宴が続く中。
ゾロは静かに酒を飲んでいた。
「……ねぇ」
隣に座ったゼタが声をかける。
「何だ?」
「……あんたも気づいてる?」
ゾロは視線を動かさずに答えた。
「……何のことだ?」
「とぼけないでよ」
ゼタは小さく笑った。
「この町、何か変じゃない?」
ゾロは杯を置いた。
「……そうだな」
「やっぱり」
ゼタは腕を組んだ。
「歓迎してくれるのはありがたいけど、ちょっと不自然すぎるのよね」
「……ああ」
ゾロは周囲を見渡した。
「海賊を歓迎する町、か」
「普通じゃないわよね」
「普通じゃねェな」
二人はしばらく黙っていた。
やがて、ゼタが口を開く。
「……どうする?」
ゾロは小さく笑った。
「別に。向こうが何もしなきゃ、こっちも何もしねェ」
「……ふふっ」
ゼタも笑う。
「同感」
そのとき、町民が酒を運んできた。
「お二人とも、どうぞ!」
「おう」
ゾロが受け取る。
ゼタも杯を手にした。
しかし、口をつける前に、彼女はふと手を止めた。
(……あれ?)
微かな違和感。
酒の香りに混じる、何か。
だが、確信は持てない。
ゼタは杯を置いた。
「……悪いけど、今日はもういいわ」
「え?」
町民が驚く。
「せっかくのお酒ですよ?」
「十分楽しませてもらったもの」
ゼタは笑った。
「ありがとね」
町民は少し困ったように笑い、その場を離れた。
ゾロがちらりと彼女を見る。
「……飲まねェのか?」
「……何となくね」
ゼタは小さく肩をすくめた。
「勘よ、勘」
ゾロは口元を緩めた。
「……そうか」
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夜が更ける。
宴は、さらに盛り上がっていた。
しかし、やがて。
「……ぐがー……」
ルフィがテーブルに突っ伏した。
「……もう食えねェ……」
ウソップも床に転がっている。
「……八千人の部下が……」
サンジは椅子にもたれ、眠っていた。
ナミも酒を飲みすぎたように見えた。
町民たちは、満足そうに微笑んでいる。
「皆さん、お疲れのようですね」
イガラッポイが言った。
「どうぞ、ゆっくりお休みください」
ゾロも立ち上がった。
「……おれも寝る」
「……そう」
ゼタは頷いた。
「おやすみ」
「おう」
ゾロは部屋へ向かった。
ゼタも立ち上がる。
「……さて」
彼女は大きく伸びをした。
「ちょっと夜風にでも当たろうかな」
「お部屋をご用意しておりますよ?」
町民が声をかける。
「ありがと。でも、少しだけ外に出たいの」
ゼタは笑顔で答えた。
そして、宴の会場を後にした。
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夜のウイスキーピーク。
昼間の賑わいが嘘のように、町は静まり返っていた。
ゼタは石畳の道を歩いていた。
「……ふぅ」
夜風が、金髪を揺らす。
空を見上げる。
星が瞬いている。
(……やっぱり、空は綺麗ね)
故郷とは違う星空。
それでも、どこか懐かしい。
「……バザラガたち、元気かな」
小さく呟いた。
そのとき。
「……ん?」
ゼタの耳が、微かな物音を捉えた。
足音。
複数。
しかも、こちらへ向かっている。
ゼタは立ち止まった。
(……来たわね)
口元に、不敵な笑みが浮かぶ。
「……やっぱり、そういうこと?」
路地の奥から、武器を持った男たちが現れた。
「……おい、女」
一人が声をかける。
「こんな夜中に何してる?」
「夜風に当たってるだけよ」
ゼタは平然と答えた。
「何か問題ある?」
男たちは顔を見合わせた。
そして、一人が笑った。
「悪いが、ここから先は通せねェ」
「……へぇ」
ゼタはアルベスの槍を肩に担いだ。
「どうして?」
「知る必要はねェ」
男が武器を構える。
ゼタは小さく息を吐いた。
「……まったく」
槍先に、紅い光が灯る。
「せっかくの楽しい宴だったのに」
彼女はにっと笑った。
「台無しにするつもり?」
そのとき。
「……おい」
背後から、低い声が響いた。
ゼタが振り返る。
そこには、三本の刀を携えたゾロが立っていた。
「……ゾロ?」
「お前、こんなところで何してんだ?」
「……それはこっちの台詞よ」
ゼタは笑った。
「寝たんじゃなかったの?」
ゾロは口元を緩めた。
「……寝たふりだ」
「……ふふっ」
ゼタも笑う。
「やっぱりね」
二人は並んで立った。
その前には、武器を構えた男たち。
ゾロが静かに言う。
「……どうやら、歓迎の宴は終わりらしいな」
ゼタはアルベスの槍を構え直した。
「そうみたいね」
金髪が夜風になびく。
紅い槍先が、暗闇の中で輝いた。
「……で?」
ゼタは不敵に笑う。
「何人いるの?」
ゾロも笑った。
「……さあな」
路地の奥から、さらに大勢の男たちが現れた。
屋根の上にも。
建物の陰にも。
武器を持った人影が、次々と姿を現す。
「……へぇ」
ゼタは目を細めた。
「結構いるじゃない」
ゾロは刀を抜いた。
「……ちょうどいい」
「何が?」
「退屈してたところだ」
ゼタは一瞬、彼を見つめた。
そして。
「……あははっ!」
楽しそうに笑った。
「いいわね! あたしも同じこと考えてた!」
二人の戦士が、夜の町に立つ。
その周囲を、百人近い賞金稼ぎたちが取り囲んでいた。
しかし。
彼らはまだ知らない。
目の前の剣士が、後に世界最強の剣豪を目指す男であることを。
そして。
その隣に立つ金髪の女戦士が、別世界で数々の強敵と渡り合ってきた、
アルベスの槍の使い手であることを。