今書いてある後書きは大丈夫な判定なのかな…?難しいものだ…。
影は眞を抱え、稲妻で合流することを約束し、カスラと別れて一足先に稲妻城へ戻った。
直ぐに彼女は瀕死の姉を夢食い獏の妖怪たちに預けてもらい、多くの魔物を切りに行くが──
「彼の言う通り、アビスは…私達の想像を超える危険な存在」
「呑まれてしまったのですね…千代…」
目の前にはアビスに呑まれ、正気を失ってしまった鬼族の親友…御輿千代の姿があった。
獏の力を持ってもしても…彼女の悪夢を治せなかった。
「影…貴方は……私が助ける…!!」
斬らなければ、こちらが殺られる。
悪夢に囚われながらも彼女は勘違いとはいえ、勘違いしたまま影を助けようと殺気を放って刀を抜く。
そんな彼女に影は胸を痛め、せめて私の手で彼女を介錯する為に無想の一太刀を抜く。
「今、貴女を楽にします!!」
影は居合の構えをし、一気に距離を詰めて刀を横へ振る。
すると、千代は上段の構えになって振り下ろし、彼女の刀を受け止めて鍔迫り合いへと入る。
「ふん!」
力は千代の方が上、鍔迫り合いは彼女が勝ち、影は距離を離すと、そのまま突きで距離を詰めて向かう。
刀の腹で彼女の刀を受け流し、そのまま体勢を崩す彼女の頭部に向かって刀を斜めに振り上げる。
「るあ"あ"」
正気を失っていようと、その判断力は変わらず影の攻撃を避ける。
僅かに頬から血が垂れるも、千代は怯むことなく彼女に襲いかかる。
居合の構えで下から振り上げて斬撃を飛ばし、影も雷元素で斬撃を飛ばして相殺した。
「ごめんなさい…貴女を救えなくて…」
こみ上げてくる感情が溢れ、影は自然と涙を零して己の無力感と謝罪を口にし、彼女の攻撃を弾き、その隙を突いて首を狙った。
だが、彼女は刀で影の攻撃を防いで胴体に蹴り飛ばす。
影は蹴られるも、足で踏ん張って耐える。
「なっ!?」
向かってくる彼女に、影は無想の一太刀で千代の刀を絡めるように回し、軌道を逸らして刀を手放して床に突き刺さる。
流石の彼女も大きな隙を晒してしまった。
「これで終わらせ…」
彼女の片腕を切り落とそうと、刀を振り上げる。
その時──
「ぁぁああああ!!?」
大きな声と共に、影と千代から少し離れた場所で轟音が響くと同時に天井が破壊された。
突如とした起きた出来事に、思わず影は振り下ろそうとした腕を止め、千代も新手の敵かとそちらへ向いた。
「痛てぇ…速度を上げすぎて止まらなかったぞ!」
『ダイナミックな着地だね』
(うるせぇ!)
「カスラ!?」
砂埃から姿を現したのは、羽織のような物で左腕を隠した銀髪碧眼のカーンルイア人の剣士。
想像より速く稲妻へ到着して来たことに、彼女は驚いた。
「あ……よ、よう影!悪い!お前んところの城をぶっ壊しちまって…」
「危ない!!」
「あ?…うお!?」
影の姿を見て、カスラは謝罪すると千代が標的を彼の方へ向けて床に刀を抜いて斬りかかる。
カスラは咄嗟に剣を抜いて防ぐも、千代が左手を拳の形にして彼の顔面へ振った。
顔面を諸に受け、骨が砕けて血肉が潰れる生々しい音を上げて殴られた。
「死なねぇよ!!」
「ぐぅ!?」
しかし、怯むことなくカスラは仕返しとばかりに千代の腹を殴り飛ばした。
まさか死なず殴り返されるとは思わなかったようで動揺した。
普通の人間なら鬼族の一撃は、即死は避けられないだろう。
だが、彼は天理から罰として不死の呪いを受けており、死ぬことはない。
ただ単純に死ぬほど痛いだけだが、武者修行で潜り抜けてきた修羅場で何度も受けている彼にとって慣れている。
「無事ですか!?」
「顔面の骨と肉がぐしゃぐしゃだが、問題ねぇ」
『それは問題しかないけど?』
(首が飛ぶよりマシだろ?)
影は思わず心配して彼に駆け寄る。
意識が朧気になるも彼は殴られた顔に触れ、その痛みで意識を保った。
そして殴り飛ばされた千代は、ゆっくりと立ち上がる。
「こいつは?」
「私の友です。悪夢に囚われて正気を失っています」
「そうか…治し方は?」
「夢食い獏の妖怪に悪夢を食べさせれば…ですが…」
『その様子だとアビスの瘴気が相手では治せなかった様子』
「…なるほどな」
目の前の鬼族の女性に、カスラは左手の甲に埋め込まれている陽光色の目の金属を確認する。
少し考えた後、彼は一度だけ深呼吸してから影に声を掛ける。
「あんたは人生で一番運が良いな!ここにはアビスに呑まれたダチを救える奴がいるんだからよ」
「…え?」
トゥオネタルを宿したナタの遺産は、アビスの浄化…分かりやすく言えば吸収した泥水を綺麗な水に変えて放出するスーパーろ過機。
アビスに汚染された土地や血、更には精神すらも浄化してしまう究極の品物。
彼女を苦しめるアビスの瘴気であろうと容易く救える。
「さっさとダチ救ってやらねぇと…」
「なぜ…」
「あん?」
「なぜ…ここまでしてくれるんですか?」
姉を救い、稲妻まで護衛してもらい、更には友を救おうとしてくれる。
いくら償いの為とはいえ、誰かの為に助けようとする彼に、震え気味な声で影は疑問を言った。
「償いの為もあるが、個人的な理由もあってな」
気まずそうな表情と何とも言えないような声で彼は答えた。
「あー…まあ、恥ずかしい事を言うなら…」
「あんたが助けを求める顔をしていたからだ」
「助けを…求める顔…」
その言葉に、影は彼がどういう人間なのか少しだけ理解した。
善性…それも超が付くほどのお人好しの彼に、影は不覚にも引っ込めた筈の感情が溢れ、目から一粒の涙が零れた。
「ハッ、相手は最強の鬼武者か!本当ならまともな時に手合わせしたいもんだが…」
そんな彼女を他所に、彼は一度剣を床に刺して指と手首を軽く解してから刺した剣を抜く。
「あんたを苦しむ悪夢…俺が叩き斬ってやる!!」
ふぅ…とカスラは息を整えてからキリッとした表情で剣を構え、千代に向けてニィっと笑みを剥き出しにし、戦闘を始めた。
カスラ
まあ、英雄なんて柄じゃないから恥ずかしいんだけどな!
トゥオネタル
見なよ。わたしのカスラを…