偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~   作:やきそばVer2

7 / 7
第7話:超天才美少女魔道士(自称)との逃避行

【エデン辺境:集団農場D】

牢獄から連れ出された俺とエリシャ。

護送用の馬車に乗せられた俺たちは、二日間の移動の末に『集団農場D』へと連行されていった。

エデンの配給食の材料は、複数あるこれらの集団農場で作られているらしい。

そこでの強制労働を俺たちは命じられてしまった。

 

明るさの全くない、暗すぎる新生活が始まってはや一週間。

俺たちは粗末な囚人服を着て、強制労働にいそしんでいた。

少数の監督官に監視された俺たちを含む大勢の労働者が、その場で働いていた。

 

一人の監督官が、俺に向けて怒鳴る。

 

「キビキビ動け、コウヘイ! 今日も飯抜きにされたいのか!」

 

「すんません監督官さん。働くのやめていいですか? 俺の将来の夢はニートなんです。」

 

収穫した小麦の束をいくつも抱えながら俺は口答えした。

もちろん、そんなことをしてただで済むわけがない。

 

「相変わらずなめ腐った態度だな! タア!」

 

ビュン!

 

「ギャ!」

 

俺の態度に怒った監督官は、鞭で俺の背中をひっぱたいた。

痛みのあまり悲鳴を上げたが、その程度では俺は動じない。

俺の能天気さとプラス思考を甘く見るなよ!

 

 

そんな俺の様子を見て、冷酷無比な監督官ですらあきれ果ててしまう。

ため息を吐きながら、彼は諦めの声を上げた。

 

「全く貴様という奴は......絶望する奴は何人も見たが、この状況でもお気楽な奴は初めてだ。」

 

 

監督官は俺の側に目線を移す。

そこでは、エリシャが黙々と鍬を振るって地面を耕していた。

 

「貴様のお友達は真面目に働いているぞ。おい、お前はこいつの態度をどう思う?」

 

 

彼の質問にエリシャは答える。

とても悲しげで、恨みを含んだ声色だった。

 

「こんな奴のせいで、連帯責任を負うのはもう嫌です。監督官様......せめて、こいつがいないところで働かせてください。」

 

「いい返事だなあ、エリシャ。囚人共はこのくらいしおらしくないと駄目だな。だが、別々のところで作業させることはできない。規則違反になるからな。」

 

「そんなこと言わずに助けてくださいよ。監督官様。このままじゃせっかくの天才が大馬鹿になってしまいます。」

 

「エリシャ、お前も変人だと思うがな。まあ、真面目に働いてくれるならそれで良い。」

 

 

監督官はエリシャの反応に、気を良くしたようだ。

少し彼女の言葉に引いたようだが、概ね順調だ。

 

こいつら馬鹿で単純だな。

俺たち二人の三文芝居を見抜けないなんて。

 

 

そうこうしているうちに、日暮れがやってくる。

俺たちはあてがわれた住居に帰っていた。

 

 

 

 

~~~~

「エリシャ。今日の成果はどう?」

 

「芳しくないわ。コウヘイ。」

 

集団農場の外れにあるこじんまりとした一軒家。

隙間風が吹き込み、あちこちで雨漏りがするほどの粗末な家。

その壁際で、エリシャが持ってきた情報を俺は聞いた。

 

 

俺が囮として生意気な態度を取り続ける。

監督官や監視兵の目が俺に向いている隙に、エリシャが情報収集を行う。

その結果を毎晩共有しているのだ。

 

 

「この大天才の頭脳の力を持ってしても、逃亡に役立ちそうな情報はあまり見つからなかったわ。警備が固すぎてうまく動けない。」

 

「やはり、簡単には逃がしてくれないか。」

 

 

『逃げ出すこと自体が難しすぎる』

そのことを俺は実感した。

 

そのとき、ふと彼女の言葉の一部が気になった。

『大天才?』

それ、自分で言うことか?

 

 

「エリシャ、自画自賛しすぎてない? 自分で自分のこと『大天才』とか言っちゃってたよね?」

 

「何言ってるの、コウヘイ。自明のことを言ってるだけじゃない。」

 

「自信過剰だとか言われたことない?」

 

「失礼ね! よく言われるけどそれが何よ。」 

 

やっぱこの子も変人じゃん。

類は友を呼ぶってやつなの?

 

 

俺がそんなことを考えているとき、彼女が語り出した。

少し前までのはっちゃけた態度から、とても真剣な眼差しに変わっていた。

 

「コウヘイ。得られた情報を整理するわよ。」

 

彼女は続けた。

 

「ここまでの調査でわかったのは、『自力で逃げ出すことはまず無理』ってことよ。でも、そのせいで見張りたちは油断してるみたい。ご丁寧にここまで着てきた服や防具。それに杖なんかも保管してくれている。」

 

「あいつら、やっぱ俺たちのことなめてるな。さしずめ、『魔道水晶』の材料にする前だけは身ぎれいな服装にしてくれるといったところか? 他人になめた態度を取るのは俺だけで十分だろ。」

 

「あんた救いようのないくらい能天気ね。」

 

「いやー、照れるなあ。エリシャもあまり変わらないと思うよ。」

 

「そんなことない!」

 

彼女は声を荒げる。

少し経って、彼女は落ち着きを取り戻した。

そして、彼女は穏やかな口調で話した。

 

「はあ......まあ、あんたのおかげで自分を見失わずに済めてるわ。そのことだけは感謝してる。」

 

 

装備はあるし、体力も辛うじて残っている。

逃げ出すことができればどうとでもなりそうだ。

だが、逃げ出す方法が見つからない。

しかも、今回はタイムリミットも付けられている。

素早く行動しないと、『魔道水晶』を作るための生け贄にさせられてしまうからだ。

 

監督官がここに来た直後に、俺たちの知りたくもない未来を語ってくださった。

俺たちを生け贄にして洗脳の効果を高めるための魔道水晶を作るらしい。

その準備が整い次第、俺たちは材料として消費されてしまうとのことだ。

 

 

全く、人道的なお国でありますこと。

もちろん褒めてなんかないよ。

 

 

 

少しでも体力を温存するべく、俺は早めに床についた。

エリシャも同じ考えのようで、同じく就寝準備をしていた。

 

 

~~~~

少し時間が経った。

 

一時的ではあるが、少しだけ穏やかな時間。

その静寂を打ち破って、外から怒号が飛び込んできた。

 

「タアー! オリャー!」

 

「「グハ......こいつ...やるな......」」

 

「怯むな! 侵入者を斬り殺せ!」

 

激しい剣戟と悲鳴。

指揮官の発する命令。

 

原因は分からないが、外で戦闘が発生したようだ。

待ち望んでいた大チャンスに、俺とエリシャはすぐに動き出した。

 

「コウヘイ。私が装備を取り返してくるから、あんたは工具を探してきて。」

 

「了解、エリシャ。首輪をぶっ壊せそうな奴を探してくるぜ。」

 

 

騒ぎに気づいた囚人たちが、あちらこちらを歩き回っている。

数人の兵士がそれを止めようとするが、当の兵士たち自身も混乱しているため、事態を収拾出来ずにいた。

俺はその隙を突いて農具置き場に忍び込んだ。

 

 

今は混乱が広がっているが、あまり長くは持たないだろう。

すぐに鎮圧されてしまうはずだ。

俺は焦りながら、使えそうなものを物色していった。

 

「鎌やシャベルはあるけど......お、これならいけるんじゃね?」

 

目の前に転がっていたのは小型の金槌と木に穴を開ける用のノミ。

その二つを手に取って俺は駆け出した。

 

エリシャの方も無事に装備を取り返せたみたいだ。

後は、忌々しい首輪を破壊してここから逃げるだけだ。

 

 

 

 

~~~~

ガン!ガン!バキ!!

 

金槌とノミを首輪に打ち付ける音が鳴った。

魔力生成を阻害する効果を持つ首輪は、あっさりと破壊されていった。

 

「ウィンドウは......ちゃんと開けるな。これならバフ魔法も使えそうだ。エリシャの方はどう?」

 

「こっちも大丈夫そうよ。コウヘイ。」

 

 

魔力を取り戻せたことを確認し、俺たちは歓喜の表情を浮かべた。

混乱が収まりきる前に脱走すべく、近くにあった輸送用の馬車を奪い取った。

 

「行くわよ、コウヘイ! 全速力で戦闘地域を突っ切る!」

 

エリシャは御者台に座ると同時に馬車を出発させた。

そのままの状態では戦場を突っ切ることは困難だろう。

だが、今は俺の最強のバフ魔法が使える。

 

「物理防御強化(シルトマハト )! 身体強化(シュテルクング)!」

 

 

速度と防御力を強化された馬が牽く馬車は、戦場へ向けて猛スピードで突っ込んでいった。

警備の兵士たちから弓矢が放たれるが、その全てを弾きながら馬車は進み続ける。

俺たちは、勢いのままにこの農場からの逃亡を図った。

 

(生物相手なら人間じゃなくても『戦力』として追加出来るんだな。ぶっつけ本番でうまくいって良かった。)

 

 

そう考えながら、俺は戦場を見渡した。

見ると、一人の騎士が複数人の監視兵と交戦していた。

 

馬車が走る音を聞いて、その騎士はこちらを向く。

そして、とてもいい笑みを浮かべて俺たちに叫んだ。

 

「無事に逃げられそうだな、コウヘイ!」

 

「シェムハザさん!? なぜこんなところに?」

 

「僕のことは気にせず行ってくれ! これは君への謝罪なんだ! 最後に会えて良かったよ。」

 

 

シェムハザの様子を見て俺は凍り付いた。

彼がなぜこんなことをしているのかはわからない。

しかし、この人が死ぬつもりでここに来たことだけはわかった。

 

「エリシャ! あの人の傍に行ってくれ!」

 

「本気なの? 敵だったらどうすんの。」

 

「それはない。シェムハザさんは騎士団でも偉い方の人だから、騙すとしたらこんな方法はとる必要がない! 理由はわからないけど、彼は味方だ!」

 

 

少しの間エリシャは考え込んだ。

すぐに顔を上げて、俺の頼みを聞きいれてくれた。

 

「いいわ。あんたの知り合いみたいだし、今回は信用する。掴まってて!」

 

言うやいなや、彼女はシェムハザのいる方向に馬車の進路を変えた。

馬車がシェムハザの側を通り過ぎる直前に、俺は腕を伸ばしてシェムハザを馬車に押し込んだ。

 

 

「「逃がすな! 奴らの進路を塞げ!!」」

 

十人ほどの兵士が馬車の前に立ち塞がった。

 

「荒れ狂う暴風(シュトゥルム)!」

 

エリシャの風魔法により、悲鳴を上げる間もなく兵士たちが吹き飛ばされていく。

それを見た彼女は勝ち誇った顔で叫んだ。

 

「有象無象共が! 超天才美少女魔道士のあたしに勝てるとでも?」

 

特徴的な赤い長髪をはためかせた彼女の叫び

その咆哮には、燃えさかる火炎の如き熱く激しい感情が込められていた。

 

「掴まってなさい! このまま正門に突っ込む!!」

 

激しい衝突音とともに、馬車の突進を受けた門が粉々に粉砕される。

俺たち三人を乗せた馬車は、すさまじい速度を維持したまま集団農場から離脱していった。

後に残された敵兵たちは、圧倒的な速度で走り去っていく俺たちの姿をただ眺めていることしかできなかった。

 

 

 

 

【エデン辺境:集団農場近くの森】

「なぜ僕を助けたんだい? あのまま二人で逃げてくれて良かったのに。」

 

追っ手を撒いて、一息ついたタイミングでシェムハザが疑問を投げかけた。

俺は即答した。

 

「シェムハザさんのおかげで脱走出来たからです! それに、あのままだとシェムハザさんが殺されてしまうことも明白でした。だから助けました。」

 

「お人好しだね。僕は君を騙したのを忘れてないかい? 腕試しの後君に洗脳魔法を掛けたのに気づかなかった? オスカーさんのことを記憶から消させたのは僕だよ。それに何人もの人を奴隷に仕立て上げてきたんだよ。」

 

 

俺は告げられた事実に少し驚いた。

だが、それは彼を助けない理由にはならない。

 

「気づいてはいませんでしたが、少し怪しいとは思っていました。」

 

「じゃあなん......」

 

 

俺は彼の言葉を遮った。

 

「何かあなたに事情があると思ったからです。本心から体制に協力していたのなら、わざわざ危険を冒してまで助けに来ないですよね?」

 

エリシャが続いた。

 

「コウヘイの言う通りよ。あなたもイオフィエルたちに反感を抱いているんでしょう?」

 

 

シェムハザを助けた理由の一つを述べた後、俺たちは少し黙った。

俺とエリシャはお互いの顔を見つめ合った後に、息を合わせてシェムハザにもう一つの理由を伝えた。

 

「それだけじゃありません。今は一人でも多くの戦力が必要なんです。」

 

「あたしもコウヘイと同じ意見。あたしたち二人は両方とも魔道士よ。前衛が必要だわ。」

 

 

シェムハザは俺たちの言葉に返した。

 

「感情論だけじゃなくてホッとしたよ。いいよ。二人に僕の力を貸そう。」

 

 

シェムハザは少しだけ暗い表情になった。

そして、何かを決意したかのように語り出した。

 

「コウヘイ君。君がトリガーになったんだよ。」

 

「俺がですか?」

 

「ああ、そうさ。君がとてつもない才能を持っているのに、事実を広めただけで『魔導石を作る材料』として消費させようとしたことに憤りを覚えてね。」

 

彼は続ける。

 

「メタトロンから聞いたんだけど、陛下はコウヘイ君が城に忍び込んだことに最初から気づいていたみたいでね。わざと計画を聞かせたらしいんだ。」

 

「やっぱり、あのときのイオフィエルには不自然な点が多すぎると思ってました。」

 

「そりゃそうだよ。敢えて事実を知らせたうえで君がどう動くかを試したみたいでね、変なことをしなければ陛下の右腕にするつもりだったみたいだよ。他にも何か企んでいるらしいし。」

 

「だからわざと聞こえるように話していたんですね。」

 

「おそらくそうだろう。全く、君に再度記憶処理を施せばそれでいいのに、使いづらいと見るやいなや、存在自体を消そうとするのは頭にきてね。だから、僕はせめてもの償いのために君たちを助けた。」

 

 

その言葉を聞いて、エリシャが声を荒げた。

 

「ちょっと待って! 何で国王はコウヘイをそこまで評価してるの?」

 

シェムハザは答えた。

 

「コウヘイ君の才能が凄いのもそうだけど、それよりもコウヘイ君が陛下と同じ『転生者』だからさ。他の世界のことを知っているから、その知識を活かしたかったそうだ。」

 

「変な名前だとは思っていたけど......異世界から来たのね。能天気なのもそれが理由だからかしら?」

 

「異世界から来たのは本当だけど、変人なのは俺だけだよ! いや......やっぱ違うな、エリシャもこっち側だったの忘れてた。」

 

 

エリシャは俺の発言の一部を意図的に無視したようだ。

彼女は軽く笑いながら話し出す。

 

「アハ。まあそれもそうね。シェムハザさんでしたっけ? いくら何でも、コウヘイ君だけが国を裏切った理由じゃないですよね?」

 

「もちろんさ。」

 

 

彼は真剣な眼差しで語りだした。

 

「実はね。僕には彼女がいたんだよ。でも、ある日突然いなくなった。何でかわかるかい?」

 

「真実を知ったからですか?」

 

「違うよ、コウヘイ君。彼女は『何も知ることはなかったのに、連行された』のさ。集団農場の人手が足りなくなってしまってね。その穴埋めに連れて行かれたんだ。」

 

「「.........」」

 

「そのことが原因で、僕はこの国自体に反感を抱いたんだ。ちょうどそのすぐ後に君が来て、今回の出来事が起きた。だから、僕は反旗を翻した。」

 

 

語り終えたシェムハザは、二人に質問した。

 

「ところで、行き先は決まっているのかい?」

 

「いえ、逃げることしか考えていなかったです。」

 

「あたしも行き先までは考えていなかったわ。」

 

 

俺たちの答えを聞いたシェムハザは、プランを伝えてきた。

 

「そうだろうと思ったよ。一つだけ行き先の候補がある。『エルミナ神聖王国』へ行こう。『ゲヘナ』の先にある国さ。」

 

 

彼は最後にこう語った。

 

「『エルミナ神聖王国』だけが最後の希望だ。」

 

 

第八話に続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。