Aクラスを出た彰は、そのまま寮へ戻るつもりで廊下を歩き――途中で足を止めた。
「……せっかくだし、他も行くか」
どうせなら、各クラスで目立つ人間くらいは直接見ておきたい。彰にとっては友達作りというより、観察に近い。
まず向かったのはBクラス。
教室を覗くと、昨日見た女子がまだ残っていた。数人の生徒と話しているが、誰か一人だけを贔屓する様子はない。彰は扉のところで軽く声をかける。
「ちょっといい?」
中心の女子が振り返る。
「うん? どうしたの?」
警戒より先に、普通に応じる。彰はその反応を見ながら近づいた。
「Dクラスの来栖彰。昨日見かけて、目立ってたから挨拶しとこうかなって」
「目立ってた?」
その子が少し恥ずかしそうに笑う。
「帆波ちゃん可愛いし話しやすいもん、めっちゃ目立つよー!」
「うんうん、この学校来て良かったってくらい」
「えーそんなにかな?」
周りにいた友達からそう言われて、帆波と言われた女子は余計に恥ずかしそうに笑う。それを見て彰も話に入る。
「うん、友達できすぎ」
「あはは、そうかな」
彰は軽く笑う。
「私は一之瀬帆波。Bクラスだよ。よろしくね、来栖くん」
「よろしく、一之瀬」
自然な会話。ただ、彰は内心で少し観察する。話しやすい、距離感も近い。でも昨日と今日見た限り、それは彰だけに向けたものじゃない。誰に対しても同じように接するタイプ。
(この子はたぶん、素でこれなんだろうな)
少なくとも今のところ、作っている感じは薄い。
「Dクラスってどんな感じ?」
一之瀬が聞く、彰は少し考える。
「まとまりはまだない。変なのは多い」
「変なの?」
「ザ男子高校生たちと天上天下唯我独尊、無表情マシーンと冷徹女王とか」
「それはだいぶ変かもね」
一之瀬は笑う。そこで彰は、少し離れたところにいる男子へ視線を向けた。
一之瀬が気づく。
「あ、神崎くん?」
「昨日からちょっと気になってた」
「神崎くん、来栖くんが気になるって」
「言い方ややこしいな」
彰が笑う、神崎は近づいてくる。
「神崎隆二だ」
「来栖彰、よろしく」
「よろしく」
互いに軽く会釈する程度、神崎は一之瀬よりずっと淡々としている。彰はその温度差を少し面白く感じた。
「一之瀬が前に出るタイプで、神崎が後ろ見るタイプ?」
神崎の目が僅かに動く。
「初対面でそう判断するのか」
「昨日ちょっと見てたから」
「そうか」
否定もしない、彰はそれ以上踏み込まない。
「じゃ、また」
「うん。またね、来栖くん」
Bクラスを離れる、次はCクラス。こっちは少し空気が違う。教室に入る前から、声が聞こえた。彰が覗くと、目が合った男子と声がでかい男子が話していた。
彰が中へ入ると、2人はすぐ気づいた。
「なんだ、昨日廊下にいた奴じゃねえか」
覚えている、彰は少し笑う。
「そっちも覚えてたんだ」
「目ぇ合っただろ」
「まあね」
彰は近づく。
「1年Dの来栖彰」
「龍園翔」
と短く返す。
「そっちの声でかい奴は?」
「声でかい奴ってなんだ!」
「でかいじゃん」
龍園はそれを見てククッと笑う。
「自己紹介してやれよ、石崎」
「分かりました龍園さん!石崎大地だ、龍園さんの右腕をしている」
「した覚えはねえ」
「昨日は感激しました!あそこまでの強さを持つ男に俺はついていきたいんです!」
「…なんていうか、個性的だね」
彰は苦笑いをしながら言う。てか強さ?え喧嘩してる?やっぱ喧嘩するタイプなのかよ。
龍園は少し警戒をしている彰を見て言う。
「どうした?そんなにビビった顔して」
「金玉だけは蹴らないで」
「その舐めた態度をやめるなら考えてやる」
彰はやめると即答しながら考える。こういうタイプか、恐怖とか暴力で人を支配するタイプ、石崎の態度からしてカリスマ性もありか。
「…じゃあそろそろ帰るわ。またな、龍園、石崎」
軽く手を上げ教室を出る。
(ずっと探るような目してたな。暴力野郎だけど頭が切れる、めっちゃ怖いタイプじゃんか)
廊下へ出て少し歩いたところで、息を吐いた。
「……あれは面倒だな」
龍園、近づきたいタイプではない。でもラインを見極めたら付き合うのは楽しそう。
Bの一之瀬
Cの龍園
Aの坂柳
それぞれ全然違う、彰はそのまま階段を下りながら考えた。
そして結局、今日一番印象に残っているのは――
「坂柳だな」
小さく呟く。それは観察対象としてだけではなく、かなり個人的な意味でもそうだった。
この二次創作では、龍園は初日に石崎をゲットだぜ!してからアルベルトや伊吹も加えて行ったことにします。