「触らないでぇぇぇ! 近寄るなーッ!!」
男女問わず押し寄せる情熱的な「愛」の暴風雨にパニックを起こしたクララは、混乱のあまりとんでもない暴挙に出てしまった。
「うわぁぁぁ! パニック・バースト!!」
ドッカアアアアン!!
あろうことか、大食堂の真ん中で攻撃系の範囲魔法を全力でぶっ放したのだ。
爆風と煙が立ち込め、食器やテーブルが派手に吹き飛ぶ。生徒たちは間一髪で魔法障壁を張って無事だったものの、食堂の一角は見事に惨状と化していた。
煙が晴れると、そこには息を荒らげて魔法の手を突き出しているイケメン執事姿のクララ。
「ハッ……! や、やってしまった……!」
己のしでかしたことに青ざめるクララの背後に、ヌッと現れた影があった。
男とも女とも取れない美貌に、これまで一度も見せたことのない極上の(そして恐ろしすぎる)笑顔を浮かべたアシュレイ先生である。
「……あらあら。生徒に怪我はありませんでしたが、学校の備品を破壊し、逃走のために魔法をぶっ放すとは……」
アシュレイ先生の手元に現れたのは、もはや紫や濃紺どころではない、赤黒くドロリとした邪悪な光を放つ極小の魔法札だった。
「ひっ……! 違っ、パニックになって手が滑っただけで——!」
「言い訳は不要です。『力』を過信して暴力に訴える悪い子には、もう言葉はいりませんね。……特別に最高の過激衣装をプレゼントしましょう」
「嫌だ! 頼むから許してぇぇぇぇ!!」
クララの絶叫をかき消すように、アシュレイ先生が優雅にパチンと指を鳴らした。
ズドンッ!!
赤黒い光の柱がクララを飲み込み、パツパツと布地がはじけ飛ぶ淫靡な音が空間に響き渡る。
「ぐ……あ……!? なにこれ、服が……!? 露出が、露出がヤバい……ッ!?」
光が霧散したそこに現れたのは——言葉を失うほど破廉恥で刺激的な姿になったクララだった。
衣装はなんと、『超・露出度過激な闇の女幹部(ハイレグ&ボンテージ風)』。
胸元はほぼ丸見えのハイレグ革スーツに、腕と太ももにはエナメルの黒ベルトが絡みつき、背中には透ける黒レースの小さな羽。そして、頭には黒い悪魔の角(ツノ)。
高身長でスタイルの良いイケメン(TS)の肉体に、極限まで生地面積を削ったキャットスーツが吸い付くようにフィットしており、一歩動くだけで健康的かつ妖艶な身体のラインがこれでもかとアピールされる。
「な……なん……なんなのこの格好ぉぉぉ!? ほぼ紐じゃん!! ほぼ裸じゃん!!」
顔をリンゴのように真っ赤にし、自分の腕で胸元と股間を必死に隠そうとするクララ。だが、隠せば隠すほどハイレグのラインが際立ち、逆に色気が爆発してしまう。
「ふふ、暴走する悪役(闇の幹部)にぴったりの衣装でしょう? 脱ごうとすると電流が走りますのでご注意を」
「悪魔! アシュレイ先生は本物の悪魔だぁぁぁ!!」
「お褒めいただき光栄です。……さあ、大破壊の罰として、その姿で食堂のお掃除をしてもらいましょうか」
アシュレイ先生はそう言うと、クララの手にはたきとモップを押し付けた。
◇
数分後。
片付けが始まった大食堂にて。
「うぅ……なんで私がこんな格好で床を履かなきゃいけないの……っ」
超・ハイレグボンテージ姿のクララが、涙目になりながら四つん這いになって床を拭く。
かがむたびに胸元と腰回りのラインがあらわになり、太もものエナメルベルトが食い込む。
その姿を目撃した全校生徒(男女)の反応は——もはや惨劇(楽園)であった。
ブフォッ!!(大流血)
「が、画面が……画面の破壊力が強すぎて目が潰れる……っ!!」
「イケメンの闇幹部コス……! しかも四つん這いでお掃除……ッ!!」
「クララ様ぁぁぁ! 俺を踏んでください! いや、俺がモップになります!!」
「ちょっと男子邪魔! クララちゃんのあのウルウルした目見た!? 尊すぎて心臓止まる!!」
過激すぎる衣装と、相変わらず「中身が可憐な乙女」であるクララの羞恥に満ちた表情。そのギャップに拍車がかかり、大食堂は尊さと刺激の過呼吸で倒れる生徒が続出した。
逃げ場を失い、モップを抱きしめてプルプルと震える闇幹部風クララ。
「もう嫌……だれか……だれか私を殺してぇぇぇ……っ!!」
遠くでその光景を眺めていたルークとレオンは、冷や汗をダラダラと流しながら固く誓い合うのだった。
「「(絶対に……絶対に魔法で暴れるのだけはやめよう……!!)」」