それぞれに進んで行く仲良しJK達のお話(いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 セカンドシーズン) 作:シン_クワちゃん
ゴールデンウィークが終わり、中間テストが近づいてきた。
「そろそろ勉強しないとヤバくない?」
昼休み、二組の種村の所にやってきた東田がそう言い出したのがきっかけだった。
「じゃあ、みんなで勉強会やろうよ。図書館なら静かだし」種村は早速、グループにメッセージしながら
「内田っちと育美も当然参加ね」と僕に言ってくる。やっぱり引きずり込まれそう。
(育美)参加するから、雄太にも言っておいてね
種村はスマホを向けてグループへの育美の書き込みを見せてきた。
「は~、まぁ了解です」そう言うしかないものね。
放課後、東田を先頭に、僕と育美、種村、小森さんが図書館に集まった。少し遅れて石田もやってくる。
「悪い、遅れた」
「石田、遅いよ!」
「いやいや、子安先生に捕まってちょっと話し込んじゃってさ」
そんなやり取りをしているとき、小森さんが嬉しそうにみんなの顔を見回していた。
三年生になってから、こうしてみんなが集まるのは久しぶりだった。早田さんと悠木さんは進学塾に行くので今はいないけれど、小森さんにとっては、それでも以前と同じような感覚があるのかもしれない。
貸し出しカウンターには、今日の当番らしい一年生の女子が座っていて、その隣には何度か小森さんと一緒に当番をしているのを見かけた二年生の男子がいた。
「こんにちは、江川君」
「うっす、小森先輩」
先輩に対して「うっす」で済ませる彼をどうかと思うけれど、小森さんはまったく気にしていないようだった。
僕たちは窓際のテーブルに座り、それぞれ教科書やノートを広げた。
「今日はちゃんと勉強しようね」
長谷部さんがそう言った直後から、東田がため息をついている。
「古文って、わかんない」
「まだ何もやってないじゃん」種村が突っ込む。
「だから、わかんないの」
「意味わかんないよ、奈央」種村は呆れたように笑う。
それでも最初のうちは、みんな真面目に勉強していた。
僕も問題集を進めていたけれど、三十分ほど経ったところで東田が顔を上げた。
「ねえ、ちょっと休憩しない?」
「もう?早くない?」
「だって疲れたもん」
「まだ三十分しか経ってないよ」
「三十分「も」だよ」
東田の言い分に、僕たちは思わず笑ってしまい、結局少しだけ休憩することになった。
ちょっとのつもりが最近の学校のことや、新しいクラスのことを話しているうちに、勉強のことはすっかり頭から抜けていた。
東田が何か話して、種村が突っ込み、石田が笑う。育美も時々話に加わり、小森さんはみんなの話を聞きながら楽しそうに笑っている。
気がつけば、教科書を開いているだけで、誰も問題を解いていなかった。
「そういえばさ」東田がふと思い出したように言った。
「みんな、大学どこ受けるの?」
「急に進路の話?」
「だって三年生だよ? もうそろそろ決めないと」
東田の言葉に、僕は少し考えてから答えた。
「僕は、前にも話したけど、大学に行くつもり。志望校もだいたい決めてるよ」
「長谷部も同じなんだっけ?」と石田が言う。
「うん、そうだよ」育美が頷く。
「僕と育美は、同じ大学の同じ学部を目指してる」
「二人ともすげえな」石田が素直に感心したように言った。
「取りたい資格は違うけど、大学に入ってから勉強したいことも、だいたい同じだから」僕がそう言うと、石田は「へえ」と頷いた。
「じゃあ、アツミンはもう決めてるの?」東田が種村に聞いた。
「アタシは、自宅から通える大学の経済学部。そこが第一志望かな」
「この前の模試、どうだった?」僕が聞くと、種村は少し得意そうに答えた。
「B判定」
「おお」
「まあ、まだこれからだけどね」
そう言いながらも、種村の表情は自信があったあり気だ。
「じゃあ石田も、種村と同じ大学を目指してるの?」僕が聞くと、石田は少し悔しそうな顔をした。
「俺も同じ模試を受けたんだけど……D判定だった」
「Dか」
「やっぱこのままじゃ厳しい。でも、夏休みに追い込んで、なんとかレベル上げるつもり」
「まだ時間あるし、絶対間に合わせる」石田はそう言って、拳を握るような仕草をした。
「アタシも期待しすぎない程度に応援してるからさ」種村が笑った。
「おう……って期待し過ぎないってなんだよ」
「まぁまぁ二人とも」僕は一応なだめ役をやってみた。
「……でもさ」種村は少しだけ言葉を濁した。
「うちら、部活もあるじゃん」
「そりゃあるさ、大会もあるし、三年の俺らには最後の大会が」
「地区予選で負けたら、夏休みは勉強に集中できるけど……」そこまで言って、種村は石田を見る。
「まあ、石田は勝つつもりなんでしょ?」
「そりゃもちろん」石田は迷いなく答えた。
「最後の大会だしな」
「……だよね」種村は複雑な表情を浮かべた。
たぶん、種村は石田には、部活は最後まで頑張ってほしい。でも受験のことを考えれば、できるだけ早く引退して勉強に集中してほしい。どちらも本当の気持ちなのだろう。
「奈央ちゃんは……」小森さんが東田に話を振った。
「奈央は短大で幼稚園の先生を目指すんだよね」種村は東田から聞いていたようだ。
「うん。ワタシは短大」東田はあっさり答えた。
「二級だけど幼稚園の先生の資格も取れるし、卒業したら早く働けるから」
そこで少し考えるようにしてから続ける。
「うち、弟も大学行きたいって言ってるしさ。家から二人とも大学ってなると大変じゃん。だからワタシは短大にする」
「まあ、あんまり勉強したくないしね」最後はいつもの調子に戻って笑った。
「東田らしいな」石田が笑う。
「でしょ?」東田も笑い返した。
「そう言えば早田と悠木はすごいな。二人とも国立狙って、進学塾にも通ってるんだろ?」
「うん。そうみたい」
「ワタシには無理だわ」東田は本当に感心しているようだった。
「ところで、ココロンは?」そう言って、東田は小森さんを見る。
「もう決まった?」
「え……」小森さんは少し戸惑ったように瞬きをした。
「まだ、ちゃんとは決めてないけど……」 しばらく考えてから、小さな声で続けた。
「文学部のある大学を、いくつか受けるつもり」
「ココロンは文学部志望なんだ」
「うん。本を読むのが好きだし……大学でも、そういうことを勉強してみたいから」
「なるほど~」とみんなが頷いている。小森さんも笑っていたけど、さっきまでとは少しだけ違う表情のような気がした。
内田君と長谷部さんは同じ大学、同じ学部。敦美ちゃんと石田君も同じ大学を目指している。
奈央ちゃんは短大から幼稚園の先生になる。早田さんとやよいさんは、二人とも国立大学を目指している。
私は……。誰とも同じではない。
そう気づいた途端、私は胸の奥が少しだけ重くなるのを感じた。三年生になってクラスが別れても、こうやって集まって図書館で一緒に勉強出来たりもする。
でも、大学に行ったら……みんながそれぞれ違う大学へ行けば、今みたいに集まることはできなくなる。
自分だけではなく、みんなの進路が、急に遠い未来の話ではなくなったような気がした。
このまま、みんなと少しずつ離れていってしまうのかな。
「……ココロン?どうしたの?」奈央ちゃんの声で、私は顔を上げた。
「え、なに?」
「いや、ぼーっとしてたから」
「ううん。大丈夫。それより、勉強を再開しようか」」私はもやもやした気持ちを切り替えたかった。
「えー」
「勉強会の言い出しっぺは東田だろ?」石田君が突っ込む。
「そうだったっけ?」
またみんなで笑った。
けれど胸の中には、さっきまでなかった小さな不安が残っていた。
結局、勉強会はその後もほとんど勉強にならなかった。
進路の話からそれぞれのクラスの話に戻り、また別の話題になり、気がつけばかなりの時間が経っていた。
江川君がカウンターから声をかけてきた。
「先輩方、そろそろ閉めますよ」
「え、もう?」奈央ちゃんが驚く。
「今日は閉館時間、いつもより早いんで」
「そうなの?」
「はい」江川君はそれだけ言うと、貸し出しカウンターの片付けを始めた。
「じゃあ、帰ろうか」長谷部さんが立ち上がり、みんなも帰り支度を始める。
「今日は当番、ご苦労さま」
私はカウンターに向かい、一年生の女子に声をかけると、彼女は少し緊張したように頭を下げた。
「いえ、大丈夫です。ありがとうございます」
ふと横を見ると、江川君が使っているパソコンの画面が目に入った。
前に見ていた新刊紹介のサイトではなく大学のホームページだった。それもタイトルバナーに文学部と大きく書かれている。
「……この大学」地元から通える大学で、文学部があることも以前から知っている。
なぜ江川君がそのページを見ているのかまでは気にしなかったけど、なんとなく大学の名前だけが頭に残った。
「ココロン、帰るよ~」奈央ちゃんの声が聞こえる。
「うん、今行きます~」私はパソコンから目を離し、みんなのところへ戻り図書室を後にした。
帰り道は、一応気を使って、内田君と長谷部さん、敦美ちゃんと石田君とは別れて、奈央ちゃんと二人で楽しく帰ったけど、もやもやした気持ちはなんとなく残っている気がした。