「やっぱり自分の部屋は落ち着くなぁ。」
自室のベッドに倒れ込みながら呟く。
今日はちょっと…いやかなり疲れた。
一日に二度も妖に襲われた上、嫌いなタイプの退魔師に助けられたのだから。
正直あの人と話してると疲れる。うん。
「あれでも恩人なんだから、そう言っちゃ失礼かな。」
よっとベッドから立ち上がり、今日の課題に手を付けようと、普段スクールバッグを置いてある位置に手を伸ばす。
こんな事があった日でも課題は容赦無いのだ。
しばし余所見をしながら手をぶんぶん振り回すが、無い。そこにある筈のものが無い。
「あれ…あれ。」
お世辞にも片付いてるとは言えない自室を見渡しても見当たらない。
焦りながらも学校を出てから帰宅するまでの回想をする。
学校を出るときには…持ってた。それで妖に襲われて…。
そこではたと思い当たる。
「あああああ!?バッグ拾い忘れてたああああああ!!」
そう、やたらとガーリーな妖にバッグを直撃させてしまい、そのまま手からすっぽ抜けてしまったのだ。
「ああもう!あのナルシストのせいで拾い忘れたんだ、そうに違いない。」
助けてもらった恩など忘れて他人のせいにする。
幸い、妖に遭遇したのは家から程近い場所なので、今から取りに行けば夕飯には間に合う。しかし…
「もう外真っ暗だよね…。」
午後六時過ぎ。三月初旬のこの時間は夕方というよりも夜である。
夜は妖が活発になる。ただでさえ今日は二度も襲われているというのに、また遭遇したらたまったものではない。二度ある事は三度あるのだ。
「仏の顔も三度までだっての…いや最初からそんな顔してないか。」
そもそもまだ二度目だ。
逡巡しつつも、結局取りに行く事に決めた。課題未提出で怒られるの嫌だし。
階段を降り、出かける前に一応母に声をかける事にした。
「ちょっとコンビニ行ってくるね。」
「はーい、でも気をつけなさいね。ただでさえあなた二回も妖に襲われているんだか
ら。」
心配してくれる母に感謝をしつつ家を出る。
まあまさか本当に三度目は無いだろう。
念のため、明るく人の多い道を選んで妖と遭遇した場所へ向かう。
そういえば下校中に遭った妖は生霊だってあの人言ってたよなぁ。生霊に襲われたって事は、もしかして私誰かに恨まれてたりするんじゃ。
一人で夜道を歩いている時に限って、そんな怖い想像をしてしまう。
「やめやめ!大丈夫だからきっと考えすぎ。」
頭をぶんぶん振って妄想を振り払う。
そんな事を考えているうちに目的地に到着していた。
「確かこの辺だったよね」
きょろきょろと飛んでいったと思われる辺りを見回す。
「あったあった!」
愛用のスクールバッグは道端の電柱の影に転がっていた。
安堵して、拾い上げようと腰を屈めた瞬間、強烈な何かの視線を感じた。
「…っ!?」
素早く振り向き視線を巡らすも、誰もいない。
確かに誰かに見られている感じがした。
それに今も背筋に冷たいものが走っている。
「もうホント何なの今日はっ!」
恐ろしくなった私は急いでバッグを拾い上げ、家へと駆け出した。