偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~   作:やきそばVer2

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第二章:エデンとの全面戦争
第9話:エルミナとの合流


エデンからの脱出を果たした俺たち。

ゲヘナに生息している『魔物』が実は『人間』ではないかと俺は考えた。

そのことを確かめるべく、エリシャに認識阻害魔法を解除してもらった上でゲヘナ領内を進んでいった。

最初に向かったのは、エデンとの国境にほど近い『サレムの街』だ。

カマエルの指揮の下、俺を含むレイド参加者が破壊し尽くしてしまった場所だ。

 

 

 

 

【ゲヘナ:サレムの街近郊】

街外れの草むらから、俺たちは街の様子を観察していた。

そこに広がっていたのは、俺自身が『勘違い』であってほしいと願っていた光景だった。

 

「本当に......俺の『予想』が『真相』だった......なんて。」

 

「コウヘイ、あんたの考えた通りね......」

 

「僕は.…..いや僕たち『エデンの人間』は何てことを仕出かしていたんだ!」

 

あちらこちらに倒れている『人間の遺体』

それを悲しみに暮れながら回収していく『人間』

『魔物たちが使っていた武器』を装備した兵士たち。

 

目の前に映る光景の全てが、『魔物』が実は『人間』だったことを証明していた。

エデンの上層部は、他国への侵略をスムーズに行えるようにするため、意図的に認知を歪めていたのだ。

自分たちが殺した相手を『魔物』だと思わせて、エデンの民に罪悪感を生ませないために。

 

 

「俺のせいだ......俺がレイド参加者にバフを掛けなければ良かったんだ! エデン側にバフが掛かってさえいなければ、彼らの犠牲は少なかったはずだ!!」

 

俺は自責の念から声を張り上げてしまった。

違和感自体はエデンに来てすぐの時期からあった。

その正体に気づけていれば、エデンの暴虐に加担することも無かった。

 

そんな俺の叫びの直後に、エリシャとシェムハザは俺を睨んだ。

それも、とてつもない剣幕で。

 

「コウヘイ、静かにして!」

 

「コウヘイ君。気持ちはわかるけど、今は抑えるんだ!」

 

二人が小声で俺を制止しようと試みた。

しかし、その時の俺は感情的になりすぎていた。

俺を宥めようとした二人に、思わず怒鳴り散らしてしまった。

 

「二人とも罪悪感は無いんですか!? 俺たちだって、エデンの侵略に加担していたんですよ!!」

 

「だから、今は押さえてくれ。コウヘイ君。」

 

「シェムハザさん、随分と薄情なことを言いますね!」

 

「コウヘイ、今は怒鳴ってる場合じゃないわ! とにかく静かに......あ、終わった。」

 

「何が言いたいのエリシャ! 何が『終わった』なの!?」

 

 

その刹那、俺の背筋に悪寒が走った。

何故かは分からないが、後ろを振り向いてはマズいと本能が告げている。

俺の背後から、幾つかの野太い声が聞こえてきた。

エリシャが言ったとおり、既に手遅れになっていたのだ。

 

「馬鹿な奴だ。あんな大声出すなんてな。すぐに居場所が分かったぜ。」

 

「エデンの連中は頭がお花畑のようだ。特にこいつはアホすぎるな。」

 

俺の背後には20人近い数の兵士が立っていた。

その全てが俺のことを、救いようのない馬鹿に対する目で見ていた。

三人全員に対してではなく、あくまでも俺一人に対してだ。

 

「あ......やっちまった。ごめん、二人とも。」

 

俺に軽蔑の目を向けたのは兵士たちだけではなかった。

エリシャとシェムハザも、兵士たちと同じ態度を俺に取っていた。

 

「全く君という奴は。」

 

「コウヘイ。あんたうかつすぎるわよ。」

 

 

一人の兵士があきれ声で呟いた。

 

「仲間にまで呆れられているじゃないか。お前は何がしたかったんだ?」

 

その場の全員が俺のことをあきれ果てた目で見ていた。

少しの間沈黙が流れた後に、リーダー格の兵士が口を開いた。

 

「一緒に来てもらうぞ! くれぐれも抵抗するんじゃないぞ、エデンのスパイ共。」

 

俺たち三人は拘束されて、近くの街『へブロナ』へと連行されていった。

街に着くなり三人仲良く牢獄にぶち込まれてしまった。

 

 

やっちまったなあ。

もう少し上手く立ち回るべきだったよ......

 

 

 

 

【エルミナ神聖王国:へブロナ地下牢獄】

護送中に兵士から聞いた話によると、やはりここは『ゲヘナ』などではなく『エルミナ神聖王国』とのことだ。

俺の予想は全て正しかったようだ。

外れていてほしい予想だったのだが......

 

 

「エデンによる、我がエルミナ神聖王国への数々の暴虐を忘れた訳ではないな? そこで大人しくしていろ!」

 

鉄格子越しに看守が告げた。

彼は俺たちへの憎しみを隠そうともしていなかった。

だが、それ以上に焦っているようだ。

 

「時間がない! 早く行くぞ!」

 

「わかっている! 今行く!」

 

 

そう言い残して、看守は大慌てで去って行った。

只ならぬ事態が起きているのは明白だ。

 

「異常なほど慌ててたけど、もしかして?」

 

「ああ、コウヘイ君の考えている通りだろう。」

 

「十中八九『エデンの軍隊が攻めてきた』ってことよね。狙いはたぶんあたしたちだと思う。」

 

「だろうな。裏切り者の僕たちを消しに来たんだろう。」

 

状況を瞬時に把握した俺たち。

だが、次の行動には移れなかった。

何が最善手なのかについて頭を悩ませていたためだ。

 

脱獄すること自体は簡単だ。

俺が二人にバフを掛けさえすれば、この程度の鉄格子なら簡単に破壊出来る。

都合がいいことに戦闘に参加するためか、見張りも全員いなくなっている。

そのため、脱獄してもすぐにはバレない。

没収された武器も近くの部屋に無造作に置かれていて、脱獄してすぐに戦闘に移ることも可能だ。

 

だが、『脱獄するべきか否か』の判断に俺たちは頭を悩ませていた。

下手に動くと、エルミナからの信頼が地に落ちてしまう。

 

脱獄してエデンの軍勢に立ち向かい、武功を挙げる。

もしくは、牢に残ってエルミナからの信頼を得る。

 

 

この二つのどちらを選択するかに俺たち三人は悩んでいた。

最初に切り出したのは、シェムハザだった。

 

「僕は脱獄しない方がいいと思う。そんなことをしたら、エルミナから確実に敵認定されるだろ。」

 

「あたしもシェムハザに賛成。友好関係を築くのが最重要よ。牢屋から逃げ出したら、交渉することすらできなくなるわ。」

 

シェムハザとエリシャの言葉を聞いて、俺は反論した。

 

「いや、ここは脱獄すべきだ。」

 

シェムハザとエリシャの二人が眉をひそめた。

俺は構わずに続けた。

 

「二人が言った通りここに留まるのが無難だとは思う。でも、それだと状況は何も変わらない。」

 

「どういうことだい、コウヘイ君?」

 

「逃げ出さなかったとしても、エルミナの人々は俺たちの言うことは信じないと思う。向こうから見たら、俺たちはエデンのスパイか何かとしか思えないはずだから。」

 

一呼吸置いて続けた。

 

「ここは脱獄してエデンの軍隊と戦うべきだ。そうすれば、ある程度の信頼は手に入ると思う。」

 

俺の頭を暗い考えが一瞬よぎった。

レイドに参加してしまった後悔の念だ。

それを振り払うかのように、二人に自身の想いを告げた。

 

「罪滅ぼしをしたいんだ!! 俺がバフを掛けたせいで、エルミナの兵士たちが無残に殺されてしまった! 俺がいなければ助かった命もあったかもしれない!」

 

少し間を空けて、俺は二人に語りかけた。

強い決意を言葉に宿して。

 

「彼らに信じてもらえなくてもいい。エデンと真っ向から戦う姿を見せることで、エルミナの人たちに誠意を示したいんだ!! それが今の俺にできる最大限の事なんだ! そのために、二人に協力してほしいんだ! 俺にはバフを掛けることしか出来ないから......」

 

 

エリシャとシェムハザの二人は、少しの間考え込んだ。

最初に口を開いたのは、シェムハザだった。

 

「コウヘイ君、君の言うことは最もだ。確かに牢に閉じこもっても何も変わらない。」

 

彼が俺の意見に賛成してくれた。

そう思った直後に、シェムハザは俺に質問を投げかけてきた。

重く苦しい、そして非常に重要な質問だった。

 

「念のために聞いておくけど、『エデンと戦う』ということは『エデンの人間を殺す事になる』ことを意味するよ。コウヘイ君はそのことを本当に理解しているのかい?」

 

シェムハザの言葉はとても重いものだった。

『人間を殺す事になる』

その事実を再確認させられたが、俺の決意は変わらなかった。

 

「もちろん理解しています。支配する側の騎士団とその配下の兵士たちが、主体となってエルミナへの侵略を続けているんです。それに、彼がエデンの民衆を洗脳し続けているせいでクソみたいな戦争が続いているんです!」

 

俺は感情をあらわに叫ぶ。

 

「逆に言えば、支配する側がいなくなればこの戦いも終わるんです。奴らを倒すことでエルミナに平和をもたらして、エデンの民衆もあの歪みきった世界から解放するべきです! そのためなら、俺は何だってやるつもりです!!」

 

最後に重要なことを付け加えた。

 

「戦うとなると、エデンの一般人にも犠牲が出るのは分かっています。だけど、俺はその犠牲を最小限にしたいとも思っています。彼らは俺にとっては救うべき相手ですから。」

 

 

少しの間沈黙が続いた。

沈黙を破ったのは、またしてもシェムハザだった。

 

「わかったよ、君の決意は伝わってきた。少し甘いところもあるけど、そこまで考えているのなら言うことは何もない。」

 

「シェムハザさん、賛成してくれるんですか?」

 

「ああ、他に策もないし、僕もエルミナへ償いたいと思っているからね。」

 

 

エリシャも自身の決意を表明した。

直接質問されてはいないが、彼女なりの考えを述べるべきだと思ったのだろう。

 

「コウヘイが言ったとおり、あたしも『戦う』しかないと思うし、その覚悟はできている。その部分はあたしも変わらない。」

 

彼女は続けた。

今後の方針については意見の相違があるようだ。

 

「脱獄することには反対だわ。さっき話したように、そんなことしたら話がこじれるわ。」

 

その発言に、シェムハザが即座に反論した。

 

「エリシャ君、だったらどうすればいいんだい? コウヘイ君の言ったとおり、このままだと八方塞がりのままだよ。」

 

「それは......確かにそうだけど。でも..….」

 

困り顔の彼女に、俺は話しかけた。

 

「エリシャ、何らかの成果を出さないと友好関係を築けないと思う。そんなことは君もよくわかっているよね?」

 

「うう......痛いところを突くわね。」

 

一呼吸置いてから、エリシャは答えた。

彼女も覚悟を決めたようだ。

 

「あ~もう、わかったわよ! 二人に従うわ! それでいいんでしょ!?」

 

「ありがとう。エリシャ。」

 

「いいわよ、別に。この天才の頭脳を以てしても打開策は見つからなかったし。」

 

 

エリシャの言葉の直後、俺たちは動き出していた。

準備を済ませた俺たちは、さっそく脱獄を開始した。

 

「魔法攻撃強化(マグ・ヴァイト)! やってくれ、エリシャ!!」

 

「了解、コウヘイ! 風の刃(ヴィントカット)!」

 

放たれた風の刃を受けて、頑丈な鉄格子がまるで紙切れのように容易く切り裂かれる。

鉄格子の残骸をかき分けて、俺たちは地上へと向かっていった。

 

「やるぞ、みんな! エルミナの人々に俺たちの誠意を見せるんだ!!」

 

 

牢を脱出した俺たち。

エデン軍と交戦するべく、地上へと駆け上がっていった。

エデンの民とエルミナ神聖王国。

その二つを救うための戦いを始めるために。

 

 

 

第十話に続く

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