偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~ 作:やきそばVer2
【王都オラム:住宅地Bブロック】
「みんな、今日は俺が衝撃のニュースを持ってきた! 是非聞いていってほしいな。」
早朝の住宅地Bブロック
そのど真ん中で俺は声を張り上げた。
なんだなんだと集まってくるBブロックのみんな。
ある程度の人数が集まってきたところで、俺は話し始める。
伝える内容が内容なだけに、俺はいつの間にか本気モードになっていた。
「みんな、この世界......いや、この世界は根本からおかしいんだ! これから、俺はこの世界の真実を話す。」
俺は続けた。
「この世界は紛い物なんだ。イオフィエルたちが神に成り代わるための生け贄として、みんなを文字通り消費するつもりなんだ! 今ならまだ間に合うはずだ。協力してくれないか?」
住民たちの反応は冷ややかだった。
厳密には『冷ややか』とは少し違っていた。
俺のことを本心から心配しているように見えた。
「コウヘイ君。一応聞くけど、本気で言っているの?」
「サーシャおばさん。昨日、王城に忍び込んで直接聞いたんです!!」
サーシャからの問いかけに大声で答えた。
このやりとりを聞いていた他のみんなは、何かを確信したような表情をしていた。
「コウヘイ君。君は『知恵の実病』にかかっているわ。」
「俺は病気なんかじゃありません!」
誰も俺の話を真剣に取り合わない。
それどころか、サーシャおばさんから病気扱いされてしまう。
なんとかしてみんなを信じさせるために、必死になって反論を続けていく。
「俺は正気です。妄想とかじゃありません!」
「わかっているわ、コウヘイ君。おかしくなっているのはあなたの身体よ。身体が病魔に冒されているせいで、変なことばかり言うようになってしまっているの。」
「サーシャおばさん......何を言ってるんですか?」
「「典型的な『知恵の実病』の症状だな。」」
「「ああ、早く助けてあげないとだ。」」
「皆さん......サーシャおばさんだけじゃないんですか? 俺を病気扱いするのは......」
周りの住民たちも全員が俺のことを病気扱いしてくる。
そんな中、サーシャが俺に優しく語りかけてきた。
「コウヘイ君。『知恵の実病』は、発症してから五日以内に死亡するとても危険な病気なの。初期症状は『意味不明な言動』よ。コウヘイ君にはその症状が出始めているわ。」
「何を言ってるんですか? そんな病気あるわけありません!」
「別の世界から来たんでしょ? 知らなくても当然よ。でも安心して。『病院』で一月くらい治療を受ければ絶対に治るから。」
近くにいた一人の男性が、優しげな声色で俺に語りかける。
「騎士団に連絡しといたぞ。すぐに来てくれるそうだから安心しろよな。コウヘイ。」
今度は別の女性が俺に話しかけた。
「みんなで見守り合っているのは、この病気を早期発見するためよ。今回はうまくいって良かったわ。」
その場の全員がこちらに語りかけてきた。
そこには微かな狂気が滲み出ていた。
「「「あなたには病気で死んでほしくないの。ちゃんと病気を治して、私たちと『幸福』を追求していきましょ。」」」
隣人たちの表情と声色には、一切の悪意が籠もっていない。
俺のことを心から心配する隣人たち。
純粋な善から、俺を助けようと必死になっていることが伝わってきた。
(人々の『善意』そのものを利用して、相互監視体制を作り上げるなんて......この世界は、どこまで歪みきっているんだ!!)
暫く経って、数人の騎士がこちらに向かってきた。
どうやらタイムオーバーのようだ。
「通報を受けて参りました。患者さんはどちらですか?」
「「「こちらの方です。」」」
隣人たちが一斉に俺に指先を向けてくる。
騎士たちは俺を見て笑みを浮かべる。
一見とても優しい表情。
だがその態度からは、邪悪な何かがにじみ出していた。
「君が患者さんだね? 一緒に来ようか。」
「大丈夫だよ。心配しなくてもお兄さんたちが付いているよ。」
表面上だけは穏やかな口調で騎士たちが話す。
俺は連れて行かれる直前に、最後の叫びを上げた。
「この国全体が『偽りの世界』なんだ! みんなの『善意』のせいで、俺は『地獄』に落とされるんだ!!」
【王城地下牢:特別収容室】
病人扱いされた俺は、騎士たちに連行されていった。
もちろん『病院』なんかに連れて行かれる訳がない。
王城の地下牢へ幽閉されてしまった。
それも、『魔力の生成を阻害する効果がある』とか言ってた首輪のおまけ付きでだ。
嫌すぎるおまけ商品だな。
ハッピーセットのおまけみたいな、可愛らしいものだったらまだ良かったのに。
まあ、そんなもので喜ぶ年齢でもないか。
~~~~
「ここがお前のスイートルームだ。のんびり......はできないだろうが、せいぜい大人しくしていろよ。」
看守が檻の中の俺にそう告げる。
俺は、目の前の看守に向けて怒りのままに叫んだ。
「何が『知恵の実病』だ! 『病院』とやらに連れて行くとか言ってなかったか!?」
「うるさいやつだなー。そんなもんあるわけないだろ。全部知られたからには『処分』するだけさ。」
「『一月治療すれば戻れる』って住民たちが言っていたぞ。それを過ぎても戻ってこなかったら、みんなが不審に思うんじゃないのか?」
俺の言葉を聞いた看守が鼻で笑った。
そして、冷酷な事実を突きつけた。
「魔術の才能も軍師としての適性もあるくせに、そんなこともわからないのか?」
彼は続けた。
「決まっているだろう。お前は『存在自体』を消されたんだよ。Bブロックの住民たちには、既に記憶処理を施してある。誰もお前が居たことすら思い出せないだろうな。」
「.........」
「君だって隣人がいなくなった事を忘れていただろ? 『オスカー』とか言ったか? 彼は人手が足りなかったから連れ去られたけど、君はそのこと自体を忘れていただろう?」
「お前たちは......どこまで姑息な手段を使うんだ!!」
「ハハハ。お褒めにあずかり光栄です。それではごゆるりとお過ごしくださいませ、コウヘイ様。これ以上不平不満を述べられましたら、拷問させていただきます。お気を付けくださいませ。」
皮肉たっぷりの悪意しかない台詞を吐いて、看守は去って行った。
これじゃあみんなを助けることは不可能だ。
不本意すぎる形で、肩の荷が下りた俺は、元の能天気さを取り戻していた。
誰かの命がかかっているときしか、本気モードにならないみたいだな。
俺ってとことん変人だ。
「はあー......もういいや。何やっても無駄そうだし、看守が言ってた通りゆっくり過ごそう。」
「ずいぶんのんきね。新人。」
唐突に後ろから声を掛けられる。
振り向くとそこには一人の少女が座り込んでいた。
16歳くらいの見た目で、情熱的で美しい赤い長髪。
金色に輝く宝石のような瞳。
俺と同じく黒いローブを着込んだ美少女が、俺のことを見つめていた。
なかなか返事を返さない俺に、彼女は再び問いかけてきた。
「ねえ、聞いてるの?」
「聞いてるよ。ところで君は誰?」
「あたしは『エリシャ』よ。一週間前からここに閉じ込められてる。あんたは?」
「俺は『コウヘイ』だよ。昨日お城に忍び込んで、今日の朝同じブロックのみんなに真実を話したら捕まっちゃった。」
俺の返事を聞いたエリシャは、怪訝そうな表情で問い詰めてきた。
「コウヘイだったわよね? あんた本当に王城に忍び込んだの? そんなことできるくせに、考えなしに住民に事実を伝えたの?」
「そうだけど、なにか?」
「もう少し巧妙にやろうと思わなかったの? 住民たちがまともに取り合ってくれないことすら予想できないの? あんた馬鹿なの?」
「君は疑問ばっかり言うね。もちろん、俺は馬鹿に決まっているじゃないか。」
「あきれたわ。あたしと違って、救いようのないアホね。」
さすがに、この子俺のこと馬鹿にしすぎじゃね?
まあ、それはいったん置いておこう。
俺は話題を変えた。
「ところで君は何でここにいるの?」
「もともとCブロックに住んでたんだけど、あんたみたいな馬鹿が真実を知っちゃってね。そのことをベラベラと演説しやがったの。」
「記憶処理されなかったの?」
「もちろんされたわ。でも、いつもの癖であたし自身に回復魔法を掛けちゃってね。そのせいで記憶が残っちゃったの。偶然そのことを騎士団に知られて、この部屋があたしの新居になっちゃったの。」
「洗脳されているのに、よくそんなことできたね。」
「あたしは天才魔道士だからね。洗脳なんて効くわけないわよ。」
彼女はドヤ顔でそう答えた。
エリシャは幽閉されている割に元気あるな。
それに、かなり自信過剰のようだ。
この子も俺みたいな変人なんじゃないか?
そんな彼女に俺は別の質問をした。
「ちなみにさ。俺たちがどうなるのか知らない?」
「さすがの大天才の私もそこまでは知らないわ。まあ、悲惨な目に遭うことは確かでしょうね。」
そこまで言ったとき、エリシャは表情を変えた。
その目には、強い闘志が宿っていた。
「ねえ、コウヘイ。あんたもこの世界がおかしいと思っているのよね?」
「当たり前じゃん。」
「あたしは、この世界をぶっ壊したいと思ってる。ねえ、協力して一緒にこの狂った世界を滅茶苦茶にしてやりましょ。城に忍び込んで帰って来れたあんたと、天才魔道士のあたしが組めばやれるはずよ。」
エリシャの力強い言葉を聞いて、俺の心に再び火が付いた。
そうだ、やってやろう!
こんな『
「いいぜ。俺も協力するよ。」
「決まりね。ひとまず体力を温存しましょう。」
意気投合した俺とエリシャは、脱走できる機会を伺った。
だが、脱走する機会が訪れることはなかった。
それどころか、投獄されてから一週間後に、俺たちの状況は更に悪化してしまう。
「準備しろ。囚人共。今日からお前たちは『農村』行きだ。」
「逃げようとしても無駄だから覚悟しておけよ。」
第七話に続く