偽りの理想郷~チートバフ魔法使い兼超最強軍師の俺。転生先がディストピアだったので、最強の軍隊を作って全力でぶっ潰すことにしました~ 作:やきそばVer2
【エデン境界付近:
農場からの追手を完全に撒いた俺たち。
壁を突破するための準備を整えるために、森林で小休止をとっていた。
「これこれ~。普段着は落ち着くな~。」
「そうね、コウヘイ。囚人服は臭くて着るの苦痛だったわ。」
俺とエリシャは、取り返した服に着替えていた。
一緒に持ち出してきた杖の状態も確認していく。
馬車を鹵獲したときに装備していたが、状態までは確認する余裕もなかった。
「相変わらず、手になじむいい杖だ。無事に取り返せて良かった。」
杖に問題がないことを確認して、俺は上機嫌になっていた。
それは、エリシャも同じだったようだ。
彼女も俺と同じ雰囲気をまとっていた。
俺はエリシャが持つ杖を見て、少し気になったことを彼女に聞いてみた。
「ところでさ、エリシャの杖はかなり長いね。俺のはかなり短いけど、何が違うの?」
「大型の杖の方を使うと、攻撃魔法の威力が底上げされるの。補助魔法の場合は関係ないから、コウヘイの持っているやつは短いので問題ないと思うわ。」
エリシャは続けた。
「コウヘイの場合は魔法の使い方がかなり特殊だから......もしかしたら、杖がなくても問題ないかもね。杖無しでもバフを掛けられてたし。便利そうな、よく分からないウィンドウも出せてたよね。」
「確かにな。でも、杖があった方が雰囲気出て俺はしっくりくる。」
そんなこんなで準備を整えた俺たち。
俺の号令とともに、全員が動き出した。
「準備はいいな? このクソみたいな楽園からはおさらばだ!!」
【エデン境界付近:
「ここが一番警戒が手薄そうです。他は駄目そうです。」
俺は戦術ウィンドウを見て、今いる場所が最も警備が手薄なことを確認した。
『警戒が手薄』とはいっても、それは他の場所と比較した場合のことだ。
俺の傍で画面を眺めているエリシャが話し出す。
「一番近い詰め所はここから東に500mの地点ね。壁伝いに西に進んだ地点は1km位先か。コウヘイ。ここで良いんじゃない?」
「そうだね、エリシャ。ここにしよう。」
エリシャに返事をしながら、俺はシェムハザに指示を出した。
「シェムハザさんはこの位置に待機してください。万一の時は敵の足止めをお願いします。」
「了解した。コウヘイ。」
俺がシェムハザに指定したのは、ここから東に100m地点にある岩の陰。
敵が駆けつけてきた際に、側面もしくは背後から奇襲を掛けられる位置だ。
全ての指示を出した俺は二人にバフを掛けた。
「まずはシェムハザさんを強化します。
シェムハザが青いオーラをまとったのを確認して、今度はエリシャにバフを掛けた。
「次は、エリシャの番だ。
「少し心許ないけど、それでいいわ。」
エリシャにもバフがかかったことを確認して、俺は静かに二人に指示した。
「作戦開始。さっさとエデンから逃げちゃおう。」
~~~~
「位置に付いたよ。コウヘイ君。」
「シェムハザさんの準備ができたみたいだ。やってくれ、エリシャ。」
「了解。
彼女の声とともに、高くそびえ立つ城壁のすぐ傍で大爆発が発生した。
辺り一面に轟音が鳴り響き、爆心地近くの地面が大きくえぐられる。
最大火力を投入した彼女の攻撃魔法によって、城壁は容易く崩れさ......らなかった。
「おい、何でだよ......何をどうしたらあの大爆発を耐えられんだよ!」
「嘘、傷一つ付いてない......こうなったらもう一度!
エリシャは再び爆発魔法を使用したが、全く効果がなかった。
同じ箇所への二度の爆発魔法での攻撃。
その爆風により、地面には直径70m近い大穴が開いていた。
だが、それでも城壁には一切傷がつくことはない。
「こうなったら、地面を掘っていくしか......いや、無理だ!」
俺たちは穴の底をのぞき込んだ。
そこには、地下深くまで無敵の城壁が続いていた。
これでは地下を通ることも無理だろう。
「たぶん、魔力相殺シールドが張られているわ。城壁全体にシールドを貼るなんて信じられない!」
「そんなものがあんの?」
「ええ、費用が高すぎるから、まず使われることがないんだけど......。こんなに大規模に使用した例は聞いたことがないわ!」
彼女は続けた。
「この天才魔道士の攻撃でびくともしないなんて......そうとしか説明が付かないわ!」
俺たち二人が驚いている中、シェムハザから通信が入った。
戦術ウィンドウから彼の声が聞こえてくる。
”まずいぞ、二人とも! さっきの爆発音で警備隊に気づかれた!”
慌てて画面を確認したら、東から複数の敵が猛スピードで接近してきていた。
西の詰め所の方からも、同じく敵部隊が接近してきている。
ひとまず、俺は応急措置を取った。
「
「まかせといてよ!」
「シェムハザさんは、その場で待機してください。敵兵が通過したタイミングで後方から奇襲を掛けるんです! 西側の敵は今は考えなくていいです。」
”了解した。コウヘイ君。”
ひとまずは時間を稼げるだろう。
だが、このままではまずい。
俺は馬車の積み荷を探り使えそうなものを探った。
しばらく積荷を物色したら、大型の金属製の漏斗が見つかった。
(もしも『魔法以外』の攻撃が効くのなら、いけるかもしれない!)
「エリシャ! 魔力相殺シールドに物理攻撃は効果ある? あと、どうすればこのシールドを一部分だけでも破壊出来る?」
「物理攻撃で防壁に穴を開けさえすれば、少しの間だけその周囲のシールドを無効化できる。だけど、魔法によって作られた攻撃だと無効化されるわ。」
「『魔法によって間接的に作られた攻撃』だったら効果ある?」
「多分いけるとは思うけど、何か策があるの?」
彼女の答えを聞いて、俺は確信した。
軍オタ知識の出番だ!
これならいけるぞ!
俺は少しキモイ笑みを浮かべながら彼女に伝えた。
「もちろんさ。この漏斗を使う。」
~~~~
「オリャ!! タア!!」
「「グハ!」」
シェムハザの一閃で4人の猛者が切り伏せられる。
彼の足下には数十人の兵士が倒れ伏していて、激戦を繰り広げていたことを物語っていた。
返り血を浴びたのか、彼の銀色の髪も所々赤く染まっていた。
「こいつ、ただの伏兵にしては強すぎる!」
「おい、シェムハザじゃないか? 何で脱走に協力してるんだ?」
追手たちの言葉に答えることなく、シェムハザは彼らに近づいていく。
「さあて、次に死にたいのは誰だ?」
「「ひい......いや、怯むな。 相手は一人だ!」」
コウヘイのバフにより、一騎当千の騎士になったシェムハザ。
果敢にも彼に斬りかかった仲間たちが、血の海に沈んでいる光景を見て、追手たちは怯え始めていた。
シェムハザにはまだ迷いがあった。
敵になったとはいえ、相手はかつての仲間。
可能な限り犠牲者を減らすために、彼は敢えて手加減していた。
(このまま怯えていてくれ。勝ち目が無い戦いを挑まないでくれ。)
ドン! ドオオン!!
そんなシェムハザと追手の耳に小さめの爆発音が入った。
その直後に轟音と何かが崩れる音が続けて響いた。
「何が起きた!?」
「城壁からだ! まさか壁が破壊されたのか!?」
追手たちが混乱する中、シェムハザにコウヘイからの通信が入る。
”シェムハザさん。逃げ道ができました! 追手を倒したらすぐに戻ってきてください!”
「わかった。すぐに行くよ!」
コウヘイに返事を送りながら、シェムハザは微笑む。
そして、紫色の瞳を細めて敵兵を睨んだ。
「君たちをどうしてやろうか? 追ってくるなら全員殺さないとだな。」
「「ひい......」」
「そこで震えていろ! 追ってきたらどうなるかわかっているよな?」
(追ってくるなよ! 追ってこなければ、お前たちを殺さずに済む。)
シェムハザはそう願いながら、コウヘイたちの元へ全速力で駆けていった。
後に残された追手たちは、混乱と死の恐怖で動くことができなくなっていた。
彼のせめてもの慈悲はうまく機能したようだ。
~~~~
「信じられない! あたしがやったのは『漏斗の根元から広くなっている方に向けて、爆発位置をずらしていった』だけなのに。何でこんなことでシールドに穴が開いたの?」
「『ノイマン効果』を使ったのさ。」
「何それ?」
彼女の疑問に対して、何が起きたのかを俺は説明した。
「さっき君が言ったとおりのことを爆薬を使ってやるとね、『爆風を受けた金属製の漏斗自体』が『超高速の金属ジェット』に変化するのさ。」
俺は続けた。
「これが『ノイマン効果』だよ。さっき起きたことは、魔法を使って、この『ノイマン効果』を再現しただけさ。」
エリシャは俺の説明を聞いて、納得したようだ。
「『金属ジェット』が何かはよくわからないけど、『魔法そのものによる攻撃』じゃないことは確かね。間接的に生み出された物理攻撃だからシールドに穴が開いたのね。」
彼女は別の質問をした。
「てかさ、あんた何でこんなこと知ってんのよ。」
「軍事オタクには常識みたいなものだからさ。本来は『ノイマン効果』は『モンロー効果』っていうもののおまけみたいなものなんだ。」
エリシャが少し顔をしかめたが、俺は気にせず続ける。
「これを組み合わせた武器が『成形炸薬弾』て言うんだ戦車の装甲を貫くのための武器だよ対戦車ミサイルはほとんどこれを使っていて第二次世界大戦の頃から使われているものなんだ今では滅茶苦茶メジャーになっていて......」
「ストップ、ストーップ! あたし軍オタじゃないから、そんな話興味ない!!」
彼女は俺のマシンガントークを即座に遮った。
やっぱり女性受けしにくい話題みたいだな。
「どうでもいい話はここで終わりよ。」
そうつぶやいて、エリシャは真剣な表情でシールドに開いた穴を見つめた。
そして、攻撃魔法を放つべく魔力を集中させていった。
「シールドに穴が開いているうちに畳みかけるわよ。
彼女の爆発魔法が炸裂し、辺り一面に土煙が立ちこめる。
レンガの破片も降り注ぎ、俺たちは成功を確信した。
俺たちの予想通り、鉄壁の防御を誇った城壁に大穴が開いていた。
「やったわ! 遂にやったわよ、コウヘイ!」
「後はシェムハザさんと合流すれば、このクソッタレな国からおさらばだ!」
【ゲヘナ:
「無事に逃げ出せたわね!」
「ああ、これで自由の身だ!」
俺とエリシャは自由を得た喜びに沸いていた。
そんな中、シェムハザが語りかけてきた。
「二人とも目的地は覚えているね?」
シェムハザの質問に、エリシャは答えた。
「エルミナ神聖王国よね? 魔物の支配領域の先にあるんだったかしら?」
俺も続いた。
「シェムハザさん。具体的な位置を教えてください。」
俺たち二人の返事を聞いたシェムハザは、残念そうな表情で答えた。
「実は私も詳しい場所は知らないんだ。『ゲヘナの先にある国』以上の情報は持ってなくて申し訳ない。」
「じゃあ、地道に探すしかないか。」
その時、俺はあることを思い出す。
レイドの時、『ゴブリンが言語を発していた』ことを。
「エリシャ。君は『認識阻害魔法』を打ち消せたりしない?」
「できるけど、なんで?」
不思議そうにする二人。
そんな二人に、俺は自身の考えを述べた。
二人の常識を覆すようなものを。
「あいつらは本当に『魔物』なんだろうか? 実は『人間』なのかもしれないと考えているんだ。もしかしたら、『ゲヘナ自体』が『エルミナ神聖王国』なのかもしれない。」
【エデン王都オラム:謁見の間】
「コウヘイたちがエデンから逃げ出したそうだな。メタトロンよ。」
「左様です陛下。如何いたしましょうか?」
「騎士団でひとまず対応せよ。今すぐに追手を出すのだ。」
「承知いたしました、イオフィエル陛下。」
イオフェイルはメタトロンへの指示に一言付け加えた。
邪悪そのものな口調で。
「騎士団だけで解決できない際は、『レイド』を開催する。その際は市民も犠牲になるだろうが、まあいいだろう。」
(さて、ここまでは計画通りじゃ。期待しておるぞ、コウヘイよ。)
第九話に続く
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この回で第一章は完結です。
明日公開予定の第9話から第二章の幕が上がります。
エルミナ神聖王国へ逃れたコウヘイたち。
逃れた先でコウヘイたちは、エデンに対抗するための軍隊を作り上げていきます。
乞うご期待下さい。
また、この作品がおもしろいと思った方は高評価の程よろしくお願い致します。
筆者である私の励みになりますので、高評価いただけると非常に助かります。