翌日
「……ねえ、ルーク。本当に大丈夫なのかな、これ……」
「大丈夫だって! 昨日の夜、女子寮からこっそり抜け出して食堂の厨房からパイをくすねてきただけだろ? バレなきゃお咎めなしだよ!」
TS魔法によって美少女へと変えられた元・男子コンビのルークとレオンは、校舎の陰でコソコソと手に入れたアップルパイを頬張っていた。
女子の身体になったとはいえ、性根のガサツさと悪知恵はそう簡単に治るものではない。昨日の今日で反省するどころか、「どうせもう女子にされたんだから、これ以上の罰なんてないだろ」と高をくくっていたのだ。
だが、甘かった。あまりにも甘すぎた。
「……ふふ、実に美味しそうに食べますね」
「「ひぇっ!?」」
背後から響いたのは、男とも女とも取れない鈴を転がすような美声。ゆっくりと振り返ると、そこには優雅に日傘を差したアシュレイ先生が立っていた。
「せ、先生……! これは違うんです、ただお腹が空いてて……!」
「反省の色が見えないどころか、舌の根も乾かぬうちに重ねて校則違反とは……素晴らしい度胸ですね」
アシュレイ先生は妖しく微笑むと、昨日の紫色の札ではなく、より濃密で妖艶な漆黒の魔法札を取り出した。
「言いましたよね? 『次はどのような姿になってもらうか』と。……言いつけを守れない悪い子には、より過激なお仕置きが必要です」
「や、やめてぇえええ! 改めて反省するからぁぁぁ!」
「ごめんなさいごめんなさい!!」
二人の悲鳴も虚しく、アシュレイ先生が指をパチンと鳴らす。
昨日の倍以上の眩い光が二人を包み込み、パツパツと布地が裂けるような、怪しい音が響いた。
光が収まると——そこには、昨日の女子制服姿とは比べものにならない、あまりにも破壊力が高すぎる姿となった二人が立っていた。
元・ルークは、胸元が大胆に開き、背中も腰まで露わになった超ハイレグのバニーガール姿。ウサ耳バンドと白いモコモコのしっぽがついており、短すぎるボトムスからは健康的で眩しい太ももが全開になっている。
一方の元・レオンは、黒いフリルとレースで彩られた超ミニ丈の露出度高めなフレンチメイド服。胸元はハート型にくり抜かれ、フリルのミニスカートの下からはガーターベルトと黒ストッキングが覗いていた。
「な、ななな……何これぇぇぇ!? ほぼ裸じゃん!!」
「スカート短すぎるし、胸元スースーするんだけど!? ガーターベルトって何!? どこで固定してんのこれ!?」
恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にし、必死に短い手やスカートの端で肌を隠そうとする二人。
「過激な衣装への強制衣替え魔法です。ちなみに脱ごうとしたり、上から上着を羽織ろうとすると魔法の拒絶反応で麻痺しますのでご注意を」
「悪魔だ……! 先生は悪魔だぁぁぁ!」
「ふふ、お褒めいただき光栄です。さて——」
アシュレイ先生は扇子を優雅に広げると、昨日のデジャヴのように二人の首元を魔法の紐で縛り、空中へ浮かせた。
「昨日は大食堂でしたから、本日は大賑わいの中央広場(グラウンド前)で宣伝するとしましょう」
「「いやあああああ! それだけは本当にやめてぇぇぇぇ!!!」」
◇
「生徒の皆さん、ご注目!」
放課後の部活動に向かう生徒たちでごった返す中央広場。
アシュレイ先生の声と共に、上空に浮かび上がったのは……バニーガール姿で半泣きのルークと、露出度の高いメイド服姿で顔を覆うレオンだった。
『『『ぐはぁっっっ!?!?』』』
その瞬間、広場にいた男子生徒たちの何割かが鼻血を吹いて倒れ込んだ。
「ば、バニー……!? メイド……!?」
「ルークちゃん……足、長っ……! バニー耳似合いすぎだろ……!」
「レオンちゃんのガーターベルト……ッ! 拝む、俺は今日からアシュレイ先生を信仰する……!」
黄色い歓声と、男子たちの熱烈な視線が容赦なく二人に注ぎ込まれる。
「ご覧の通り、反省せず再び悪事を働いた二人には、さらに刺激的な姿になってもらいました。皆さん、校則は正しく守りましょうね?」
アシュレイ先生が微笑みかけると、校庭にいた全校生徒が一斉に「はい!!!!」と過去最高の一体感で返事をした。
「……なあ、ルーク」
「なに、レオン……」
「私、もう二度と悪いことしない……絶対……」
「俺も……ていうか、早く一週間終わってくれぇぇぇ……」
真っ赤な顔で涙目を浮かべ、身を寄せ合う可憐な(元男子)二人。
そのあまりの破壊的な可愛らしさに、校庭の男子たちの購買意欲ならぬ「庇護欲」と「邪心」がMAXまで跳ね上がっていることに、二人はまだ気づいていなかった。