【悲報】星見雅の姿でBLEACH世界に転生してしまった   作:菜麻沙

1 / 1
評価、感想いただけたら嬉しいです!!!


目が覚めたら星見雅だった!?

 目を開けたら知らない天井、いや、知らない空だった。

 

 雲一つない青空。頬に当たる風は生ぬるく、背中には湿った土の感触がある。どうやら地面に寝転がっていたらしい。

 

「……ここはどこだ?」

 

 起き上がりながら口にした言葉に、俺は固まった。

 

 声が違う。

 

 落ち着いた、涼しげな女の声だった。それに、今の喋り方。自分では普通に独り言を言ったつもりなのに、妙にきっぱりしている。

 

「まずは状況を確認しよう」

 

 いや待て。誰だその冷静な人。

 

 全然冷静じゃないんですけど。知らない場所で目が覚めた上に声まで変わってるんですけど。

 

 両手を見下ろす。白くて細い指。着ているのは白いシャツに黒いネクタイ、黒のプリーツスカート。肩には青緑色の上着がかかっている。袖口や腰回りには見覚えのある装備。

 

 おかしい。こんな服は持っていない。

 

 そもそも、いつの間に着替えた?

 

 答えの出ない疑問を抱えたところで、頭の上がぴくりと動いた。

 

「……?」

 

 風で髪が揺れたのかと思った。ところが、もう一度ぴくりと動く。しかも、なんとなく自分の意思で動かせる気がする。

 

 恐る恐る頭に手を伸ばした。

 

 ふわり。

 

 柔らかい毛並みが指に触れた。

 

「耳……?」

 

 右に一つ。左に一つ。

 

 大きくて、先の尖った獣の耳。

 

 試しに意識を集中すると、二つ揃ってぴんと立った。

 

 ……え、何これ。

 

 いや、知ってるぞ。髪に服、獣耳。これ、ものすごく見覚えがある。

 

 慌てて周囲を見回し、すぐそばの水たまりに顔を近づける。揺れる水面を手で静めると、そこに黒髪の少女が映った。赤い瞳。凛とした顔立ち。そして、頭上の長い狐耳。

 

「星見雅……?」

 

 ゼンレスゾーンゼロの星見雅。

 

 対ホロウ六課の課長で、狐耳の凄腕剣士。ゲームで何度も見た、あの星見雅だ。

 

 思わず水面から顔を離し、もう一度覗き込む。

 

 やっぱり雅だ。

 

 ……雅やんけ!

 

「どうやら、外見が変わっているようだな」

 

 いや、外見どころの話じゃないだろ!!!

 

 ……いや、待て!

 

 星見雅って女だよな? ということは、俺も女になってる?

 

 慌てて胸元を見下ろし、腰回りに手をやる。服装だけじゃない。身体つきそのものが、記憶にある自分とはまるで違う。

 

 ……マジか。雅になった事実に気を取られてたけど、性別まで変わってるじゃん。

 

 いやいやいや。昨日まで男だったんですけど!? これからどうすればいいんだよ!

 

 今、頭の中では盛大に騒いでいる。なのに口を開くと、勝手に雅みたいな言葉になる。姿に合わせて喋り方まで変換されているらしい。

 

 こんな都合のいい機能、聞いてないんですが。

 

 とりあえず立ち上がる。身体は驚くほど軽かった。少し膝を曲げただけで、どこまでも跳べる感覚がある。となると、能力も雅のものなのか?

 

 腰に手を当てる。

 

 ……ない。

 

「刀がないな」

 

 もう一度探す。背中にもない。足元にも落ちていない。

 

 星見雅といえば刀じゃないのか!? 無尾はどこ? そこはセットじゃないのかよ。頼むから一番大事そうな部分を省略しないでほしい。

 

 とはいえ、ないものはない。

 

「嘆いても仕方がない。まずは人のいる場所を探そう」

 

 もっともな意見である。

 

 俺はひとまず、遠くに見える家並みへ向かうことにした。

 

 

◆

 

 

 歩き始めてから、何度も妙な感覚を味わった。

 

 足元の小石に躓きそうになる前に、身体が勝手に避ける。遠くの草むらで何かが動くと、視線がそちらを向く。耳を澄ますまでもなく、人の声や足音が聞き分けられた。

 

 身体能力が違いすぎる。

 

 ちょっと走ってみたい気もするが、加減を間違えてどこかに突っ込んだら笑えない。能力の確認は後回しだ。

 

 やがて道幅が広くなり、建物が増えてきた。

 

 木造の家。土壁。軒先で作業をする人々。すれ違う人のほとんどが着物姿で、舗装された道路も電線も見当たらない。

 

 ……時代劇?

 

 いや、さすがにセットにしては広すぎる。

 

 何より、人の視線が痛い。

 

「あれ、何だ?」「耳があるぞ」「狐?」

 

 そんな声があちこちから聞こえてくる。

 

 そりゃそうだ。周りは着物なのに、こっちは青緑色の上着を羽織った狐耳の女。どう見ても浮いている。

 

 道端で遊んでいた子供が近づいてきたが、こちらが振り向くと慌てて家の陰へ引っ込んだ。

 

 ちょっと傷ついた。

 

 腹は減っていない。喉も渇いていない。なのに、どこか落ち着かない。

 

 ここがどこか分からないまま、知らない街を歩いているのだ。平常心でいられる方がおかしい。

 

 誰かに聞こうか。

 

 そう思うたび、周囲の警戒した目つきが気になって足が止まる。もう少し穏やかそうな相手を探した方がいいだろう。

 

 そんな調子でほっつき歩いているうちに、いつの間にか細い路地へ入り込んでいた。

 

「おい、姉ちゃん」

 

 背後から声がかかった。

 

 振り向くと、男が三人いた。汚れた着物に、剣呑な目つき。親切心で声をかけてきた、という顔ではない。

 

「私に用か?」

 

「ああ。ずいぶんいい服着てるじゃねえか。どっから来たんだ?」

 

「遠方からだ。道を探している」

 

「へえ。だったら俺らが案内してやるよ。礼はもらうがな」

 

 下衆が。

 おっと、心の中まで雅が浸食してきた。

 

 カツアゲだ。

 

 転生して何分経ったかも分からないのに、もうカツアゲ。

 

「生憎、渡せるものはない」

 

「そういう話じゃねえんだよ」

 

 一人が近づいて、肩へ手を伸ばしてきた。

 

 避けよう。

 

 そう考えた瞬間には、もう男の背後に立っていた。

 

「……む?」

 

「なっ!?」

 

 驚いたのは向こうだけではない。俺もだ。

 

 身体が勝手に動いた。いつ、どう足を運んだのか、頭では追えていない。なのに身体は初めから答えを知っていたみたいだ。

 

 別の男が殴りかかってくる。

 

 今度は見えた。いや、見えすぎる。拳がやけにゆっくり近づいてきたので、腕を取り、軽く体勢を崩してやる。

 

「うおっ!」

 

 男は地面へ転がった。

 

 三人目が短い棒を振り上げる。反射的に懐へ入り、手首を押さえて足を払う。

 

 どさり、とまた一人。

 

 最初の男が何か叫んで飛びかかってきたので、胸元を掴んで投げた。

 

「ぐえっ!」

 

 ……あ。

 

 ちょっと勢いよく投げすぎたかもしれない。

 

 男は土の上を転がり、しばらく呻いていた。残りの二人も起き上がる気配がない。

 

 なんだこの身体。強すぎないか。

 

 刀なしでこれ? さすが虚狩り、伊達じゃないな。

 

 ひとまず三人とも生きているらしい。よかった。ここで人を殺したら、いよいよ洒落にならない。

 

「さて」

 

 俺は最初に声をかけてきた男の前へしゃがみ込んだ。

 

「いくつか尋ねたいことがある」

 

「ひっ……!」

 

 なぜか男が後ずさる。

 

 いや、別にこれ以上殴る気はないんだけど。

 

「答えてくれればそれでいい。まず、ここはどこだ?」

 

「は、はあ? 何言って……」

 

「場所の名前だ」

 

「は、花枯だよ! 六十二地区の花枯!」

 

 花枯。

 

 聞いたことがない地名だ。

 

「六十二地区というのは?」

 

「東流魂街の六十二地区だ! それくらい知ってるだろ!」

 

 ……流魂街?

 

 今、流魂街って言った?

 

「もう一つ聞こう。死神という存在を知っているか?」

 

「し、死神? そりゃ知ってるけどよ……」

 

「実在するのか?」

 

「何当たり前のこと聞いてんだ! 瀞霊廷にいる連中だろ!」

 

 瀞霊廷。

 

 死神。

 

 流魂街。

 

 知っている。知っているぞ、その単語。

 

 これ、BLEACHじゃないか?

 

 いや、ちょっと待ってくれ。

 

 星見雅になっただけでも意味が分からないのに、転生先はBLEACH? 嘘だろ? ゼンゼロ世界じゃないの?

 

 同じホロウでもちょっと違いすぎるだろ!?

 

「……そうか。理解した」

 

 してない。

 

 何一つ理解できてない。

 

「お、おい。もういいか?」

 

「最後に一つ。今は何年だ?」

 

「年? そんなもん知るか!」

 

 困った。これでは時代が分からない。

 

「分かった。協力に感謝する」

 

 立ち上がると、男は慌てて逃げ出した。残りの二人もふらつきながら立ち上がり、その後を追っていった。

 

 俺はその後ろ姿を見送り、路地の真ん中でしばらく立ち尽くした。

 

 BLEACH。

 

 よりによってBLEACH。

 

 藍染、ユーハバッハ、あとなんだっけ? 敵と言えばその二人しか浮かんでこない。おまけに、いつの時代かも分からない。

 

 原作を読んだことはある。大まかな流れだって覚えている。ただ、地区名だの細かい年代だのまで暗記しているわけじゃない。

 

 花枯なんて聞いたこともない。

 困った。今がいつかでだいぶ話が変わるぞ? ユーハバッハ討伐後だと嬉しいんだけど……。

 

 そもそも、俺は死んだのか? 尸魂界にいるってことは、そういうことなのか?

 

「……ひとまず、考える時間が必要だな」

 

 口だけは相変わらず冷静だった。

 

 

◆

 

 

 しばらく人目を避けよう。

 

 そう決めて、街の外れへ向かった。

 

 さっきの騒ぎが広まるかもしれないし、ここが本当に尸魂界なら、目立つのはできるだけ避けたい。

 

 それにしても、転生した身体が星見雅でよかったのか悪かったのか。

 

 腕っぷしが強いのはありがたい。だが、BLEACHには霊圧だの鬼道だの、意味の分からない強さを持つ連中がいる。雅の力がこちらでどこまで通用するかも分からない以上、後先考えずに暴れまわることもできない。いや、そんなことしないが。

 

 何より、刀がない。

 

 そんなことを考えていたときだった。

 

 鼻先を、鉄臭い匂いがかすめた。

 

「……血か?」

 

 足を止める。

 

 道の先は雑木林になっていた。草の間を覗くと、黒いものが見える。

 

 近づくにつれ、それが人間だと分かった。

 

 木にもたれるように倒れた男。黒い着物は血で濡れ、胸元には深い傷がある。顔色は悪く、息をしている気配もない。

 

 恐る恐る脈を取ってみる。

 

 ……動かない。

 

「既に死んでいる、か。ふむ」

 

 死体だ。

 

 さっきまでゲームや漫画の話だった世界で、本物の死体を見つけてしまった。

 ……なのに、意外と冷静だ。死体なんて見た日には一週間は引きずる自信があったというのに。これも雅になった影響か?

 

 それに、この服。

 

 黒い着物。

 

「死覇装、という奴か」

 

 どうしてこんな場所で死んでいるのか。分からない。周囲を見回しても、襲った相手らしい姿はない。

 

 俺はしばらく、その場に立っていた。

 

 やがて、男の手元に目が留まる。

 

 草の上に、一振りの刀が落ちていた。

 

 鞘に収まった、ごく普通に見える日本刀だ。

 

 ……刀。

 

 そういえば、今の俺は丸腰だったな。

 

 死体から物を持っていくのは気が引けるが、この先誰に襲われるかも分からない。相手が死神や虚だったら、素手でどうにかできる保証もない。

 

 俺は男の前に膝をつき、静かに頭を下げた。

 

 そして、男の傍らに落ちていた刀を拾い上げた。

 

 柄に手をかけ、ゆっくりと鞘から引き抜いてみる。

 

 すらりと姿を現した刀身が、木漏れ日を受けて鈍く光った。

 

 ふむ。刃こぼれはない。錆も見当たらない。刀の良し悪しなんて分からないが、少なくとも使い物にならないことはなさそうだ。

 

 ……ん? そういえば、斬魄刀って錆びるのか? 折れてはいた気がするが?

 

 いや、そもそも普通の鉄でできているのかすら知らないが。死神の刀だし、何か特殊な素材だったりするんだろうか。

 

 まあいい。今は使えればそれで十分だ。

 

「申し訳ない。貰い受ける」




行の間ってどんくらい空けるのが正解なの???一行?詰めるべき?わからん……

評価、感想いただけたら嬉しいです!!!(乞食)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。