アシュレイ先生のお仕置き   作:サンデン

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第9話 ゴルド 前編

 

「おーい、アシュレイ先生! ちょっと相談があるんだが!」

 

ドス、ドス、ドス……と、校舎の床を揺らす重厚な足音とともに現れたのは、高等部3年・体育科のゴルド先輩だった。

 

身長は2メートルを超え、丸太のような腕に板チョコのように割れた腹筋。魔法学校の生徒でありながら、物理攻撃でドラゴンを叩き伏せると噂される学園屈指のムキムキマッチョである。

 

「あら、ゴルドくん。私に何か用でしょうか?」

 

アシュレイ先生が優雅に振り返ると、ゴルド先輩は極太の腕を組んで、厳めしい顔で腕組みをした。

 

「実はな……後輩のボブがTS魔法を受けて男女問わず大人気になったって話を聞いたんだ、……正直、羨ましくてな」

 

「羨ましい、ですか?」

 

「ああ! 俺は……俺はこの威圧感のある巨体とイカつい顔のせいで、後輩たちから『歩く災害』『魔王』って陰で恐れられてるんだよ! 本当はもっと後輩たちと爽やかに談笑したり、可愛いお菓子作りの趣味を共有したいのに……!!」

 

大真面目な顔で「お菓子作り」と言い放つマッチョ先輩。

 

遠くから様子を伺っていたルークとレオンは「えっ、ゴルド先輩ってお菓子作りが趣味だったの!?」と目を丸くした。

 

「だから先生! 俺もTS魔法を受けたら、後輩たちとの壁が壊れて親しみやすくなれるんじゃないかと思ってな! ぜひ俺にも魔法をかけてくれ!!」

 

己のコンプレックスを克服するため、超大真面目な目で自らTS魔法を志願する筋肉の巨漢。

 

アシュレイ先生は男とも女とも取れない美貌に、本日一番の深遠な笑みを浮かべた。

 

「ふふ……己の肉体と心に向き合い、変わろうとする意志……素晴らしいですね。いいでしょう、ゴルドくん。あなたのその豊満な(筋肉の)肉体を、最高の形で変換してあげましょう」

 

「感謝する、先生!」

 

アシュレイ先生の手から飛び出したのは、重厚な深緑色に輝く魔法札。

 

パチンッ!

 

「うおおおおおっ!? 筋肉が……筋肉が熱いぞおおおッ!?」

 

黄金と深緑の光がゴルド先輩の巨体を包み込み、凄まじい密度の魔力が渦巻いた。

 

「おいおい……あの筋肉が女の子になったらどうなっちまうんだ……!?」

 

ルークとレオンが息をのんで見守る中、光がゆっくりと収まっていく。

 

そこに現れたのは——

 

「ふぇ……? こ、声が……高くなっちゃいました……?」

 

そこには、超・ギャップ萌えの『極上マッスル姉御肌美少女』が立っていた!

 

身長は180cmオーバーモデル体型の高身長。

 

キュッと引き締まったウエストと縦線の入った美しい腹筋(シックスパック)、スラリと伸びた長い脚。そして、タンクトップの胸元からは筋肉ではなく豊満で豊かなバストが溢れんばかりに主張している。

 

髪は艶やかな金髪のポニーテールになり、鋭かった目つきは凛としつつも、困り顔をすると一気に「可憐な乙女」に変わるという、とんでもない美貌のボーイッシュ美少女(TS)へと変貌を遂げていたのだ。

 

「な……なんだこれぇぇぇ!? 筋肉の鎧が……しなやかな女の子の肉体になっちゃったぁぁぁ!?」

 

自分の細くなった手首や、豊満になった胸をぷにぷにと触り、顔を真っ赤にしておろおろするゴルド(女)。

 

すると、そこへ「ゴルド先輩に用があって……」とおそるおそるやってきた後輩の女子生徒たちが通りかかった。

 

「あの……ゴルド先輩……ヒッ!? 誰この綺麗でかっこいいお姉さん!?」

 

「あ、あの! 怖がらせたらごめんなさい! 俺……じゃなくて私、ゴルドです……!」

 

申し訳なさそうに身を縮め、上目遣いでウルウルと瞳を揺らすゴルド(女)。

 

高身長でスタイル抜群のボーイッシュ美女が、恥ずかしそうに手をモジモジさせている。

 

その瞬間——女子生徒たちの目が一瞬でハートマークに変わった。

 

「「「キャーッ!! カッコいいのに可愛すぎるーーーッ!!」」」

 

「ええっ!?」

 

「ゴルド先輩!? 嘘でしょ、こんなに美しくて可愛かったの!? ギャップがヤバい!!」

 

「あの、先輩! 良かったら私と一緒に手芸部でお茶しませんか!?」

 

「私、先輩にトレーニング教えてほしいです! 抱きつかれてもいいです!!」

 

さらに、通りかかった男子生徒たちも——

 

「な……なんだあの超絶スタイルの筋トレ美女は……!?」

 

「腹筋の縦線がエロすぎる……! 踏まれたい……いや、お姫様抱っこされたい!!」

 

男女問わず、後輩たちが怒涛の勢いでゴルド(女)の元へ押し寄せてきた。

 

「えっ……えっ……! みんな、俺……私を怖がってない……!? 一緒にお菓子のお話、してくれるの……!?」

 

パッと顔を輝かせ、花が咲いたような極上の笑顔を浮かべるゴルド(女)。

 

そのあまりの神々しさとギャップの破壊力に、群がった後輩たちは「尊い……!!」と悲鳴を上げてその場に崩れ落ちた。

 

「ふふ、大成功ですね。ゴルドくん」

 

アシュレイ先生が満足そうに扇子を鳴らす。

 

「ありがとうございます先生! 俺……私、後輩たちと仲良くなれてすっごく嬉しいです!!」

 

感極まって涙目になりながら、手作りのクッキーを後輩たちに振る舞うゴルド(女)。

 

遠くからその光景を見ていたルークとレオンは、力なく笑い合うのだった。

 

「……なあ、レオン。この学校、自らTS魔法を受けに行ったやつの方が幸せになってないか?」

 

「間違いないね、ルーク……。反省のためにお仕置きされた俺たちが一番被害甚大だよ……」

 

学校中の後輩たちから「最高にかっこ可愛くて優しいゴルドお姉さま」として崇拝されることになったゴルド先輩のモテ期は、こうして華々しく幕を開けたのだった。

 

 

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