寮へ戻り、夕食を済ませてからしばらくゴロゴロしていると通知が届いた。端末を取り出し見ると、
坂柳有栖だった。
{本日はありがとうございました。先日お話ししていたおすすめの小説なのですが、一ついいものが見つかったためご連絡させていただきました}
まじか…チェスして帰宅してその日に別の話題??これは脈あり…ってわけでもないな。友達としてだろう。
{こちらこそ!まじか、めっちゃ嬉しい是非是非教えて}
数分後。
{『鹿が集う林檎の木』というものです。本格派ミステリーでとても引き込まれる内容ですよ、おそらく図書室にもあると思います}
{ありがとう!明日探してみる!}
明日の予定が決まった、これを読んだら共通の話題もできる。なにより、坂柳がおすすめするほどの小説というものに、彰はとても興味を持っていた。
「本格派ミステリーか…」
彰が読んだことがないジャンルだった、探偵の息子という明らかにミステリー小説を読んだことがありそうな経歴を持ちながら、彰が読むのは漫画だった。その中でも小さくなる探偵や事件簿がどうだのではなく、バトル漫画に魅了されていた。
「ミステリーはリアルで事足りちゃうんだよな」
ニュースで事件を見るたびに、公開されてる内容から推理をする。更に父親の仕事が仕事だった。探偵ーー基本的には浮気や不倫調査。だがたまに人探しなどもある、そこから刑事事件に発展する内容も。彰はそんな内容に対し、父親から助言を求められるほど推理が得意だった。
「楽しみだな、創作ゆえのトリックとか。面白いの沢山ありそう」
その日は明日を楽しみにしながらも、同レベルの相手とのチェスで疲れたのか早く眠った。
───
翌朝。彰はあくびをしながら、学校までの道をのそのそと歩いていた。朝に弱い、分かってはいたがあまりにも弱い。
(昨日は早めに寝た方なのにな)
歩いていると前方に見慣れた後ろ姿があった。
「おっはー清隆」
「来栖か、おはよう」
「朝から親友と会えて眠気も覚めるってもんだ…ふわあぁぁぁー」
「説得力が皆無だな、そして親友ではない」
大きなあくびをしながら親友の冷たい言葉を聞く。おかしい、親友って思っているのは俺だけなのか。
「昨日の結果はどうなんだ」
「チェス?引き分けだったよ」
「そうか」
「お互いこれ以上踏み込んだら負けそうだったから、引き分けってことにしよーって」
「同格だったのか」
「うん。こっそり自信あったから悲しい、でも楽しかった」
清隆は満足そうな顔の俺を見て、ならよかったなと言った。
「清隆もできるんだろ?今度しようぜ」
「機会があればな」
会話はそれで終わり学校へと向かう、無言が続くが不思議と苦ではなかった。やっぱりこいつとの距離感は心地良い、相変わらず何も読めない顔をしているが。
2人で学校に着き、HR、午前の授業とこなす。
「ぶへぇぇぇ」
「まーた潰れてるよ、今日も飯行こうぜ」
「もちのろん」
池たちに誘われる、もう池、山内、須藤、清隆との昼食には慣れてしまった。これが高校生の適応力か。ただこいつら、正確には清隆以外だが。…下世話な話が多い、やれ誰の胸がでかいだの、このグラビア女優はすごいだの。そういう話は嫌いではないが声がでかい、一緒にいるとそういう括りにされそうでとても不安だ。
昼食を終え午後の授業、ついつい居眠りをしてしまう。授業終了のチャイムで起きた瞬間、まずい!と思ったがやはり注意も何もされてない。
「来栖、寝てたな」
「バレてますよね」
「あの姿勢で動きがなくて、バレないと思っているあなたの頭が心配だわ」
「すずねん口がわる…」
瞬間、コンパスの針が目の前に来た。
「…すみません、それやめない?」
「あなたが余計なことを言わなければ良いだけじゃない」
「正論って辛いよな、清隆」
「俺に振るな」
そのまま最後の授業までこなし、チャイムが鳴った。
「うしゃー終わったー」
「今日遊びに行こうぜ」
池たちが誘ってくれるが、
「悪りぃ、今日パス」
「また女か!?」
山内が親の仇を見る目で見てくる。
「違うよ、本探す」
まあ実際にはほぼ女の子関係なんだが。
「来栖…本読んでも頭良くなるわけじゃないぞ」
「ねえ、お前たちって友達だよね????」
池の余計な言葉にうんうんと頷く山内
「じゃあそろそろ行くわ、また明日バカブラザーズ。清隆と堀北もまた明日」
「「誰がバカブラザーズだ!!」」
「またな、来栖」
「ええ、また明日」
そのまま教室を出て図書室へ。昨日坂柳に言われた本を探していると。
「来栖くん、ですよね?本をお探しですか?」
「椎名じゃん、そうそう!」
「良ければお手伝いします、タイトルを教えてくれますか?」
「助かるよ、ありがとう。えーっと、『鹿が集う林檎の木』って言うんだけど」
聞いた瞬間、椎名の顔がパーっと明るくなる。
「ミステリー、お好きなんですか?」
「興味なかったけど、友達におすすめされてさ」
「良いですね。それでしたら、こちらになります」
「ありがとう」
椎名から本を受け取ると、カウンターへ借りに行く。その後椎名の方へ行き
「ありがとう、おかげで借りれた」
「いえいえ、良ければ感想聞かせてください」
「うん、またね」
軽く挨拶をしてから図書室を出る。良い子だった、可愛いし。できればこれからも仲良くしたいな。そんな感想を胸に抱きながら、ゆっくりと帰路につくのだった。
この話はゼロから自分で書いてみました。拙い部分がありますが、遠慮なくご指摘ください。