麦わらの一味の炎槍使い   作:リアルサック

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百人の賞金稼ぎと紅き槍 1

夜のウイスキーピーク。

 

宴の喧騒が消えた町に、無数の武器がきらめいていた。

 

百人近い賞金稼ぎ。

 

その中心に立つのは、三本の刀を携えた剣士と、金髪の女槍使い。

 

ロロノア・ゾロ。

そして、ゼタ。

 

二人は背中を預け合うでもなく、それぞれの得物を構えていた。

 

「……ねえ、ゾロ」

「何だ?」

「あんた、どれくらいやれる?」

 

ゾロは口元を吊り上げた。

 

「全部だ」

 

ゼタは一瞬、目を丸くした。

 

そして、楽しそうに笑う。

 

「……言うじゃない!」

 

ゾロは刀を抜いた。

 

「ただし、俺の獲物を横取りするなよ」

「それはこっちの台詞!」

 

二人の前で、賞金稼ぎたちが一斉に武器を構える。

 

その夜。

 

ウイスキーピークの町は、二人の戦士の実力を知ることになる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「……どういうことか、説明してもらおうか」

 

ゾロが静かに言った。

 

目の前に立つ男たちは、昼間まで笑顔で酒を振る舞っていた町民たちだった。

 

しかし、今は違う。

 

手には銃。

腰には剣。

屋根の上には弓や投げナイフを構えた者までいる。

 

「……説明?」

 

男の一人が笑った。

 

「まだ分からねェのか?」

「海賊を歓迎する町、なんて都合のいい話があるわけねェだろ!」

 

ゼタは肩をすくめた。

 

「でしょうね」

「……何?」

「最初から怪しいと思ってたのよ」

 

ゼタはアルベスの槍を肩に担いだ。

 

「海賊を歓迎するって言いながら、武器を持ってるあたしたちばっかり見てたもの」

 

男たちの表情が変わる。

 

「……気づいてやがったのか」

「確信はなかったけどね」

 

ゼタは笑った。

 

「でも、やっぱり当たりだったみたい」

 

そのとき。

 

屋根の上から、一人の男が姿を現した。

 

立派な巻き髪。

 

昼間、町長を名乗っていた男だ。

 

「いやはや……困りましたなァ」

 

イガラッポイは大げさに肩をすくめた。

 

「せっかく気持ちよく眠っていただこうと思ったのですが」

 

ゾロが鼻で笑う。

 

「悪いな。酒には強ェんだ」

「……なるほど」

 

イガラッポイは二人を見下ろした。

 

「では、改めて自己紹介を」

 

彼は両手を広げた。

 

「我々は、秘密犯罪会社バロックワークスの社員です!」

「……バロックワークス?」

 

ゼタが首を傾げる。

 

聞いたことのない名前だった。

 

「海賊を捕らえ、賞金を得る。それがこの町の仕事なのですよ!」

「へぇ」

 

ゼタは小さく頷いた。

 

「つまり、あたしたちを騙して賞金を取ろうってわけ?」

「その通り!」

「……随分と回りくどいことするのね」

「商売ですからな!」

 

ゾロが刀を構え直す。

 

「話は終わりか?」

 

イガラッポイの笑顔が消えた。

 

「……ええ」

 

そして。

 

「全員、かかれ!!」

 

百人の賞金稼ぎが、一斉に動き出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

最初に動いたのは、ゾロだった。

 

「……邪魔だ」

 

一人の男が剣を振り下ろす。

 

ゾロは身体を半歩ずらし、その攻撃をかわした。

続けて、刀の峰で相手を打ち倒す。

 

「ぐあっ!」

 

そのまま、次の敵へ。

 

さらに次へ。

 

一人。

二人。

三人。

 

「な、何だこいつ!?」

「速すぎる!」

 

賞金稼ぎたちが動揺する。

 

ゾロは三本の刀を自在に操り、次々と敵を倒していった。

 

その動きには、一切の迷いがない。

 

「……へぇ」

 

少し離れた場所で、ゼタは感心したように目を細めた。

 

(……やっぱり、強い)

 

ローグタウンで初めて会ったときから、ただ者ではないと思っていた。

 

だが、こうして戦う姿を見るのは初めてだった。

 

刀を振るう速さ。

相手の動きを読む勘。

そして、圧倒的な踏み込み。

 

(……いいじゃない)

 

ゼタの口元に笑みが浮かぶ。

 

(世界一の大剣豪を目指すってのも、伊達じゃないわね)

 

そのとき。

 

「おい、女!」

 

背後から男が斬りかかってきた。

 

ゼタは振り返りもせず、槍の柄を後方へ突き出した。

 

ゴッ!

 

「ぐえっ!」

 

男が地面に倒れる。

 

「……人が見てるときに邪魔しないでよ」

 

ゼタは呆れたように言った。

 

そして、槍を構え直す。

 

「さて……」

 

青い瞳が、鋭く光る。

 

「こっちも始めましょうか!」

 

三人の賞金稼ぎが、ゼタへ向かって突進した。

 

「女一人だ!」

「囲め!」

「槍なんざ、懐に入れば――!」

 

「……甘い!」

 

ゼタが踏み込む。

 

長い槍が、弧を描いた。

 

一人目の剣を弾き、二人目の足を払う。

三人目が背後から迫る。

 

だが。

 

「遅い!」

 

ゼタは槍を回転させ、その柄で男の顎を打ち上げた。

 

「がはっ!」

 

三人が、ほぼ同時に倒れる。

 

「……なっ!?」

 

周囲の賞金稼ぎたちが息を呑んだ。

 

ゼタは槍を肩に担いだ。

 

「……何よ。もう終わり?」

「ふざけるな!」

 

男たちが一斉に銃を構える。

 

「撃て!!」

 

銃声が響く。

 

ゼタはすぐさま身を翻した。

 

弾丸が石畳を砕く。

 

「……っ!」

 

彼女は建物の陰へ滑り込み、敵の射線から外れた。

 

(……銃持ちが多いわね)

 

この世界の銃には、まだ慣れていない。

騎空艇の上でも遠距離攻撃を受けることはあったが、ここまで大量の銃を向けられる機会は

少なかった。

 

「……だったら!」

 

ゼタは槍を握り直す。

 

その穂先に、紅い炎が灯った。

 

「アルベス・フェルマーレ!」

 

紅い光が、槍先に凝縮する。

 

ゼタは一気に飛び出した。

 

「はああっ!!」

 

鋭い突きが、銃を構えた男の武器を弾き飛ばす。

 

続けて、もう一人。

さらに、もう一人。

 

槍先が描く紅い軌跡。

その動きは、まるで炎の舞のようだった。

 

「うわああっ!」

「何だ、その槍!?」

「燃えてるぞ!?」

 

ゼタは不敵に笑う。

 

「これがアルベスの槍よ!」

 

そして、地面を蹴った。

 

「まだまだ行くわよ!」

 

 

「……おい」

 

ゾロが声をかけた。

 

ゼタが振り返る。

 

「何?」

「派手にやってんな」

「そっちこそ!」

 

二人の周囲には、既に大勢の賞金稼ぎが倒れていた。

 

だが、敵の数はまだ多い。

 

「……どうする?」

 

ゼタが尋ねる。

 

ゾロは笑った。

 

「別に。片っ端から倒すだけだ」

「……ふふっ」

 

ゼタも笑う。

 

「分かりやすくていいわね!」

 

そのとき。

 

屋根の上から、複数の男たちが飛び降りてきた。

 

「死ねェェ!!」

 

ゾロとゼタは、ほぼ同時に動いた。

 

ゾロの刀が閃く。

 

ゼタの槍が唸る。

 

互いの攻撃が交差し、敵を次々と打ち倒していく。

ゾロは近距離で圧倒的な斬撃を放ち、ゼタは槍の間合いを活かして敵を寄せつけない。

 

剣と槍。

異なる武器。

異なる戦い方。

 

しかし、その動きには不思議なほど無駄がなかった。

 

「……へぇ」

 

ゼタが笑う。

 

「結構、合わせやすいじゃない!」

「足引っ張んなよ」

「誰に言ってんの!」

 

その瞬間、背後から男が迫る。

 

ゾロが振り返るより早く、ゼタの槍が動いた。

 

「……危ない!」

 

槍の柄が男の腹を打つ。

 

「ぐはっ!」

 

ゾロはちらりと彼女を見る。

 

「……余計な世話だ」

「はいはい!」

 

ゼタは笑った。

 

「次はあんたが助けてよね!」

「必要ならな」

 

二人は再び敵へ向かって駆け出した。

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