アシュレイ先生のお仕置き   作:サンデン

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第3話 レオンとルーク後編

 

過激な衣装に強制チェンジさせられてから三日目。

 

ルークとレオンの期待——「こんな恥ずかしい格好をしていれば、みんなドン引きして遠ざかっていくはず」という甘い目論見は、真逆のベクトルで粉々に打ち砕かれていた。

 

「……ねえ、ルーク。なんで私たちが歩くだけで人集りができるの?」

 

「知るかよ……! ていうか、視線が痛い! 全方位からの視線で皮膚が焦げそう!!」

 

ウサ耳を力なく垂らしたバニー姿のルークと、フリルミニの裾を必死に抑えるメイド姿のレオン。

 

二人が校舎の廊下を歩くだけで、まるで超人気アイドルの練り歩きのような騒ぎが巻き起こっていた。

 

しかも恐ろしいことに、群がってくるのは男子生徒だけではなかった。

 

「ルークちゃん! 手作りのクッキー焼いてきたの! 良かったら食べて!」

 

「レオンちゃん、今日のメイド服もすっごく似合ってるよ! ねぇ、放課後一緒に女子会しない!?」

 

「きゃあーっ! 二人が身を寄せ合ってるの尊すぎる……っ!」

 

女子生徒たちが「守ってあげたい可愛すぎる妹(?)たち」として、目を輝かせて押し寄せてくるのだ。お菓子やプレゼントを差し出され、頭を撫でられ、あちこちから「カワイイ〜!」の悲鳴が上がる。

 

一方、男子生徒たちはといえば——

 

「ルーク……俺、お前が男だった頃のこと忘れるわ。付き合ってください!」

 

「レオンちゃん! お願いだからそのガーターベルトで俺を踏んでくれ!!」

 

「おい割って入るな! 今ルークちゃんと目が合ったのは俺だ!」

 

「「寄るな変態ども!!!(泣)」」

 

男子からは「本気の恋愛対象」および「崇拝の対象」として熱烈すぎるアプローチを受け、女子からは「愛でる対象」として甘やかされまくる。

 

まさに学校中の男女双方からモテにモテまくる大混雑状態(カオス)に陥っていた。

 

「助けてくれ……俺たち、元は男なんだぞ!? 忘れたのかよ!?」

 

ルークが悲痛な叫びをあげるが、取り巻きの男子は「そこがいいんじゃないか……(恍惚)」と全く話を聞いていない。

 

「もう嫌ぁぁぁ! 逃げるよルーク!」

 

二人は悲鳴を上げながら、押し寄せるモテの嵐から必死で逃げ出した。

 

◇

 

ゼーゼーと息をを切らし、二人が辿り着いたのは校庭の隅にある聖堂の裏手。

 

ようやく追手を撒いたと胸を撫で下ろしたその時——

 

「ふふ、二人とも、すっかり学校のアイドルですね」

 

頭上から降ってきたのは、男とも女とも取れない、あの美しくも恐ろしい声。

 

見上げると、聖堂の屋根の縁に、アシュレイ先生が優雅に腰掛けていた。

 

「せ、先生……! 助けてください!」

 

レオンが半泣きでスカートの裾を掴みながら訴える。

 

「モテすぎて生活が成り立ちません! 男子からは変な目で見られるし、女子からは抱きつかれるし、どこに行っても地獄なんです!」

 

「そうです! お仕置きの罰にしてはやりすぎです! 早く元の姿に戻してください!」

 

バニー耳をぶんぶんと振りながら抗議するルーク。

 

すると、アシュレイ先生は妖艶な微笑みを浮かべ、ゆっくりと舞い降りてきた。

 

「あら? モテモテになるのは男の子の夢なのでは? 男女問わず愛されるなんて、最高のご褒美ではありませんか」

 

「全然嬉しくないよ!! 命の危険を感じるんだよ!!」

 

「ふむ……」

 

アシュレイ先生は顎に細い指を当て、二人を上から下までじっくりと検分した。

 

「確かに、これ以上校内の秩序が乱れるのも困りものですね。……分かりました。特別に反省の態度を見せるなら、魔法を解除してあげても良いですよ?」

 

「本当ですか!?」

 

「なんでもします! 反省してます! 禁書も二度と触りません! 厨房のパイも盗みません!」

 

食い気味に誓いを立てる二人に対し、アシュレイ先生はポケットからパチンと指を鳴らした。

 

「では……最後の仕上げです」

 

ポンッ!

 

紫色の煙と共に、二人の服装が瞬時に変化する。

 

バニーとメイドの過激な衣装は消え去り——代わりに現れたのは、ごく普通の男子生徒用の制服だった。

 

「「あ……! 元の服……! 男に戻れた……!?」」

 

自分の手や胸を触り、声を確認する二人。甲高い声は元の少年の声に戻り、胸の膨らみも消えている。

 

「やったぁぁぁ! 戻った! 男に戻れたぞーーー!!」

 

「助かった……命拾いしたぁぁぁ……!」

 

涙を流して抱き合って喜ぶルークとレオン。

 

だが、二人は大きな勘違いをしていた。

 

アシュレイ先生は「魔法を解除する」と言っただけで、「元通りになる」とは一言も言っていないのだ。

 

アシュレイ先生は優雅に扇子で口元を隠し、クスリと笑った。

 

「言っておきますが……戻ったのは『服装と身体の性別』だけですよ?」

 

「……え?」

 

二人が首を傾げたその瞬間。

 

聖堂の陰から、二人を探し回っていた生徒たちの足音がドタドタと近づいてきた。

 

「あ! いたぞ、ルークとレオンだ!」

 

「あ〜あ、男の姿に戻っちゃった……」とガッカリされるかと思いきや、駆け寄ってきた男子生徒と女子生徒たちの目は、さっき以上に妖しく輝いていた。

 

「……待って。男に戻ったルークくん、なんか儚げでめちゃくちゃ美少年になってない……?」

 

「レオンくんも……元から可愛い顔だと思ってたけど、あのメイド服を経たあとだとギャップでヤバいんだけど……!?」

 

「男でも女でも関係ない……! ルーク、好きだーーー!!」

 

「「……えええええええええええっ!?」」

 

TS魔法の副作用(あるいはアシュレイ先生の裏の仕込み)により、二人の顔立ちと雰囲気は「超絶美少女」から「学園一の美少年コンビ」へと上書き変更されていたのだ。

 

「先生!? これどういうことですか!!? 性別戻ったのにモテが加速してるんですけど!!?」

 

「ふふ、改心した二人はとても魅力的ですからね。それでは一週間、美少年としての学校生活を存分に楽しんでください」

 

手を振ってフワリと姿を消すアシュレイ先生。

 

「待って! 先生ぇぇぇぇ!」

 

叫びも虚しく、二人は全校生徒からの「男だとか女だとかを超越した愛」の嵐の中へと引きずり込まれていくのだった。

 

 

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