Army,Army,Army,Army,Army 作:日向 史
西方共和国陸軍総司令部は、蜂の巣をつついたような騒ぎであった。
なにせ宣戦布告と同時の侵攻開始。ほとんど奇襲のような攻撃であったからだ。
最初に戦闘状態に入った東部方面軍の第3ユニットは、スリース軍の強烈な攻撃に晒された。
スリース全軍 対 第3ユニットの構図である。
開戦一時間で損耗率が二割を超えた、という報告が総司令部へ上がってくる。
第3ユニットには背後に守るべき【メッツ】という都市があった。
彼らは自国の領土と国民を守るべく奮闘した。
しかし、悲しいかな。局地的戦力差は明らかであった。
参謀本部の作戦参謀が報告する。
「東部方面軍より具申です! メッツ防衛は困難。第3ユニットを市街南方へ後退させたいとのことです」
作戦参謀総長であるレオンは、戦況図を見つめるルイのもとへ向かった。
「東部方面軍の第7、第12ユニットは既に、軍司令部の指示により、第3ユニットの救援に向かっております」
「それぞれ、到着時間は?」
「第7ユニットは、約三時間後。第12ユニットは、約五時間後です」
「……第3ユニットを失うわけにはいかない。メッツは手放すしかない。後退を許可して」
「かしこまりました」
レオンはすぐに作戦参謀へ、第3ユニットの後退を許可する旨を伝える。
それは、即座に作戦参謀から、東部方面軍司令部へ伝わる。
「攻撃の規模から見て、スリースは、ほぼ全軍をメッツへ向けていると考えていいね?」
「はい。おそらく、間違いないかと」
「じゃあ、援軍が足りない可能性もあるね。距離的に近い、北部方面軍の第1ユニットも動かそう。東部方面軍の指揮下に入れて」
「かしこまりました」
レオンが矢継ぎ早に作戦参謀へ指示を飛ばす。
「東部方面軍より報告です。第3ユニットは後退、第7ユニットは退路確保および追撃阻止、第12ユニットは第二防御線の構築に当てる、とのことです」
レオンの手が塞がっているため、作戦参謀次長が、上記の報告をルイに伝える。
ルイが「分かった」と言うと同時、今度はマリーがルイのもとへ来る。
「今は何より速度が重要だと考えます。東部管区の輸送軍は、高速道路の軍用優先枠を確保いたしました。第7ユニットは、基本的に車両にて前線へと送ります。また、国民鉄道との軍用列車の調整を進めております。第12ユニットの一部は、鉄道輸送を行います」
「北部の第1ユニットは?」
「そちらも、既に北部管区の輸送軍が、高速道路および鉄道での輸送計画を進めております。先遣隊は車両で、主力は鉄道で輸送します」
「分かった。あと、主力軍の輸送と並行して、後方三軍を東部へ集中させるように手配して。戦線を押し返す際に必要になるから」
「かしこまりました」
「後方参謀総長、少しここに残って。作戦参謀総長、ここへ」
ルイの声を聞き、レオンはすぐにルイのもとへ来る。
「東部方面軍および東部管区の後方三軍に伝えて。まずは敵の進撃を食い止める。遅滞戦闘に努めるように。また、南部方面軍および南部管区の後方三軍は、担任地域の守備を継続。別命あるまで現配置を維持するように伝えて」
「「かしこまりました」」
「あと、全軍に通達」
ルイは二人の顔を見ながら言う。
「最も革新的な共和国陸軍は、事態に粛々と対応する。皆、為すべきことを為すように。革命を終わらせてはならない、って」
レオンとマリーは、ほのかに笑顔を見せると、
揃って「「かしこまりました」」と、言うのであった。
■
「共和国は侵略者に対して断固とした態度をとります! いかなる国家も、他の国家の主権を脅かすようなことは、あってはなりません! 今こそ共和国の力を結集する時です! 共和国は、共和国市民の手によってのみ守られるのです!」
大統領は官邸で力強い演説を行う。
スリース侵攻の急報に接した国民に対して、共和国の代表者として団結を呼びかける。
「私は、共和国軍最高司令官として、その権限により陸海空軍へ防衛行動を命じました。既に東部地域では、激しい戦闘が繰り広げられております。メッツは敵の手に落ちました。このような暴挙が許せるでしょうか! いいえ! 断じて否です! 許されません! 共和国の地が、他国に踏み荒らされるようなことは、断じてあってはなりません!」
生中継で共和国全土へ伝えられる大統領の言葉は、確かに国民の胸を震わせた。
もちろん、大統領の力強い言葉が胸を打ったのはあるだろう。
だが、それ以上に、共和国が他国から攻撃を受け、侵略されているという事実が、国民の怒りに火をつけたのだ。
このままでは、共和国市民としての誇りが許さない、と。
「既に国民議会も、私の軍に対する命令を承認しました。共和国政府は、今回の事態に対し、挙国一致の体制で臨むことを、ここに誓います! 我々は侵略者を、必ずやギロチンにかけることを約束いたします! 革命を終わらせてはならないっ!」
西方共和国は、共和国市民の誇りと怒りを糧に、凄まじいエネルギーを蓄えていた。