雷神である雷電眞を救った俺は、彼女の妹の影の護衛という形で稲妻へ向かった。
稲妻までの道中は、アビスの魔物が未だに蔓延っており、被害でめちゃくちゃだ。
「酷えもんっっっだな!」
『カスラ…』
これが全て自国のせいで起きた悲劇と考えるだけで、俺は無性に苛立ってアビスの魔物共に当たる。
そんな様子に、トゥオネタルの悲しそうに名前を呼ぶ声が、脳内から聞こえてくる。
カーンルイアの内情を俺が教えたのもあって、ある程度は知ってるからな。
「気が済みましたか?」
「少しな」
「なら、構いません」
急ぎつつも姉を運びながら俺の戦いを観察し、アドバイスしたりと随分と器用な事をしているが、そこは流石は雷神の片割れといえる。
護衛がてらに礼としてアビスの魔物を利用し、戦いの師事をして貰っている。
『流石は稲妻の武神と呼ばれるだけあって、アドバイスも的確だね』
(ああ、おかげで普段の癖や立ち回りは、かなり改善された)
トゥオネタルの言う通り、彼女からのアドバイスは学ぶ事が多く、俺にとってありがたいものだ。
カーンルイアでもスルトロッチの相手をされ、一方的にボコられるだけでアドバイスがないなんて当たり前だった。
稀に通りすがりのスラーインがアドバイスしてくれるが、あいつはあいつで忙しい奴だったから時間なんて無いもんだ。
こうして個人で誰かに本格的なアドバイスなど教えられる機会は初めてな事もあって有意義な時間といえる。
「そろそろ着きますよ」
「あれが稲妻か」
それから護衛を続けると、稲妻へ到着するようだ。
肉眼で確認でき、璃月の領土から僅かに見える海に囲まれた孤島だったのが分かり、アビスの気配が孤島に集中する形で大きく感じ取れる。
『海だ』
「ああ…どうやって稲妻まで行くんだ?」
一つ問題がある。それは、ここから行くには海を渡らなければならないことだ。
俺は稲妻へ行く方法を尋ねると、彼女は不思議そうな顔で首を傾げて答える。
「護衛はここで終わりですよ?」
「はぁ!?いや、だって俺は稲妻まで護衛するって…」
「これ以上、ここまでして貰いました。何より、私は海まで一気に雷元素で移動します」
「俺は…ねぇな」
その言葉の奥には海を渡れる術はあるのかと言われているような気がするな…。
海を渡る方法は船しかなく、どうやら本気で俺の護衛はここまでのようだ。
雷元素を使って海を跳び越えるなんて規格外にも程があるだろ。
「眞を助けてくれた。それだけでも充分な程、貴方に返しきれない恩です」
「だから後は大丈夫…ねぇ。まだ稲妻んとこの民たちにもアビスの魔物とかで戦っている奴らがいるだろ」
「稲妻の民と友たちは簡単に負ける程、軟な存在ではありませんから」
片割れを助けれた理由なのか、何処か心の中でようやく余裕を感じ、微笑む表情まで見せた。
確かに、この雷神姉妹が統べる侍共の実力も考えれば、簡単にくたばる訳がないのも分かる。
「だがな、相手はアビスだ。いくら心身が強かろうと相手は災害そのもので、油断ならねぇ」
「些かそれは慢心ではないか…と?」
「そうだ」
俺はカーンルイアで見てきたアビスの恐ろしさを知っている。
アビス共の最大の強みは、人の負の感情を増幅させ、欲を全面的に出す。
『あのカーンルイアの5人と同じように、稲妻にもないとは言い切れないもの』
(ああ、レリルを除いて腐れ外道共とスルトロッチがその例だ)
トゥオネタルとダインの3人でアビスの誘惑に負けた5人の内の4人の所業を見た。
だからこそ、彼女の民に対する想いと自信を砕くような想像を越える最悪な可能性を秘めている。
「…貴方の言うことも一理ありますね。すみませんが、もう少しだけお願いします」
「おう、きっちり護衛させてもらうぜ」
少し考えるように目を閉じ、俺の言葉を素直に受け入れ、このまま護衛は続行することにした。
「はぁ…眞が助かったせいだからでしょうか?私は思ったより何処かアビスを甘く見ていたのかも知れません」
「身内を救えて余裕が出来りゃあ、どんな奴でもそんな気持ちになる。俺もあんたもな」
「そうでしょうか?」
「そういうもんだ。さて、さっさと稲妻に戻って民たちに安心してやってくれ。俺も何とか頑張って稲妻に行くからよ」
「はい、到着して解決しましたら、稲妻の民たち全員で貴方をおもてなしをします」
「いや、別にそこまでしなくて良いんだが…」
自力で稲妻まで行くと言えば、こいつは恩返しとしてもてなすと言ってから一礼し、姉を抱いたまま稲妻まで一気に雷元素で
そこまでされるつもりはねぇと言ってるのに、人の話くらい最後は聞けよ…
『それで、どうやって稲妻まで行くつもり?まさか泳いでいくなんて馬鹿な事を言わない?』
「んなわけねぇだろ!?はぁ…あんな事を言ったが、どうやって稲妻まで行けば良いんだか…船はねぇし近くの璃月港…もアビスとかでそれどころじゃねぇよなぁ」
『フフ、稲妻まで行く方法なら一つある』
「なに!?そりゃ本当か!?」
そうだった。ここにはナタの遺産に宿る頼れる相棒がいるのだ。
こいつの事だからきっと最短かつ最適な方法で海を渡れる術がきっと…
『空を飛んで行けばいい』
「お前が馬鹿な事を言ってんじゃねぇか!!!」
聞いた俺が馬鹿だった。
こいつは思ったより俺と同じくらいの脳しかねぇだろと思った。
『フン!!』
「いてぇ!!」
心の中を読んだからか、一瞬だけ烏の姿で顕現し、俺の頭を突いて怒りながら戻って言った。
『失礼にも程がある。わたしの力を知ってるでしょ?』
「ああ、だけど何で空を飛ぶ発想に至るんだよ?」
『
「まあ、使ったのは二度くらいしか無かったが…何となく纏う感覚は分かる」
『なら、話は早い。わたしの力で纏うんじゃなくて今度は翼の形にしてもらう』
「…そう言う事か」
全然ちゃんと考え行く方法を教える彼女に、なんか改めて俺が馬鹿だと分からされた。
なんだろうな…とても泣けるぜ。
「んじゃあ、やってみるか」
カーンルイアで貯めておいた力が何時でも使える状態なのもあり、幸いにもすぐにやれる。
鳥の翼をイメージして形を作ってみると、背中に無数の目が生えた一対の赤い翼ができた。
「あん?なんか見たことある翼だな」
見覚えのある翼に、何処か既視感を抱くが、稲妻の事態もあり、悠長としてられる時間はない。
今は一刻も速く稲妻の元まで行かなきゃならねぇ。
『飛び方は分かる?』
「言うまでもねぇ!」
人生で空を飛ぶ事のは初めてなのもあって、最高に気分が上がっている。
赤い翼を広げ、一気に空へ羽ばたいて稲妻へと俺は向かった。
無数の目から生える赤い翼…なんやろなぁ