生きたければ飯を食え~とある料理人の異世界繁盛記~   作:混沌の魔法使い

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プロローグ

プロローグ

 

 大通りから1つ外れた裏路地の一角にある飯屋という暖簾が掛けられた小さな飲食店。決して大きい店ではない、だが大通りから外れているとは思えないほどにその店は笑顔と笑い声に満たされていた。

 

「おじさん! このカレー美味しいよ!」

 

「おじさんじゃなくてお兄さんな! まだおじさんって呼ばれる歳じゃねえよッ!」

 

子供の1人のおじさん呼びに料理を運んでいた青年が楽しそうに笑い、その子供の頭を撫で回す。

 

「わわッ! えへへ、ごめんねお兄さん!」

 

「ははははッ! 冗談だ、冗談。呼びたいように呼んでくれれば良いぜ。ほい爺さん! 焼き魚定食お待たせ!」

 

短く刈り揃えられた髪に額に手ぬぐいを巻いた青年は大きな声で笑いながら料理を待っていた老人の下へ料理を運ぶ。

 

「お、お兄さん。ワシ……こんな立派なもんに払う金なんてないよ」

 

丸々と肥えた鯵の開き、大根と油揚げの味噌汁、蕪と茄子の漬物に卵焼きに、里芋の煮っ転がし。そして炊き立てのご飯を出された老人は震える声で払う金がないと青年に視線を向ける。

 

「遠慮すんな爺さん! 飯食って腹一杯になって長生きしてくれりゃあ良いんだ! 遠慮しないで腹一杯食っていってくれッ! 金はある時払いで催促しねぇ! 今日は腹一杯食ってくれれば俺はそれで良い」

 

「で、でも……悪いよ」

 

お金がない、申し訳ないと繰り返す老人に回りの客が声を上げる。

 

「兄ちゃんの気持ちを無碍にすんなよ!」

 

「そうそう! 兄ちゃんはこういう人さ!」

 

「ありがたく食わせて貰いなよ! 爺さん」

 

回りからの声に老人は震える手を合わせ、いただきますと口にして味噌汁を啜る。

 

「温かい、温かいし美味いよ、お兄さん」

 

「そりゃ良かった! 人間腹が空けば悲観的になるもんだし、斜にだって構えるだろうよ。それに夜も眠れやしねぇだろうさ、だけどな人間飯を食えば生きていける、前を向けるもんだ。だから生きたければ飯を食えッ! だぜ爺さん! 腹一杯食って長生きしてくれや」

 

豪胆に笑いながら己の決して揺るがぬ信念を口にする。確かに採算で考えれば完全に赤字だろう。青年の優しさに付け入るようにただ飯を食う人間もいるだろう。だがそれでもだ。それでも青年は信念を曲げない、それが己の誇りであり、こうして厨房で鍋を振るう理由だからだ。

 

「おじちゃん! お腹空いた! カレー頂戴!」

 

「わたしもー!」

 

「あいよ! だけどその前に手を洗って来いよ!」

 

はーいと返事をし、小学校低学年くらいの子供達が手を洗う為に店の奥へと駆けていく姿を見ながら青年――「川崎雄二」はその口元に小さく笑みを浮かべ、子供は元気が1番と言いながら笑った。

 

「兄貴! 唐揚げ定食1つ!」

 

「兄貴呼ぶなッ! ったく! 唐揚げ定食な。今準備するから皿洗いしてろ。どうせ金ないんだろ?」

 

「ご名答! 今度のバイト代で払うよ兄貴ッ!」

 

調子よく笑い、1人のいかにも不良という容貌の少年がカウンターの中には入り、山積みの食器を洗い始める。

 

「わ、私もお金ないんでお皿洗いで良いですか?」

 

「それならお前は配膳してくれ、ほれエプロンをつけてガキ共にカレーを持って行ってやってくれ」

 

「は、はい!」

 

髪はボサボサ、服も汚れている高校生らしき少女が渡されたエプロンをつけ、川崎が盛り付けたカレーライスを運こぶ。

 

「川崎さんよ。ほんとあんたも酔狂だよ。不良や爺さんや婆さん達に子供に殆どただで飯を食わせるなんてよ」

 

「うるせえぞ、三流記者。俺は俺のやりたいようにやってるから良いんだよ。つうか、偉そうな事を言うなら金払え、金」

 

川崎の言葉にいかにも胡散臭いという容姿の男は机の上に1万を置いた。

 

「ツケの分だ。最初はあんたをこき下ろすつもりでこの店に来たが、本当にあんたは良い人だよ。だから言ってやる。こんな事は止めちまえ、あんたならどこでもやっていけるだろ? あんたがなにをしても偽善者としか言われないぜ?」

 

言葉に棘こそあれど、記者の言葉は川崎の身を案じる響きが込められていた。

 

「偽善者大いに結構。言いたい奴には言わせておけばいい」

 

「あんたを騙してただ飯を食うやつだっているぜ?」

 

「分ってやってんだよ。俺は騙すくらいなら騙される方がいいんでね。唐揚げ定食出来たぞ、それ終わったら飯食え飯!」

 

「うーっす! ゴチになりますッ!」

 

「ゴチじゃねえ! 食った分は働けよッ!」

 

記者の言う通り川崎の店には食う者に困った者達が集まり、川崎は安い料金か、ツケか、皿洗いやごみ掃除の雑務をやらせることで食事を与えている。利益を度外視という意味では子供食堂と似たような物だが、川崎の店は子供食堂などではなく普通の飲食店であり、こんな事をすれば赤字にしかならず、閉店に追い込まれるのが当然だ。だが川崎の店はそんな営業形態でもう4年も経営していた。それが出来た理由は川崎が類稀なる料理の才を持つからに他ならない。

 

「上流階級で噂の店を持たない孤高の天才料理人がこんな所で料理をしてるなんて誰も信じねえよな?」

 

「俺は顔を出してないからな。俺は飯を作る。金持ちは俺に金を払い、俺を呼ぶ店には俺の正体に言及しないっていうのを徹底させているからな」

 

川崎には得意なジャンルという物はない。和食でも、洋食でも、中華でも人並み以上の料理を作れる上にアレンジする為の知識も豊富。会食の場や懇談会で呼ばれ腕を振るって金を稼ぎ、その金を使い薄利多売で店を運営しているのだ。

 

「気をつけなよ。あんたの親父を失脚させたい連中は山ほどいるぜ?」

 

「忠告ありがとうよ。だが俺と親父は何の関係もねえから探られて痛い腹はねえよ」

 

川崎雄二という男は清廉潔白で、思いやりに溢れ、困っている相手を見過ごせず、義理や人情を大事にする。だがそんな川崎に対して川崎の父親であり、川崎総司は川崎とは間逆の男だった。30年に渡り当選を続ける政治家であり、数多の福祉事業も展開している。だがその裏は汚職などに塗れ、川崎の母親を心労で死に追いやっただけではなく、腹違いの妹や弟の数は両手の指では足りないほどだ。表は国民の事を思う政治家、裏は私欲に塗れた薄汚い外道――それが川崎の父親であり、家を飛び出した川崎は自分のやりたかった料理人を始めたのだ。最初は苦労をしたし、借金も嵩んだ。だがそれでも地道にやって来た事が実を結び、今では人々の憩いの場となっていた。

 

「兄貴! 初給料入ったんでツケを払いに来ました!」

 

「川崎さんが紹介してくれた喫茶店採用されましたッ!」

 

「おじさん見て見て! テストで100点取ったよッ!」

 

そして今日もまた川崎の店は笑顔と沢山の笑い声で満たされているのだった。

 

 

 

 

日付が変わる少し前――時計の音だけが響く中俺は店の掃除をしていた。

 

「ふー……今日も疲れたな」

 

依頼を受けてレストランの助っ人をし、そしてその依頼料で大衆食堂を営業する。朝も夜も働きっぱなしだが……美味しいと喜んでくれる人達の声と笑顔で今日も俺は頑張れる。

 

「さてと、そろそろ店じまい……「やあ、こんばんわ」……ッ!?」

 

何の気配も無かったし、開き戸を開ける音もしなかった。だが振り返ると1人の青年がカウンターに腰掛けていた。俺は別に武術の達人という訳ではない、だがそれでもクソ親父のせいで人の気配や悪意には敏感のつもりだ。そんな俺が全く気付かなかった……一瞬身構えたが、続く青年の言葉に俺の警戒心は霧散する事になった。

 

「こんな時間に悪いね。でも腹ペコなんだ。なにか作ってくれないかい?」

 

顔に刺青の入った彫りの深い顔――コバルトブルーの瞳で俺を見つめながら何か作ってくれないかという青年。もう掃除もしたし、時間も遅い……普通の人間ならば断る場面だ。だが……。

 

「炒飯で良いか?」

 

「何でも良いよ。お腹が膨れるならなんでもね」

 

腹の空いた人間を追い返すような真似はしたくない。再びコンロに火を入れて明日の朝飯に使おうと思っていた白米の残りと卵、ネギの先っぽ、それとハムを取り出す。

 

「お前さん旅行者かい?」

 

「そんな所かな。お腹が空いてどうしようかと思って歩いていたら飯屋って看板を見つけて入ってきてしまったんだ。もしかして迷惑だったかな? それならまた来るけれど」

 

「いや、そういう訳じゃねえよ。ハム……豚肉を使おうと思ったんだが宗教的に大丈夫かって心配になったんだよ」

 

最近はヴィーガンとか騒ぐ連中も多いし、海外からの旅行者ならば宗教的な問題で使う食材も気を使う必要がある。だから豚肉は大丈夫かと尋ねたのだ。

 

「君はとても親切だね。でもありがとう。僕は特に宗教とかはしてないから豚肉も大丈夫だよ」

 

「ん、了解。じゃあちょっと待ってろ。パッパっと作ってやるからよ」

 

ハムも大丈夫と確認を取った所で調理を始める。まずはネギの青い部分。これをみじん切りにし、ハムは1cm角の角切りに、そして卵を割って軽く解きほぐしておく。

 

「鮮やかだね」

 

「心配しなくてもぼったくりなんかしねえよ。金がないならツケでも良いぞ」

 

旅行者だから戻ってこないかもしれんが、まぁそれはそれでいい。使う食材は残り物だし、正直ツケにしてやっても払いに来た奴は少ないしなと思いながら中火で熱した鉄鍋にラードとごま油をいれ、ラードが溶けて来たらネギとハムを炒め、ネギがしんなりしてきたらご飯、溶き卵を加えパラパラに仕上がるように切る様に炒める。強火にするとパラパラになるイメージがあるが、火加減を間違えると米がパサついてしまうし、米が焦げることもある。シンプルな料理ほど基本が大事だと俺は考えている。

 

(鶏がらと塩っと)

 

顆粒の鶏がら出汁と塩を加え全体に良く馴染ませたら炒飯をよせてから強火にし、鉄鍋の開いている部分に醤油を入れる。

 

「よっと」

 

強火で一気に焦げる醤油の香りを炒飯に移すように全体を混ぜ合わせ、お玉で炒飯を掬い皿の上に盛り付ける。

 

「はいよ、お待ちどうさま。特製炒飯だ」

 

「本当に早いね。無理を言って本当に申し訳ない」

 

「気にすんなよ。それに腹が減ってる奴を寒空に追い出すのは目覚めが悪いしな。残りもんだし、炒飯には合わないかもしれんが味噌汁でも飲んで身体でも温めな」

 

炒飯に味噌汁は余りあわないが、まぁ俺の夜食のつもりの残り物だったからこれで我慢して貰おう。

 

「いや我慢なんてとんでもない。本当にありがとういただくよ」

 

いただきますと言って炒飯を食べ始める青年に背を向け、使った中華鍋などの片づけを始める。

 

「美味しい、米を炒めただけなのに本当に美味しいよ」

 

「喜んでもらえて何よりだ。だけど今度は昼間にきな、もっと美味いもんを食わせてやるよ」

 

本当に間に合わせの炒飯だった。美味しいと喜んで貰えるのは嬉しいが料理人としては少々複雑な気持ちになるので、今度はちゃんとした営業時間に来いよというと青年は嬉しそうに笑った。

 

「そうだね、今度は昼間に来るよ」

 

「おう、そうしてくれ。昼間ならもっと美味いもんを食わせてやるよ」

 

それは楽しみだねと言いながら青年は美味そうに炒飯を頬張り、味噌汁を飲みほうっと溜息を吐いている。舌に合うか心配だったがどうもそれは余計な心配だったようだ。

 

「そうだ。ちょっとした世間話なんだけど良いかな?」

 

「ん? 構わないがどうした? 道にでも迷ってるのか?」

 

旅行者だから道が分らないのかと心配して尋ねたのだが、青年は俺の目をジッと見つめなんとも言えない威圧感を放っていた。

 

「君はツケでも良いと言ってくれた。だけど僕は見ての通り旅をしているツケを払わないで別の街に行くとは思わなかったのかい?」

 

まぁ普通はそう考えるだろう。そもそも今の時代にツケで良いと言うのはおかしな話だというのも分ってる。

 

「俺がそうしたいからそうしてるんだ」

 

「それは何故?」

 

嘘を許さない、あるいは俺の心を覗き込むような蒼い目が俺に向けられた。だが俺はその眼光に臆する事も、動揺する事もなかった。俺のこの信念は、俺の願いはそんな物で乱されるようなものではないからだ。

 

「腹が減るっていうのはつらいもんだ。あれほど辛いモンはねぇ」

 

脳裏に過ぎるのはクソ親父の言いつけを破ったとかで5日の監禁の事だ。水こそ与えられたが腹を満たす物は与えられなかった。幼い頃から何度も行なわれた体罰の1つだが、あの苦しみは今でも忘れられない。

 

「腹が空けば気が滅入る。ひもじければ眠れない。些細な事で腹が立つ。飯を食わねば人は死ぬ。だから生きたければ飯を食え! それが俺の信念であり、誇りだ。腹を空かせてる奴には飯を腹一杯食わせてやる。金があろうが無かろうが、若者だろうが年寄りだろうが、空腹の前には全てが平等だからな」

 

大学時代にクソ親父の意向で海外を旅した時に見たこの世の地獄とも呼べる光景が俺の信念をより強固にした。

 

空腹で動けない骨と皮ばかりの子供達。

 

金がないからと僅かな食料を盗む為に命を賭ける者。

 

餓えて死んだ我が子を抱いて泣く痩せ細った母親。

 

子供の時の経験と海外を旅した時に見た光景――それは幼い時から抱いていたクソ親父への反発心をより強い物にし、政治家なんて真っ平だった俺に自分の本当になりたいものを自覚させる事に繋がった。

 

「それは偽善っていうんじゃないのかい?」

 

「偽善、独善、大いに結構じゃねえかッ! 俺は俺がやりたいからするんだ。綺麗事よりもやる偽善の方がよっぽど良いだろ?」

 

少なくともお前は腹一杯になったわけだしなと言うと、青年は本当に楽しそうに笑い出した。

 

「そうだね、うん。その通りだ。どんな綺麗事よりも君の偽善は素晴しい者だと思うよ」

 

「馬鹿が馬鹿やってるくらいに思っといてくれ」

 

「それでもだよ、それでも君の願いはきっとどんな願いよりも美しいと思う。だから君に聞きたいんだ」

 

笑顔を浮かべているが、先ほどのような鋭い視線を俺に向けながら青年は予想にもしない事を問いかけてきた。

 

「もしもだ。もしも君が異世界に行くとしたら何が欲しい? 地位、名誉、それとも女?」

 

変な質問だと思った。見た所20代くらいだからアニメオタクか何かなのだろうかと思いながら俺はその青年の問い掛けに返事をした。

 

「言葉と文字が分れば後はいらねえかな」

 

「へえ? それはどうして?」

 

「意思疎通が出来なきゃなんも始まらないだろ? それに文字が読めないと変な契約でもしたら大変だ。だから意思疎通が出来れば良い」

 

「そうか、そうなんだね。ありがとう」

 

「おう、それより泊まる所あるのか? 無いなら狭くて悪いが2階に泊まるか?」

 

こんな時間では泊まる所もないかもしれないと思い。2階に泊まるか? と声を掛けるが青年は大丈夫と言って笑った。

 

「ちゃんと当てはあるんだ。だから大丈夫。それと申し訳ないけどお金はないんだ。だからこれで払うよ」

 

「おいおいおい、これは貰いすぎだぜ」

 

音を立てて置かれたのは金色の小さなランタンだった。メッキやガラス細工ではなく本物の金と宝石が使われているランタンだ。どう安く見積もっても数千万の代物だ。そんなもんを炒飯の代金として渡されても困る。だから返そうとしたのだが青年は首を左右にふった。

 

「貴方はとても長い時間働いているようだ。だから疲労を回復させる物として受け取って欲しい」

 

「いやだがな……」

 

「どうか貴方に受け取って欲しいのです。貴方の優しさとそして思いやりに私は感激したのです、このランプの光が貴方を癒すでしょう」

 

一転して丁寧な口調と青く澄んだ目で俺を見つめる青年の懇願にも似た言葉に、俺は頭を掻き毟り小さく溜息を吐いた。

 

「ありがとうよ、使わせてもらうわ」

 

そう言ってランタンを受け取り、もう1度青年の方に視線を向けたのだが……。

 

「……マジか」

 

引き戸を開ける音もしなかったのに青年の姿は忽然と消えていて、俺の目の前には空になった炒飯の皿と柔らかい光を放つ黄金のランタンだけが残されており、俺はそのランタンを前に腕組をして頭を抱えるのだった……。

 

「良い人間だったね。彼みたいな良い人間を出会えたのは幸運だった。どうか君の行く末を見届けさせておくれ、君がその善性を最期まで貫けるのか、それとも折れてしまうのか、はたまた世界をほんの少しだけ優しくしてくれるのか……をね」

 

ベッドの脇の机の上にランタンを置き眠りに落ちる川崎。その姿を黄金のランタンから零れる光が照らすのを見届けると刺青の青年は微笑み、溶けるように消え去っていったのだが……。

 

「え、え? え……待って!?」

 

黄金のランタンを川崎に渡した青年は自身の視界に映る光景に思わず待ってくれと叫んでいた。何故ならば……。

 

「川に流されてるッ!? なんでぇッ!?」

 

『あん……んだ……ここ?』

 

自身の神殿から寝ぼけ眼で出てきた川崎は自身の周囲を見て、ここはどこだと困惑した素振りを見せる。

 

『クアアアアッ!?』

 

『なんだこの馬鹿でかい鳥!? うおおおおおッ!? あッ……うおわああああああっ!?!?』

 

そしてその川崎を強襲する鳥型モンスターであるロックバード、そのロックバードの強襲から本能的に逃げ……。

 

『ぬおおおおおおおッ!? 崖!? 崖なんでッ!? ぶはっ!? 川ッ!? なんで川ぁッ!? がぶろおおおおおッ!?!?』

 

「っていう酷い夢を見たんだよ」

 

「へんな夢見てんなぁ、川崎さん」

 

前夜の雨でぬかるんでいた地面に足を取られ、崖を滑り落ち川へ落ちて流されていく川崎の姿と、いつもと同じ店の厨房に立っている川崎。2人の川崎の姿を見ながら青年は真っ白に燃え尽きた表情でその場に崩れ落ちるのだった……。

 

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