夜の町に、悲鳴が響き渡る。
「ぐあああっ!」
「ば、化け物だ!」
「こんな奴ら、聞いてねェぞ!」
賞金稼ぎたちは、次々と倒れていった。
ゾロは三刀流を駆使し、敵の包囲を突破する。
ゼタはアルベスの槍を振るい、遠距離から攻撃してくる敵を制圧していく。
そして。
「……そろそろ終わりにしましょうか」
ゼタが呟いた。
目の前には、最後の一団。
銃を構えた賞金稼ぎたちが、必死の形相で立っている。
「く、来るな!」
「これ以上近づくな!」
ゼタは槍を構えた。
「……だったら、武器を捨てなさい!」
「ふざけるな!」
男が引き金を引こうとする。
その瞬間。
「……遅い!」
ゼタが踏み込んだ。
無数の紅い槍撃が、瞬く間に放たれる。
炎を纏った穂先が、敵の武器を次々と弾き飛ばした。
「うわあああっ!」
銃が地面に転がる。
ゼタはそのまま槍を回転させ、最後の男を打ち倒した。
「……ふぅ」
彼女は息を吐いた。
「……こんなところかしら」
少し離れた場所で、ゾロも最後の敵を倒していた。
「……終わったか」
「みたいね」
ゼタは槍を肩に担いだ。
二人の周囲には、倒れた賞金稼ぎたち。
町は、静まり返っていた。
ゾロは刀を納める。
「……百人、か」
ゼタが笑う。
「なかなかいい運動になったわね!」
「……お前、結構戦闘狂だな」
「何よ! あんたに言われたくないわ!」
二人は顔を見合わせた。
そして、思わず笑った。
そのとき。
「……素晴らしい」
静かな拍手が響いた。
ゾロとゼタが振り返る。
屋根の上に、二つの人影が立っていた。
一人は、黒い服を着た男。
もう一人は、派手な服装の女。
「……誰?」
ゼタが眉をひそめる。
男が笑った。
「我々は、バロックワークスのオフィサーエージェント」
女も続ける。
「Mr.5とミス・バレンタインよ」
「……また変なのが出てきたわね」
ゼタが呟く。
ゾロは静かに刀へ手を伸ばした。
Mr.5は眼鏡を押し上げる。
「まさか、フロンティアエージェントたちがここまで簡単にやられるとはな」
ミス・バレンタインは楽しそうに笑った。
「でも、私たちの目的は別よ」
「……目的?」
ゼタが聞き返す。
Mr.5は静かに言った。
「我々は、組織を裏切った者を始末しに来た」
「……裏切り者?」
その瞬間。
建物の陰から、一人の女が現れた。
青い髪。
見覚えのある顔。
「……ミス・ウェンズデー?」
ゼタが目を見開いた。
彼女は険しい表情で、Mr.5たちを睨みつけていた。
「……あなたたち、もう来たのね」
Mr.5が笑う。
「残念だったな、ミス・ウェンズデー」
そして。
「いや……アラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビ!」
「……っ!?」
ゼタは息を呑んだ。
「……王女?」
ミス・ウェンズデー――ビビは、唇を噛みしめた。
「……そうよ」
その表情には、先ほどまでの陽気な笑顔はなかった。
「私は……アラバスタ王国の王女、ネフェルタリ・ビビ」
ゼタはしばらく彼女を見つめた。
そして。
「……ちょっと待って」
額に手を当てる。
「……何で王女様が、クジラを爆破しようとしてたのよ!?」
その場に、何とも言えない沈黙が流れた。
ゾロが小さく笑う。
「……確かにな」
ビビは困ったように目を伏せた。
「……それには、事情があるの」
「でしょうね!」
ゼタは大きくため息をついた。
「……もう、何が何だか!」
Mr.5が指を鳴らした。
「……話は終わりだ」
ゼタが顔を上げる。
「……何?」
「任務を遂行する」
Mr.5は鼻をほじった。
「……は?」
ゼタが眉をひそめる。
「……何してんの、あんた」
Mr.5は指先についたものを弾いた。
その瞬間。
ドォン!!
爆発が起きた。
「きゃっ!?」
ゼタは咄嗟に飛び退いた。
石畳が砕け、煙が立ち上る。
「……っ!?」
彼女は目を見開いた。
「……何、今の!?」
Mr.5は笑った。
「俺はボムボムの実の能力者」
「……ボムボム?」
「全身を爆弾にできる爆発人間だ」
ゼタは一瞬、固まった。
そして。
「……また悪魔の実!?」
ローグタウンで戦ったスモーカーを思い出す。
煙になる男。
そして、今度は爆発する男。
(……この世界、本当に何でもありね!)
ミス・バレンタインも笑った。
「ちなみに私はキロキロの実の能力者よ!」
「……キロキロ?」
「体重を自由に変えられるの!」
彼女はふわりと空へ浮かび上がった。
「……は?」
ゼタは目を丸くした。
「……浮いた?」
そして、ミス・バレンタインは急降下する。
「一万キロプレス!」
「……っ!」
ゼタは咄嗟に横へ飛んだ。
ドォォン!!
地面が大きく陥没する。
「……ちょっと!」
ゼタが叫ぶ。
「何よ、その無茶苦茶な能力!」
ゾロが刀を構える。
「……面白ェ」
「面白がってる場合!?」
ゼタはアルベスの槍を握り直した。
(……なるほど)
この二人は、先ほどの賞金稼ぎたちとは違う。
明らかに強い。
そして、特殊な能力を持っている。
ゼタは口元を吊り上げた。
「……いいじゃない」
槍先に、紅い炎が灯る。
「やっと、少しは歯応えのある相手が来たってわけね!」
ゾロも笑う。
「……そうだな」
しかし。
そのときだった。
「……待って!」
ビビが叫んだ。
二人が振り返る。
「……お願い! 私を逃がして!」
彼女の声は震えていた。
「私は……どうしても国へ帰らなきゃいけないの!」
ゼタはその言葉に、思わず息を呑んだ。
「……国へ、帰る?」
ビビは必死に頷いた。
「私の国が……危ないの!」
その瞬間。
ゼタの脳裏に、故郷の景色が浮かんだ。
空に浮かぶ島々。
騎空艇。
そして、仲間たち。
(……帰りたい)
その想いは、自分も同じだった。
ゼタは静かにビビを見つめた。
そして。
「……分かったわ」
アルベスの槍を構え直す。
「事情は後で聞く」
ビビが目を見開く。
「……え?」
ゼタはにっと笑った。
「今は、あんたを逃がす方が先でしょ!」
ゾロが横目で彼女を見る。
「……勝手に決めんなよ」
「何よ。反対?」
「……いや」
ゾロは刀を構えた。
「どうせ、こいつらも敵だ」
ゼタは笑った。
「……そうこなくっちゃ!」
二人の前に、Mr.5とミス・バレンタインが立ちはだかる。
そして、背後には、故郷へ帰るために命を懸ける王女。
ゼタは槍を握りしめた。
(……帰りたい場所がある)
その気持ちは、痛いほど分かる。
だからこそ。
「……悪いけど」
紅い炎が、槍先を包み込む。
「この子には、指一本触れさせないわよ!」