寮へ戻り、簡単に夕食を済ませたあと。彰はベッドに座りながら端末を開く。連絡先の一覧に、今日追加された名前。
坂柳有栖
少しだけ考えてから、そのままメッセージを送った。
{今日はありがとう!坂柳はチェス以外なにか趣味とかあるの?}
送信。彰は端末を置いて、なんとなく天井を見る。
(読書はしてそう、勉強が趣味とか言われたらどうしよう)
しばらくして、通知音。彰は端末を手に取る。
{こちらこそ、ありがとうございました。チェス以外となると読書ですね、主にミステリー小説などを読んでいます。}
彰は少し口元を緩める。
(やっぱ丁寧だな、てか当たりじゃん)
それに、思ったより普通に返してくれる。
チェスという共通の話題があり、連絡先を交換した相手だから礼儀正しく会話している。彰はそれだけでも嬉しかった。
端末を操作する。
{読書か!俺漫画しか読まないけど趣味お揃いって言っても平気そう?}
送ってから、彰はふと思う。
(変じゃないよな、恋愛とか小6ぶりだぞおい。いやまだ好きではないけど)
あの落ち着き方。
チェス。
Aクラスの中で周囲から一目置かれている様子。
見た目が好みというだけじゃなく、少しずつ中身にも興味が湧いてきている。
また通知。
{ある意味お揃いですね、活字はお嫌いですか?}
活字、小説か。真剣には読んだことないな。学校からの課題で読んだことはあるが、やらされるとどうも集中して楽しめないたちだった。
{嫌いではないけどあまり読んだことないな、良ければおすすめ教えてくれる?}
数分後。
{ええ、構いませんよ。また今度お教えしますね。}
彰はその文章を見て、少し笑った。楽しみができてしまった。
{ありがと!チェスはいつする?}
楽しみが増えた、追加でもう一つ増やしてしまおう。
{いえいえ。では明日の放課後はいかがでしょう?}
{空いてるよ!楽しみにしてるね}
{私も楽しみにしています}
それを見て彰は転げ回った、まるでボーリングの球のようにコロコロコロコロ転げ回った。
「めっちゃ楽しみ」
その後はチェスのグランドマスターの棋譜や、対局動画を見る。過去にした対局を思い出したりと、忙しない時間が続いた。気づくとそんなことをしている間に良い時間になってしまった。
「そろそろ寝ないとな」
歯を磨き、明日の準備をする。そしてベットに入り、寝ようとした瞬間浮かんでくる坂柳とのトーク画面。
{私も楽しみにしています}
つい口元が緩む。
明日が楽しみすぎて簡単には寝れなくなったのは、言うまでもなかった。