プロローグ・漆黒の災い後
獣域ハウンドの頭を剣でかち割って殺し、周りのウルブズの攻撃を受け流しながら斬る。
黒い血を噴き出しながら死んだ獣域共の魂は左手の甲に埋め込まれた陽光色の目に吸い込まれ、俺の力へと変わる。
「クソ…死なねぇ身体になったとはいえこいつらの攻撃が痛てぇな」
俺の国はクソだ。
赤月と黒日の王政…このテイワットの全てを漆黒に染めて巻き込んだ災いを引き起こした元凶といえる。
俺はカーンルイアで天理と七神たちと一緒に漆黒の勢力を倒したが、それでも犠牲者は0とまではいかなかった。
「スルトロッチの野郎め…七神の半分を手に掛けやがって!」
『カスラ、きみも不死の呪いで死なないとはいえ無理しちゃいけない!』
手の甲から相棒が心配しながら、アビスを浄化して力へ変えてサポートに徹している。
「分かってる!だがなトゥオネタル、アビス共は許しちゃくれないらしいぜ」
天理たちがカーンルイアとの戦いで決着したものの、アビスの侵攻は止まらない。
レインドットに生み出された獣域バウンドとウルブズっていう獣の群れが、次々と湧いて襲ってくる。
『後ろにハウンド!彼女を狙ってる!』
「おう!」
爪を振りかぶるデカいのを避け、一瞬で2回剣を振って殺し、背後に横たわっている
彼女の傍まで近付き、群れてくる小さい獣たちを素早く処理して守りに徹する。
「切りがねぇな…」
『いつでも
「良いタイミングだ!これで一気に…」
方を付けようとした時、無限に湧く獣共が雷光によって消し炭になった。
一瞬の出来事に思わず俺は硬直し、何とも格好つかない構えをする形になる。
「あ"!?」
『フフ、心強い味方が来てくれたようだね』
そこには紫電の刀を片手に、瀕死の雷神と瓜二つの女が慌てた表情で駆けつける。
「眞!」
傷だらけの容態を確認し、顔色悪くして今にも泣きそうな顔で雷神の名前を呼ぶ。
壊れ物を触るように彼女を抱き寄せ、雷神の妹は顔を上げて俺を見た。
念の為、誤解しないよう彼女を助けた事実を告げる。
「そいつの応急処置はしておいた。死ぬことはないが、ちゃんと治療すれば問題ないぞ」
「貴方が?眞を助けてくれて、ありがとうございます」
「止してくれ。俺は一人のカーンルイア人として罪を償っているだけだ」
『素直じゃないね』
(うるせぇ)
脳内でネタルに茶化されるが、どんな理由であれ、俺もテイワット全てに被害を出した国の人間だから、感謝されるような事じゃない。
今の俺は顰めっ面になっている自信があるぜ。
「それでも、私の姉を助けてくれた事実です。宜しければ名前を教えてもらっても?私は雷電影です」
「あー…カスラだ。ただのカーンルイアの剣士に過ぎん」
「ただの剣士…?先ほど見た実力でそれはないのでは?」
「ちょいとズルする形で得た力だ。実際はそこらの剣士と変わらねぇ」
スルトロッチやスラーインに比べれば、そこらの一人の剣士に過ぎず、ナタで手に入れた龍の遺産でズルしているだけだ。
この力を持ってしても強いあいつらは、如何に人間やめているのか実感する。
「それより、国に帰った方が良いぜ。あんたんとこの国もアビスに襲われている筈だ」
俺の言葉に影はハッとした表情になって、そのまま彼女を横抱きにして立ち上がる。
そのまま行っても神だから大丈夫だろうが、アビスが最悪な事態を起こす可能性を考え、俺は影に提案する。
「道中はアビスだらけになるだろうよ。そこまで剣となってあんたらを護衛するが…どうだ?」
「よろしいんですか?なら、お願いします」
「おい…ちったぁ躊躇って疑わねぇのかよ」
「貴方は眞を救って私が来るまで守ってくれました。その後の護衛までしてくれる貴方を疑う必要がありますか?」
「それでも疑えよ」
神ってのは強大な力を持っている故の自信があるからか、警戒心がないのか?
まあ、今の俺じゃあ勝てる訳ないのも事実だし、そういう意味もあるだろうよ。
さっさと、こんなクソみたいな所を離れる為に、彼女の後を追いかける。
『わたしも彼女と同じ立場だったら、きみを疑わないね』
(お前もか!)
俺って実は割と舐められているのか?と頭を掻いて思った。
カスラは少し老け顔の銀髪碧眼の青年。