君もゴッデスだ、ピナ 作:ピナの強化素材になりたい
当たり一面が荒野と何かの残骸である。
意識が浮上して最初に抱いた感想は、そんな殺風景な光景への困惑だった。
ここは一体どこだろうか?
きっとまともなところじゃないだろう。なんせこんな荒地に寝ていた覚えはない。
酒で酔ったにしてはいささか変な場所過ぎる。
…残念ながら自分には自室の布団で寝た記憶しかない。心当たりが何も無い。
ひとまずは起きあがろう。寝ていては何にもならない。
布団にいたその記憶を思い返す。
ゴールデンウィーク中、勝利の女神:NIKKEというゲームのイベントストーリーを完読。
そのイベントであるOverZoneにてドロシーがピナという翼を失い、美しいくも残酷な『芸術』になってしまい大興ふ…ちょっと憂鬱な気分だというのに。……それに素敵な看板があったものだ。
……この記憶は役に立ちそうにないかな?
生身で荒野に寝ていてはそう遠くないうちに干からびてしまう。
両手を地面について立ち上が…… 至近距離で、金属と地面が擦れ合う、そんな音が頭に響く。音の発生源は、自分の真下?
?
……んん?
なんか腕、黒くて一部が銀色に輝いていた。しかも全体的に精密そうな機械だし指先とかほぼ刃みたいで危なそう。生き物的な肉要素がない。
しかも脳波コントロールできる。手足を動かさずにコントロールできる。
……そんなこと言ってる場合ちゃう、両手が全部金属になって…胴体もか!?
『どうなってる?_いや、なんだっ!?声も低くい!』
発声された音が端的にまとめると機械的でかつ典型的な悪役のものだ。
何もわからないがとりあえず大問題なことは容易に想像できる。多分身体がロボットと化しているのだろう。顔にメカになった手を当てれば案の定ガッツリと金属の質感だ。叩けばカコン、と響く。
クレヨンしんちゃんのロボトーちゃんみたいだが手足を見る限り作画コストが違う気がする。もっとアーマードコアみたいなリアル系だ。
『何があったか理解できないが自分がロボットになってるのか…』
驚くことが多すぎると逆に冷静になれた。余程のことが起こらないと動じないと思えるくらいには。
残骸と広野、そしてロボットの身体。意味不明すぎてせめて誰かの説明が欲しい。親切なその誰かに該当する人はいないものか?
誰もいないので仕方なくどの方角へ移動しようか考える。
そのために顎の下に手を当て考える素振りをすれば下顎のところも金属でできていた。
見渡す限り広野な大地で手がかりとなりそうな情報がないか目を凝らす。
幸いにもロボットになった自分の視力は非常に高い。何百メートルも離れた荒地の小石すら形を鮮明に捉えられるくらいには良い。
ひとまず360度見渡して判断する。
その景色は荒野、ただ荒野、ひたすらに荒野。
だが、その絶望的な風景の中にわずかな違和感を見つけた。
運がいいかもしれない。
『…あれは?』
北の方角に遠いながらも僅かに倒壊した建造物がみうけられた。いや、なぜ北の方角とわかったのだろうか?ロボットだからか?
運良く見つけたのが壊れかけの建築物なのは荒野クオリティだ。ディストピア世界とか実はアレは蜃気楼だった……じゃないことだけを祈ろう。
なんだろうが北に行く以外にめぼしい情報を得られる場所はない。だから行く。
今更だけど当然のように機械となってる足で歩き進む。
足に獣のような鋭い爪が気になる。伸びても困るしここらで未知の金属を切れる爪切りとか売ってる?
まぁ、爪切りはともかく、運が良ければ行き先で何かが解決するかもしれない。もしくは全部夢であるかもしれない。
走る、歩くを繰り返すこと33分。
目的地の詳細な姿が見えてきた。ついでになぜが正確な時間が理解できるのは便利だと感じる。
そこは、かつて軍事拠点だったのか、あるいは都市部が武装化した果てなのか。折れ曲がった管制塔の残骸が墓標のように瓦礫の山に突き刺さっていた。
『これは酷い…惨たらしいな。』
本当に念入りに破壊されている。ここまで壊されたなるとむしろ防衛側?が襲われてここを拠点されるのを嫌がったのではないかと思うほどだ。違うとは思うが。
怖い気持ちに整理をつけて早速調査していこう。
瓦礫となった土地に恐る恐る足を踏み込む。裸足だが痛くはない。脚部が丈夫で良かった。
痛覚がないだけかもしれないので適宜に足の裏は確認しておこう。
瓦礫、残骸を乗り越えて目につくのは謎の死骸。
一体なんだこれは?
それに興味を持ったが迂闊に近づくのは危険である。まず遠巻きにじっくり眺めて観察しよう。
……ふむふむ。
大きさはロボットになった自分の半分より小さいくらい。
色は滲んだ銀色っぽい色。
パーツとして胴体に脚部、他に該当しそうな部位がない死骸。自分と違い半分機械で半分生物みたいな感じだ。
損壊が激しいため全体像が想像できない。だが人間ではないことはわかる。
結論、多分どっかで見たことある。なんだろう?
その死骸からはモン◯ンのように物資を剥ぎ取ることは出来なさそうだった。というか剥ぎ取った謎物質をどう活用できるかわからん。
処理方法もわからないし放置するしかないだろう。
即死トラップだったら困るし念の為にと建材の破片を拾う。それを死骸の近くにいくつか投げて様子を伺った。
復活しないしそれらしい罠が作動することはなかった。
だとしてもなるべく死骸とは距離を取りつつ基地?の内部へ移動する。死骸を突いて自爆でもされたらたまったものではない。
距離にして約150メートル先で惨状の本質が見えてきた。
百を軽く超える謎の死骸と人間らしい遺体をあちらこちらで確認。
どちらも損壊が酷い。色々飛び散っているため一秒視界に入っただけでトラウマになるレベルのもの。
幸いか吐き気は…込み上げてこない。身体はロボットだし当然か。
ただただ凄まじい不快感が感情を支配していく。
『……見ててキツいな。ああ、とてもキツい。』
原型を辛うじて保っている人の遺体から軍人、あるいは傭兵とも取れる装備が残っており周囲の遺体も元は同じような人々だったのだとわかる。
そんな比較的損壊のない遺体でも国旗をはじめとした所属のエンブレムや刺繍がわからずどこの部隊か不明だ。
素人目線では残念ながら死者は多くを語ってくれない。
彼らの残した装備を手に取ろうと思ったがどうも今の自分の身体は妙に大きい。全くもって今更だが。
身長が4〜5メートルくらいある気がする。試しに兵士が持っていたアサルトライフルを拾おうとしたが、指先が太すぎて引き金にすら通らない。無理に握れば、精密な火器はただの鉄屑にひしゃげてしまうだろう。
残念だが使えないものを持っていても仕方ない、諦めよう。
謎生物の死骸にも弾丸でも射出するのだろう機構が見受けられたが利用方法が思いつかない。こちらも一旦諦めよう。
そして生存者は謎の『人間ではない』死骸も含めてここにいない。
全滅した…ではなくどちらもここから引き上げたからだろう。
さて、他を探そう。
見る限り建造物は軒並み倒壊していので地下施設がないかを調べたい。都市ならそれくらいはあるだろうし。
歩くこと数分、ちょうどそれらしいものを見つけた。
マンホールだ。結構大きいサイズのもの。
蓋は大変重いらしい、が数分捜索してもさっきまで見つけた以上の情報はなかったので試しに入ってみよう…身体がでかいけど入れる?どうだ?
『……無理か』
試しに蓋に乗ってみたら案の定身体が蓋の直径より大きい。
これも他を当たるしかない。
一歩一歩は大きいから移動しやすい。ただ狭いところはダメになってしまってもどかしいな。
……探していたら大型の排水溝みたいなのがあった。
過去には大量の下水を流していたのだろう。だが今は流す水もないのか普通に通れる。
野生化したワニとか、某ウイルス開発製薬会社のように薬品を下水に流してしまいヤバい生き物が誕生とかがなければいいのだが…。ウイルス開発製薬会社の方にもバカでかいワニいたね。
視界の続く範囲で探索しようと思ったが突如、前方が突然光に照らされる。
『うぉっ!?』
……いや、驚いたが冷静になればわかる。光ってるのは自分だ。
ライトは頭部に内蔵されているらしく炭鉱夫のヘルメットみたいに正面に向けて自動で光る。まぁそれはそれで怖い、ありがた怖い。
鬼が出るか蛇が出るか、覚悟していこう。