偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~ 作:やきそばVer2
--エルミナ神聖王国--
『アトラ大陸』西部に位置するこの国は、かつては超大国としてその名を轟かせていた。
長きにわたって繁栄を続けたこの国、そしてアトラ大陸の全ての国は突如として滅亡の危機に陥ってしまう。
大陸北西部に位置する小国『ハリファ』
この国に降り立った一人の転生者が全てを変えてしまったのだ。
ハリファ国の国王となった転生者が持つ、圧倒的な指揮能力。
国王が開発した、ほぼ全ての攻撃を寄せ付けない強力な防具。
その二つを組み合わせた軍隊により、周辺国は対抗することができずに滅亡していった。
ハリファ国が大陸の大部分を占領した頃には、国号も『エデン』へと変わっていた。
今となっては、エルミナ以外の国は全て占領されてしまっている。
占領下の国がどうなったのかは不明だが、国民のほとんどが消えたことは確かだ。
超大国であったエルミナですら、エデンに滅ぼされるのは時間の問題となっていた。
俺がこの世界にやってきたのは、こんな絶望的な状況下であった。
【エルミナ首都メディ:王城謁見の間】
「以上がこの国の置かれている状況だ。一応確認するが、君らは本当に味方なんだろうな?」
カーキ色の軍服を着た青年『メルビム』が俺たちに尋ねた。
ここ謁見の間での会話を聞くに、彼はこの国の軍司令官のようだ。
俺はそんなメルビムに返した。
「ええ、俺たちは味方です。三人ともエデンに対する不満と、あなた方エルミナを救いたくてここに来ました。」
俺の返事を聞いたメルビムは、エルミナの国王『テオドール』に問いかけた。
「陛下。こいつらを信じるのは危険だと本官は思います。」
彼の言葉に、周囲にいた貴族たちも反応した。
俺たちを疑っている者と、逆に希望を持っている者がちょうど半々くらいだ。
まあ、『エデンから来た相手』に対する反応としては上々だろう。
そんな反応を返した貴族たちと、その原因を口にしたメルビムに国王は告げた。
「メルビムよ。そなたの言うことはもっともじゃ。じゃが、他に希望はない。信じるしかないじゃろ。」
「しかし、陛下。」
「くどいぞメルビム。実際我らはエデンに対してまともに戦えておらん。他に手段が無い以上信じるしかない......他に希望はないのじゃ。」
少しの間沈黙が流れた。
それを破ったのは、国王テオドールだった。
「とは言ったが、完全に信用することも危険ではある。メルビムよ、お主が監視兼案内役となれ。いいな。」
「承知しました、陛下。」
「決まりじゃな。」
満足げな笑みを浮かべるテオドール国王。
彼はメルビムと俺たち三人に告げた。
「我は軍事には疎い。じゃから、エデンへの対抗策はメルビムに一任しようぞ。コウヘイたち三人は、エデンへの対抗策をメルビムと共に考え出せ。よいな?」
「ハ! このメルビムにお任せ下さい!」
「俺たちに便宜を図っていただき、ありがとうございます。」
「時間はあまりない。すぐに有効な策を準備せよ。何としても、エデンへの対抗策を見つけるのじゃ!」
【王城:廊下】
謁見の間から退出した俺たち。
エルミナ軍司令部へ向かう途中で、へブロナで起きたことの詳細をメルビムに話した。
俺たちの話を聞き終えて、彼は驚きを隠せていなかった。
「『壊滅寸前の我が軍を君の支援魔法と戦闘指揮で勝利へと導いた』か。本気で言っているのか? どう考えてもあり得ないだろ!」
「信じられないのも無理はないわ。コウヘイの魔法はただのバフじゃないもの。ここまで強力な奴はあたしですら聞いたことがないもの。」
俺とエリシャの発言を聞いたメルビムはため息をついた。
やっぱそうだよな。
へブロナでの成果を知ってても、こんな荒唐無稽な話をいきなり信じるのは無理だよな。
俺だって未だに信じられないくらいだし。
メルビムは再び話し出した。
「まあ、実際に起きたことであるのは確かだな。へブロナの住民たちが皆そう言っているのだから。ところで、魔力の消費量はどのくらいだ? かなり膨大な量を消費すると思うが。」
さすがは軍司令官。
俺の魔法が万能ではないことをすぐに見抜くなんてな。
この人なかなかやるじゃん。
メルビムの言葉に俺は答えた。
「もちろん無茶苦茶な量を消費します。先の戦いが終わったときには、半分くらいしか残っていませんでした。」
メルビムより先に、エリシャとシェムハザが反応した。
俺の発言はかなり衝撃的なものだったみたいだ。
「それ本気で言ってる? あれだけやってまだ半分も残ってたの!?」
「僕もてっきり魔力切れ直前になっていたと思っていたよ。......コウヘイ君は本当に規格外だね。」
「え? 何か変なこと言っちゃいましたか?」
二人とは対照的に、メルビムは終始冷静な雰囲気を崩さなかった。
俺の力を適切に評価した彼は軍事面からの意見を口にした。
「確かにコウヘイのバフの力は凄い。魔力が非常に多いことも確かだろう。だが、それだけでは戦争には勝てん。君はそれを理解しているか?」
「ええ、もちろんですよ。メルビムさん。」
俺はメルビムにそう返した。
そんな俺たち二人の会話内容に、エリシャは違和感を覚えたようだ。
「魔力が切れるまで味方部隊に攻撃させて、切ると同時に撤退すれば良いじゃない。それを繰り返せば戦争にも勝てるんじゃないの? 何でコウヘイの力を使うだけじゃ勝てないの?」
エリシャは魔道士としては凄く強いし、頭も良いみたいだ。
だけど、彼女はあくまでも一般人であり、軍人ではない。
そう考えて彼女の疑問に答えた。
「じゃあさ、魔力が切れたタイミングで敵が攻撃してきたらどうする?」
「そんなの簡単よ。魔力が切れる前に敵を殲滅するか、もしくは魔力が切れる前に撤退すればいいのよ。」
「確かにそうすれば負けないし、一方的に勝ち続けられるかもね。」
「そうでしょ! じゃあ何が問題なのよ?」
「倒しきれない数の敵が攻めてきたらどうなる? 倒しきれる人数だったとしても、遠く離れた複数箇所から同時に攻めてきたら? どっちか片方が起きても対応なんて無理だし、敵が同時にこの二つを使ってくることもあり得るよ。」
「.........」
「俺のバフだけを武器に戦うと、俺の魔力が切れたらそれで終わり。俺のバフがどのくらい遠くにまでかかるのかはわからないけど、ある程度の制限はあるはず。だから、遠く離れた複数箇所からの攻撃にも対処不能。」
「.........よくわかったわ。だから『コウヘイのバフ』だけでエデンを打倒することは不可能なのね。よく考えてみればそれもそうね。」
「そういうことさ、エリシャ。」
俺の説明を聞いて、エリシャは理解してくれたようだ。
シェムハザの意見も聞こうと思って、彼に声を掛けた。
「シェムハザさん。さっきの話の中で間違ってい......シェムハザさん? どうしたんですか?」
「......ああ、少し......考え事をしていてね。特に問題はないと思うよ。」
ここまでの会話にあまり参加せず、こちらから声を掛けても反応の薄いシェムハザ。
その様子を見て、俺とエリシャは彼の異変を感じ始めていた。
(シェムハザさん、最近変だな。気になるけど......今はそれどころじゃない。)
俺はメルビムに提案を出した。
それも滅茶苦茶自信があるものを。
異世界転生ものの作品では、ちょくちょく主人公が作る武器だ。
「メルビムさん。俺にいい考えがあります。新兵器を作りましょう!」
「具体的には?」
「火薬を用いた武器を使うんです。『火縄銃』って言うんですけど。」
「『火縄銃』だと? そんなものは既にある。」
俺のアイデアを聞いたメルビム。
彼は俺の意見を一蹴した。
めっちゃ自信があったのになあ...
一言で片付けられてショックだよ。
この世界思ったよりも進んでいるんだなあ。
気を取り直して、俺はメルビムに質問した。
「銃があるんですか? じゃあ、なぜ使わないんですか? うまく使えば戦力に...」
「戦力にならないから使っていないのだ。命中精度は低いし、再装填にも滅茶苦茶時間がかかる。極めつけは威力も微妙だ。」
彼は続けた。
どうやら、俺の常識外の理由があるようだ。
「エデンの連中相手でなければ、確かに銃は非常に強力だ。だが、エデン製の防具には歯が立たない。鎧の隙間に当たらないと効果が無いからな。連射性と命中率がましなボウガンを主体とした方が効果的だ。」
(そりゃそっか、火薬があるのに銃が無いわけないな。防具を貫けないなら、ボウガンとの殺傷力にも違いが出ない。だったら、他のものを提案するべきだな。)
「メルビムさん。銃を改良するのはどうですか?」
「『改良する』だと? どういったものだ?」
「簡単に言うと、『爆弾を銃で撃ち出す』んです。」
メルビムは少し考え込んだ。
彼は俺のアイデアに興味を示したようだ。
そして、近くにいた兵士に声を掛けた。
「こいつに紙と羽ペン、あとインク壺を渡してやれ。」
「了解しました。メルビム司令。」
兵士が要求したものを取りに行ったのを確認して、彼は俺に語りかけた。
「簡単な物でいいから、その改良版とやらの図面を書いてみろ。本官が使えそうだと判断したら、行き先を司令部から工房に変更する。ただし、使い物にならない物だったら承知しないからな。」
「わかりました、メルビムさん。」
彼に返事をした後に、俺はエリシャに向き合った。
「君にも協力してもらうよ。魔道士としての力が必要なんだ。君の知識と能力を貸してほしいんだ。」
「よくわからないけど、いいわよ。」
快く返事を返したエリシャ。
彼女はふと、俺の台詞の一部に引っかかったみたいだ。
「ねえ、あたしの『豊富な知識と天才的な能力』を貸してほしいのよね? ようやくあんたも、あたしが『大天才の美少女魔道士』ってことを認めたのね?」
「別にそんなことはないよ。美少女であることは認めるけど天才と...」
「認 め た の よ ね ? あ た し が 大 天 才 だ っ て。」
「......はい。」
エリシャの剣幕に押されて、つい彼女の自画自賛を認める羽目になった。
不本意だ! 不本意すぎる!
でもまあ、協力してくれるみたいだからまあいっか。
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「ふむ、悪くはなさそうだな。」
エリシャの知識を参考に、俺が簡易設計図を描き上げた。
その図面を見たメルビムの反応は上々と言ったところだ。
俺のアイデアを認めたメルビムは、俺たちに告げた。
「行き先変更だ。工房に行くぞ! さっそく新兵器開発に移る!」
第十二話に続く