ドラクエの世界に転生したらスライムだったけど世界を救う 作:雅2
溶け合う肌の温もりに
罪悪感のひとかけら
飲み込んで
気付かない振りしてるのは
寂しさ故の
私の弱さ
◇◆◇◆◇◆
「私のお兄ちゃんに、なってくれませんか?」
その声はか細く、けれど懇願するような悲痛を帯びていた。
「私の両親は、行方不明になったんです。もうずっと前に。だから、私ずっと、ずっと寂しくて、スラリンさんみたいなお兄ちゃんが居てくれたらって、思っていたんです……」
追い詰められて、今にも崩れ落ちそうな危うさを孕んだ声。だから、俺は――、
「良いよ。今日から君の、ルビーのお兄ちゃんになろう」
そう答えた。
「じゃ、じゃあ、本当の妹みたいに、砕けた話し方をしても……良い、ですか……?」
ルビーはこちらを伺うように、上目遣いでもじもじとしていた。
「ああ、もちろん」
「えへへ、お兄ちゃん♪」
「何だい」
「うふふ、お兄ちゃんだ」
ルビーはふにふにと体をくっ付けてきた。
今までの固さのある話し方や控えめな態度は、もしかしたら遠慮があったのかもしれない。
ドラクエ6の主人公とターニアを思い出す。あんな風な関係になれたら良いな。
だが、俺とルビーの関係は、思い描いていたものとは少し異なる方向に進んでいった。
♢
ある夜の事だった。
「お兄ちゃんは、強くなりたいから剣の練習をしているの?」
「ああ、そうだよ」
「でも、強くなりたいなら、剣術だけじゃなくて、体術の訓練もした方が良いんじゃないかな?」
「この体で、体術?」
スライム流格闘術とかあるんだろうか?
「ね、お兄ちゃん。私とお相撲、しよ♡」
相撲か。この世界にも相撲があるんだな。そういえばドラクエ10にあったか。正式名称は違うけど。
「ねえ、しようよ♡」
妙に色気を感じる言い方に、俺はドキドキしてしまった。何を考えてるんだ俺は。単に相撲を取るだけだというのに。
「よし、やろう」
俺はルビーと向かい合った。
「はっけよいのこった♡」
開始の合図と同時に突っ込む。ぷるぷるとした体がぶつかり合い、波打った。
「あっ♡ お兄ちゃん、もっと来て♡」
「ルビー、変な声を出さないでくれ」
「変な声なんて出してないもん♡ お兄ちゃんのえっち♡」
ふにょん むにむに ぷよん
「ふふ、私の勝ちだね♡ お兄ちゃん、まだできるよね♡ もう一回しよ♡」
そうだ、スライムベスはスライムより強いのだ。だが、俺は鍛えてるのに。もしかしたらルビーも鍛錬しているのかもしれない。
再びの取り組み、俺は突進の勢いをいなされて、土俵外に出てしまった。
その後も、何度やってもルビーに勝てなかった。
「お兄ちゃん、もう降参? 私はまだ満足してないよ♡ ほら、お兄ちゃん頑張って♡」
艶めいた声が響く。
ルビーはいくつもの巧みな技を持っていた。大人しい、清楚な少女の顔をしてテクニシャンだったのだ。
この日、俺は足腰?が立たなくなるまでルビーに貪られる事となった。
♢
剣の練習に使っている場所に、見覚えのある花が咲いていた。
「この花って毒消し草?」
知られざる伝説ロト2の挿絵で見た事がある。気になってベホマンに尋ねてみた。
「ソウダ。悪い物を食べた時は、これを食べると良い」
食中毒にも効くんだな。
「ふっ!」
「はっ!」
カンカンと、剣の鞘と棒を打ち合わせる音が響く。
ここ最近は、ベホマンとも互角に近いくらいに打ち合えるようになって来た。ベホマンが手加減をしている可能性はあるけれど。
「ふ~ん、ただのスライムの割に、結構やるじゃない」
マリンスライムがあらわれた。
「ベホマンの知り合い?」
「トモダチのマリリンだ」
「アンタが、ルビーちゃんが拾ったっていうスライムね。アタシも相手してあげようか?」
そう言って、貝殻の先でツンツンと突いてきた。
「それじゃ、軽く手合せしようか」
マリリンは硬かった。殻でビシッと殴られると、とても痛い。なので、近付かず鞘に納めたままの剣を目一杯伸ばし、突き技で攻撃した。
「ちょっと! アタシの攻撃が届かないじゃない! えいっ、冷たい息!」
「うわあっ! 寒いっ!」
特技で攻撃された。レベル1だったら死んでたぞ。
「なあ、ベホマンとマリリンは一緒に相撲を取ったりするのか?」
休憩中、そんな事を尋ねてみた。
「な、何言ってんのよ! 変態!!」
悪気は無かったのだが、マリリンは怒って帰ってしまった。
「イキナリそんな事聞くなんて、どうしたんだ?」
珍しくベホマンも困惑している。
どうしたんだ、か。
ルビーの弾ける肉の感触が脳裏にこびりついて離れないんだ、何て言えない。
♢
「ねえ、お兄ちゃん。今日も、するでしょ♡」
ねっとりとした、甘い空気が漂っている気がした。
「するって、何を?」
俺は無意識に、ごくりと唾を飲み込んでいた。
「ふふっ♡ 分かってる癖に。お・す・も・う♡」
清廉な少女の声。だが、淫靡な抑揚を伴って発せられたその声。
どきりと心臓が跳ね、体が疼きだす。昨夜、あれほどしたというのに。
もしかしたら、ルビーはスライムベスではなく、俺という雄の肉を求める淫魔なのではないか?
そんな妄想が頭をよぎる。
ルビーが悪いのだ。ぷるりんとした、艶めかしい蠱惑的な肢体で、俺を誘惑するから。そのせいで、ルビーの柔らかい雌肉の感触が、頭から離れなくなってしまったのだ。
嗚呼、肉と肉のぶつかり合いを求めているのは、俺も同じだ。
これじゃドラクエじゃなくてエロゲーだよ。
「はっけよいのこった♡」
その言葉を合図に、今宵も淫らな取り組みが幕を開けた。開けてしまった。
ぷにょん、むにむに
ぶつかり合い、絡み合う肉と肉。
傍目には、スライムが仲良く相撲をしている微笑ましい光景だ。何らやましい事は無い。やらしい事でもない。
全年齢で何ら問題無いが、念のためR-15にしておく。その程度の事のはずだ。
例え互いの情欲が、ぶつかり合っているのだとしても。
汗でぬめる互いの肉を押し付け合い、ぬるぬると肌を擦り合わせる。
その最中、ルビーと目が合う。その目はじっとりと潤んでいた。情欲の為ではない。これは――。
――俺は何を見ていたのだろう。
はたと気付く。俺の目は曇っていた。ルビーの本当の気持ちに、気付く事が出来ずにいた。
ルビーは肉体的接触で寂しさを埋めようとしているのだ。
すまなかったルビー。兄になると誓ったのに。
俺はルビーのぶちかましをいなした。
「お兄ちゃん?」
「来い、ルビー。本当の相撲を教えてやる」
肉欲に惑わされるな。
欲望を振り切った俺は、もう負けない。
「あっ♡ 凄いよお兄ちゃん♡ 私もうこんなに土俵際♡」
「土俵際の粘りを見せてみろ!」
こうして、俺は煩悩に打ち勝って、ルビーをヒイヒイ言わせることが出来たのだ。
「ルビー、俺はお前を置いていなくなったりしない。だから、安心しろ。もう自分の体を使って寂しさを埋めるような真似はよせ」
「お兄ちゃん……。うん、でも、またしようね。お相撲♡」
『スラリンはレベルが上がった。スクルトを覚えた』