偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~ 作:やきそばVer2
思い返してみれば、この世界はおかしいことだらけだ。
居住地以外の住宅ブロックへの立ち入り禁止
三食全て同じ内容で、明らかに正体不明の食品が入っている配給弁当。
不自然なほど空き家が多い住宅地。
自分たちを『人間』だと主張する魔物たち。
他にいくらでも不自然な点は思い当たる。
この世界は明らかにおかしい。
そう結論づけた俺は、闇夜に紛れて王城へと侵入した。
~~~~
【王城:城壁近くの庭園】
「やはり警備が厳重だな。正面突破は無理っぽいな。」
俺は庭園の観葉植物の背後に隠れながら、小声でつぶやいた。
「戦術ウィンドウを開いて......ビンゴだ!」
開いた画面を見つめて歓喜の声を上げた。
もちろん、巡回する兵士に気づかれないように小声でだ。
「付近にいる兵士たちの数は......10人か。大まかな建物内部の構造は......ちゃんと表示されてる!」
戦術ウィンドウには、見張りの位置は敵を示す赤いシンボルで、自分の位置が青色のシンボルで表示されていた。
その背後には建物の大まかな見取り図まで映し出されている。
(段ボールを被って潜入する某ステルスゲームみたいだ。これなら楽勝じゃね?)
敵の位置と地形、ウィンドウに映し出されている王城の内部構造。
それらをフル活用して、王城の奥深くへと俺は忍び込んでいく。
【王城:玉座の間】
「メタトロンよ、コウヘイの様子はどうだ?」
「イオフィエル陛下、彼は素晴らしい人材です。うまく利用すればゲヘナを平定するのも容易でしょう。」
「ふむ。同じ転生者同士仲良くしていきたいものだ。」
玉座の間では、イオフィエルとメタトロンの二人がたわいもない会話をしていた。
そんな様子を天井裏から観察している俺。
自分を評価してくれている二人の会話を聞いて、少し上機嫌になっていた。
(この人たちも俺のことを褒めちぎってるなあ。いや、油断しちゃ駄目だ。もう少し観察してみないと。)
それから少しだけ時間が経った。
たわいもない話を終えて、彼らは話題を大きく変えた。
俺が知りたいと思っていた内容にだ。
「例の計画は順調か? メタトロンよ。」
「問題ありません、陛下。エルミナ神聖王国への攻撃は順調です。コウヘイのおかげで先日の作戦も大成功を収めました。」
(『エルミナ神聖王国』って何だ? エデンの外に国が存在しているのか?)
やはり、違和感は間違っていなさそうだ。
イオフィエルたちの会話は続いた。
「やはりあの男は規格外だな。だが、気を抜くなよ。我が輩たちの会話を盗み聞きしているかもしれないぞ。」
「ご冗談を陛下。この城の警備をくぐり抜けるのは無理でしょう。」
「ハハハハ。それもそうだな。」
上機嫌のイオフィエル。
彼はふと天井を見上げた。
「もしかしたら、あそこに隠れていたりしてな。」
(バレた!? いや、こっちを見てはいないから大丈夫だ。大丈夫だよな??)
俺の存在に気づいていないと思われる二人。
彼らは話を更に続けた。
「メタトロン。我が輩たちの目的は何だ?」
「いきなりどうしたのですか、陛下? そんなことはわかりきっております。」
「いいから答えよ。できるだけ
メタトロンはイオフィエルに言われた通りに話し始める。
「私たちが『この世界の神』に成り代わることでしたよね?」
「続けよ。」
「『我が国の国民と戦争によって得た捕虜を生け贄にして、神になるための魔力を抽出する。そのためにこの歪んだ世界を作った。』ですよね?」
「その通りだ。」
(おい、ちょっと待て。『神に成り代わる』だと? そのために『大量の生け贄を用意する』だって? 予想していたよりもヤバいことするつもりじゃないか!)
俺はその時決意した。
何が何でもあの優しい隣人たちを助け出すと。
そのために、なんとしても手に入れた事実を広めて、イオフィエルたちに反旗を翻させると。
情報を持ち帰るべく、俺はその場から離脱しようとした。
その時、運悪く天井の裏側に足をぶつけてしまった。
ゴト!
(あ、ヤバい!!)
静かな玉座の間に、小さな音が響く。
その音をメタトロンが聞き逃すわけがなかった。
「陛下!? まさか本当に!?」
「ふむ。ネズミが入り込んだようだ。後は任せた。」
「は! 承知いたしました。」
イオフィエルの命令で、メタトロンが動きだす。
「総員に告げる。侵入者が入り込みました! 奴は真実を知っています。なんとしても捕まえるんです!!」
メタトロンの叫びとともに、多数の兵士たちが部屋になだれ込んでくる。
侵入したことがバレてしまった。
(ヤバいヤバいヤバい! 見つかったら絶対助からない!!)
天井裏から音が鳴るのも無視して、俺は脱兎のごとくその場から逃げ出した。
「あそこですね! 天井裏を探すのです!!」
「「承知しました!」」
猛スピードで遠ざかっていく天井裏から響く足音。
それを追う無数の兵士たち。
その様子を満足げに眺めながら、イオフィエルは独りごちた。
「全く、周辺の敵を察知できるのは君だけじゃないんだよ。コウヘイ君。」
彼は目の前の空間に手を伸ばして、複数の画面を呼び出した。
呼び出された画面たちは、コウヘイが使用している戦術ウィンドウと瓜二つであった。
「真実を教えてあげたんだ。コウヘイ君、君は期待通りに動いてくれるかな?」
【王城:地下の廊下】
城門はもちろん、城壁の上にも多数の兵士が待ち構えている。
ほとんどの廊下にもバリケードが構築されて、完全に封鎖されていた。
巡回していた兵士たちが、部屋を一つ一つ調べていき、不審人物がいないかを確認している。
戦術ウィンドウを確認しても、表示されるのは絶望的な数の敵。
そして、敵は人数を活かして突破不能な強固な警備体制を築いていた。
退路のほとんどを断たれた俺は、唯一移動できた地下へと逃れるしかなかった。
俺は、いつもの能天気さが完全に吹き飛んでいた。
自分が犠牲になるだけだったら、ここまで真剣になることはない。
だが、今は『エデンの住民たち』のために行動しているのだ。
他の人の命が懸かっているために、いつにも増して俺は真剣になっていた。
「クソ! クソ! このままじゃまずい!!」
(なんとしても、この情報を持ち帰ってみんなを目覚めさせないと! 住民たちが全員蜂起してくれれば、この歪みきった世界を直せるはずだ!! この情報を流して、みんなを助けるんだ!)
天井裏での決意を再確認して、俺は退路を必死になって探していた。
「いたか?」
「いや、まだ見つけてない!」
背後から怒号と複数の足音が近づいてきた。
(追いつかれる!)
そう思ったとき、廊下の右手に鉄の扉が見えた。
今いる廊下は直線だ。
このまま走っても、途中で見つかるだろう。
(戦術ウィンドウには内部に複数のシンボルが表示されているが......行くしかない!!)
俺は鉄の扉をこじ開けて、内部へと侵入していった。
【王城:地下厨房】
入り込んだ部屋は地獄のような光景だった。
絶望に打ちひしがれた顔をした人々が、黙々と作業をしている。
ある者はひたすら食材を切り、またある者はパン生地をこねている。
部屋の中央に置かれた長机の上には、見覚えのある弁当箱が並んでいた。
そう、この部屋は配給弁当を作る厨房だったのだ。
「奴隷労働をさせているじゃないか! この世界は虚構まみれだ!」
幸いなことに、見張りの兵士はいなかった。
いるのは痩せ細った作業員だけだ。
そのうちの一人が、俺にか細い声で話しかけてきた。
「君は......コウヘイ君?」
「あなたは誰で......見覚えがあるような......」
(駄目だ、頭に靄がかかって思い出せない。)
彼のことを思い出せないでいる俺に、彼は話を続けた。
「オスカーだよ。気がついたらここで働かされていたんだ。君の言っていた『奴隷労働』が存在するとは思っていなかったよ。」
「思い出した! あなたはオスカーさんですね! 何で......何で忘れていたんだろう!」
かつての隣人の変わり果てた姿。
それを悲しんだり、再会を喜ぶ時間も一秒たりともなかった。
「後はこの部屋だ!」
追っ手が叫ぶ声が聞こえてくる。
早く逃げなくてはいけない。
「何をしたのか知らないけど、追われているんだね。コウヘイ君。」
「オスカーさん! 逃げ道はありますか? 他の方たちに真実を伝えて助け出したいんです!」
俺の必死の声を聞いて、オスカーは答えた。
「......一つだけある。そこのダストシュートからなら逃げられる。」
「ありがとうございます!! 俺がここに来たことは隠してくれると助かります。」
「もとよりそのつもりだ。みんな、いいな。彼が助けてくれるかもしれない!! コウヘイ君が来たことを喋るんじゃないぞ。」
オスカーの言葉を聞いて、作業員たちの瞳にわずかだが光が戻った。
その様子を確認した直後に俺はダストシュートに潜り込んだ。
【王城外部:廃棄物集積場】
ダストシュートの先は城の外のゴミ置き場に繋がっていた。
汚物まみれになりながらも脱出に成功して、俺は歓喜していた。
「やった! やったぞ! 後はみんなに真実を伝えるだけだ!」
叫んだ後、ゴミまみれになっていることに気づいた。
体中からめちゃめちゃ嫌なにおいがしている。
「帰ったら着替えないとな。あんまり汚い格好だとドン引きされちゃうだろうから、早く風呂にも入ろ。」
脱出に成功して一安心した俺。
かつての能天気さが少しだけ戻ってきていた。
【王城地下牢:特別収容室】
王城の地下深く。
全ての魔法を無効化する素材で作られた特別収容室の内部に、その少女はいた。
『エリシャ』
それが彼女の名前だ。
元々はとても優秀な魔道士で、将来も約束されていた才女だ。
そんな彼女は偶然この世界の真実を知ってしまう。
そのせいで、エリシャはこの薄暗い地下牢に幽閉されている。
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そんなエリシャの元に、二人の看守がやってきた。
リーダー格と思われる看守と、その腰巾着の看守の二人だ。
リーダー格の看守が牢の中を見てつぶやいた。
「念のために様子を見に来たが、貴様が脱走したわけではないな。」
「あたしが脱走できるなんて本気で考えているの? あんた馬鹿?」
エリシャの反抗的な態度と発言。
それに怒った看守は、腰巾着の看守に命じた。
「相変わらず生意気な奴だ。やれ。」
命令を受けた看守が、手に持った小さなボタンを押した。
同時にエリシャの首に装着させられているリングが強制的に彼女の中へと魔力を注入する。
魔力を注入するとはいっても、それを自分の意思で使うことはできないが。
「キャアーーー!!」
逆流する魔力の濁流。
そのあまりの痛みと不快感にエリシャは思わず叫んでしまう。
「もういいぞ。」
拷問の命令を出した看守がもう一人の看守に告げる。
敢えて時間を空けてから、命令を受けた看守は拷問を終了させた。
「ハア、ハア......この程度で......この......天才美少女魔道士がくたばるとでも!」
拷問を実行した看守が、皮肉を込めて話しかけた。
「はいはい、天才様は恐ろしいことで。」
リーダー格の看守が、もう一人の看守とエリシャに告げた。
「おい、行くぞ。緊急の仕事が優先だ。エリシャ、今回はここまでにしてやる。感謝するんだな。」
言い放つと同時に、看守たちは小走りで去って行った。
後に残されたのは、エリシャただ一人だ。
「緊急の仕事とか言ってたわね。誰かがこの城に侵入したのか、それとも奴隷が脱走したのか。まあ、どっちだってあたしには関係ない。」
エリシャは半ば諦めたかのような暗い表情をしていた。
だが、その目にはまだ闘志が残っていた。
彼女は独りぼやく。
「この国は間違っている。叶うのなら、この国をぶっ潰してやりたい! 誰でもいい、あたしに協力してくれ!!」
第六話に続く