桜舞う月夜   作:海月流

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一話とは中の人が変わっています
この小説は一話ごとに、二人で交代交代で書いています
二話担当の私は初心者ですが、どうぞよろしくお願いします


桜舞う月夜 二話

100m走の世界選手も真っ青な走りを見せて、どうにかチャイムには間に合った。

息せき切らして、教科書を開きながら嘆息する。

通学路に、しかも真昼間から妖に追い掛け回されるのだから堪ったもんじゃない。

今回はナルシストな退魔師が助けてくれたが…そんな幸運が何度もあるとは限らない。

妖は神出鬼没なので、通学路を変えたところで意味が無いのだ。

というか昼間に妖にあれだけ派手に追い掛け回されたのだから、騒ぎにはなっている筈だ。そうに違いない。

それにしても、あの人はここらで見かける退魔師じゃない気がする。

 

近年、日本各地に頻出する様になった化け物。

彼らは何故人を襲うのか、どこから出現しているのかなど、ほとんどが謎に包まれている。

分かっている事は、化け物達が現れるのは土着信仰や伝承、都市伝説や迷信など、またそれらに関係の深い寺社や廃墟が存在する地域であるという事。

そして、太陽の光に弱いため、昼間は薄暗い場所でなければ現れないという事のみ。

化け物達は総じて、その伝承などの元になった物語に基いた外見をしているため、"妖"と呼ばれるようになった。

勿論、人間側も妖の被害に手をこまねいていた訳ではない。

古くから伝わる退魔の家系や各宗教の修行を積んだ上層部の人間、イタコや山伏などが集まり、退魔組織"すめらぎ"を作り対抗した。

一部の強力な妖でも無い限り、組織の人間ならば十分退けることが出来る上、その一部の妖というのも深夜に妖に関係深い場所にでも訪れない限りは現れない。

また、"すめらぎ"は伝承などに基いた妖の弱点―塩などの品物や特定の単語など―を公表する事により、一般人でも妖を十分に退ける事が出来るようになった。

しかし、対抗する術を持っていても、一般人は一般人である。

心得の無い人間では限界があるし、女子供は危険だ。

そのため、昼は一つの地域に3人から5人、夜間は20人から30人程で見回りをしている。危険な地域はこの限りではないが。

人数が少ないのは、"すめらぎ"に所属する退魔師の殆どが妖の力、妖力を察知する事が出来るため、妖が出現した時に近場の見回りをしていた退魔師がすぐに駆けつける事が出来るからだ。

 

「速水。速水、寝てんのか!?」

「ふぁいっ!?」

あれこれ考えていたせいで、先生に指されていた事に気付かなかったらしい。

指示されたページをどうにか読み上げ、着席する。

「今日は災難だなぁ」

授業が終わった途端に、そうごちりながら机に突っ伏した。

そのままの体勢で、昼休みの妖の事や今日の夕飯やらを考える。

「あー退魔師のお兄さん護衛してくれないかないやでもナルシストだからいいや」

げんなりしながら呟くと、教室には誰もいなくなっていた。

どうやら皆もう帰ったか部活動に行ってしまったらしい。

これで下校中にまで襲われたらどうしようかと夕空を眺める。

「今日くらいは誰かと帰りたかったな…」

普段は一人で帰っていても、あの出来事があってからでは心細く感じてしまう。

「あんまり遅くなると余計に危ないし、さっさと帰ろ。まさか一日に二度も襲われたりとかありえないでしょ…」

時計を見ると、もう5時を回っている。

この季節はあと一時間もすれば日が落ちてしまう。

通学バッグに荷物を詰めて、学校を後にした。

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