偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~   作:やきそばVer2

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第10話:へブロナ防衛戦★

【エルミナ神聖王国:へブロナ市街地】

「我らエデンの軍に敗北の二文字無し!」

 

「「「素晴らしき理想郷(エデン)に勝利を! 邪悪な魔物の地(ゲヘナ)に敗北を! ウラーーーー!!」」」

 

 

プロパガンダとともに、エデンの兵士たちが突撃を敢行する。

急造のバリケードを破壊して数人の兵士がエルミナ軍陣地に切り込んでいく。

 

「セヤア!!」

 

「ガハ! 無念......」

「グハッ.....極悪人共め......」

 

「一矢報いるんだ! エデンの好きにさせるな!」

「少しでもエデン軍の数を減らせ!」

 

「小癪な魔物め! 喰らえ!」

 

「「ゴホ! 一矢報いることも......許されないのか...…」」

 

先鋒を務めた兵士の斬撃により、十数人のエルミナの兵士が切り伏せられる。

数人のエルミナ兵が号令を飛ばすも、焼け石に水だった。

 

他の兵士も次々と切り込んでいき、たちまちのうちにエルミナの防衛線を破壊し尽くしていく。

その勢いと破壊力は、まるで土石流の如き凄まじさだった。

猛攻撃を行っているのは、一般の兵士だけではない。

騎士団直下の魔道士部隊も続々と攻撃を開始した。

 

「「浄化の炎(ハイルフラメ)!」」

「「爆発(エクスプロージョン)!」」

 

エルミナの防衛線に、炎の海が生み出される。

爆発魔法も炸裂し、数百人単位でエルミナ兵が消えていく。

 

 

~~~~

地上に出た俺たちが見たのは、エデンによる一方的な殺戮だった。

エルミナ側の反撃も大した効果を上げておらず、逆転することなど不可能に思えた。

だが、俺の力を持ってすれば『不可能』も『可能』に変わるはずだ。

状況を把握してすぐに、俺はエリシャとシェムハザの二人に指示を出した。

事前にバフ魔法を掛けておいたので、二人ともいつでも動ける状態だ。

 

 

俺の全力をもって、『逆転不可能な状況』から勝利をもぎ取ってやる。

そして、エルミナからの支持を勝ち取るんだ!

 

「シェムハザさんは敵主力への切り込みをお願いします。エリシャはシェムハザさんの援護を行ってください。」

 

「了解した。」

 

「いいわよ。やってやるわ!」

 

二人の返事を聞いた後に、俺は詳細な指示を出した。

 

「先ほど伝えたように、『敵の真正面』から攻撃を行ってください。ある程度の打撃を与えたら、すぐに離脱をお願いします。バフがかかっていても、大怪我を負ったり死亡する可能性があります。」

 

俺は続けた。

 

「俺たちがエデンの軍勢と戦っている姿を見せた後に、エルミナの残存戦力を説得します。うまくいくか分かりませんが、数千人規模のエデンの軍隊に勝つにはそれしかありません。作戦開始!」

 

 

 

 

~~~~

「相変わらず魔物共は弱すぎるな。」

 

「ああ、全くだぜ。」

 

余裕たっぷりに語り合うエデンの兵士たち。

もう少しで魔物を殲滅出来る。

そこまでやれば、裏切り者を処刑するのは容易いことだ。

 

 

そのようなことを考えていた、エデンの兵士たち。

彼らの前に一人の元騎士が近づいてきた。

 

「あいつはシェムハザだな。裏切り者のお出ましだ!」

 

「相手は一人だ。さっさと潰す!」

 

話し終えた直後に、兵士たちが動き出す。

近くに居た、エデン軍を構成する部隊の中の一つ。

四百人の兵士で構成されるエデン軍の小部隊が、シェムハザに襲いかかった。

だが、彼らの攻撃は成功しなかった。

 

「閃光(ブリッツ)!」

「雷鳴の拳(ドナーファウスト)!!」

 

突如として眩い閃光が辺りに迸り、兵士たちの視界が奪われる。

動きを封じられた兵士たちに、今度は濁流と化した雷が襲いかかった。

部隊全体の目が封じられ、動けない兵士が雷の柱になぎ倒されていく。

 

バフによって強化され尽くしたエリシャの攻撃魔法。

その一撃で、数十人の兵士が一瞬で打ち倒され、生き残った敵兵の多くもダメージを負った。

通常の軍隊であれば、数百人が犠牲となるその一撃。

エデンの防具によって被害が抑えられたものの、攻撃された兵士たちに動揺が広がった。

 

「俺たちの防具は無敵じゃないのか!? なぜ我らがやられていくんだ!」

「狼狽えるな! 直撃さえ受けなければ大丈夫だ!」

「普通の鎧だったら、全員お陀仏だったな......何て威力なんだ!」

 

「とにかく陣形を立て直せ! 奴らの好きにさせるな!」

 

自身の戦果を建物の陰から確認した少女。

魔法攻撃を実行した彼女が、シェムハザに叫んだ。

 

「シェムハザ、今よ!」

 

「OK、エリシャ! おりゃあ!」

 

返事をするなり、彼は剣を真横に薙ぎ払った。

衝撃波の刃がエデン軍部隊に襲いかかった。

 

「「グハア!」」

 

「何だあれは!?」

 

常識外れの攻撃に、理解が追いつかないエデン兵たち。

崩壊し始めた部隊の前衛に、元エデンの騎士が斬り込んでいった。

 

「おりゃあ!」

 

「「ガ...」」

 

「何て奴らだ! 一時こう...」

 

 

「逃がすか!! タア!」

「荒れ狂う暴風(シュトゥルム)!」

 

シェムハザが繰り出す、幾つもの鋭すぎる斬撃。

敵陣後方に撃ち込まれる、エリシャの風魔法。

エデン軍小部隊は、瞬く間に行動可能な兵士の数を減らしていった。

一つの小部隊が壊滅したことを知ったエデン軍の他の部隊。

生き残りを救出し、シェムハザたちを倒すための増援部隊が行動を開始した。

 

”もう十分です! 敵の増援が接近しているので、今すぐ後退してください!”

 

「了解した、コウヘイ君。」

 

「わかったわ。今すぐ戻るね。」

 

 

 

 

~~~~

「なあ、一体何が起きているんだ?」

 

「わかるわけねえだろ!!」

 

敵のスパイだと思っていた三人の不審人物。

そんな彼らが、味方のはずのエデンの軍隊と正面から交戦している。

意味不明な光景を見て、エルミナの残党たちは首を傾げていた。

 

「てか、あいつら強すぎじゃ......何だこれ!」

 

一人のエルミナの兵士が青い光に包まれる。

直後に他の兵士たちにも同様のことが起きて、彼らの頭の中に言葉が直接伝わってきた。

 

”皆さんに最強のバフを掛けました。これでエデンの兵士とやり合えるはずです。”

”後は俺の指示に従ってくれれば、この戦いに勝てるはずです!”

 

「信用していいのか、これ?」

 

「怪しすぎるが......他に道はない。やるしかないだろ!」

 

 

半信半疑の二人のエルミナの兵士。

そこに、5人のエデンの兵士が切り込んできた。

 

「生き残りだ! 殺せ!!」

 

「ええい、こうなったら自棄だ。タア!」

 

「魔物め! 効くかそんなも...グオ......」

 

「......倒せた! 何があったのか理解出来てねえが、攻撃が効いたぞ!」

 

特別製の防具は通常の攻撃を無効化する。

それが、エデン側の常識だった。

だが、コウヘイのバフによって強化された攻撃は、強固な守りを容易く貫通してしまった。

 

事実上無敵だったはずの自分たち。

それを容易く打ち破った、ただの一般兵。

それを見たエデン兵たちは、あまりの出来事に呆然とした。

そこに、状況を理解したエルミナの兵士たちが襲いかかった。

 

「行くぞ! おりゃ!」

「ウリャ!」

 

「「ガハ......魔物ども...め...」」

 

瞬く間に四人の敵兵がやられていった。

初めてエデン兵を倒せた。

希望を見いだした彼らは、早速行動を開始した。

 

「これならいけるぞ!」

「反撃開始だ! いまいち信用ならんが、俺たちは彼の指揮下に入る!」

 

戦場のあちこちで同様のことが発生した。

コウヘイのことを疑っていた者たちも、周囲の光景を見て考えを改めていった。

生き残った全てのエルミナ兵がコウヘイの指揮下に加わったのは、それからすぐのことであった。

 

 

 

 

~~~~

「B部隊は一時後退し、C部隊は追撃してくる敵軍を側面から攻撃してください!」

「俺の直下の騎士と魔道士の二人がA部隊を援護します。前進して敵の正面へ攻撃を仕掛けてください!」

 

(前も思ったけど、ゲームをやっているみたいだ。)

 

『戦術ウィンドウ』越しに、俺は各部隊に指示を飛ばしていく。

同時に、『指揮下の戦力』画面で各部隊が受けたダメージを確認し、適宜必要なバフを掛け直していった。

 

味方がバラバラの状態で指揮を執るのは困難だ。

そのため、生き残ったエルミナの兵士たちをA~Cの三部隊に再編して、効果的な指示を出せるよう体制を作った。

時間が無かったため部隊構成が不完全な状態だったが、今のところはうまく敵を翻弄出来ていた。

 

とは言うものの、油断は禁物だ。

緒戦による損失のせいで、こちらの戦力は300人ほど。

対するエデン側は2000人近い数を未だ有している。

 

(現実世界の戦争だったら絶対に勝てない。だけど、この世界では話は別だ!)

 

 

俺は、戦術ウィンドウ上で敵の攻勢が止まりつつあることに気づいた。

敵軍にトドメを刺すための準備を俺は開始した。

 

「物理防御強化(シルトマハト)! 魔力防壁(マナ・シルト)!」

 

俺は、A部隊の100人全員にバフをかけ直した。

 

「物理攻撃強化(フュズ・ヴァイト)!」

 

今度はB、C部隊に再度バフを掛けて攻撃準備を整える。

そして、彼らに次の指示を出した。

逆転のための最初の一手だ。

 

「A部隊は一旦攻撃を止めて、その場で防御態勢を構築してください。」

「B部隊は迂回して敵左翼側に移動をお願いします。」

「C部隊は現在交戦中のB部隊を追っていた敵を倒した後に、敵右翼側に移動してください。」

「シェムハザさんとエリシャは、俺が指示する場所に隠れてください。合図をしたら奇襲を掛けてもらいます。」

 

戦術ウィンドウを見ると、俺が指示したとおりに味方が動いていった。

敵軍への三方向からの同時攻撃を行う準備が整いつつある。

俺は次の作戦指示を伝えた。

 

「俺が合図を出したら、一斉攻撃をお願いします。ただし、飛び道具と攻撃魔法メインでお願いします。剣を用いた近接戦闘だと、数の暴力で返り討ちになります。」

 

最後に最重要事項を付け加えた。

 

「間違えても『敵を包囲』しようとしないでください! あくまでも複数方向からの攻撃に止めるんです。今の戦力差では包囲は不可能です!」

 

少し時間が経過した。

全味方部隊が配置についたのを確認して、俺は合図を出した。

 

「全軍行動開始!! 敵軍を壊滅させるんです!」

 

 

わずか百人の兵士で構成される三個の小部隊。

対して敵は二千人近い大部隊。

本来であればまともにやり合うこと自体が不可能だ。

あくまでもゲリラ戦に近い形にすることで、味方の損害を最小限にしつつ敵へ出血を強いることを狙った。

 

(と考えてはみたが、本当にこの戦力差で勝てるのか? 敵かなり強いぞ。反撃を受けて味方が全滅しなけ......いや、今はそんなことを考えずに味方を信じるしかない! 最善を尽くすことだけを考えるんだ!)

 

 

 

 

~~~~

三方向から同時攻撃を受けたエデン本隊。

信じられないほど強化された、相手側の攻撃魔法とボウガンによる攻撃。

取るに足らないはずのその攻撃により、歴戦の兵士たちが次々と打ち倒されていく。

 

魔道士たちによる攻撃魔法が炸裂し、一撃ごとに何十人もの兵が吹き飛ぶ。

魔法の直撃を受けなかった兵士たちには、ボウガンの矢が降り注いで無敵の防御力を誇った鎧が易々と貫通されていく。

 

 

これまでとは破壊力が違いすぎる、圧倒的な火力の攻撃。

瞬く間に部隊全体の死傷者数が増大していき、大混乱が発生した。

 

「クソ! 俺たちが魔物共に負けるだと!? あり得ない!」

 

「話には聞いていたが、あの裏切り者がここまで規格外だったなんて!」

 

「信じられん......これは夢だ! 悪夢に違いない!」

 

「何言ってんだお前。現実を見るんだ!」

 

驚愕しつつも立て直しを図ろうとする者。

現実逃避を始める者。

一方的すぎる猛攻撃を受けて、エデンの兵士の誰もが困惑し反撃を行うことすらままならなかった。

そんな中、エデン兵たちの指揮を執る騎士が命令を下した。

 

「全軍密集陣形を取れ! 正面の敵部隊に突撃して、数の暴力で撃滅する。その後に残り二つの部隊を順に倒していく。やるぞ、お前たち!!」

 

「「「ウラーーーー!!」」」

 

騎士の命令を聞いて、部隊の三分の二の兵士たちは突撃を開始した。

しかし、残りの兵士たちは、既に戦意を喪失していてその場から動けなくなっていた。

 

エデン側にはさらなる苦難が待ち受けていた。

突撃を開始した直後に、ターゲットに選んだ正面に陣取る部隊が分裂し、左右の部隊に合流していったのだ。

彼らによる突撃を察知したコウヘイが、臨機応変に対応したのだ。

 

「まずい、総員突撃止め! 敵は両側面から挟み込むつもりだ! 応戦準備!!」

 

それが、指揮官の最後の言葉だった。

次の瞬間には彼は吹き飛ばされていたのだから。

 

「爆発(エクスプロージョン)!」

 

エリシャの大声とともに、密集陣形の中心で大爆発が発生する。

多数の兵士が爆音とともに吹き飛ばされて、指揮系統が寸断されてしまう。

それと同時に、一人の騎士が崩壊しつつあるエデンの主力部隊に切り込んだ。

 

「タアア!」

 

エリシャの攻撃魔法と、エデン側の真正面からのシェムハザの突撃。

強化され尽くした攻撃により、エデン側の動きが止まってしまう。

 

「今だ! 矢を放て!!」

 

「「荒れ狂う暴風(シュトゥルム)!」」

「「氷の平原(アイスフェルト)!」」

「「爆発(エクスプロージョン)!」」

 

 

動きを止めたエデン兵たちに降り注ぐ、ボウガンの矢の雨。

本隊のあちらこちらで発生する、攻撃魔法による破壊の数々。

左右の部隊に合流した、エデン側の正面にいた部隊の兵士たち。

彼らが加わったことで、両側面からの火力が飛躍的に向上してしまう。

 

毎秒ごとに数十人規模でのエデン兵が倒れていく。

反撃することも、攻撃から身を隠すことも困難な状況だ。

もはや、エデン側に勝機など存在しない。

彼らに唯一残された選択は、退却することのみだった。

 

「たいきゃ......いや、戦略的撤退だ! これは退却ではない!」

 

臨時で指揮を引き継いだ兵士の怒号で、エデンの全部隊はようやく退却を開始した。

あくまでも『退却ではない』ことを強調するあたり、プライドが残っているのだろう。

こうして、へブロナの街での戦闘は幕を下ろした。

 

 

エルミナ側の初勝利という形で。

 

 

 

 

~~~~

「いや~、何とかなってほんと良かった。」

 

俺は、そうつぶやくなりその場にへたり込んだ。

 

「さすがに魔力を使い過ぎたな、半分くらいしか残ってねえや。めっちゃ疲れた~。」

 

あちらこちらから聞こえてくる歓喜の声。

それを少しの間聞いてから、俺は立ち上がった。

 

「何はともあれ勝てて良かったよ。これで、少しでも罪滅ぼしが出来たかな......」

 

 

 

 

【エルミナ神聖王国:へブロナの街中心広場】

エリシャたちと合流してすぐに、この街の町長に捕まってしまい、休む間もなく質問攻めに遭ってしまった。

三人とも疲れ果てている状態なので、できれば後にしてほしかった。

だけど状況が状況だし、エルミナ側に誠意を見せて協力を取り付けることが最重要だ。

俺たちは、疲れた身体に鞭打って彼の質問に答えていった。

 

 

一通りの質問が終わって、町長は最重要にして最後の質問を俺たちにぶつけてきた。

 

「もう一度聞くが、お前たちはエデンの敵なんだな?」

 

俺たちは答えた。

全員が即答だった。

 

「そうです! エデンをぶっ潰すためにここに来ました。俺たちは敵じゃありません!」

 

「僕も......そうだ。思い人を殺したエデンを憎んでいるんだ。」

 

「あたしも奴らの敵よ。この天才美少女を痛めつけた恨みは忘れてないわ。」

 

 

俺たち三人の返事を聞いて、町長は満足げな笑顔を浮かべた。

そして、俺たちに語りかけた。

 

「君らの言葉を完全に無視して処刑するつもりだったが、それはやめだ。君たちがエデンと敵対していることは確かだし、私たちを助けたことも事実だ。」

 

彼は続けた。

 

「私が話を付けておくから、是非国王陛下に謁見してほしい。エルミナ神聖王国、いやこの世界全体が滅亡の危機に瀕しているのだ。君たちはこの世界を救う一筋の光なんだ。」

 

「俺たちを味方として認めてくれるんですね!」

 

「そうだ。コウヘイ。」

 

俺の質問に対する町長の返事。

それを聞いて、俺たちはようやくエデンに対抗する足がかりができたことを喜び合った。

だが、なぜかシェムハザだけが喜び以外の感情が入り交じっているように見えた。

 

(シェムハザさんどうしたんだろ? いつもと違って少し暗いな。)

 

 

 

 

第十一話に続く

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