TS娘の曇った心を義理の兄がVRMMOゲームを通じて徐々に癒していくお話   作:乾いた布団

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気づいたら星が点灯していました!
みなさん本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!


第6話 兄の変化した朝

 ――その日。

 

 悠真は、携帯のアラームを止めると、布団の中でしばらく天井を見つめていた。

 

(……眠い)

 

 昨夜、ゲームを終えたのは、日付を超えて幾許か時間が経過した後だった。

 

 レイドが、新しい装備をどうしても今日中に手に入れたいとかで騒ぎ始め、結局予定よりも長くログインしてしまったのだ。

 

 ……とは言っても。

 

 もっとも、なんだかんだ言いながらも最後まで付き合ってしまった、自分も悪い。

 

 だから、今日は早く寝よう。

 

 そう考えながら、悠真はベッドから起き上がった。

 

 カーテンを開けると、気持ちのいい朝陽が、部屋の中を照らす。

 

 窓の外を見ると、そこにはいつもと変わらない住宅街が広がっていた。

 

(……よし、準備するか)

 

 気持ちを切り替え、自室を後にすると、洗面所へ向かい顔を洗う。

 

 そして、自身と妹の朝食を準備するため、キッチンのあるリビングへ移動した。

 

 朝陽に照らされた、見慣れたリビング。

 

 中央のダイニングテーブルには、昨晩悠真が妹の部屋へ運んだ、トレーが置かれていた。

 

 覗くと、トレーに乗ったお皿の中身は、どれも空っぽの様子。

 

 どうやら昨夜の夕食は、残さずに完食してくれたようだった。

 

(……良かった)

 

 少し安心する悠真。

 

 何しろ、過去を振り返ると、用意した食事には一切の手をつけず、そのままキッチンへ戻されていたこともあったのだ。

 

 だからこそ、乃亜が夕食を食べてくれた。

 

 そんな当たり前の出来事が、悠真にとっては少しだけ嬉しかったのだ。

 

(……さて、さっさと片付けるか)

 

 朝食の準備を始める前に、手早く洗い物を済ませようと、トレーへ手を伸ばす。

 

 ……しかし、その時だった。

 

(……あれ?)

 

 トレーの下に、メモ用紙のような白い紙が挟まっていることに気づく。

 

(……なんだこれ?)

 

 不思議そうに、その白い紙を手に取る悠真。

 

 だが、次の瞬間――。

 

(っ!?)

 

 悠真の瞳は、驚きによって見開かれた。

 

【いつもありがとう】

 

 可愛らしい丸文字で書かれた、八文字の言葉。

 

 どうやらそれは、昨晩の内に誰かが書き残したメッセージのようだった。

 

 当然ながら、悠真が書いたものではない。

 

 だとしたら、一体誰が……。

 

 そう考え初めて、でもすぐに気づいた。

 

 何しろ、この家で暮らしているのは、悠真と妹の乃亜だけ。

 

 悠真は、書いていない。

 

 ということは……。

 

 この文字を書いたのは……。

 

(っ!乃亜っ!)

 

 その瞬間、悠真の胸の内に、自然と熱いものが込み上がった。

 

 今まで、何度も声をかけてきた。

 

 毎日、食事を用意した。

 

 困っていないか、気にかけてきた。

 

 だけど、返事はなかった。

 

 もしかしたら、あまり良い印象を抱かれていないのではないか。

 

 鬱陶しがられているのではないか。

 

 そう考えたこともあった。

 

 けれど、このメモ用紙には確かに、お礼の言葉が綴られていたのだ。

 

 短い言葉だが、確かに【ありがとう】と。

 

 悠真にとって、それはずっと願っていた、何よりも嬉しい言葉。

 

(乃亜っ!)

 

 悠真は、即座に走り出したい衝動に駆られた。

 

 走り出して、乃亜の部屋の前へ行き、扉を開けて、顔を見ながら俺もだと、伝えたい衝動に。

 

 ……だけど。

 

(……それは流石に、マズイか)

 

 そんなことをすれば、せっかく一歩を踏み出してくれた妹を、確実に驚かせてしまうだろう。

 

 もしかしたら、あの硬く閉じられている扉が、さらに硬く閉ざされてしまうかもしれない。

 

 それだけは、絶対に避けたい。

 

 だから……。

 

(……よし)

 

 一息吐くと、乃亜と同じく、悠真も手紙で返事を書くことにした。

 

 手元にあったメモ用紙へ、ほんの数言だけを簡潔に記載する。

 

 本当は、話したいことが山ほどある。

 

 だけど、いきなり長文のメモを渡されても、困惑してしまうだろう。

 

 だから、少しでいい。

 

 今は、これで……。

 

 ……こうして。

 

 兄と妹の奇妙な文通が、始まったのだった。

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