気が付いたら私は赤木リツコになっていた 作:無茶振りされたあなたは最高に輝いている
※ ゲンドウ編とは:シン・エヴァンゲリオン劇場版公開当時、劇中の謎を解釈するにあたって、冬月ゼミの面々による90年代伝奇風味な前日譚が『あった』とすれば筋が通るな……? と思った人々が幻視した集団幻覚のこと。これもまたインターネットの相補性の巨大なうねりが生んだイマジナリーのエヴァンゲリオンなのよ(どんがどんが) → 新伝綺エヴァンゲリオン/ZERO ゲンドウ編:posfie、 ゲンドウ編:ピクシブ百科事典
Q.波紋法が投影魔術になってたり、ガン=カタにカバラ数秘術が混ざったりしてるのは関係なくない……?
A.それは作者の頭にそういうトンチキ電波が降ってきたから仕方ないんだ。ここはそういうものを出す店なんだ。
なお、実はリツコはチベットにおいて修行の結果として
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■前回までのあらすじ
・葛城ミサトと赤木リツコゎ……ズッ友だょ……!
・赤木リツコは『おこ』です。理由は分かりますね、加持リョウジ? そうです貴方がトラウマ深い18歳の無垢な少女を1週間ねっとり快楽漬けにして調教したからです。──── ハイクを読め、カイシャクしてやる。
・加持リョウジもまた、オカルト戦闘法を修めていた! その流派は、カバラ数秘術の秘奥を、戦場統計学と融合させた戦闘法! その名も、
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「最近の男は、すべからく自分にしか興味ないのよ」
いやに大きな『白き月』が夜空に浮かぶ、ここは第二東京市のとある資材置き場。
コンテナや、単管パイプ、システム足場、鉄骨、鋼材その他諸々が、整然と置かれている。
急ピッチで造成されたこの都市には、相応に物資を集積するための場所があちこちに点在している。
葛城ミサトが借りている古い安アパートもやがては再開発計画に呑まれて消えるのだろう。
そんな中、ミニスカートに白衣の金髪女が、月の光を浴びて立っていた。
「………。」
赤木リツコ。
この世界の道具係として配役された女だ。
ざり、と砂利を踏む音がした。
見れば、この熱帯夜の中でもコートを着込んだ軽薄そうな若い男が、ヤードの入り口に立っていた。
女──── 赤木リツコが、口を開く。
「来たわね、加持リョウジ。………遅かったわね?」
「ミサトを寝かしつけるのに時間がかかってね」
「不潔」
「おいおい、俺が悪いのか?」
あんたが誘ったんじゃないっていうなら、そんな葛城ミサトがセックス覚えたての中学生みたいにガッついてるみたいな………。
みたいな…………。
リツコは押し黙ると、慎重に波紋使いの感覚で加持リョウジの生命力を推し量った。
………薄っすいわね……。
何なら昼よりさらに薄くなってる気がするわね……。
「あの、大丈夫? 亜鉛とかマカとか差し入れましょうか?」
「やめてくれ、そんな歳じゃない」
「腎虚になって倒れないならいいけど」
これ、実は半分以上はミサトのやらかしなんじゃ……? むしろ加持は哀れな被害者なのでは? リツコは
生活能力皆無なあの残念美人の、この一週間の世話を誰が焼いていたかというと、コイツ以外にはありえんわけで……。
そう考えるとリツコの中に急速に、加持に対する憐れみとシンパシーが芽生えてきた。
だがそれはそれとして一発殴るし、手合わせ自体もやっておきたい。
やはり武人たるもの、矛を交えねば分らぬこともあるがゆえ。
………肉体言語が手っ取り早いからと横着している面があるとは自覚している。
「まあ良いわ。ともあれ、あなたがミサトに相応しいか確かめるのは既定事項よ。
得物は持ってきたんでしょうね?」
「まあな」
そう言うと、加持リョウジは、コートの懐から二挺の拳銃を取り出した。
黒光りするそれが、『白き月』からの月光を反射する。
「銃にはそれほど詳しくないのだけれど、よく手入れされているのは見て分かるわ」
「グロック26。携帯用に最適なやつさ。弾は9パラを10発。
………銃を持ってること自体には驚かないんだな、今さらだが」
「その程度、あるところにはあるでしょ」
それにガン=カタ使いが銃を持ってないとも考えづらい。
「それで、本当にやるのか? 言われたとおりに持ってきたが、実銃だぞ」
「心配してくれるのね」
「ミサトの親友を殺したくない」
「はッ」
惰弱な物言いを鼻で笑う。
加持リョウジ、お前は人を心配できる立場ではない。
「波紋拳士が9ミリで死ぬものですか」
「人は銃で撃たれれば死ぬものだぜ」
舌戦は終わりだ。
加持リョウジが二丁拳銃を胸の前でクロスさせる。
赤木リツコが構え、彼女の深く鋭い呼吸の音が、コォォォォォォ、と響き渡る。
「カバラ
「波紋の戦士、赤木リツコ」
数瞬の間。
月に叢雲。
明ければそれが果し合いの合図だ。
「「 いざ、尋常に! 」」
月光が差す。
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遠距離戦は、銃の間合い。
だが加持リョウジは発砲しない。
むしろ自分から油断なく、しかし優雅に大股で歩き、距離を詰める。
呼応して、リツコも低く飛ぶように距離を詰める。
何故撃たないのか。問われる前に、加持リョウジは自ら口を開いた。
「弾は節約するべきだろう?」
「そう。少しは知っているわ、
「エコなだけさ。そもそも、当たる
カバラ数秘術。
西洋の秘密教義を源流に、世界の全てを数に還元して俯瞰するというものだ。
その中の重要なモチーフの一つが『セフィロトの樹』。
10のセフィラと、22のパスから成り立つ、神秘の樹形図だ。
「まあ、腕の一本や二本は覚悟してもらおうか」
「当たるといいわね」
「
数字による運命支配、そして研ぎ澄まされた戦場統計学。
カバラ数秘術が生み出した、現代戦闘術──── それこそが、
ガン=カタの極まった使い手は、まさに無敵。
撃たれど当たらず、撃てば必ず当たる。
確率論的に『絶対に攻撃が通らない場所』に身を置き続ければ、全ての攻撃は回避可能。
これはつまり、そもそも当たる未来の一つすらも存在しないのであれば、当たるはずがない、ということ。
そして彼らの動きは、その全てが数秘術に裏打ちされた戦場芸術の構成要素であり、死というただ『1』つの結果へと相手の運命を収束させていく哲学の実践であるのだ。
いつの間にか、二人は既に腕ひとつ分の間合いのうちに居た。
互いに腕を振るう。振るい続ける。
「位置合わせはもう良いのかしら? 色男さん」
「悪くはないさ、麗しのレディ」
赤木リツコは、
風水術師が、方位から運命を限定してくる手合いであれば。
思考をよそに、身体は動く。
ぱし、ぱし、ぱし、と控えめな音で、まるで型の演武のように、踊るように二人は腕を打って弾き合う。
スタンスを入れ替え続ける。
ざりざりと、足元の砂利が跳ぶ。
飛んだ砂利が、資材に当たって音を立てる。かん、かんかん。
赤木リツコの波紋の籠った突きを、加持リョウジの二丁拳銃のグリップエンドで反らし、いなす。
それが加速していく。ぱ、ぱ、ぱ、ぱぱぱぱ、ぱぱぱっ。
残像が尾を引き、まるで腕が幾つも分裂したかのように映る。
彼らカバラ数秘闘術の戦士の奥義は、ある意味では未来予知に等しい。
全ての真理は数の内にあり。
万物全ては数によって構成されている。
故に未来もすべて計算できる。
無意識下に落とし込まれるほどに繰り返された、
加持リョウジの無意識領域は、既にそこらのスパコンを超える演算を行っていた。
そして計算はやがて、単なる予知を越えて、世界へ干渉する鍵を得るに至る。
響く音。
星の瞬き。
目の端に映る資材の数。
呼吸の数。
打ち合った数。
音の周波数。
口に出した単語の数。
相手の名前。
自分の名前。
日付、時間。
全ての要素を数に還元し、絶対の介入を行う場所を特定する。
「
「ッ!!」
発声ひとつ。
計算の果てのそれが、最小の介入による、最大の成果を産む。
それによってリズムが変調し、予定調和の運命へと赤木リツコを落とし込む。
カオスを支配する計算式。
計算されたバタフライエフェクトという矛盾。
幾つもの事象が同時多発的に起こった。
これまで響いていた音の波が局所的に集中し、その瞬間だけ正面に音の壁が発生する。
一方で声の揺らぎの疎密が増幅され、後方では真空波となって結実。吸引力が発生。
風で舞い上がった埃のもたらす陰影と反射が、網膜にサブリミナル効果を生み出し、無意識のさらに底に働きかける。
靴底の砂利の嚙み合わせがほんの少しずれることで、体幹の制御にごくわずかな影響を及ぼす。
環境の全てが方程式となり、そしてその全てに連動して波及する。
それら微細な、しかし加持リョウジが読み切った影響が結実し、赤木リツコの身体を一定の姿勢へと導く。
今この瞬間、戦場は加持リョウジの計算式の内にあり、波紋の達人である赤木リツコをもってしてもまた、この刹那においてはその計算式の一要素に過ぎなかった。
加持リョウジは既に撃っていた。
無造作に。
それが
「そこに来ることは分かっている。だから撃った。だから当たる」
赤木リツコが幾つもの事象に対処した結果、まるでその加持リョウジの弾丸に自ら当たりに行くかのように身体が動いていた。
腕の一本や二本。
そういった通りのことが起こる。
赤木リツコもまた卓越した戦闘者である。
腕を狙った弾丸を避けても、あるいは弾いても、受け入れても。
跳弾がさらに自らに襲い来るだろうことを予見した。
吝嗇な連中。
それは間違ってはいない。
跳弾すらもすべて利用し尽くす合理性、それがカバラ数秘闘術の根幹をなしている。
運動エネルギーの全てを失うまで、あるいは失った後ですらも布石として、弾丸は襲い来るのだ。
「御見事」
月光の中で彼女の腕から鮮血が散る。
■次回予告
戦いの間、赤木リツコは加持リョウジの生命のリズムを聴いていた。
聴勁。
彼女は見極めようとしていた。
物語における彼のように、この加持リョウジもまた、信用における人物なのか。
武の交錯による相互理解。
加持の過去の幻視。
セカンドインパクト孤児としての生い立ち、少年集団のまとめ役、失敗と喪失、そして流れの占い師から伝えられるカバラの極意。
だが、そこに邪魔者が現れる。
影から立ち上がる不定形のナニか。
加持リョウジ曰くの『お化け』。
加持とミサトの出会いは、そんなお化けからミサトを助けたことが発端だったのだという。
一方そのころ、葛城ミサトは、熱帯夜の暑さでうなされていた。
「うぅ〜、れいとうこうせんんん……」
アダムスの巫女たる運命を持つ彼女の呟きが、何をもたらすのか自覚もないままに………。
次回、『冷凍光線の恐怖! 『
それでは次回も、サービスサービスゥ!