それぞれに進んで行く仲良しJK達のお話(いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 セカンドシーズン) 作:シン_クワちゃん
深夜に早田さんとメッセージした次の日、私は朝から落ち着かなかった。
今日は一緒にお昼を食べることになっている。
なかなか踏ん切りがつかなくて遅い時間になってしまったが、相談したいことがあるとメッセージを送ったら、速攻で早田さんからも相談したいことがあると言われて、今日は二人でお昼を食べながら話をする。
そう言えば、去年の水着を買いに行った時も、早田さんが「今日これから行きましょう」と言って買いに行ったっけ。早田さん意外とせっかちかも。
それはいいとしても、私からの相談事、夏休みにみんなで集まって遊びたい。勉強が忙しいだろう早田さん、そしてやよいさんにも来て欲しい。そんな自分の思いが断られたらどうしようと思うと、朝からおなかが痛くなってくる。
午前中の授業も、ほとんど頭に入ってこなかった。
お昼のチャイムが鳴り、教室はお昼休みのざわつきが始まる。
ものの五分もしないうちに、前の入口から出ようとしていた人たちの足が止まる。
「おい、あれって……」
「誰が目当てで来たんだ?」そんな男子の声が聞こえた。
「小森さん」入り口から、早田さんが少し緊張したような顔で声をかけてきた。
すると、「なんだ、お目当ては女子か」なんて声まで聞こえてきた。
私は急いでお弁当を持って、入口に向かった。
「あ、あの、早田さん。中庭に行きましょう」
「え、ええ、そうね。今日は天気がいいから、暑いかもしれないけど」
「私、木陰になるところを知っているので、そこで」私はそう言うと、早々に教室を出た。
途中、購買の近くで、内田君と長谷部さんがパンを持って歩いてくるのとすれ違った。
「あ、小森さん。それに早田さんも。お久しぶり。珍しい組み合わせね?」
「小森さんに相談したいことがあって、中庭で一緒にお昼をいただきながら話すつもりなの」
「はい、中庭のベンチで食べようかと思ってて」
「そうなんだ。ねぇ雄太。今日は屋上に行きましょうよ」
「え? あ、うん、そうだね」
長谷部さんはそう言うと、内田君を連れてそのまま行ってしまった。気を使ってくれたんだと思う。
私たちは中庭の木陰にあるベンチに座り、お弁当を広げた。
とりあえず一口食べて、私から話し始める。
「それで、早田さん。相談というのは……」
「いえ、まず小森さんのお話からで」
「あ、なんか早田さんが相談っていうのが気になって……」
「小森さんの方が先に相談したいことがあるってメッセージくれたでしょう?」
「そうですけど、早田さんも相談したいことが……」
「それは後で大丈夫よ」
「そうですか……」私はお箸を持ったまま、少しだけ深呼吸した。
「あの……」
「ええ」
「この前、中間テストの前に、みんなで集まって勉強したんです」
「みんなって?」
「奈央ちゃんと、種村さんと、石田君と、内田君と……」
「そうだったのね」
「そのときに、みんながどこの大学に行きたいとか、そういう話になって……」
「ええ」
「それで、もしみんなが、それぞれ希望しているところに行けたら、高校を卒業した後は、別々になるんだなって思って」
「……そうでしょうね」
「大学とか、進むところが違ったら、きっと今みたいには会えなくなると思うんです」
「そうね……」
「だから、その……」ここまで言って、言葉が止まった。
やっぱり言うのが怖い。でも、言わなかったら何も変わらない。
私は顔を上げて早田さんを見た。
「夏休みに一日くらい、みんなで集まって遊べたらいいなって思って」
早田さんは黙って私を見ている。
「受験勉強で、もっと忙しくなる前に……。みんなでどこかに行ったり、遊んだりする時間を作りたいなって」
「そうなのね」
「それで……早田さんと、やよいさんが来てくれるかどうかを、先に聞いておきたくて」
「どうして私とやよいさんが先なの?」
「だって、二人が一番勉強で忙しいと思うから……」
「だから、その……無理なら、全然いいんです。みんなの予定が合わなかったら仕方ないし。でも、私は……」
私は一度、言葉を切った。
「私は、みんなと一緒に遊びたいです」
早田さんは、少し驚いたような顔をしていた。
「小森さん」
「はい?」
「すごいわ」
「え?」
「私ね、小森さんはもっとおとなしい人だと思っていたの」
「やっぱり……ですよね」
「ごめんなさい。悪い意味ではないのよ」
「はい」
「でも、今の小森さんを見ていたら、私が勝手にそう思っていただけなんだって分かったわ」
「そう、ですか?」
「ええ。ちゃんと自分がしたいことを考えて、それを私に伝えてくれたでしょう?」
「……はい」
「それって、簡単なことではないと思うわ」
私はなんだか照れくさくなって、お弁当の卵焼きを箸でつついた。
「じゃあ……来てくれますか?」
「ええ。日程を合わせて、ぜひ参加したいわ」
「本当ですか?」
「もちろん」
「よかった……」思わず声が出た。
早田さんが少し笑った。
「私も、みんなと遊びたいと思っていたから」
「じゃあ、やよいさんにも聞いてみますね」
「ええ」
「みんなの予定も聞いて、何をするかも考えないと……」
「ふふっ」
「え?」
「小森さん、もう次のことを考えているのね」
「あ……」
そう言われると、ちょっと恥ずかしい。
「でも、楽しそうね」
「……はい」
「ぜひ、一緒に遊びましょう。こころさん」
「え?」私は思わず顔を上げた。
早田さんが、少しだけ照れたように笑っている。
「……はい。沙織さん」自然に、そう呼んでいた。
「それで、沙織さんの相談って?」
「ええと……」今度は沙織さんが少し困ったような顔をした。
「実はね……通っている進学塾で、別の高校の男の子と話すようになったの」
「男の子……?」
「あ、あの、突然声をかけてきたとかじゃなくてね」
「はい」
「私が、その、スマホを教室に忘れて帰ろうとしていて、その人が届けてくれたの」
「え、沙織さんが忘れ物?……すみません。それで?」
「それから、廊下でスマホを見ながら歩いていたら、ぶつかったのがその人で、同じ授業も受けているから、だんだん話すようになったのよ」
「どんな感じの人なんですか?」
「すごく穏やかで、話しやすい人なの」
「うん」
「それに……私が話すのをちゃんと聞いてくれて」
「そうなんですね」
「私がうまく話せなくても、急かしたりしないで待ってくれるの」
「……優しい人ですね」
「ええ。だから、男子と二人で話すのって、こんなに楽しいんだって初めて思ったの」
「……沙織さんて意外と……いえ、なんでもないです。それで?」
「いつも話のきっかけは、その人の方から作ってくれるんだけど……」
「はい」
「私からも、話すきっかけを作れたらいいなと思って」
「なるほど」
「でも、どうしたらいいのか分からなくて」
「えっと……」
私はしばらく考えた。沙織さん、こんなことを私に聞くの?私のキャラ分かっているよね?
そんなことを相談されても、私だって男子と二人で話したことなんて、ほとんどない。
「どうして、その相談を私に?」
「やよいさんは……ちょっと相談しにくいの」
「同じ塾だから?」
「ええ。同じ授業を受けているのよ」
「そうなんですね」
「種村さんや奈央さんは、男子に平気で話しかける人だと思うけど……」
「うん、そうですね」
「あの気さくな感じは、私にはちょっとハードルが高いって思っちゃって」
「まぁ、確かに」
「それと、長谷部さんみたいに自分からどんどん行くなんて、とても無理だし」
「……なるほど」
「だから、こころさんなら……私と同じくらいかなって」
「同じくらいですか……」
「男子と話すの、得意じゃないでしょう?」
「……まあ、そうですね」
実際十七年間生きてきて、彼氏がいたとか片思いしたなんて言う経験もなく、男子と二人で話すことなんて、ほとんどしたことがない。しいて言うなら、江川君くらいか。
江川君との会話……。
ダメだ。
彼は全然穏やかで優しい人じゃない。思い切りぶっきらぼうじゃん。その人とは多分タイプがまるで違う。
まぁ江川君は別に嫌な人ではない。後輩だし、図書室で一緒に当番をしていても気を使わなくていいし、話していても疲れない。
……でも、それを沙織さんの相談に使えるかというと、やっぱり違う気がするけど。
私はもう一度、沙織さんを見た。清楚で、美人で、成績優秀。
そんな沙織さんが、男子にどう話しかけたらいいのかと真剣に悩んでいる。
なんだか、かわいいなと思った。
「あの……アドバイスになるか自信はないのですけど」
「ええ、聞かせて」
「相手に聞こえるくらいの声で、独り言を言ってみてはどうでしょう?」
「え?」
「独り言です」
「独り言?」
「はい。話しかけるんじゃなくて、今、自分が思っていることをつぶやくだけです」
「それで、話ができるの?」
「お話を聞く限り、その穏やかそうで優しそうな男子なら、沙織さんのつぶやきを聞いたら、思っていることを汲んで、話を始めてくれると思いますよ」
「そっか……な?」
「多分……いえ、きっと」
「そっか、そっか~」
沙織さんが、いつもより少しだけ幼く見えるような顔で笑った。
この人、本当に自分のことになると分かってないみたい……。
意外とかわいくて、実は結構ポンコツだ。
「きっとうまくいきますよ、沙織さん……多分ですけど」
「多分……それくらいなら私でもできるかも」
「まずはお試しということで……」
「そうね……ありがとう、やってみるわ、こころさん」
沙織さんが私を見てそう言った時、私は初めて沙織さんと向き合って話をしたんだと感じた。
だからかな、私も嬉しくなって気持ちが溢れるように笑っていた。
とある土曜日の午後、市の体育館では高校バスケットボールの大会が行われていた。
わが校のバスケットボールチームは二回戦を戦っていた。ここで勝てば準決勝進出だ。
「イシダー! 頑張れー!」ワタシは客席から声を張り上げた。
あいつはコートを全力で走り回っている。
ワタシのいる卓球部は地方予選の準々決勝で団体でも個人でも負けてしまった。
石田には、ワタシの分まで頑張ってほしいと思っていた。
途中でスリーポイントシュートを決めたりもしたけど、最後は惜しくも負けてしまった。
これで、二人とも高校の部活は終わることになる。
客席から出たワタシは体育館正面入り口の横にあるカフェに入り、石田にメッセージを送った。
彼には、もっと部活を頑張ってほしいと思っていた。でも、これからは二人とも受験勉強を頑張らないといけない。
ワタシも大会で負けたときは、もちろん悔しかった。でも、どこかでこれで勉強に集中できるって安心していたのも事実だった。
負けが決まった時、正直涙は出なかった。
自分なりにやり切ったからだと思う。というか、試合に負けて泣いたのは、初めての試合で負けたときだけだ。
そういえば、あれがきっかけで石田はワタシのことを好きになったんだっけ。
そこまで考えて、ワタシは自分がにやけていることに気づいた。
「……何にやけてんだ、ワタシ」
「みんな!お疲れ様でした!」
体育館の入り口から声が聞こえてきた。バスケ部が解散したらしい。
少しして、石田がカフェにやってきた。
「お疲れ様」
「おう」
意外と、石田はサバサバしていた。
「悔しいけど、やっぱりあの高校は強いわ。全国狙ってるだけある」
「うん、そうだね」
「もうちょっと進めたら、かっこよかったんだけどな」
「でも、ワタシたち、部活もちゃんとやったよね」
「ああ。自分なりにやれるだけやったと思う」
「うん、二人とも頑張った」
石田は少しだけ黙ってから、窓の外を見てつぶやいた。
「まあ、明日からは勉強だけどな」
「うん、しっかり切り替えていこうね」
「がっつり勉強して、D判定を覆してやる」
「おお、言うね」
「言うだけじゃないぞ。夏休みは予備校も行く」
「〇×予備校だよね?」
「ああ。明日、申し込んでくるよ」
「じゃあ、二人で予備校に行って、帰りにアイスね」
「おう。もちろん」石田は笑った。
「最後まで一緒に付き合ってくれよ」
「え?」思わず聞き返した。
「最後まで?」
「あ、いやいや」石田君が慌てて手を振る。
「少なくとも、合格発表まではっていうことで」
「ふ~ん」
「……なんだよ」
「そこまででいいんだ?」
「え、あ……いや、そうじゃなくて……」
「ふふっ、そうじゃないってことはいつまでよ?」
「勘弁してくれよ」
「うん。勘弁してあげる」
「じゃあ、帰るか」
「うん」私たちはカフェを出た。
部活は終わった。ネットで仕切られた体育館で二人が過ごすことはもうないのかもしれない。
でも、まだ一緒に帰ることはできる。これからは、二人で勉強する。そして、帰りにはアイスを食べる。そんな毎日は、もう少し続きそうだった。
その日の夜、こんな会話がなされていた。
(こころ)やよいさん、こんばんは今話せますか?
(やよい)お、こころじゃん、おひさぁ、どした?
(こころ)実は相談がありまして
(やよい)なになに、もしかして恋の相談?
(こころ)いえ、全然そんなことではなくて
(こころ)夏休み、一日だけでいいんですけど、みんなで遊びに行きたいなって思って
やよいさんにも都合をつけてもらえないかと
(やよい)なに、こころが言い出しっぺなん?
(こころ)うん、そう、それで沙織さんに話したら行きたいって言ってくれて
(やよい)え、沙織にも話したの?しかもOK?
(こころ)そう、だからやよいさんも来て欲しいなって
(こころ)もちろん、奈央ちゃんや種村さんなんかにも声をかけるつもりです
(やよい)うんうん、私もOKだよ
(こころ)多分、沙織さんとやよいさんが一番忙しいかなって思って
(やよい)そだね。じゃあ今度塾で沙織と話して空けられる日とか決めてメッセするよ
(こころ)はい、じゃあ連絡待ってますね
(やよい)おけおけ
(やよい)で、恋の相談はないの?
(こころ)え?ないですよ、まったく
この後、軽く三十分はメッセージが続いたそうです。