ダイヤのA 〜closer of Diamond〜   作:虹犬β

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第八話 多彩

 

(side 御幸)

 

 

ーストライク!バッターアウト!!ー

 

  123456789 RHE

横学0000000   000

青道0001000   150

 

スコアボードに新たに加えられる0の数字。

それは一人の少年の偉業を表しており……

 

「やべぇぞ、あいつ……」 「あいつ、2年だろ?あんな奴、去年いたか?」 「ほら、夏前に事故に遭ったってニュースあったじゃん」

 

騒然となる球場のマウンドに悠然と佇む蓮夜の姿。

相手打者を見下ろすように君臨するその様はまるで王者のようであり……

 

「ヒャハハハ、ナイスピッチ!蓮夜」 「目立ちすぎ」 「負けてられんな……」 

 

その存在はチームに勢いを与え、相手チームにはプレッシャーを与える。

 

「ナイスピッチングだ、藤井。この試合、お前に任せようと思うがまだいけるか?」

 

「はい!勿論です!」

 

「よし、頼んだぞ」

 

続投の指示を受け、バッターボックスに向かう蓮夜を満足そうに見た後、こちらを見る監督。

 

「藤井はお前達に半年の成果をしっかり示したぞ、お前達はどうだ?」

 

そう言って、部員全体を見渡す監督。

その言葉に幾つもの意味が込められていることに気付き、部員たちの目に闘志が燃え上がる。

 

……確かにな、今日の蓮夜の調子はいいし、点を取られるイメージはない。でも、だからといってこれじゃ、情けねぇよな……

 

バッターボックスに向かった蓮夜の打順は9番、上位打線陣の並々ならぬ気迫(若干、一名はオーラまで見えそうな雰囲気)を感じながら、御幸はベンチに腰を掛ける。ちょうどその時……

 

ーカキーン!ー

 

「入ったー!」 「マジかよ、アイツ、すげー!!」

 

金属音が鳴り響き、一瞬後に会場に割れんばかりの歓声が上がる。

 

「おいおい……」

 

視線の先には高々と拳を突き上げながらダイヤモンドを周る蓮夜の姿。

 

「一人で目立ってんじゃねー、馬鹿野郎!よくやったー!」 「…………」 「ヒャハ、アイツやりやがった」

 

火に油を注ぎ込むかのような蓮夜の活躍にある者は静かに闘志を燃え上がらせ、ある者は自分を鼓舞するかのように吠え立てる。

ピッチングだけではなくバッティングでもチームを引っ張ろうとする相棒に頼もしさを感じながらも御幸は周りと同様、蓮夜への対抗心を胸の中で燃え上がらせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(side 春市)

 

「「「あと2人!あと2人!!」」」

 

「わー、会場中が青道の味方だよ。凄いね、藤井先輩」

 

「ぐぬぬ……」

 

隣で試合を観戦する同級生に声をかけるが悔しそうに呻き声をあげるだけでこちらに応える様子はなさそうだった。

 

「ほんと、凄いや……」

 

そう呟き、小湊春市はマウンドに視線を戻す。

 

ー凄い奴が帰ってきたから、もっと頑張らないと一軍になれないぞー

 

二軍に上がった際に兄から言われた一言。

普段、負けず嫌いで人を褒めることなんて滅多にない兄が凄いと手放しで褒める人物。

そんな人がどんなプレーをするのだろう……そんな期待を持って観戦したこの試合。

その結果は自分の予想をはるかに上回っていた。

 

関東大会ー関東地区の8都県の代表校が出場するこの試合に参加高校は勿論、強豪揃いであり、現在戦っている横浜港北学園も神奈川の強豪であり、投打共に高いレベルに仕上がっているチームである。そんな相手に……

 

「おい、これ抑えたら……」 「あぁ、ノーヒットノーランだよな」 「あの横学打線相手にだぞ!?」

 

一度もヒットを打たれていないという事実。

しかも、その投球も……

 

「序盤はコントロール重視で打たせて取り、後半はギアを上げて三振を取っていく……相手からすれば2人のピッチャーを相手しているように思えるだろうな。お前にあそこまでのピッチングをしろとは言わないが参考になる部分は多々あるからよく見ておけ」

 

「クリス先輩!了解っす!」

 

春市は試合に注目しながら、横目で二人の様子を見る。

最初の数日は険悪な雰囲気の二人であったが、蓮夜や御幸といった周りの人の手助けもあり、良好とは言えないまでもお互いに信頼が生まれ、沢村はクリスのアドバイスを素直に聞き入れ、クリスも義務感からではなく、積極的に沢村が成長出来るように指導を行う善のスパイラルが生まれていたのだ。

 

ーストライク!バッターアウトー

 

「凄い……」

 

リリース直後から曲がり始め、打者のチェックゾーンで大きく縦に落ちる蓮夜の決め球の一つであるドロップカーブだ。

バットは大きく空を切り三振を積み重ねる蓮夜。

外と内の投げ分けや打者の視線を上下に移動させ空振りを取るドロップカーブや150km/hを超える速球とそれを更に活かすためのサークルチェンジやスロースライダーなどの緩急をつける変化球、打者の手元で変化し、芯を外し打ち取るスローカットやツーシームなど蓮夜の武器は多岐にわたる。

それ故に蓮夜がピッチャーの時に使える戦術は多数あり、その中からどんな配球をするのかという嬉しい悩みがキャッチャーにつき纏うのだ。

 

「「「「後一球!後一球!」」」」

 

「ぐぬぬ……」

 

「沢村、お前にはお前の良さがある。まずはそれを磨け」

 

「……うっす」

 

偉業まで後一球ということでより一層、盛り上がる球場。

その中で静かに話をする二人。

蓮夜のピッチングを悔しそうに見る沢村と蓮夜の球を受ける御幸をじっと見つめるクリス。

春市にはそれが自分のポジションで活躍する二人を羨ましがっているように見えた。

 

ーストライク!バッターアウト!!ゲームセット!!ー

 

「「「「うおぉおおおおおお」」」」

 

蓮夜のノーヒットノーランに湧き上がる球場の中、春市も隣にいる二人のように兄である亮介を羨望の眼差しで見ていたのだが、それを指摘する人は誰もいなかった。

 

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