ダイヤのA 〜closer of Diamond〜 作:虹犬β
キィイイイイイイ
けたたましいブレーキ音を上げながら進むワゴン車。
その進行先では見知った少年が呆然と立ち竦む少女を突き飛ばしていた。
少年と自分が立っている場所は距離にして10m 程、その距離を一瞬で駆け抜け、車に引かれそうな少女を突き飛ばすその運動能力は常人離れしたものであったが、そんな彼に出来るのもそれまでだった。
「蓮夜!!」
私は必死になって少年の名前を呼ぶ。
彼ならいつもみたいに何とかしてくれるかもしれない……そんな期待を込めた叫び声。
しかし、車の前に身体を投げ出した形となった状態のまま、時は進み……
ーバタンー
鍛えあげられた逞しい少年の身体がまるで人形のように軽々と宙を舞い、数10メートル先のアスファルトに叩きつけられる。
何度か道路上をバウンドし静止したその身体は横たわったまま一向に動く気配もない。
「あ……あ……」
直ぐに近づいて助けたいのに、馬鹿みたいに呆けた声しか出せない自分。
騒ぎを聞きつけた人たちが集まってくるのをまるでドラマを見ているかのような気分で眺めることしか出来ない。
『ねぇ、一緒に野球やってみない?』
いつも一人だった私に声をかけてくれた彼。
『俺、抑えのプロフェッショナルになりたいんだ。だって、ほら、守護蓮ってかっこいいじゃん!』
突然、訳の分からないことを目を輝かせながら言ってくる彼。
『ゆーい、一軍なれたよ、ブイ』
嬉しそうにVサインを突き出す彼を見ていたら私まで嬉しくなった先日のこと。
彼との思い出が走馬灯のように湧き出てくる。
そんな中でも時は進んでおり、誰かが119番通報して駆けつけた救急隊が彼を運んでいく。
私はそれを見ていることしか出来なかった…………
「お邪魔しまーす……」
もう何日目になるだろう……見慣れた彼の病室。
あの事故から彼は奇跡的に一命を取り留めた。
しかし、全身数カ所に打撲や骨折を負い、野球選手……しかも、投手にとって命とも言える利き腕の肩に最も重度の怪我を負ってしまった。
更に頭も強く打っていたらしく、あの日かた1ヶ月近く経った今でも、意識は戻っていなかったのだ。
「蓮夜、早く起きないと練習始まっちゃうよ?怒られてもいいの?」
毎朝、何百、何千回とずっと昔から彼を起こすために言ってきたその言葉も二人きりの病室に虚しく響くだけであった。
「こ……の……馬鹿……何日寝てるつもりなのよ、私を甲子園に連れて行ってくれるって言ったじゃん……」
あの日から何度目になるかわからない涙を流しながら、いつも見ていた彼の不適な笑顔が帰ってくることを願う……それが私の日課だった。
「じゃあ、また明日……」
そして、今日も彼は目覚めることなく帰ろうとしたその時……
「うぅ……」
「蓮夜?」
「ゆ、唯?ここは……?」
何が起こっているのかまるでわかっていない彼の様子に少しの苛立ちを感じながらも私はそれ以上の喜びで思わず彼に飛びついてた。
「な、なにすんだ……ってあれ身体が……」
抱きついた私を引き離そうとするが自分の体が動かないことに気付き混乱する蓮夜。
そんな彼に私はゆっくり言葉を噛み砕きながらこの失われた1ヶ月について語るのだった。
アトリエかぐやの『プリマ☆ステラ』とのクロスオーバーです。結構無理やりに混ぜるつもりなんで絶対おかしくなるとおもいますが生暖かい目でどうぞよろしくお願いします。