妖夢の超人伝説-TIGA-   作:瞳琥珀

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前回から大分間が空いてしまいました。頭の中でできてるとはいっても、実際に文章におこすのは難しいですね。


第零話中編「封じられた大樹と封じる刀」

西行妖。冥界にある桜の大樹。妖夢はその開花を見たことが無いが、非常に妖しく、美しい花が咲き乱れるという。その代わり、一旦開花すると周りの生物の精気を吸収し、八雲紫ですら手がつけられない化け物になると言い伝えられている。よって、遥か昔に八雲紫と妖夢の父;魂魄妖忌が西行寺幽々子の亡骸と妖刀「叢雲」によって封印した。幽々子の亡骸と西行妖の根を貫くように妖刀「叢雲」が刺さっており、どちらかの封印が解かれてしまうと、西行妖が復活してしまうとされる。実は、妖夢は父から西行妖の守護者の役目も継承していたりする。

 

 

再び戦場と化した西行妖の周囲に視点を移そう。現在幽々子と紫の

式神の八雲藍が目の前の化け物、いやアラガミ達に対して苦戦を強いられている。幽々子の足下には使い捨てられた術符が散らばり、今も本人は術符を消費し続けている。藍の足元も同様に倒された式神のボロボロになった符で足元が覆い尽くされ、橙も含める現在戦闘中の式神も着々と数を減らし続けている。にも関わらず、アラガミ勢は一匹たりとも減っていない。これが駆けつけた妖夢とアサギが見た戦況だ。寧ろ惨状と言うべきかも知れない。

 

「幽々子様!これは……。」

 

程無くして、紫とエリックが到着し、妖夢達と同様に戦況を確認した。藍と幽々子は、妖夢、紫、エリックに前を任せ、一旦後退する。

 

早速アラガミ討伐のエキスパートの様なことをを自称するエリックは、アラガミ勢の戦力確認を始める。

 

「ふむ…。僕の華麗な分析によると、敵はオウガテイル10体、コンゴウ3体、シユウ4体か…。オードブルばかりでメインディッシュがないとは…退屈な戦いになりそうだね…。」

 

エリックは一通りアラガミ勢を見回し、確認が終わると自らの武器の大砲をアラガミ勢に向かって構える。

 

「そんな通ぶった解析はいいですが、私たちで勝てそうなんですか?」

 

「うーん、正直厳しいね。リンドウさんやサクヤさん、ソーマが居れば問題なく勝てるけど、まともに戦えるのが僕だけだからね。」

 

そう言いながらエリックはその大砲から弾を発射する。先程までと違い、アラガミ勢の中に撃ち込められた弾は前方に陣取っていた比較的小さいアラガミを一気に絶命させ、後方のアラガミ達にも甚大な傷害を与えたと見れる。その光景に妖夢を含めた他の面々は見とれるばかりである。

 

「凄い…。って、紫様や藍様、幽々子様や私の剣でもあの化け物は倒せないっていうんですか?妖怪や人間によく知れた結構な実力者ばかりですよ?」

 

エリックは妖夢の話の最中にも、アラガミ達に弾の雨を降らせており、弾が一旦切れて装填を行うようだった。しかし、大砲に弾を込めるのではなく、エリック自信が何か緑色の液体が入っている小さなボトルの中身を一気に飲み干し、直ぐに砲撃を再開させた。今の動作が装填に当たるとしか考えられないが妖夢とアサギは信じられないというような顔持ちだ。砲撃しながら先程の妖夢の質問にエリックが答える。

 

「あの特徴的な耳の人、藍さんって言うんだっけ…?紫さんの実力は分からないけど、藍さんと幽々子さんはさっきの戦いで掠り傷ひとつつけられてないじゃないか。」

 

「それはそうですが……。」

 

「ましてや君のそのちゃっちな刀ではまず無理だよ。それでアラガミを倒せるならば、僕らゴッドイーターはいらない。」

 

「……随分な言いようですね。この刀は妖怪が鍛えた刀で、この刀に斬れない物など、無いのですよ!」

 

「……じゃあ、行ってみるかい?無駄骨だろうけど。」

 

「そんなことはありません!アサギ、行きますよ!」

 

「え?おい、ちょっと待てよ、妖夢!」

 

アサギの制止も聞かず、妖夢は駆け出した。風を切る勢いで進む妖夢の前に細身の人型アラガミが立ちはだかる。妖夢は勢いのままアラガミの懐に突っ込み、楼観剣を抜刀すると、胴体を中心に残撃を浴びせ始めた。妖夢のスペルカード技、人鬼「未来永劫斬」である。何撃か浴びせて妖夢は後退する。その時妖夢は気づいた、楼観剣が激しい刃こぼれを起こしていることに。切っ先から根本に至るまで刃がボロボロになっている。妖夢の知る限りではめったに刃こぼれは起きたことはない。まして、こんな初っぱなからは想定外だ。

 

「…おい、ヤバイんじゃねえか?」

 

妖夢はアサギの問いにも答えられないほど、我ここに非ずといった表情だった。やがて彼女は力なく地面にへたり込む。

 

「…だから言っただろう?恐ろしさが分かったのなら、さっさと後ろに下がっていたまえ。」

 

その言葉を聞くと、妖夢は楼観剣を鞘に戻し、とぼとぼと後ろへ歩いていく。後を追うのはアサギともうひとつの霊魂のみであった。

 

 

「…まあ、楼観剣にも歯が立たない敵がいるってことだよ。アラガミとか言うのはエリックさんに任せて、俺達は異変の対策についてでも話そうぜ?」

 

励ましの意味を込めたアサギの言葉は、しかし妖夢には届いていないようだった。妖夢は顔を下に向け、戦場を背に、相変わらず意気消沈として歩いている。

 

「ほ、ほら、エリックさん、ゴッドイーターなら倒せるみたいなこと言ってたじゃないか。つまり、妖夢もゴッドイーターになればいいんだ!…どうやってなるのかは知らんけど。」

 

尚も妖夢の沈黙は続いた。しかし、しばらくしてようやく口を開く。

 

「…アサギならどう思います?野球なんかで今まで自分が最前線で活躍していたのに、突然戦力外通告されたら…。」

 

「それは…、がっかりするな。また辛くて、地味な練習や訓練の日々に戻るのかと…。」

 

「そうですか。貴方にはその程度のことなんですね。私には"お前は生きている価値はない。死ね。"って言われるのと同義なんですが…。」

 

「…おい、まさか自殺は止せよ。幽々子様がどんなに悲しまれる

か…。」

 

「…幽々子様にとって、戦えない私なんて…、無価値ですよ…。」

 

そこでアサギは気づく。妖夢が段々涙声になり、彼女の両頬には涙の川が流れていることに。妖夢はやがて、砂利の地面に膝をついた。

 

「…妖夢が戦いの駒としてしか、評価されていないとは思わないぞ。妖夢の作ったご飯はいつも幽々子様は高評価をしてくださるし、その他の家事だって…。」

 

「そんなこと、今は関係ないですよ。今はアラガミと戦えるかが大事です。私はこれから、幽々子様に対してなにもできず、死ぬのを待つだけでしょう…。役立たず以外の何者でもありません。」

 

「そんなことはない!何か出来ることがあるはずだ!」

 

「じゃあ、何ができるんですか!具体的に言ってくださいよ!」

 

「それは…。」

 

「絵に描いた餅のようなことを言われても慰めにも…。…え?」

 

そこで妖夢は急に頭を抱えて蹲る。

 

「おい、どうした!?妖夢!」

 

「誰ですか貴女は…!?そんなこと…、出来るわけ…!」

 

どうやら妖夢の頭の中で何かが囁いているようだ。アサギは妖夢を助けようと、彼女の頭の中にダイブしようとするが、拒絶されて出来ない。しばらく少女は頭の中の誰かと議論していたが、やがて沈黙し、ゆっくりと立ち上がる。

 

「…だ、大丈夫か…?妖夢…?」

 

「…そうですよね。あの剣を使うしかないですよね…。」

 

そう言って妖夢は立ち上がり、来た道を戻っていく。アサギも後を追うが、少女は途中で進路を変え、西行妖の裏側に回り込む。

 

 

西行妖の幽々子様達から見えないアングルのところには一本の日本刀が西行妖の、地面からはみ出た根に刺さっていた。その刀からは肉眼で十分確認できる、黒く禍々しいオーラが放たれている。そう、これこそ西行妖を封じる妖刀「叢雲」だ。妖夢は、自身が生涯触れることの無いと思っていた、その刀の柄を握る。その刹那、柄を握った少女の手に柄が纏う黒いオーラが包み込むように絡み付いた。そして、オーラで覆われた部位全体に、今まで体験したことのないような激痛が走る。

 

「あああああっっっ!!」

 

「…!妖夢!何をやってるんだ!」

 

「これが…あれば…アラガミに…対抗…出来ます…!幽々子様を…守れ…ます…!」

 

「いやいや!これでアラガミ倒せるか分からねえし、それを誰にも抜かせねえのが妖夢の仕事の一つだろ!?自分から破ってどうするんだよ!?」

 

「どうせ…みんな死ぬなら…変わりませんよ…。私の…足りない頭では…これが…最善策なんです…!これ以外に…幽々子様を…守れる…方法が…あるんですか…!?なら…言ってくださいよ…!今すぐ…!」

 

痛みに顔が歪み、涙が目だけでは無く鼻からも流れている妖夢の問いに、アサギは答えることが出来なかった。妖夢は痛みの中、剣を抜く手に力を込める。長い間誰も手を触れてさえもいないだけあり、中々剣は動かない。更に激痛も、剣を抜くという行為の難易度を上げていた。しばらくすると、慣れたということか、痛みが緩和されてきた。それを感じた妖夢は一層手に力を込める。次第に剣と根の接着面がぐらぐらしてきたのを少女は感じ、一気に上へ引き上げる。

 

ーー遂に妖刀「叢雲」の刀身が姿を現した。柄や鐔の部分だけでもオーラで黒くなっていたが、長刀らしき刀身は黒がもっと濃く、刀身の銀色どころか光沢すら満足に見えない。妖夢は刀身の禍々しさと闇の気迫に圧倒されていたが、それが治まると近くに落ちていた鞘に納刀し、戦場へ向かう。

 

 

少し時間を戻すと、戦場ではほぼエリックの活躍によって、戦闘は終了していた。彼の目の前には、アラガミだったものが塁々と積まれている。後ろで休息をとっていた藍や幽々子は、その光景に圧倒されるばかりだった。

 

「凄い…!」

 

「凄いじゃない、若いの!まあ私も十分若いけれどね。」

 

そう言って、紫はエリックの肩を叩く。彼の武器の銃身は戦闘終了直後にしては硝煙が上がっておらず、異様とも言える。

 

「まあ、これが華麗なるゴッドイーターの使命ですから。これからも是非宜しくお願いしますよ。」

 

エリックは紫、藍、幽々子と順に握手を交わしていった。

 

「あれ?銀髪の女の子は?」

 

「え?妖夢ったら何処に言ったのかしら?アサギも居ないし…。」

 

幽々子をはじめ、皆は妖夢を探して辺りを見回す。すると、西行妖が妖しい光を放ち始める。

 

「何だあれ?樹が、光っている…?」

 

「まさか、西行妖が…。幽々子!」

 

幽々子の方を見た紫は気づく。彼女の身体全体から光の粒子が放出していくのに。そして気のせいか、彼女の姿が段々不鮮明になってくる。

 

「あれ…?紫…、私…、消えるの…?」

 

「幽々子!しっかりして!幽々子…!」

 

紫が幽々子のもとにいこうとしたその刹那。

 

 

向かって左側、つまり先程倒したアラガミ達の死骸が塁々とする所から唸り声が聞こえてきた。それは先程のアラガミ達と明らかに違う声で、皆は怯えてそちらに振り向く。

二本角の獣がそこにはいた。ほぼ白で彩られていた身体のそれは、二足歩行になった蜥蜴の様。般若のような顔で四人を睨み、その右手は炎を纏う。

 

「何あれ…?」

 

紫がエリックに質問するが、彼の顔からは先程の余裕が消えていた。彼も見たことがない種類らしい。とりあえず"華麗に討伐"するそうだが、声が震えていて、頼りない。新たな獣、というかアラガミは4人を威圧するようにもう一度咆哮する。エリックは銃口を向けて弾を発射するが、動揺しているからか顔などの急所によく当たらない。その弾を物ともしないという様子のアラガミは、炎の拳を持ち上げた。炎が勢いを増す中、皆が此方に拳を降り下ろすだろうと思い、屈み込んだ。その刹那。

 

「ちょっと、そこの化物!この妖夢が相手です!」」

 

突然の少女らしき大声に、アラガミは振り向く。四人も見ると、そこには先程から探していた妖夢が、黒ずんだ刀を構えてアラガミへ向かっていく姿があった。

 

「妖夢ちゃん、ダメだ!君の手に負える相手じゃない!」

 

「あの刀はもしかして…。」

 

アラガミの炎の拳が少女目掛けて振り下ろされる。少女はそれを後ろに飛んでかわす。拳を振り下ろした地点は、"炎のクレーター"とも言うべき惨状になった。それに一瞬おののきつつも、少女はすぐに相手との距離を積め、刀を上に振り上げる。本当の刀身から、さらに長い緑の光の刃が伸びる。いつもと違って刀のオーラで若干黒くなっているが、少女は自らの剣技の1つ、断命剣「冥想斬」を放とうとしている。それに対し、アラガミも右の拳に再び炎を溜め始める。少女の光の刃、アラガミの拳、どちらが先か…。

 

結果は、少女が勝った。光の刃はその長い刀身でアラガミの大きな身体を一刀両断にした。顔から尻尾にかけて綺麗に切断され、拳に炎が灯ったままのアラガミは大きな音を響かせて倒れる。

 

「やった…のか?」

 

「はあ、はあ…。」

 

少女の息はまだ荒い。刀からの痛みが完全に引いていないことに加え、先程の戦いが終わったことに頭では分かっていても、身体が追い付いていないのだろう。そんな妖夢に、紫が足早に近づいてくる。

 

「はあ…、紫様…、やりましたよ…。あの化物をこの手で…。」

少女が物も言い終わらぬうちに、紫は妖夢の頬目掛けてビンタを放つ。突然の、予想外の仕打ちに、妖夢は困惑する。

 

「貴女、自分が何をしたか分かってる!?その刀は、決して抜いてはいけないものなのよ!?守護者でもあった貴女が、何をやってるの!?」

 

「で、でも!幽々子様達が助かるにはこれを使うしかなかったんです!」

 

「あら、そう。じゃあ、貴女がそれを抜いたことで、幽々子がどうなったか分かる!?」

 

そう言われて妖夢は周囲を見回すが、幽々子の姿が見当たらない。焦って周囲を走り回り、アサギにも頼んで探したが、見つからない。紫から、自分が剣を抜いて西行妖の封印を解いたことで、幽々子が消えたという風に聞かされると、妖夢は発狂して、その場に膝を落とした。

 

「そんな…。私の…せいで…、幽々子様が…。私は…、幽々子を…守りたかった…だけなのに…。」

 

妖夢の膝には涙が次々と落ち、膝を伝って地面に染み込む。

 

「妖夢…。紫様!事実だからってその言い方はあんまりです!」

 

「…幽々子と私は、それこそ彼女の生前からの付き合いなのよ。彼女の最期の願いで、妖夢の祖父の妖忌と共に作った封印を、その孫が破ったのよ…。怒らない方がおかしいわ…。」

 

「ですが…!」

 

「それに、余裕があったら、こんな大人げない怒り方はしなかったと思う。見て。西行妖を。あれは私たちが感傷に浸るのを、待ってはくれないみたいよ。」

 

妖夢とアサギは西行妖を見る。西行妖は紫色の妖しい光を放ち、その樹に伸びるかのように、幾つかの川のように流動する帯が周りを取り囲む。

 

 

その時、その樹の根元に座る一人の女性が見えた。彼女は空色の衣を身に纏い、髪は桃色。扇子に隠れて顔が見えないが、妖夢やアサギは直感する。彼女は幽々子ではないかと。

 

「ゆっ、幽々子様あああ!」

 

妖夢は涙も拭かずにその女性の元に駆けていく。アサギもついていくが、女性の扇子をずらした時の顔を見て、先程の予想が一層確信へと変わっていく。

妖夢は西行妖の根元までたどり着き、根にしがみついて登り始める。途中登りにくいところもあったが、何とか女性の元にたどり着く。

 

「幽々子様…、ごめんなさい…。でもよかった…。幽々子様が無事で…。」

 

すると、その女性は、妖夢に一言言い放った。それは二人には想像さえしていないものだった。

 

「……あなた、誰?」

 




消えたはずの幽々子にであった妖夢。しかし、幽々子は妖夢のことなど知らないという。そして、彼女と復活した西行妖による攻撃が妖夢達を襲う。その時、光の巨人の姿が…。次回もお楽しみに!

さて、前回の倍の文字数になりましたが、まだ第零話が終わりません…。しかも今回はウルトラマンも出てきませんでした…。でも大丈夫。次回には出る予定ですし、次回で第零話は終わり、本格的に物語が動き始めますから!

では改めて、次回もお楽しみに!
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