それぞれに進んで行く仲良しJK達のお話(いつの間にか、いつもつるんでる仲良しJK達のお話 セカンドシーズン) 作:シン_クワちゃん
夏休みに入り、それぞれの受験を控えた夏が始まった。
沙織さんとやよいさんは進学塾の夏季集中コースを受けている。内田君と長谷部さんは△□予備校。私と種村さん、石田君は〇×予備校。奈央ちゃんは、市民ホールの自習室に行くことにしたらしい。
程度の差こそあれ、みんな受験に向けて頑張っている。
そんな中、私はみんなの夏休みの予定を聞き、「みんなで過ごす一日」のために動き始めた。
沙織さんとやよいさんからは、いくつかの候補日を教えてもらっているし、予備校が始まった内田君と長谷部さんからも、行けそうな日を教えてもらった。種村さんと石田君には、予備校の帰り道に聞いてみたし、奈央ちゃんは基本的に大丈夫、都合はつけるということだった。
みんなの予定を合わせていくと、8月の夏休み最後の土曜日なら、全員の都合が合うことが分かった。
グループにそれを送ったところ、みんなは賛成してくれて、その日にすることに決まった。
何とかみんなの予定が合って、私はすごく嬉しかった。
そして、次に考えなければいけないこと。それはその日に何をするかだ。
まず私は奈央ちゃんに相談してみた。
(こころ)奈央ちゃん、こんばんは、今いい?
(奈央)やっほ~大丈夫
(こころ)みんなと会う日が決まったよね
(奈央)うんうん、土曜日
(こころ)その日は朝からでも大丈夫みたいだけど、なにが出来るかな?
(奈央)うーん、夏だし海かな?
(こころ)でも最後の土曜だし、もう海水浴は出来ないかも
(奈央)そっかー
(奈央)カラオケとかスポッチャとかだと、ふつー過ぎるよね
(こころ)そうだね、せっかくだからもうちょっと凝りたいかも
(奈央)たとえば?
(こころ)映画とか見てショッピングとか?
(奈央)ココロンそれじゃ、ふつーのデートじゃん
(こころ)ですよね
(奈央)せっかくだし、もう少しみんなで楽しめるものがいいかな
(こころ)それはもちろんなんだけど……
奈央ちゃんとあれこれ考えてみたけれど、なかなかいい案は出てこなかった。
その日は、もう少し考えてみようということで終わりにした。
そして私は受験生だ。予備校に行って、勉強をして、家に帰る。志望校のことを考えたり、夏休みの課題を進めたりする。
そんな中で気がつけば何日か経ってしまった。
休憩中にスマホで検索みたり、行き帰りの電車の中で考えてみたりもした。
でも、なかなかこれというものが思いつかないし、考えれば考えるほど、分からなくなってきた。
ある日の夜、私は机に向かったまま、色々考えてみたけど、どうにも手詰まりになってる。
「……何かヒントが欲しいな」
そう思ったとき、ふと江川君の顔が浮かんだ。
江川君なら、私とは違うことを言ってくれるかもしれない。私は江川君にメッセージを送った。
(こころ)江川君こんばんは、今話せる?
しばらくして返事が来た。
(江川)何すか?
(こころ)ちょっと相談したいんだけど
(江川)相談?俺にっすか?
(こころ)そうなの。私、二年生の時から仲良くしてる友達のグループがあるのね
(江川)前に図書室で一緒に勉強してた先輩達っすか?
(こころ)そうそう
(江川)男一人に女子三人とか、ハーレムみたいなやつ
(こころ)全然違うから、内田君は長谷部さんが彼女だし
(江川)はぁそれで、なにが聞きたいんっすか
(こころ)あの時図書室に来ていた以外にもメンバーがいて、全部で八人なんだけど
(江川)八人?
(こころ)夏休みの最後の土曜日に、みんなで一日遊びに行くことになったんだけど、
何をするか決められなくて
(江川)決められない、ってことは小森先輩が決めるんっすか?
(こころ)そういう訳でもないけど、できれば私が提案したいかなって思って、それでね
(江川)あ、小森先輩
(こころ)なに?
(江川)文字打つの面倒なんで、通話でいいっすか?
私が返事をする前に、呼び出しベルが鳴ったので、慌てて出た。
「あ、はい。小森です」
「すみません小森先輩、俺、文字打つの遅いんで」
「うん、大丈夫と言うか、ごめんね」
「もうここまで来たらいいすっよ、それで遊びに行くってことですよね?」
「そう、みんなが集まる日の都合をつけてくれて、一日朝から動けるの」
私は今まで考えていたことを江川君に話した。
「普段でもできそうなことじゃなくて、できれば思い出に残るようなことがしたくて……。それと、あんまり混んでないところがいいかなって」
「ちょ、ちょっと先輩、贅沢すぎです」
「そうかな……」
「第一、俺、陰キャなんで、そんな陽キャのイベントなんて思いつかないっすよ」
「でも、具体的に何をするかじゃなくてもいいから。何かヒントになるようなこととか」
「ヒントっすか……」
少し間があった。
「電車とかで、ちょっと遠くまで行くとか」
「遠く?」
「はい。普段行かないようなところ。あと、海水浴場みたいにシーズンの後半で終わりかけの場所なら、そんなに混んでないかもしれないし」
「でもそれじゃあ泳いだりできない……」
「砂浜で遊ぶだけとかなら出来るかと思うっす。あと、朝から行くなら、お昼ご飯がおいしいところとか」
「お昼ご飯……」
「それと、受験生なんだから、なんか縁起がいいところでもいいんじゃないっすか、なんかのパワースポットとか」
「縁起がいいところ……」
「まあ、思いついたのはそんな感じですけど」
「うん、ありがとう。考えてみる」
そうして、通話を終えた。
その夜に、考えがまとまることはなかったけど、江川君の言葉は頭の中に残った。
少し遠くへ行く。シーズンの後半。お昼ご飯がおいしいところ。縁起がいいところ。
それから何日か、予備校へ行く電車の中や、勉強の休憩中にも、時々そのことを考えた。
少し遠くへ行くなら、どこがいいだろう。夏の終わりなら、まだ夏らしいところがいいし、海なら、まだ夏休みらしい。
海水浴をするには遅いけど、砂浜で遊ぶだけでも、みんなで行けば楽しそうな気がする。
海まで行くなら、お昼は海鮮がいい。そのあとで、縁起のいい場所。
「……神社」ふと、そう思った。海の近くにあって、合格祈願ができるところ。
私はスマホで調べてみた。
小洗海水浴場と小洗海鮮市場。それに小洗磯前神社。徒歩で移動できるし、場所までは電車とバスを乗り継いで行ける。朝から出れば、一日過ごせそうだった。
少しずつ、頭の中でバラバラだったものがつながっていった。
朝集合して、電車とバスで小洗海水浴場へ行く。もう海水浴はできないけれど、砂浜で遊ぶ。
そのあと、隣の小洗海鮮市場でお昼ご飯にスペシャル海鮮丼を食べる。そして、小洗磯前神社に行って合格祈願をする。
これなら、いいかもしれない。
普段ならなかなか行かないところで、みんなで一日過ごせる。受験生だし、神社で合格祈願もできる。
私は何度か頭の中で一日の流れを思い浮かべた。
自分では、結構いいアイデアだと思う。でも、本当にみんなが楽しんでくれるかは分からない。
私は少し迷ってから、奈央ちゃんにメッセージを送った。
(こころ)奈央ちゃん、今いい?
(奈央)ココロン!なーに?いいよ
(こころ)みんなで何をするかって、ちょっと考えたんだけど
(奈央)おーなんか思いついた?
(こころ)こんなのはどうかな?
私は考えた一日の予定を送った。
『朝、みんなで集合して、電車とバスで小洗海水浴場に行く。海水浴はもうできないけど、砂浜で遊ぶ。そのあと、小洗海鮮市場でスペシャル海鮮丼を食べる。それから小洗磯前神社に行って、みんなで合格祈願する』
送信してから、少し不安になった。変じゃないかな。みんな、楽しいと思ってくれるかな。
しばらくして、奈央ちゃんから返事が来た。
(奈央)すごい!
(奈央)すごいすごい!
(こころ)え?
(奈央)めっちゃいいじゃん!
(こころ)本当?
(奈央)海で遊んで、海鮮丼食べて、最後に合格祈願でしょ?
(こころ)うん
(奈央)今の私たちにぴったりじゃん!
その言葉を見て、少しだけ肩の力が抜けた。
(こころ)ありがとう
(奈央)こっちこそありがとうだよ!
(奈央)色々考えてくれたんだね
(こころ)みんなが一日空けてくれたから
(奈央)絶対みんな喜ぶよ!
私はスマホの画面を見ながら、少し笑った。
自分でも、いいアイデアだと思っていた。でも、そう言ってもらえると、やっぱり嬉しかった。
(こころ)じゃあ、みんなに提案しますね
(奈央)うん!
それから、場所やルートを調べたり予定を立てていく。
ルートのことで江川君にまた相談したら、特急に乗るとか、特急の座席指定券の取り方とか、目的地の路線バスの時刻表とか詳しく教えてくれた。江川君ってもしかして乗り鉄?
奈央ちゃんとも、ああでもない、こうでもないと言いながら予定を組んでいく。
みんなにも予定を送ると、反対する人はいなかった。
敦美ちゃんからは、『楽しみだね』と返ってきた。
石田君は、『海鮮丼、うまそう』と書いていた。
長谷部さんは、『合格祈願まで行くんだ。なんか受験生っぽいね』と笑っていた。
沙織さんとやよいさんからも賛成の返事が来た。内田君も大丈夫だという。
これで決まった。夏休み最後の土曜日。みんなで小洗へ行く。
それからの日々も、いつも通りだった。予備校へ行って、勉強して、家に帰る。受験のことを考えたり、志望校のことを調べたりする時間も増えていった。
でも、夏休みの最後にみんなと過ごす一日が待っていると思うと、少しだけ気持ちが軽くなった。
そして、当日、待ち合わせの駅にみんなが集まった。
「おはよう!」奈央ちゃんが手を振っている。みんなが揃っていく。
普段なら学校へ行くために乗っている電車に、今日はみんなで乗り込む。
「じゃあ、出発進行!」奈央ちゃんの声と共に、電車が動き出した。
窓の外の景色が、少しずつ流れていく。今日は、受験のことを考えるのは少しだけ休もう。
今日だけは、みんなと一緒に、楽しく過ごしたい。心躍る一日が始まる。