君もゴッデスだ、ピナ   作:ピナの強化素材になりたい

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悩むドロシー/紅蓮

ドロシーがラプンツェルを立ち上がらせることに心血を注いでいる間、手が空いている者が二人いる。

ゴッデス部隊の紅蓮と途中参加のロボットだ。

 

なおスノーホワイトはドロシーにから頼まれて、物資探索のために勤しんでいるので除外する。

 

手の空いている片割れのロボットはドロシーからの指示が特になく純粋に暇を持て余していた。

なのでほぼ1人きりの待機状態だ。

 

 

待っていても仕方ないのでロボットは緊張と興味から監視所の敷地内、周辺をあれこれ見て周ることした。

 


 

 

 

うん…まずは結論を。自分の顔が凶悪である。ガラスの反射で初めて知った。

改めて受け入れ許可を出したドロシーには感謝しなくちゃいけない。

どう見ても人語を使う人食いの怪物なのに……なんで?器がデカいの?

 

そしてここの施設、忌憚なく表現するならだいぶ傷んでる。

建物の外装はどこもかしこも弾痕あり、水は貯水タンクの破壊でいつまでもつか。

 

電気は自分が発電機役をしないと手軽には使えない。詳しい規格知らないから変形した車の埋め込みコンセントの電力で賄えるものに限る。

 

それでも今までゴッデス部隊のニケ達は戦い抜いたんだから、すごいの一言に尽きる。

壊れた物品や外装の修復は…自分だけじゃ無理、というか仕方がわからない。

 

いろいろ便利な身体だが頭の良さはAIとかで補えない。トランスフォーマーもキャラクター次第でアホなことをいっぱいしてるし知能自体は人間とどっこいどっこいだった気がする。あくまでも彼らは金属生命体。

 

ドロシーからそこらに転がってるAIのように質問されても専門的なことはまともに返答できず、中身が昔の会話用ポンコツAIと疑われている。

知能が人並みしかないだけなんです!信じてください!

…ちゃんと人並みあるか?あるよね?

 

 

歩きながら外の風でも浴びよう。せっかくゴッデスに会えたのに雰囲気も相まって少し気が滅入ってきた。

 

 

そう思っていたのだが…。既にもっと気が滅入っている先客がいた。

白いよくわからん服装の帯刀してるニケ。

呑んだくれの紅なし、紅蓮だ。

 

何を眺めているのか、どうもわからない。お空だろうか?

ただ頭と体をうつらうつら、フラフラとしてる。

 

なんか一人で放置しててもロクなことが起きなさそうだし、せめて斬られないくらいで相手をしておこう。下手なメンタルケアはそれこそ毒ってもの。

 

それに、同情心か何かで自分の現状と本質を悟られるのはきっと良くない。ロボットに実は中の人がいると知られてしまえば、アークに入れないと知ってそれでもアークの閉鎖まで戦おうとしてる哀れなやつと思われる。

 

紅蓮やスノホワなら仕方なし、と割り切れるから問題ない。けどラプンツェルは他者をしっかり思いやれるし、光のドロシーはなんか律儀なもんだから責任感とか感じそう。

ドロピナ助けに来ただけなんだからそういうのは無くていい。

 

 

当の座り込んでる紅蓮に2.5メートルくらい開けて横に座る。……こういう時も正確な距離が算出されるようだ。多分一歩の踏み込みでは普通の斬撃に巻き込まれない距離だと思う。

気づけば刃は飛んでいた、をされたら潔く諦めよう。飛ぶ斬撃ってどんな仕組みなのだろう?

 

『__よっこらせっと。』

 

「……おやぁ?」

 

ドスドス歩いて来たのにわざとらしいくらい今気づきました感を出すのかい。どうせ気配とかなんかでもっと前から気づいてるよこの人。

 

『あ、紅蓮さんお疲れ様です。』

 

「ははっロボットの君か。…さっきは物騒なことして悪かったよ。」

 

『大丈夫ですよ。斬られたわけでもないので。自分が一目で明らかにやばいってのもわかります。』

 

声も姿も悪っぽいし仕方ない。

しかし一体どこを見てるのやら、紅蓮の見ている方向を見るも空の虚空。空と雲以外何もなし。夕焼けのいい天気。

 

「そうかい、ありがとう。」

 

『お礼なんて。ところでお酒ですか?』

 

「ああ、残念ながらこれは私のだから…やれないがね。」

 

『それは残念。お裾分けを期待しましたのに。』

 

この身体がアルコールや水分を受け付けるかは不明。度数によってはアルコール引火しない?

 

 

「ふふっ、いや悪いねぇ。死んだら飲めなくなるんだから、そのくらいは許してほしいかな。ドロシーには黙っておくれよ?」

 

『いいんじゃないですか?休めるうちに休まないといけませんし。』

 

「…なんだか気を遣わせてるようで悪いね。」

 

『だからいいですって。こうやって受け入れてくれただけでも自分としてはありがたいので。それに酔っ払いの紅蓮さんに聞きたいことがあって来ました。』

 

嘘だ。これは絶対に!…みたいな聞きたいようなことはない。Over zone履修済みだもの。

でも近接格闘のセオリーや修理関係なら後で是非とも教えてほしい。

 

「ふぅん、なにかな?仮に私にわかることなら、答えなくもないが。」

 

『いえ、今は酔いが回ってるとお見受けしますので聞きませんよ。代わりに自分の身の上話しでも聞いてください。』

 

「……そうか。」

 

変に地雷を踏み抜く質問をするくらいならそちらの方がいいと思った。変なトランスフォーマーとしてここに来るまでを3行で話せるくらい内容は薄っぺらいけど。

 

気がつくと荒野に寝ていた。

どこに行けばいいかわからず、そんな時に通信を傍受した。

電波の強度を頼りにここに来た。

 

3行で終わる。

 

『とは言っても特に話せることがあるわけでもないんですけどね。内容がなくて。まあ、ここへ来るまでの道のりをざっくりで話をします。』

 

「ここに来るまでか、車だけにかな?ふふっ。」

 

『はいはい。それで来るまでですが…突然荒地で目が覚め起きることになってわけも分からずドロシーさんが送信した支援要請を頼りにして、ラプチャーとドンパチやってここに辿り着きました。一応今後は皆さんと共に戦わせてもらう予定です。……これだけですね。』

 

軽く敬礼する。

 

「……」

『あ、本当に以上です。ここまでの数日が自分の全てですので。』

 

「………」

 

『?』

 

なんか喋ってほしいのだけど、真顔で見上げられても困る。

紅蓮さん?あのー?

 

「……フフッ、ならよろしく頼むよ。」

 

『はい、頑張ります。』

 

鼻で笑った感じの返事だ。まさに気持ちがこもってない返事、わかる。

ま〜ったく期待してない。

何日持つかくらい考えてるまである。自分も紅蓮と同じ目線になれば同じことを考えるし、そもそも車の装甲も半分廃車みたいなもんだ。

過信する奴もおかしい。

 

でも意外と丈夫なのだよこのボディ。小型ラプチャーなら身を半分にするのも余裕のパワーがある。なんならそれらに多少どころかまぁまぁ撃たれてもなんか小破で済む生命力だ。しかも少しずつ治る。

 

実写版トランスフォーマーで惑星サイバトロン出身の奴らはサイズが伴えば急所を破壊されない限り倒すのは難しい。特にオプティマスプライムなんて死んでからが本番。

 

でも自分がゴッデスのニケに性能で勝てるとはいってない。無理。その辺のラプチャーくらい切り捨てられる。

 

『けど…正直なところはキツイですね。遠距離じゃ銃口の数で勝負しなきゃいけない。この状況をひっくり返すにはとにかく奴らの懐に入る。これをするとなんというか、心が覚悟で削れますし乾きます。』

 

「……」

 

『常に決死の覚悟で切り込んで自分の命を得る。こんなものをずっと続けるなんて、産まれながらの定めでもないと到底できることじゃないと思います。』

 

「あぁ、そのとおりだ。」

 

『だから、本当はあなたに聞きたかったんです。そんな定めがなくてもどうしたら心を決められるかを。』

 

自分で言っててむせる。でも本当のことだもの。

あんな大量のラプチャーをいくら結構すごいボディがあっても近接攻撃はハラハラドキドキが止まらない。

 

「ふぅん。なんだか人みたいなことを言うじゃないか。」

 

『褒めてくれてもいいですよ。』

 

「やめておくよ。…それに君の質問だが私では答えられそうにない。期待してくれたことは嬉しいがね。」

 

そういってまた一杯飲んだよこの飲んだくれさん。今度は鼻で笑う感じがしなかったけど。これが限界OLということだろうか?

労働基準法なんて人類存続の前には風前の灯である。

 

更にもう一人も立ち直らせようとするところはやっぱスゲェよドロシー。これじゃあドロシーじゃなくてママシーだよ。

 

『頑張り過ぎて疲れているんですか。そんな人に自分は何かを教えてくださいとか頑張ってくださいとは言えませんよ。パシリくらいはするんで、うまく休めるうちに休んでください。』

 

 

「…君とは初対面と思うがどうだろうか?それとも中身がすこぶる優秀なのかね?」

 

んん?なんか湿度上がったな。へらへらしてる口調が消えた?

もう今のところたぶん聞くこともないし不用意に地雷も踏みたくない。撤収しよう。

あの2人だって来てるもの。

 

『さぁどうでしょうね?あと今度ラプチャーが来たら自分の酷い戦い方を見てください。きっと開いた口が塞がらないですよ。……ちょっとここらで邪魔者は退散しますね。』

 

「えぇ…?おいおい、私はそんな答えで納得をしな_」

 

座った姿勢から両手を地面につけて、ロボット形態からオンボロ装甲車にトランスフォームする。重要なのはそそくさと退散することだ。

 

なぜなら自分たちの後ろには…勝利の女神様たちがいる。

 

 

 

「楽しそうなお話しをしているところごめんなさいね。」

 

「……ドロシーじゃないか。」

 

頼れる素敵なママシーとピナちゃんだ。

あとはよろしくお願いします。

 


 

謎が多い変形ロボットが見計らったように去り、ドロシーとピナ、紅蓮の3人が同じ場所に残る。

たった今ドロシーが見た紅蓮の様子は、ここ最近の中で珍しいものだった。

 

変に悔しそうな、ふくれっ面にも見える表情をしている。

 

「…全く、肝心なところで逃げられてしまったよ。」

 

「それをあなたが言うんですか。」

 

自分は現実から逃げているのにアレには逃げないで欲しかったなんて、とそう思う感情がドロシーの口から小さく声に出た。

 

「ん?何か言ったかい?」

 

「いいえ。言ってませんよ。水を差してしまいましたか。」

 

「そうだとも。どう言ったものか…あのロボにどこか見透かしてやったりと思われてね、妙に悔しいのさ。」

 

「そうですか。」

 

知ったことではない。多少は気になるが今はどうでもいい。

早く立ち直って欲しいのがドロシーの素直な気持ちだ。

…しかし一方的に話すとしても紅蓮が大人しく聞いているか分からない。だからある程度彼女の話も聞くべきだろう。

 

「いったい何があったのです?」

 

「いや、なに。私のことを…いかにも凶悪そうなアレからこういうヤツだとバシバシ決めつけられて、な。たまったものじゃない。」

 

「……なら行って弁明すればいいと思いますよ?」

 

そういう紅蓮からは疎ましさや怒りが感じられない。単純に悔しいのだろうと分かる。

おそらくほぼ当てられいるからだ。

 

「…足がふらついているんだ。これでは車になってるアレには追いつけないじゃないか。ほら、ドロシーたちも1杯付き合っておくれ。」

 

酒ビンを掲げて2人を招く。

 

「……」

「ドロシー様?」

 

ドロシーは紅蓮の隣に座り込んだ。近くには同じようなビンがいくつかあり、立っていたり反対に転がっているものもある。それらを見て目を細める。

ビンの一つを手に取り、鼻を近づけて臭いを確かめた。

 

「もう一度アレを追ってみたらどうですか?足がふらついても、ちゃんとお話してくるなら私は待っていて構いません。」

 

「…いや、いい。行ってアレに世話などされたくない。」

 

「そうですよね。だって__元から酔っていないんですから。」

 

紅蓮はドロシーの一言で露骨に嫌そうな顔をした。さっきまでと違う苦虫を噛み潰したような表情だ。それをよそ目にドロシーはひと口、ビンの中身を飲む。

 

「…やめてくれ。」

 

「目覚ましには加減しているんですよ?ピナも飲んでみてください。」

 

「あの、これは…」

 

「飲んでください。」

 

促されてピナも同じくひと口中身を飲む。

多少ぬるい感覚がしたがそれだけだった。

 

「…?……あの…これ、水ですね。」

「酒だ。」

 

「いえ、水ですよ?」

 

紅蓮は酒だというが、飲んだそれからは口の中がひりつく感覚や味はしない。

 

「酒だといっておるだろう。」

 

ピナにはその返答が理解できなかった。一瞬紅蓮の味覚が壊れたのではないかと疑ったくらいだ。

 

 

「一人しか飲んでないとはいえおかしいと思いました。昨日から飲み明かせる量なんてここでは準備出来ませんから。」

 

「……」

 

「水を飲んで酔ったふりなんてあなたは何がしたかったのですか?」

 

もう酔えないと観念したように紅蓮は目線を下げて呟く。

 

 

「……さぁ、気分だけでも酔いたかったのではないかな。」

 

声は小さく、その目は遠くを、遠い過去を見るような目をしている。

それがドロシーには虚しく思えた。

 

だから仕方なく逃避行動に付き合うことにした。まるで馬鹿な妹の相手でもする気でだ。

さっきまであのロボットがしていたのと同じく紅蓮の隣に座る。

 

ドロシーは水しか入ってないはずの酒瓶を一つ手に取り飲み干した。

 

「~っ!!」

 

あたかも酒を飲んでいるかのように振る舞う。それを見た紅蓮は自然と口角が上がる。

 

「ほう…」

 

第三者のピナからしてみれば何がしたいのか理解するのは難しい。だがゴッデスとしてそれなりの付き合いがあるとおのずとわかったのだろう。こうした方が円滑にコミュニケーションが取れると。

 

「ここのお酒も悪くありませんね。」

 

「……そうだろう絶品だ。」

 

「紅蓮、1杯どうぞ。」

 

「君も1杯飲みたまえ。」

 

 

背中を見守るピナからしてみれば、女神の名を冠した者達なのにあまりにも虚しい姿なのかもしれない。

それでも紅蓮が立ち直ってくれるなら必要なことである。

 

 

現実逃避に付き合っていると次第に呑んだくれの機嫌は良くなっていく。

 

「_誰かと一緒に飲むのは久しぶりだ。こうも酔いが早く回るとはなぁ。」

 

うつらうつらと揺れながら紅蓮は言った。

 

「そうですか。実は私もちょっと酔ってきました。」

 

「…じゃあ酔ったついでに真面目な話でもしようか。」

 

 

ドロシーではなく紅蓮から話を切り出した。それが少し意外に思える。

 

「いいですね。聞きたいことがあったのですが、先にいいですか?」

 

「いいだろう」

 

「どうしてお酒を飲むのですか?」

 

「ふむ……」

 

上を見上げて考える仕草をする。それからまたドロシーを見据えた。

 

「少し休みたかったのだ。…懸命に走り過ぎていた。」

 

ぽつりぽつりと思い出しなが語る。

 

「姉さんと一緒に剣を握ってラプチャーと戦う日々だった。そして姉さんが死んでしまった。」

 

紅蓮は刀を一度だけ掲げた。

 

「この一振りの、花無十日紅(はなにとうかのくれないなし)を残して。そうして君たちに出会ったのだ。…リリスも、レッドフードもいい仲たちだったのう。」

 

「……」

 

「ああ、もちろん君たちもいい仲間だ。…今日来たアレはよくわからんが。だから頑張ってまた戦ったんだ。」

 

 

彼女の思い出はすぐそこの現在にあと少しまで近づいた。

 

「そして目的を達成した。アークへ人間たちを連れていき守ったのだ。それで終わりだと思っていたのに…なのにここでまた戦わねばならぬと言うじゃないか。」

 

内心ではわかっている。

選定された人々を全て収容するまでここを守り続けないと終わらないと。紅蓮はそれより先に心が乾いてしまった。

 

「だから少し休みたかったのだよ。」

 

そして回想は今に至る。過去の自分が見れば唾棄するだろう、水で酔う飲兵衛の剣客と成り果てた今へと。

 

 




紅蓮「疲れた。甘やかして欲しい…。」

ドロシー「甘えるな、最後まで戦え。」
ピナ「死んだ仲間のためにも無様を晒さずゴッデスやれ。」
スノーホワイト「他を当たれ。私は警備をしなくてはいけない。」
ラプンツェル「生きてて辛い。現実逃避させて。」

紅蓮「」


怪しいロボット「…ちょっとだけよ。」

紅蓮「!?!?!?!?」

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