモン】
「……順調ですね」
(そう答えたホーリーエンジェモンだったが、その表情には疲労が滲んでいた)
【エンジェウーモン】
「……無理をしていませんか?」
【ホーリーエンジェモン】
「いえ。まだ、やるべきことが山積みですから」
【アルケーエンジェモン】
「だからこそ休めと言っている。ここ数日、まともに休息を取っていないだろう」
(ホーリーエンジェモンは苦笑した)
【ホーリーエンジェモン】
「……お二人も同じでしょう?」
(三体は顔を見合わせ、思わず小さく笑った)
(しかし、笑い声が収まると、部屋には静寂が訪れた)
(その中央には、十戦士が遺した二十のスピリットが安置されていた)
(炎、光、氷、風、雷、闇、土、木、水、鋼。それぞれの属性に対応する二つの輝きが、静かに浮かんでいる)
【エンジェウーモン】
「……もう、一か月になるんですね」
(エンジェウーモンは、炎と光のスピリットを見つめた)
【エンジェウーモン】
「グレイモンたちがいなくなってから……」
【アルケーエンジェモン】
「……ああ」
(アルケーエンジェモンが、静かに頷く)
【ホーリーエンジェモン】
「彼らが残した平和を、守らなければなりません」
(ホーリーエンジェモンは、二十の光へ向き直った)
【ホーリーエンジェモン】
「ですが……私たちだけで、これからの世界を支えられるのでしょうか」
(その問いに、すぐ答える者はいなかった)
⸻
第二幕 白獅子の帰還
(同じ頃、北方の岩角集落)
(中央聖域から遠く離れたこの集落にも、復興の槌音が響いていた)
(戦争によって破壊された防壁は修復され、畑には新しい作物が植えられている。長く閉ざされていた交易路には、物資を積んだ荷車が行き交うようになっていた)
(そして、集落の医療施設では、一体のデジモンが久しぶりに外へ出ようとしていた)
【パンジャモン】
「……よし」
(白い獅子の姿をしたパンジャモンが、ゆっくりと立ち上がる)
(ルーチェモンの《パラダイスロスト》によって負った傷は、長い療養の末にようやく癒えつつあった)
(身体にはまだ戦いの痕跡が残っている。それでも、以前のように自分の足で立つことができた)
【ゴブリモン】
「お、おい! 本当に大丈夫なのかよ!?」
(ゴブリモンが慌てて駆け寄る)
【パンジャモン】
「心配するな。もう歩くくらいなら問題ない」
【ゴブリモン】
「歩くだけなら、って……! お前、さっき訓練場へ行くとか言ってただろ!」
【パンジャモン】
「……聞こえていたか」
【ゴブリモン】
「当たり前だろ!」
(ゴブリモンが呆れたように肩を落とす)
【ゴブリモン】
「まったく……やっと治ったんだから、少しは大人しくしてろよ」
【パンジャモン】
「……そうだな」
(パンジャモンは、穏やかに笑った)
【パンジャモン】
「だが、いつまでも寝ているわけにはいかない」
(その声には、確かな決意が宿っていた)
(施設の外へ出ると、集落の住民たちが一斉に振り返った)
【北方の住民】
「……パンジャモン!」
【別の住民】
「本当に歩けるようになったのか!」
(住民たちが駆け寄ってくる)
(子供たちは、嬉しそうにパンジャモンの周囲を走り回った)
【子供のデジモン】
「ねえ! もう戦えるの!?」
(パンジャモンは、少し困ったように笑う)
【パンジャモン】
「まだ、以前のようにはいかないさ」
(そして、子供の頭へ優しく手を置いた)
【パンジャモン】
「それに……もう、戦わなくて済むなら、それが一番いい」
(子供は不思議そうに首を傾げた)
【子供のデジモン】
「でも、パンジャモンは強いんでしょ?」
【パンジャモン】
「……強さは、誰かを倒すためだけにあるんじゃない」
(パンジャモンは、修復された集落を見渡した)
【パンジャモン】
「こうして、みんなが安心して暮らせる場所を守るためにも必要なんだ」
(子供は、ゆっくりと頷いた)
【子供のデジモン】
「……じゃあ、僕も強くなる!」
【パンジャモン】
「ははは。そうか」
(パンジャモンは、嬉しそうに笑った)
(だが、その笑顔の奥には、消えることのない寂しさがあった)
(グレイモンたち十戦士)
(自分が重傷を負った後、彼らは究極体へ進化し、中央聖域へ向かった)
(そして、ルーチェモンを封印した)
(しかし、帰ってきたのは、勝利の知らせだけだった)
【パンジャモン】
「……お前たち」
(パンジャモンは、静かに空を見上げた)
【パンジャモン】
「……約束を、守ってくれたんだな」
(その声は、風に溶けていった)
⸻
第三幕 帰ってきた仲間
(数日後、岩角集落の入口)
(中央聖域から戻ってきたオーガモンが、パンジャモンの姿を見つけて足を止めた)
【オーガモン】
「……おい」
(パンジャモンが振り返る)
【パンジャモン】
「オーガモン。帰っていたのか」
【オーガモン】
「……お前、立てるようになったのかよ」
【パンジャモン】
「ああ。まだ完全ではないがな」
(オーガモンは、しばらくパンジャモンを見つめていた)
(そして、突然笑い出した)
【オーガモン】
「はっ……はははっ!」
【パンジャモン】
「……どうした?」
【オーガモン】
「いや……何でもねえよ」
(オーガモンは、目元を乱暴に拭った)
【オーガモン】
「……よかったな」
(その一言に、パンジャモンは静かに頷いた)
【パンジャモン】
「……ありがとう」
(しばらく、二体は黙って並んでいた)
(やがて、オーガモンが口を開いた)
【オーガモン】
「……十戦士のこと、聞いたか?」
【パンジャモン】
「……ああ」
(パンジャモンは、静かに答えた)
【パンジャモン】
「三大天使から、知らせを受けた」
【オーガモン】
「……そうか」
(オーガモンは、拳を握りしめた)
【オーガモン】
「……あいつら、最後まで無茶しやがって」
【パンジャモン】
「……そうだな」
(パンジャモンは、遠くの山々を見つめた)
【パンジャモン】
「だが、彼らは自分たちの意志で戦った。そして、世界を守り抜いた」
【オーガモン】
「……分かってるよ」
(オーガモンの声が、少し震えた)
【オーガモン】
「……分かってるけどよ……」
(パンジャモンは、何も言わずにオーガモンの肩へ手を置いた)
(しばらくの沈黙の後、オーガモンが小さく笑った)
【オーガモン】
「……で、お前はどうするんだ?」
【パンジャモン】
「……決まっている」
(パンジャモンは、集落の中心を見つめた)
【パンジャモン】
「この場所を守る。そして、必要とする者がいれば、どこへでも駆けつける」
【オーガモン】
「……また戦うつもりか?」
【パンジャモン】
「戦わずに済むなら、それがいい」
(パンジャモンは、静かに微笑んだ)
【パンジャモン】
「だが、誰かが助けを求めている時に、何もしないわけにはいかないだろう?」
(オーガモンは、しばらくパンジャモンを見つめていた)
(そして、にやりと笑った)
【オーガモン】
「……相変わらずだな、お前」
【パンジャモン】
「……そうか?」
【オーガモン】
「ああ。まったく変わってねえよ」
(二体は、声を上げて笑った)
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第四幕 三大天使の迷い
(中央聖域)
(三大天使は、十戦士が残したスピリットを前に、静かに語り合っていた)
【ホーリーエンジェモン】
「……この一か月、私たちは復興のために力を尽くしてきました」
【エンジェウーモン】
「はい。ですが、世界はまだ不安定です」
【アルケーエンジェモン】
「中央聖域の統治機構は、ほぼ機能を失っている。各地の集落が自治を始めたのはよいが、争いの火種まで消えたわけではない」
【ホーリーエンジェモン】
「……ええ」
(ホーリーエンジェモンは、静かに目を閉じた)
【ホーリーエンジェモン】
「私たちは、ルーチェモンに従っていた頃、秩序こそが平和を守るものだと信じていました」
【エンジェウーモン】
「……私も、そうでした」
【アルケーエンジェモン】
「だが、秩序を守るために自由を奪えば、いずれ同じ過ちを繰り返す」
(ホーリーエンジェモンは、二体へ向き直った)
【ホーリーエンジェモン】
「……私たちは、どうあるべきなのでしょうか」
(その問いに、エンジェウーモンは静かに答えた)
【エンジェウーモン】
「……私は、誰かの命令に従うためではなく、自分の意志で命を守りたいです」
(エンジェウーモンの瞳には、強い決意が宿っていた)
【エンジェウーモン】
「傷ついた者がいれば癒やし、苦しんでいる者がいれば手を差し伸べる。それが、私の選んだ道です」
【アルケーエンジェモン】
「……俺も同じだ」
(アルケーエンジェモンが頷く)
【アルケーエンジェモン】
「誰かを支配するための盾にはならない。守るべきものを、自分の意志で守る」
(ホーリーエンジェモンは、静かに微笑んだ)
【ホーリーエンジェモン】
「……そうですね」
(そして、二十のスピリットへ視線を向けた)
【ホーリーエンジェモン】
「十戦士たちも、そうでした」
(その瞬間)
(三体のデジコアが、同時に淡く輝いた)
【エンジェウーモン】
「……え?」
【アルケーエンジェモン】
「……これは……?」
(光は、次第に強くなっていく)
(それは、外部から与えられた力ではなかった)
(三体が長い戦いの中で積み重ねてきた経験、そして自ら選び取った未来への意志が、内側から溢れ出していた)
【ホーリーエンジェモン】
「……まさか……!」
(ホーリーエンジェモンは、自分の身体を見つめた)
(光が、さらに強くなる)
⸻
第五幕 新たなる三大天使
【ホメオスタシス】
「十戦士が究極体へと進化した時、彼らは自らの限界を超えました」
「そして今、三体の天使もまた、長い戦いの果てに、自分自身の答えへと辿り着こうとしていたのです」
(中央聖域の塔から、三本の光柱が立ち上がった)
(白銀の光)
(柔らかな金色の光)
(そして、重厚な聖なる輝き)
(三つの光が、中央聖域の空へ広がっていく)
【ホーリーエンジェモン】
「……私たちは、もう誰かの命令によって正義を決めたりはしない!」
(ホーリーエンジェモンの身体が、強い光に包まれる)
【ホーリーエンジェモン】
「正しき秩序を、守るために!」
(その姿が、光の中で変化していく)
(六枚の翼が広がり、聖なる鎧が輝きを増す)
【ホーリーエンジェモン】
「ホーリーエンジェモン、究極進化!」
【セラフィモン】
「セラフィモン!!」
(光の中から現れたのは、六枚の黄金の翼を持つ究極体、セラフィモンだった)
(その姿は、かつてのホーリーエンジェモンよりもさらに神聖な威厳を備えていた)
【エンジェウーモン】
「……私は、すべての命を守りたい!」
(エンジェウーモンの身体を、柔らかな光が包む)
【エンジェウーモン】
「傷ついた者たちへ、癒やしと希望を!」
(その背から、新たな翼が広がっていく)
【エンジェウーモン】
「エンジェウーモン、究極進化!」
【オファニモン】
「オファニモン!!」
(光の中から現れたのは、聖なる鎧をまとい、慈愛と強さを併せ持つ究極体、オファニモンだった)
【アルケーエンジェモン】
「……俺は、二度と守るべきものを見失わない!」
(アルケーエンジェモンの身体が、重厚な光に包まれる)
【アルケーエンジェモン】
「この力は、支配のためではない! 未来を守るための力だ!」
(光が弾け、巨大な翼が広がる)
【アルケーエンジェモン】
「アルケーエンジェモン、究極進化!」
【ケルビモン(善)】
「ケルビモン!!」
(光の中から現れたのは、神聖な力を宿す究極体、ケルビモンだった)
(三体の究極体が、中央聖域の空へ並び立つ)
(セラフィモン)
(オファニモン)
(ケルビモン)
(後の時代に、三大天使として語り継がれる存在たち)
(その誕生を、中央聖域の住民たちは驚きとともに見上げていた)
【中央聖域の住民】
「……あれは……!」
【別の住民】
「三大天使様たちが……!」
(セラフィモンは、ゆっくりと地上へ降り立った)
【セラフィモン】
「……私たちは、これからもこの世界を守ります」
(オファニモンが、その隣へ並ぶ)
【オファニモン】
「ですが、皆さんの未来を決めるのは、私たちではありません」
(ケルビモンが、静かに頷いた)
【ケルビモン】
「この世界は、ここに生きるすべての命のものだ」
(三体の声が、中央聖域へ響き渡った)
(住民たちは、しばらく沈黙していた)
(そして、一体のデジモンが静かに頭を下げた)
(それに続くように、他の住民たちも頭を下げる)
(だが、三大天使はそれを求めなかった)
(彼らは、支配者ではなく、守護者として新たな時代を歩み始めたのだった)
⸻
第六幕 白獅子、再び
(数日後、北方の岩角集落)
(訓練場には、久しぶりにパンジャモンの姿があった)
(その前には、オーガモンとゴブリモンが立っている)
【オーガモン】
「……本当にやるのか?」
【パンジャモン】
「ああ。もう、身体は十分に動く」
【ゴブリモン】
「……無理するなよ?」
【パンジャモン】
「分かっている」
(パンジャモンは、静かに構えた)
(オーガモンが、ゆっくりと前へ出る)
【オーガモン】
「……じゃあ、行くぜ!」
(オーガモンが地面を蹴り、パンジャモンへ突進する)
(パンジャモンは、その動きを冷静に見極めた)
(そして、身体を半歩だけずらす)
【パンジャモン】
「……遅い!」
(パンジャモンの拳が、オーガモンの目前で止まった)
【オーガモン】
「……っ!」
(オーガモンは、驚いたように目を見開いた)
【パンジャモン】
「……どうだ?」
(オーガモンは、しばらく黙っていた)
(そして、にやりと笑った)
【オーガモン】
「……へっ。やっぱり、お前は強えな」
(パンジャモンは、静かに笑った)
【パンジャモン】
「……まだまだだ」
(その時、集落の入口から一体のデジモンが駆け込んできた)
【北方の伝令】
「パンジャモン! 中央聖域から知らせだ!」
【パンジャモン】
「……何があった?」
【北方の伝令】
「三大天使様たちが……究極体へ進化したらしい!」
(パンジャモンは、驚いたように目を見開いた)
【パンジャモン】
「……そうか」
(そして、静かに微笑んだ)
【パンジャモン】
「……あの三体も、自分たちの道を見つけたんだな」
(オーガモンが、腕を組んで笑った)
【オーガモン】
「……まったく、どいつもこいつも強くなりやがって」
【ゴブリモン】
「……でも、これで安心だな!」
(パンジャモンは、ゆっくりと首を振った)
【パンジャモン】
「……いや」
(その声は、穏やかだった)
【パンジャモン】
「安心できる世界にするのは、俺たち自身だ」
(パンジャモンは、集落の外へ広がる大地を見つめた)
【パンジャモン】
「三大天使だけに任せてはいけない。俺たちも、この世界を守っていかなければならないんだ」
(オーガモンとゴブリモンは、静かに頷いた)
⸻
第七幕 新たな時代
【ホメオスタシス】
「こうして、三大天使は究極体へ進化し、パンジャモンもまた戦線へ復帰しました」
「ですが、彼らが守ろうとしたのは、もはや戦争のための戦線ではありません」
「新たな争いを生まないために、互いを支え合う世界。その未来を守るための歩みだったのです」
(中央聖域では、セラフィモン、オファニモン、ケルビモンが復興を見守っている)
(北方では、パンジャモンが集落の若いデジモンたちへ戦い方を教えていた)
(交易路には、再び荷車が行き交う)
(かつて敵同士だった者たちが、同じ食卓を囲む)
(それは、決して完璧な平和ではなかった)
(だが、確かに前へ進んでいた)
⸻
終幕 狭間劇場
(スクリーンに、復興を続けるThe ORIGINの姿が映し出されていた)
【サイガ】
「……よかった」
(サイガは、静かに息を吐いた)
【サイガ】
「パンジャモンも元気になったし、三大天使も進化したんだね」
【イグドラシル】
「うん。戦争が終わっても、世界を守る仕事は終わらないからね」
(イグドラシルが、優しく微笑んだ)
【崑崙】
「それにしても、興味深いね」
(崑崙は、スクリーンへ視線を向けた)
【崑崙】
「十戦士は自分たちの役割を終えて去り、三大天使は新たな役割を見つけて進化した。同じ究極体への到達でも、そこに至る理由は違うわけだ」
【ホメロス】
「ふふっ。それぞれの意志が、それぞれの未来を形作る……美しいことですわね」
(ホメロスが、静かに微笑んだ)
【サイガ】
「……でも、十戦士たちは、もう戻ってこないんだよね」
(その問いに、ホメオスタシスは静かに頷いた)
【ホメオスタシス】
「ええ。彼ら自身が、あの姿で再び現れることはありません」
(スクリーンに、二十のスピリットが映し出される)
【ホメオスタシス】
「ですが、彼らの力と意志は、確かに未来へ残されました」
【サイガ】
「……そっか」
(サイガは、静かに微笑んだ)
【サイガ】
「じゃあ、いつか誰かが、その力を受け継ぐ日が来るんだね」
【ホメオスタシス】
「……そうですね」
(ホメオスタシスは、穏やかに微笑んだ)
【ホメオスタシス】
「そして、その時が訪れたなら……彼らの物語は、また新たな形で動き始めるのでしょう」
(スクリーンに、原初のデジタルワールドが映し出される)
(広大な大地)
(青い空)
(新たな命が生まれ、文明が築かれ始めた世界)
(その中心には、三大天使が守る中央聖域があった)
(そして、遠く離れた北方には、白獅子の戦士が暮らしている)
【ホメオスタシス】
「第一次ルーチェモン戦役は、確かに終結しました」
「ですが、これはThe ORIGINの歴史における、ほんの始まりに過ぎません」
(ホメオスタシスは、静かにスクリーンを閉じた)
【ホメオスタシス】
「原初の天使たちが築いた平和は、これから長い時をかけて、さまざまな形へと変わっていくことになります」
「そして、その歴史の中で、十戦士の意志は決して失われることなく、未来へ受け継がれていくのです」
(狭間劇場に、静かな光が満ちていく)
(サイガは、最後にもう一度スクリーンを見つめた)
【サイガ】
「……ありがとう、十戦士たち」
(その言葉に、答える者はいなかった)
(ただ、遠い世界の空に、十の光が一瞬だけ輝いたように見えた)
エピローグ「受け継がれる光」――完。
『オリジンプロトコル』原初の天使篇 完結。