偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~ 作:やきそばVer2
第1話:異世界転生のお供は最強バフ魔法
第1話:異世界転生のお供は最強バフ魔法
【???】
「ここどこ?」
まばゆい光を浴びて俺は目を開いた。
高校二年生の普段通りの日常。
いつものように学校に向かっていた俺。
歩道に突っ込んできたトラックによって、平和な日常が消え去ったはずだった。
辺りを見渡すと、現実離れした光景が目に入ってきた。
綿のようにフカフカした真っ白な地面。
雲一つない美しい青空。
空中に咲き乱れる花々。
周囲を眺めながら、俺は思わずつぶやいた。
「どう見ても現実じゃないし、多分死後の世界だな。俺はあの時、トラックにはねられて死んだみたいだな。」
自分の置かれた状況を理解して、俺はのんきな声で独りごちた。
「受験戦争もしなくて良いし、ブラック企業に入ることを心配しなくていいから助かったのかな? 嫌すぎる現実世界から逃れられたから、ある意味ラッキーだったかも。」
いつも通りの異常なまでの能天気さとプラス思考で、俺はこの状況を少し楽しんでいた。
(自分が死んだのに楽しんでいるって、やっぱ俺はお気楽すぎる頭のおかしな変人だな。)
そんなことを考えていたとき、俺には心残りがあったことを思い出した。
それは、俺にとって非常に大事な予定だったからだ。
「今週発売の『英雄たちの戦争の記録』を読みたかったな。明日には注文してた『軍事兵器図鑑:第一次世界大戦編』も届く予定だったのに。」
訂正。
どうでもいい予定だった。
死んですぐに考えることじゃないな。
突然死んだにもかかわらず、のんきなことを考えていた俺。
そんな俺の視界に一人の美女が現れた。
長い金髪をはためかせた、神々しさあふれる姿をしていた。
女は優しく語りかけてきた。
「『死んで良かった』なんて暗いことを考えないでください。そんなことを考える年齢ではないですよね?」
「やっぱ、俺死んだのか。じゃあ、ここは死後の世界なんですか?」
「その通りです。『江口浩平』さん。」
「俺の名前もご存じなのですね。ということは、俺がどんな人生を歩んできたのかも知ってるんでしょ?」
「もちろんです。私は神ですので。私は貴方が考えるほど悪い人生だったとは思いません。もう一度貴方にチャンスを与えるために、私はやって参りました。」
女神様は続けた。
「これから貴方には、第二の人生を異世界で過ごしていただきます。どんな世界がいいかご希望はありますか?」
俺は少し考え込んだ。
どうせなら、楽に生きていきたいな。
「じゃあ、働かなくても良いところでお願いします。楽に暮らしていきたいので。」
返答を聞いて、彼女は顔をしかめた。
「『働かなくてもいい世界』なんて都合のいい所があると本気でお思いですか?」
「もちろんです。探せばあるんじゃないですか?」
女神様は青筋を立て始めた。
怒った口調で女神様は俺に聞いてきた。
「......貴方、ふざけているのですか?」
「そうですが何か?」
「.........」
「どうしたんですか? 俺を理想の世界に連れて行ってくださいよ。」
「.........」
女神様は完全に黙り込んでしまった。
彼女はぶち切れたみたいだ。
さすがに失礼過ぎたな、反省反省。
怒りに満ちた声で、彼女は再び口を開いた。
「そういえば、浩平さんは軍オタでしたよね? どうせだったらその知識を生かせる貴方にぴったりの世界があります。」
『軍オタの知識が生かせる世界』
その言葉を聞いて俺は大慌てになった。
慌てすぎたせいで、変な口調になっていることにも気づかずに俺は返事をした。
「やめてください。軍オタの知識が生かせるところなんて地獄じゃないですか! 戦争ばっかりの世界は絶対に嫌です。なんでもして差し上げますからそれだけはご容赦ください。」
俺は『軍事兵器』や『過去に起きた戦いとそれがどのように推移したか』を学ぶのが大好きだ。
しかし、それは『戦争そのものが好き』ということを意味しない。
むしろ、知り尽くしているせいで『戦争の悲惨さ』を誰よりもよく知っているのだ。
だからこそ、そんな世界には行きたくないのだ。
それだけは何が何でも避けたい!
戦争映画みたいな地獄の戦場送りは嫌なんだ!!
「冗談はこのくらいにしてあげましょう。」
(冗談で終わらせるわけねえけどな。)
「ありがとうございます。女神様!!」
意趣返しのための冗談だったようだ。
その返事を聞いて俺は安堵した。
彼女は微笑みながら俺に告げた。
「そういえば......この世界であれば貴方の理想を叶えられるかもしれません。『理想郷』としか言いようのない世界ですよ。働かなくても良い世界です。」
(管理され尽くした世界だけど、こいつにはちょうど良いな。)
「戦争なんてないんですよね? それに、本当に働かなくてもいい世界なんですか?」
「もちろんです!表面上はだけどな。軍事知識も魔物退治に活用できます。ファンタジー風の世界ですが、ここでいいですか?」
(そんなにうまい話あるわけねーだろ)
「その世界でお願いします!」
「わかりました。平和に暮らせることを約束します。」
(真実に気づかなければの話だけどな。)
「ところどころ小声でつぶやいていますが、どうかしました?」
「気のせいですよ。」
女神様は真剣な眼差しで語りかけてきた。
先ほどまでの怒りは収まったようだ。
......たぶん。
「江口浩平。本当にこの世界でいいのですね? 取り消しはできませんよ。」
「もちろんです。女神様。」
俺の返事を聞いて、彼女は微笑んだ。
若干にやけている気がしたが、そんなことはないよね?
彼女は最後にこう告げた。
「せっかくなので『バフ魔法』と『指揮統制用の魔法』、ついでに『翻訳魔法』を差し上げます。それでは、行ってらっしゃい。」
女神様の言葉の直後に、俺の周囲の景色が歪んでいった。
それと同時に俺の意識もだんだんと薄れていった。
「期待していますよ『救世主様』」
(順調にいったら貴方の嫌いな戦争に巻き込まれるけどな。)
彼女の言葉を聞きながら、俺は意識を完全に失った。
最後の方で、めちゃくちゃ不穏なことを言っていた気がするが......まあ、気のせいじゃないかな。
絶対素晴らしい世界のはずだ。
~~~~
【???:森林】
「すげー、ここが異世界か。めちゃくちゃきれいだ!」
穏やかな清流。
鳥たちのさえずり。
咲き乱れる花。
空に浮かぶ三つの月。
とてものどかな光景ではあるが、明らかに元いた世界とは異なる光景。
転生してすぐに美しい光景を見たことで、俺のテンションは爆上がりだった。
今度は、自分の服装に目を向けた。
「身体も前世とほぼ同じだ。それに、いかにもファンタジーな感じの服装になってる!」
黒いローブに白のシャツと紺色のズボン。
そして、30cm程の長さの真っ黒な杖。
俺の服装は、前世で死亡したときの『制服姿』から、ステレオタイプな『魔道士』の服装に変わっていた。
身体も前世と同じくらいの身長で、違和感なく動ける良いものだった。
ただ、前世と同じ黒髪だったせいでそこは少し残念だった。
(どうせだったら、アッシュブロンドの方が格好良かったのに。違和感がないからまあいいか。)
せっかくファンタジックな異世界に転生したので、試しに魔法を使ってみることにした。
チート魔法とかもらえてたらいいなあ。
「魔法を使うには......どうやればいいんだ?」
杖をあちこちに向けたり、それっぽい呪文を唱えたりしてみた。
なかなかうまくいかなかったが、急にゲームの画面みたいな半透明のウィンドウが二つ現れた。
左側のウィンドウに俺のステータスみたいなものが映っていた。
「なになに? 魔法一覧がある......攻撃魔法と支援魔法があるな。それに翻訳魔法もある。回復魔法は......ないみたいだな。」
おそらく、俺が今使える魔法が一覧表示されているのだろう。
それを確認した俺は、二つの画面を隅々まで見ていった。
左側が『指揮下の戦力画面』で、右側が『戦術ウィンドウ』というらしい。
『指揮下の戦力画面』の中央には、俺のステータス欄とは別に複数の空欄が描かれていた。
また、右に浮いている『戦術ウィンドウ』には白地図が描かれていた。
「左側はオンラインゲームの仲間のステータス欄に似てるな。右側は『大戦略シリーズ』や『ファミコンウォーズ』のマップにそっくりだ。」
嫌な予感がし始めたが、画面の下部へと視線を移した。
『指揮下の戦力画面』の下部には二つのボタンが並んでいた。
「『戦力の追加』と『指揮下から部隊を外す』の二つのボタンか。なんか戦闘指揮を執れって言われてるみたいだな。」
嫌な予感は確信へと変わっていった。
「字面的にこれ戦争用じゃない!? ねえ、この世界本当に平和なの? 魔物退治を効率よく行えるようにするものだよね!? そうだと言ってよ女神様!!」
女神様が現れるはずもなく、俺の叫びは空しく響き渡った。
(やっぱり女神様に失礼な態度取り過ぎたな。不安が的中しませんように。)
~~~~
「キャアー!」
辺りを散策していたら、近くから悲鳴が聞こえてきた。
俺は、自然とその悲鳴の元へと駆けていった。
そこにいたのは、地面にへたり込んでいる一人の少女。
それを取り囲む、緑色の肌をした三匹の魔物たちがいた。
「●●●●!」
「「「グギャ!グギャギャ!」」」
魔物たちが少女に襲いかかっている。
瞬時にそのことを把握した俺は、そのうちの一体に杖を向けた。
「攻撃魔法は確か......あった、これだ!
杖の先に魔力が集まり、小さな火の玉を形成した。
狙った一体のゴブリンへ、少し頼りない火球が撃ち込まれる。
「命中した!やった......あれ?」
「ギャ?」
「え、何で効いてないの? 異世界転移物だと簡単に倒せるシーンだよね!?」
「
氷、風、雷。
今使えそうな全属性の攻撃魔法を叩き込んだが、ほとんど効果がなかった。
ただ無駄に魔力を浪費しただけで状況は変化しなかった。
むしろ攻撃したせいで状況は悪化してしまった。
「あ、ヤバい。あの子だけじゃなく俺もやられる!」
「「「グギャギャ!」」」
正面から一体。
両側面から一体ずつ。
俺を包囲するように三体は近づいてくる。
魔物たちの動き方は、まるで訓練を受けた兵士のそれと似ていた。
「こうなったら、あの子が逃げる時間だけでも稼がないと。今俺にできることは何だ? 早く......早く打開策を考え......て、何してるんだ君!?」
俺が慌てている間に、襲われていた少女が動き出していた。
見ると、少女が近くにあった太い木の枝を手に、正面から近づくゴブリンに歩み寄っていた。
逃げてもすぐに追いつかれる。
だったら、一矢報いてやる。
言葉はわからないが、少女の覚悟だけは伝わってきた。
「このままじゃ、二人とも殺される! あの娘に掛けたところで変わらないかもだけど......
俺は彼女に駄目元でバフを掛けようとした。
だが何も起こらなかった。
その時、『指揮下の戦力画面』下部に『戦力の追加』ボタンがあったことを思い出した。
「もしかして、やっぱり!」
見ると少女が追加対象として表示されていたので、迷うことなく『戦力の追加』ボタンを押した。
表示された彼女のステータス欄の下部に『支援対象に選択』と記載されているチェックボックスが追加されていた。
チェックボックスにチェックを入れた状態で、彼女に向けて再びバフ魔法を使用した。
「もう何とでもなれ。
魔力が流れる感覚がした直後に、彼女が半透明の青いオーラで覆われる。
今度こそうまくいったようだ。
(バフを掛けることには成功したけど、多分状況は変わらないだろうな。)
バフを掛けた相手は非力にしか見えない普通の少女だ。
少し魔法で強化したところで大して意味が無いだろう。
だが、現実は違った。
「■■!」
彼女の叫び声とともに、棍棒代わりの木の枝が振り下ろされた。
攻撃をもろに受けたゴブリンは......その一撃で20m近く吹き飛ばされた。
「.........?」
「「グギャ!?」」
「え? 何この威力?」
自身の攻撃の圧倒的な威力に呆然とする少女。
あり得ない出来事を目にして驚きを隠せないゴブリンたち。
まさか、バフがここまで効果があるとは思っていなかった俺。
誰もが目の前の出来事を理解しきれずにいた。
「「ガギャ?」」
「ガッガハ。」
勝てないと思ったのか、ゴブリンたちの戦意が喪失したようだ。
殴り飛ばされたゴブリンを回収して、敵は去って行った。
後に残されたのは、俺たち二人だけだった。
「自分にバフかければ簡単に倒せたんじゃね?」
そう思ったが、後の祭りだった。
もっと早くに気づければ良かったなあ。
~~~~
【王都周辺:森林】
「助けていただきありがとうございます。もうすぐ騎士団が助けに来ると思うので、それまで待機しましょう。」
翻訳魔法の存在を思い出して、俺は自分にその魔法をかけた。
先ほどまではこの少女が何を言っているのかがわからなかったが、今は問題なくコミュニケーションが取れている。
彼女の話によると、この場所は『王都』の近くらしい。
転移してすぐにこの魔法をかけていれば、この後の展開は大きく変わっていたのだが......その時の俺にはそこまで考える余裕はなかった。
「お、見つけたぞ! 大丈夫かい?」
会話の途中で一人の騎士がこちらにやってきた。
その後ろには十人ほどの部下と思われる人物が立っていた。
「君は? どこから来たんだい?」
リーダー格の騎士が俺に尋ねた。
「俺は『江口浩平』といいます。」
「『コウヘイ』君か、変わった名前だな。もしかして『集団農場』の生まれか!?」
敵意をむき出しにした表情で彼はにらみつけた。
あまりの剣幕に少しビビったが、なんとか返事をした。
「い、いえ、生まれも育ちも都会です。」
「王都以外に『都会』はない。集団農場の生まれにしては元気すぎるし、肉付きもいい......となると、異世界から来たのか?」
表情を少し緩めた騎士が俺に質問してきた。
『異世界から来た』人物が多数いるのだろうか?
騎士が言った『異世界から来たのか?』という言葉は、そのくらい気軽なものだった。
「そうです! もしかして他にも異世界から来た人がいるのですか?」
返事を聞いて彼は急に微笑んだ。
目つきもちゃんと笑っている。
先ほどまでの敵意は完全に消滅して、とても穏やかな雰囲気に変わった。
そして、彼は優しく語りかけてきた。
「我々の敬愛する陛下は異世界から来たんだ。この世界ではとても有名な逸話だよ。もしかしたらと思っていたんだけど、合ってたみたいだね!」
彼は続けた。
「私の名は『シェムハザ』聖騎士団第二軍の指揮官さ。ようこそ『
第二話に続く