気が付いたら私は赤木リツコになっていた 作:無茶振りされたあなたは最高に輝いている
※赤木リツコの天才性について:ガイウスの槍を創造し『人類を救える』程度な天才ですので、あらゆる方面に最高峰の才能を持っていると解釈しています(全てを伸ばす時間があるかはまた別の話ですが)。ループ世界ゆえの因果集積とか称号引き継ぎとかも影響しているかもです。
Q:波紋の才能もその天才性のおかげ? 2年で奥義習得は実際すごい。
A:波紋の天才ジョセフ・ジョースターが2年みっちり修行すればたぶん到達できる(彼は1か月でアレなので)くらいの想定です。彼の茨のスタンドがヒト型を取らないのは、半分くらいは解体・還元されているせいかもしれません? 彼が真面目に修行して悟りを開いていたら第3部でスタンド発現した時点で、無敵のハーミットパープル・オーバーヘブンが爆誕してたはず(でもその場合は不倫しないだろうから仗助は生まれてないかも)。
本作のリツコの場合は、才能もありましたが、高い目的意識、エヴァ世界へのメタ認知、そして、ストレイツォ師父がマジで容赦しなかったことが急成長の理由として挙げられます。
また実は、密教修養あるいは幽波紋の才能は、どちらかと言えば転生者由来のものです。なぜなら転生を経験したということは、『天国』(あるいは逆位相としての地獄)をその魂で見てきたということにほかならないからです。──── 伊達に地獄は見てねえぜ!
なので2年間の修行の内訳は曼荼羅・真言研究と並行しながら、体つくり3か月、波紋法修行20か月、奥義習得1か月みたいな変なペース配分してます。こんなんなので、赤木リツコは拳士としての練度というか、経験が顕著に不足しており、奥義だけ使える
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■前回までのあらすじ
・カバラの秘術は世界を数式として支配する!!
・たとえ波紋使いでも、我が計算から逃れることはできん!!
・見切ったぞッ! そこだッ!!
・赤木リツコ、負傷。
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「ああ彼? 温泉ペンギンという鳥の仲間よ。15年前はね、いっぱいいたのよー。名前はペンペン。縁あってうちにいる、もう一人の同居人。」
ぱたた、と血が地面に落ちる。
加持リョウジの放った弾丸は、私こと赤木リツコの腕を貫いていた。
「大丈夫かい、リっちゃん。自分で撃っておいて言うのも何だが……」
「心配ご無用よ」
銃に撃たれた腕には銃創。
銃弾の運動エネルギーはすさまじく、銃創の周辺は大きな力で殴られたようなダメージも残っている。
完全に向こうの術中にハマってしまっていた。
ありえないことだが、波紋法の、ほんの一瞬の呼吸の隙間を突かれたような感覚があった。
初心者か未熟者しかやらないような失態だ。
つまり、ありえない事態が引き起こされた、ということだ。
カバラ数秘闘術、侮り難し!!
ガン=カタ、侮り難し!!
だが様子見をしていたとはいえ、これは反省だな。
これが手合わせではなく、狙われたのが額であれば、そこで私は終わっていたかもしれない。
まあ、私も加持リョウジの
手合わせで致命傷は狙って来るまい、などと。
「やせ我慢はやめた方がいい。病院へ行こう、リっちゃん。細かいことを聞いてこない医者を知っている、さあ───」
「
「なっ、これは?!」
傷は消え、さらに腕を振るえば地面に落ちた血痕すらも消えた。
「おいおい本当か、俺は夢でも見てるのか……? 一瞬で傷が消えたぞ?
それとも、君は実は人間じゃなくて、『お化け』だったのか……?」
己の目を疑うかのように、目をこする加持リョウジ。
「人間よ」(
打ち合っていて分かっていたことだが、彼はまだ、肉体言語で全てを読み取る領域には達していないようだ。
おそらくは彼の師匠からの教えの伝授が中途半端に終わっていたせいだろう。
拳を交わすうちに伝わってきた彼の記憶では、カバラ数秘術を用いた占い屋に師事していたが、あるとき幻想存在に襲われて彼だけ逃がされたそうだ。
それ以降、彼はその師匠には会えていないらしい。
だがこの程度の練度で終わっていては、この先でスパイ活動をするにあたり、命がいくらあっても足りるまい。
特に彼が修めている
そもそもセフィロトはゼーレが好んで使うモチーフだ。
彼らゼーレの実働部隊でも特に精鋭の者たちであれば、それはきっと、
まあ、それでも私は勝つが。
二度と失態は犯さない。
というか、勝てねば人類の未来はないから、勝つしかないのだが。
勝たねば。勝たねば。勝たねば……。
「波紋使いに不可能はないのよ」
「波紋ってそんなもんだったか……? 俺が知ってる波紋は、身体能力の活性化とか、水を多少操るとかそういう……」
「ふっ、これは秘された奥義というものよ。そちらの流派にもあるのでしょう? 人知を超えた現象を操る奥義が」
このエヴァ世界では、『黒き月』と『白き月』に由来する呪詛文様コードや、堕ちた月の破片に宿るS2機関の痕跡を核にした高次元からのエネルギーの流入により発生する幻想存在とかいうものが、現実のものとして厳然と存在する。
各地のオカルトは、それらの存在を源流に持つと思われるところ。
つまり、この世界において、奇跡は、神秘は、魔術は、実存しているのだ。
「……俺は使えないし、師匠の与太だと思っていたがね、今この瞬間までは。
で、その奥義が使えるリっちゃんは、
これはつまり……さっきまで手加減してくれてたってことかい?」
「達人には至っていない、修行中の身よ。ちょっと事情があって奥義だけは使えるけれどね。でも、本気ではあったわ」
「奥義を使わない範囲では、だろ」
だがそれは油断だった。
なにせ彼は私に一撃入れた。
持てる技量を尽くして。
なんと真摯で紳士な男であることか!
だから言い訳はしない。
ただ、己の内に失態を刻む。
今の赤木リツコは、所詮はジツ頼りの凡夫に過ぎぬ!
もっとカラテを鍛えるのだ!
「この場はあなたの勝ちよ、加持リョウジ。………ミサトと付き合うのを認めてあげる」
「ああ、そういえばそういう話だったか……」
暑そうなコートの内に二丁拳銃をしまった加持リョウジが、頭を掻く。
そう、そういう話だったのだ。
つい熱くなってしまったが。
「打ち合っているうちにそちらの事情はだいたいわかったわ。私たち、仲良くやれそうね?」
「あのなあ、全員誰もが殴り合って分かり合えると思うなよ。そこまで深く戦闘中に読めるのは波紋使いくらいじゃないか?」
「えっ」
「リっちゃんは、あんまり他流試合やったことない感じかぁ」
「基本的に修行漬けだったもの。波紋法は密教の一部だから、専ら内側に向かう性質があるし。周りは同門しか居ないから」
京都で指南してもらった冬月師兄も、もちろん同門だし。
チベット奥地までわざわざ道場破りに来る者もいない。
だから確かに波紋法ではない流派のことは、話しでしか知らない。
今回の反省は、そういった経験不足な点にも向けられるだろう。
やはり修行は続けなければならない、奥義たる
そういうことですね、ストレイツォ師父……!
「まあ、時々でいいからまた手合わせしてくれよ」
「ええ。こちらからもお願いするわ」
「OK。……よし! これで話はまとまったな!
じゃあ早くミサトのもとへ戻らないとだ」
「心配性ね?」
「いや物理的に危険がある。ミサトの周りにはどうも妙な『お化け』が湧きやすい」
「………そういえば、あなたとミサトの出会いもそれがキッカケだったかしら」
「俺はその話し、したっけ?」
「あなたの
「はしたない言い方はよすんだ」
ああ、確かに。
ミサトが嫉妬すると面倒か。
というか、私の予想が正しければ、加持リョウジの言う『お化け』もきっと、葛城ミサトの特異性に由来していると思うのだが。
セカンドインパクト爆心地の生き残りというのは、オカルト的にもかなり重い意味を持つ。
ましてや宙に浮かぶ方の『白き月』にまで血飛沫が飛ぶほどの激戦の果てで、
おそらく葛城ミサトはアダムスに認知されているだろうし、気に掛けられてもいるだろう。
胸の傷が消えないことをミサトは悩んでいたが、それすらも、アダムスのマーキングの可能性もある。
いうなれば、『アダムスの巫女』。
それほどに特別な立ち位置にいるのだ、彼女は。葛城ミサトは。
異常な作戦を成功させ続けるのもまた、ある種の願望成就的な機制が働いている可能性もある。確かめる手段はないが。
転生者のメタ視点的に言えば、碇シンジに並ぶダブル主人公の片割れだしね、ミサトさん。
願望機めいた何か(アダムスの意思か、カントクの意思か、それは分からないが)の後押しを受けていても不思議ではないといえば、それはそう。
だから、彼女の「白馬の王子様に出会いたい」という願望をくみ取った何者か── 運命と呼ばれるようなそれ── が、適当な敵対的な幻想存在を創出し、もっとも彼女の願望に合致するイケメン、つまり加持リョウジをその場に導いたとしても、それは不思議ではない。
「ひょっとしてこの一週間、ミサトが大学を休んでいた……いえ、休ませていたのって」
そして、それに味を占めて、この一週間、似たようなシチュエーションを繰り返していたとしても、まあ、ありえなくはないのだった。
「ああ。どうも外にそういった良くない『お化け』がうろついていたみたいでな。
買い出しゴミ出しのたびに駆除していたが、おかげで弾の在庫が心もとない」
そう言う加持リョウジの顔は実際疲れていた。
先ほどの手合わせで弾を節約していたのはそういう事情もあったらしい。
「いまも、ほら。そこに居る」
加持リョウジの視線の先、資材の影には、確かにそれらしき人影らしきものが見えた。
幻覚の
私は軽く遠当てを飛ばし、その不定形の影を吹き飛ばす。
……ふっ、他愛なし。
「だけど、リっちゃんが来てからは、そいつらも前ほど見かけなくなった。流石はスーパー波紋使いだ」
いえそれは、日常の象徴な私がやって来たことで、ミサトが我に返って冷静になっただけだと思います……。
うかれポンチオーバーヒート恋愛脳が落ち着いたなら良かったが。
「あとはミサトは何か言ってなかったかしら」
「そうだな……『寝るときはさすがに暑い』とかくらい、か?」
「ああ、あのエアコンなしのアパートで同衾してちゃそれはそうね」
「ここ何日かは特に熱帯夜だったしなぁ」
──── 何かフラグが立った気がするわね。
リツコらは知らないことだが、ちょうどのこの時、葛城ミサトが寝言で「あーついー、れいとうこうせんんん……」などと口にしていたところであった。
因果関係の証明はできないが。
確かに事実として、この場に異変が起きたのは、その直後のことであった。
§
#####
世界を数字としてとらえる加持リョウジもまた、何か先ほどの会話を皮切りに、場の何かが変容したことに気づいていた。
仕舞っていた二丁拳銃を再び取り出す。
「おかしな空気だ。俺に
「第六感、超感覚。そういった五感を超えた感覚というのは、確かに存在するわ」
それら霊的なものを捉える感覚について科学的に理論化し分析するのもまた、形而上生物学の一分野だ。
「そうね、一時的にだけど、その感覚を目覚めさせることはできる。ついでに色々と事情を知っておいてもらった方がいいこともあるし────」
「なんだ、やるなら手早くしてくれ。だんだんヤバイ感覚が大きくなってるんだ」
私は、手刀の形にした右手に、ありったけの波紋を込めた。
「────
「がはっ!? いきなりなにぐぅぉぇえ?!」
波紋を込めた手刀を、加持リョウジのみぞおちに深く突き刺し、横隔膜を刺激し、胸郭内部の容積を圧迫し、強制的に正しい『波紋の呼吸』をさせる。
それとともに、自分の波紋の生命エネルギーに、幻想存在その他に関する記憶を圧縮して載せて、加持リョウジの神経へと直接流す!
悠長に話している時間がないときの荒療治! そして結局、親友を監禁してたことの分は殴れていなかったのでこれを一発にカウントしておく!
私もストレイツォ師父に割と容赦なくやられたから苦しさは分かるが、それでも有用性は理解している。
ちなみに私はこれを『かくかくしかじか拳』と心の中で呼んでいる。
──── かくかくしかじか拳! 喰らった相手は、波紋に込められた思いを『理解』するッッ!!!
「おお、これが波紋……血液を流れるエネルギー! 頭の靄が晴れるようだ、これが正しい呼吸法のもたらすパワーか……!
だが、一緒に流れ込んできたコレは、何だ? 形而上に満ちる無限のエネルギーに、第一始祖民族とその系譜を継ぐアダムスとリリス、そこから零れ落ちた、オカルトと幻想………。そしてこの世がこんなになっちまったセカンドインパクトの原因ってのは………!!」
波紋によってINTにバフして、驚異的な世界の真実を直接流し込む!
はーい、それでは、信じがたい世界の真実を強制的に流し込まれた加持リョウジ君は、SANチェックです。
「───── 嗚呼ッ! 気が狂いそうだッッ!」
「
「君がやったんだろッ!?」
それはそうだが。
まあしかし、何とか間に合ったようだ。
月が
だがそれは、
巨大な────
「「 ぺんぎん??? 」」
そう、とてもとてもとても……巨大なペンギンが。
『くぇぇええええ!!!』
口を開き。
『くぇぇええええ!!!』
得体の知れない光線を────
『クゥゥェェェェェェエエエエエ!!!』
吐き出した!!
「うぉおおお!? カバラ数秘闘術、
加持リョウジは一時的な波紋付与により向上した演算力により、瞬時に逃走経路を計算。
足元の石を飛ばし、声を発し、グロック26から弾丸を放ち、そうやって連続的に環境数式へ干渉することで、逃走経路上の危害確率をゼロへと下げる。
それに対して、私、赤木リツコがとった手段は分かりやすい。
「
強化した身体能力で、その場から弾丸のように飛びのいたのだ。
飛び去った後ろで、謎の光線が炸裂。
「寒ッ?! 冷凍光線!?」
同時に冷気が広がり、霜が降りる。
それに、あの冷凍光線が当たった場所の周囲の資材が、不自然に舞い上がっていた。
重力へも干渉しているというの?!
『くぅぇぇえええ……』
月光に照らされ、巨大ペンギンの様相があらわになる。
イワトビペンギンのような頭部。
柔軟に曲がる
フリッパーの先の三本の爪。
全体的に愛嬌のあるシルエットだが、その巨大さが、愛嬌の全てを台無しにしていた。
「対象を幻想存在と認め、『仮称:温泉ペンギン』、ペギラ・ペンペンと呼称します」
「温泉ペンギン? ペギラ・ペンペン?? え、リっちゃん、急に何を」
「おそらくは、セカンドインパクトの衝撃で南極ごと滅んだペンギンたちの無念の怨念が、『黒き月』に惹かれて日本の辺りで漂っていたところに、熱帯夜を厭う人々の想いが重なり、顕現したのね」
「そんなことある?? 適当にしゃべってないか??」
「南極への望郷の念が冷凍光線となり、そしてセカンドインパクト時の喪失と浮遊の感覚が、重力にすら作用する効果を生んでいる……。さらに飛べず逃げきれなかったことが未練なのか、あるいはもはや住めない赤い海に見切りをつけたのか、飛行能力も獲得したのね。彼は空からやってきたんだわ」
「…………」
「ちょうど冬月ゼミのレポートを読んで、幻想存在の調伏手順は理解したところよ。ちょうどいいわ、実践といきましょう」
付き合いきれないとばかりにこっそり逃げようとした加持リョウジを、視線で咎める。
「いや、ミサトが心配で……」
気持ちは分かるが、少しくらい付き合え。
まあ、矢面に立たせる気はないが、後詰めくらいは頼みたいところだ。
「さっき付与した波紋に載せて、あなたにも『対幻想存在
「………はい」
「理解が不足しているなら、もう一発、半深仙脈疾走を入れるけど」
「はい、いいえ、問題ないデス」
「よろしい。では、私はペギラ・ペンペンに肉薄接触し、解析し、波紋の生命の力で怨念を散らし、その存在を慰撫します」
大物狩りだ!
■次回予告
なし崩し的に加持リョウジにエヴァ世界の真実を叩き込んだ赤木リツコ。
すべてがゼーレのシナリオによるものだと知った加持リョウジもまた、世界を守るための戦いに同志として身を投じていくことを決意する。
そして冷凍怪獣ペギラ・ペンペンの纏う怨念を晴らしたあとに残ったのは、実体化した、ペンギンに似た謎の生物であった。
おそらくはどこかに保管されていたペンギンの標本を核にして、現実に固着したのだろうそれは、結局はミサトに飼われることとなり、『ペンペン』という名前を付けられる。
そうこうしているうちに時は過ぎ、論文を書いたり、オカルトデバイスを創ったり、波紋法の修行をしたりするリツコであったが、その周囲の大学3年の同級生たちは、就職活動で忙しくなっていく。
母ナオコが研究主任を務める人工進化研究所ゲヒルンにほぼ内定しているリツコであるが、ある日、一つのインターンのオファーが目に留まった。
『日本重化学工業共同体』からのインターンの誘い。
ジェットアローンの開発母体への接触は何をもたらすのか……。
次回、『レッスン!
それでは次回も、サービスサービスゥ!