アシュレイ先生のお仕置き   作:サンデン

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第1話 アシュレイ先生

 

魔法学校の廊下に、甲高い靴音が響き渡っていた。

 

教壇に立つその人物——アシュレイ先生の性別を知る者は、この広大な魔法学校の中にも一人として存在しない。

 

細身のシルエットに流れるような長髪。上品な立ち振る舞いと、男とも女とも取れる涼やかで美しすぎる声。生徒たちの間では「実は男装の麗人」「いや、人間に化けた精霊だ」などと無数の噂が飛び交っていたが、本人に聞く度合いを持った勇者はまだ現れていなかった。

 

なぜなら、アシュレイ先生は学校で最も恐ろしい「お仕置きのスペシャリスト」だったからだ。

 

「……で、反省の色は見えないわけですね? ルークくん、レオンくん」

 

図書室の禁書エリアから勝手に古文書を連れ出し、実験でボヤ騒ぎを起こした二人の男子生徒は、アシュレイ先生の前に並んで正座していた。

 

「だ、だって先生! 魔法の威力が増すって書いてあったからちょっと試してみたかっただけで……!」

 

「そうだよ! 悪気はなかったんだってば!」

 

言い訳を並べる二人に、アシュレイ先生はため息を一つ吐き、胸元から薄紫色の美しい魔法札を取り出した。

 

「理由はどうあれ、校則違反は校則違反です。口で言っても聞かない困った男の子たちには……身体で分かってもらいましょうか」

 

「え……? 身体で……って、ひっ!?」

 

アシュレイ先生が優雅に指を鳴らした瞬間、二人の全身が眩い紫色の光に包まれた。

 

「うわあああ!? なにこれ、体が熱い……!?」

 

「声が……高くなって……!?」

 

光が収まると、そこには顔を見合わせて固まっている二人の可憐な少女が立っていた。

 

元・ルークは肩まで伸びた栗色の髪とくりっとした大きな瞳の乙女に。元・レオンはツインテールがよく似合う小柄で気強そうな美少女へと変貌を遂げていた。

 

「な、なんだよこれぇ……!? 胸があるし、声が超可愛いんだけど!?」

 

「ちょっとルーク、私の服ゆるゆるなんだけど!? これ、何の魔法!?」

 

パニックに陥る二人を見下ろし、アシュレイ先生は満足そうに微笑んだ。

 

「TS(性転換)魔法です。あなたたちの身勝手でガサツな振る舞いを改めるため、一週間その姿で過ごしてもらいます。ちなみに、下着は自動で適切なサイズに変化していますからご安心を」

 

「安心できるかよー! こんな姿で授業なんか出られるか!」

 

「そうだよ、みんなに笑われちゃうよぅ……!」

 

泣きつく二人に対し、アシュレイ先生はフッと妖しい笑みを浮かべた。

 

「出られない? ふふ、何を言っているのですか。これから盛大に宣伝しに行くというのに」

 

「……え?」

 

アシュレイ先生は二人の襟首を掴むと、魔法でふわふわと宙に浮かせた。そのまま向かったのは、ちょうど昼休みで生徒たちがごった返す大食堂であった。

 

食堂の重厚な扉がバーンと開かれ、アシュレイ先生がゆっくりと歩み出る。全生徒の視線が注がれる中、先生は魔法で声を大増幅させて宣言した。

 

「生徒の皆さん、ご注目ください!」

 

「ひえっ! 先生、やめてぇぇぇ!」(元・ルーク)

 

「頼むから降ろしてぇええ!」(元・レオン)

 

「こちらにいる可憐な二人の美少女……実は、校則を破って禁書を持ち出したルークくんとレオンくんです!」

 

『『『えええぇぇぇぇーーーっ!?!?』』』

 

食堂中に割れんばかりの歓声と悲鳴が響き渡った。

 

「えっ、あの二人!? めっちゃ可愛いんだけど!」

 

「レオンくん、ツインテール似合いすぎだろ……!」

 

「ルークちゃん、守ってあげたくなる顔してる……」

 

あっという間に好奇の目に晒され、顔を真っ赤にしてお互いの背中に隠れ合う元・男子ペア。

 

「彼らは一週間、この姿で学校生活を送ります。もしまた校則を破る者がいれば……次はどのような姿になってもらうか、分かりますね?」

 

アシュレイ先生が静かに微笑むと、周囲の男子生徒たちは一斉に背筋を凍らせた。だが同時に、一部の生徒たちの目には怪しい光が宿っていた。

 

「……一週間、あの姿の二人と同じクラスなのか……?」

 

「悪くない……いや、むしろご褒美では……?」

 

そんな雑音を耳ざとく拾ったアシュレイ先生は、人知れずクスリと笑った。

 

「さて、二人とも。お仕置き期間中の特別課題として、女子寮のルールも覚えてもらいますからね。さあ、まずは購買部で女子用の制服を買うところから始めましょうか」

 

「「そんなぁぁぁぁ〜〜〜〜っ!?」」

 

可憐な二人の悲鳴が、今日一番の大きさで校舎に響き渡るのだった。

 

 

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