気が付いたら私は赤木リツコになっていた 作:無茶振りされたあなたは最高に輝いている
・この世界のオカルト技術、幻想存在は、太古の昔に互いに衝突して砕け散った『白き月(完全版)』『黒き月(完全版)』の破片由来だったんだよ!! 箱根と南極に落ちたのはそれぞれのコアブロックなんだ! ΩΩΩ<な、なんだってー!?
・冬月研究室所蔵文献・試料の一部からラーニング。赤木リツコの
・葛城ミサト(18)「私の名前は葛城ミサト! ピチピチの女子大生よっ!」
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「偶然も運命の一部さ。才能なんだよ、君の」
葛城ミサトはよくしゃべる。
ほんっとーに、よくしゃべる。
あと私生活が壊滅している。
私は二度と彼女の安アパートには足を踏み入れないことを決めた(が、そうはいかなかった)。
私は生来の『赤木リツコ』ほどに潔癖症ではないが── そもそも私が潔癖症だとしたらチベットの秘境に行って修行などできないだろう──、それでも好んで汚部屋に突入したくはないのだ。
とは言いつつ、ついつい気になって定期的に片づけを手伝いに行ってしまうのだが。
私は愛嬌のある年下の美人に弱いのかもしれない。
そういえば潔癖症で思い出したが、生来の『赤木リツコ』が身体の主導権を取り戻して表に出てこないのは、ひょっとして私のことを精神的なゴム手袋だと思ってやしないか??
もしかして汚れた現実に触れなくて済むための防護服かなんかだと思ってらっしゃる??
……内なる『赤木リツコ』は答えない。
まあいい。
ともあれ彼女、葛城ミサトは何が気に入ったのか、私とよくつるむようになった。
彼女は18歳で、私の2つ下だが、私がチベットに留学していたこともあり、一部の必修ではない授業がかぶったりもしている。
彼女も第二東京大学に入れるくらいに優秀なので、勉学面は特に問題はなさそうだが、寄りかかっていい対象として認定されたのか、たびたび頼られることもある。
ただ正直彼女が遠巻きにされていたのは、それこそ私に声を掛けてくるくらいまでで、そのあとはその明るさからすっかりと大学に馴染んだようだった。
だが、通りいっぺんの友人たちには、彼女はだらしない
大酒呑みであちこちの飲み会に引っ張りだこな彼女(18歳なので未成年飲酒だ)だが、決まって介抱に呼び出されるのは私だ。
彼女は、他の者にその役を任せるつもりはないらしい。
「リぃツコぉ~~、おんぶしてぇ~~~」
などと赤ら顔に酒臭い息で絡んでくるミサトを邪険にできないのは、感傷だろうとは思う。
まあミサトが美人であるというのはあるが、明るい振る舞いは深いトラウマを隠すための防衛機制だろうし、家が散らかっているのも大酒呑みなのも、ある種のセルフネグレクトなのではないかとも思っているので放っておけないのだ。
ミサトの鼓動からは、心の奥底に封じられた、抜けきれない深い絶望と悲しみの匂いが伝わってくる。
こういう時に波紋使いは損だと思う。ついつい読んでしまうのだ、生命の息吹に秘められた情報を。
こうやって私に迷惑だと知っていながら寄りかかるのは、ある種の試し行為なのだろう。
貴女は私から去らないのか、私を曝け出していいのか、受け入れてくれるのか、と。
私もそれを分かっている。
こうやって甘やかすから調子に乗るとはわかっているが、なかなか止められない。
あと、夜中遅くてもいつでも起きていて、すぐに迎えに行っちゃう私さんサイドにも問題があるのも分かっている。
酔いつぶれたミサトの迎えに行くたびに、「赤木さんはいつ寝てるの……??」とか問われるが、正解は『そもそもほとんど寝ていない』だ。
波紋法の奥義である
なにせ波紋習得前は健康とパフォーマンスのために最低でも7時間は必要だった睡眠が、1時間程度で済むようになったのだから。
身体操作により脳内の組織を緩め、血管を広げ、老廃物を洗い流すことで睡眠と同等の効果を得る。あるいは1時間すらも寝る間がないときは、
こうすることで活動可能時間が飛躍的に伸びたが故に、私はチベットで修行に費やした2年間の投資などすぐに回収できると確信しているのだ。そもそもの肉体スペック上昇により、学習能率も上がっているし。
閑話休題。
そういうことなので、試し試され、絆し絆され、私とミサトの仲は親友と言えるほどに深まったわけだが、お互いに独立した個人なので、連絡がないならないでソレはソレと気にしないこともある。
とはいえさすがに1週間は長い。
大学でも「赤木さんはミサト見てない?」と聞かれることが増えてきた。
──── 大学にも来ていないのか?
そうなると少し話は変わってくる。
この
セカンドインパクトの生き残りで、四人の『光の巨人』を直接目にし、あるいは光の巨人─── アダムスのその血を浴びたことすらあるかもしれない少女。
その特異存在としての強度はなかなかのものだろう。
怪異に目をつけられた可能性は、残念ながら否定できない。
「アパートに行ってみようかしら……」
碇シンジと同等程度には、物語の配役としての運命強度があるだろうからと、そっち方面はそこまで心配していなかったが、いまさら心配になってきた。
葛城ミサトが居なくなると、かなりプランが崩れるんだが???
とりあえず様子を見に行ってみよう。
§
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「メンゴメンゴ~~!」
普通に
ノックしたら出てきおった(当然ながらインターホンなんて上等なものはついてない)。
「ミサト、貴女ねぇ……」
さっと観の目でミサトの全身の様子を捉えるが、いつも通りのだらしない『おうちモード』な様子に変わりはない。
ない、か……? うーむ?
「風邪かもとか思ってスポーツドリンク買ってきておいたわ。はい」
「助かるー! 感謝感激あめあられ! 神様仏様リツコ様~!」
「はいはい。じゃあ入るわね。どーせ散らかしてるんでしょうから片付けるわよ」
「ちょ、ちょちょちょ、ちょい待ちー!」
中に入ろうとする私の前に立ちはだかるミサト。
ふむ?
そういえばなんかさっきからずっと首元を手で押さえてるわね。
「えい」
「あっ」
ミサトの手をパッと取ると、その手が押さえていた下の首筋には赤いあざ。
「ふーん」
「えぇっとぉ……」
キスマークですねえ、これはぁ……。
1週間の不在。キスマーク。そういえば微かに部屋の中から淫臭がするな……。
ニッコリ笑顔をミサトに向ける。
「カチコむわね?」
「うわぁ?! リョウちゃん逃げてぇ!!」
ミサトが部屋の方へと叫んで呼びかける。
って、『リョウちゃん』ってことは、このタイミングで出てくるのか。
まあ私も『ミサトの1週間の不在』ってとこから気付けって話ではあるが。
思った通りの名前で安心半分、でも一方で、18歳の女子を1週間もセックス漬けにして丹念に調教しただろうゲス野郎に一発とびきりの波紋を打ち込んでやらねば、という怒りが半分。
しかし、あにはからんや。
ミサトの安アパートの奥から、その男は逃げずに現れたのだ。
「君が、赤木リツコちゃんかい? リっちゃんって呼んでも?」
「自己紹介はいらないようね?」
どーせペラペラと私のパーソナルをしゃべったんだろうミサトに一瞥くれつつ、私はそのチャラ男に対して問う。
油断はせずに。
「それで『リョウちゃん』? あなたのお名前は?」
「加持リョウジ。……君もその調子で『リョウちゃん』って呼んでくれていいぜ?」
立ち方、肉付き、手のタコ、着崩したアロハから見える古傷。
こいつ、なかなかデキる。
試すか?
「まあ、それは追々としましょう。握手でもする?」
手を差し出す。
波紋を読めば、もっと深くわかるだろう。
「………いや、遠慮しておこう。ほら、ミサトに嫉妬されても困る」
「なっ、なっ、なっ……しないわよっ!」
赤くなって否定するミサトは置いておいて、私は差し出した手を引っ込めた。
そうか、握手はしない、か。
「どーだか。まあ良いわ。それより私以外にも心配してる子たちはいたから、そろそろ大学に顔を出しなさいね」
「分かったわよ!」
「スポドリだけじゃなくてスキンも買ってきてあげるべきだったかしら? 避妊はするのよ?」
「セクハラ! セクハラ反対!!」
「はいはい。とりあえずこれ、冷蔵庫に入れてきなさいな」
「う~~~……」
からかいがいのある友人だこと。
スポドリやゼリー飲料の入った袋を持ってアパートの部屋の奥へ行ったミサトを見送る。
加持リョウジを視界からは外さずに。
肉の付き方は、拳士でも剣士でもない。
おそらくは銃使いか?
「夜半、あの子が寝た後に表に出なさい。加持リョウジ。得物を忘れずに取ってくること」
「おいおい物騒だな。君には何もしてないぜ?」
「あら、私はあの子の親友よ。あの子には両親が居ないの。悪い虫がつかないように確かめるのは親友の権利の範囲でしょう」
遠当て。
ズン、と空気が鈍く響いたが、加持リョウジ以外には影響が出ないように流体制御して加減してある。
本当に軽く当てただけだが、こちらの意図は伝わるだろう。
「………これは逃げても無駄そうだな」
こちらの本気が伝わったのか、加持リョウジは観念したようだ。
「改めて名乗らせてもらうわ。──── 波紋拳士、赤木リツコ」
「波紋使いか……」
「そちらは? それなりに
ため息ついて、不承不承な様子で、彼は名乗った。
「
なるほど、ガン=カタ使いか。
■次回予告
世界救済のビジネスパートナーにするならこの男を置いて他に候補は居ないだろう。
それほどにハイスペックな人物、それが加持リョウジ。
であれば、彼がオカルト戦闘術を修めているのは当然を越えた必然であった。
死の舞踏を踊る二人は、武の交換を通じて相互理解を深めていく。
親友を任せるに値するか、己の背中を任せるに値するか、志を同じくする同志として腹の底を曝け出せる相手か。
次回、『運命の弾丸!
それでは次回も、サービスサービスゥ!