ある程度書いたので投下。好評だったら続けるし、そうじゃなかったらキリがいいところで終わらせる。
魔族。
それは人と似た姿をしているが、言葉を話すだけの魔物。
言葉を交わすことはできるが、その目的は意思疎通ではなく騙すこと。言葉で人間の油断を誘い殺す、そのための道具だった。
目的が違う以上、人間と魔族は分かり合えない。
だが、何事にも例外というものは存在する。
「人間のくせに大した魔力量だ。そこらの魔族よりもよっぽど素質がある。この町で一番才能があるのはお前だな」
「なに? 魔法なんて一つも使えないだと? ならばこれから学ぶといい。十分に力を付けたその時は、俺を殺しに来るといい」
「俺はエルカラート。変幻のエルカラート。心を読み取ることができる魔法を使えるんだ」
「…見えるぞ。街を滅ぼした俺が憎いだろう? 今まで感じたことがないほどの強い感情に心が押しつぶされそうだろう? その激情をすべて糧にして強くなるといい」
「俺は、人間の可能性の行き着く先を見たいんだ」
変幻のエルカラート。
それは、最も人の感情に詳しい魔族であった。
◆
それは、相手を視界に収めるだけで何を考えているかを読み取ることができる魔法。
これを使って人間たちに取り入るのは簡単なことだった。他の同族は失敗しているようだが、俺はそうじゃない。なにせ人間たちが何を考えているのかが分かるのだ。あとは、それに沿った行動をし続ければいい。
「畑仕事を手伝ってくれて助かるよ。一人でやるのは大変だったんだ」
「建物の修理をしてくれてありがとうね。おかげで雨漏りしなくなった」
「子供用の服まで編んでくれたのかい。ありがとうね、エルカラート」
「いえいえ。俺は当然のことをしたまでです」
人間は、思ったことすべてを口に出すわけではない。
口に出すか出さないか。その葛藤が心の内側であり、出した方がいいと判断されたものだけが言葉として発される。
その判断基準は『心象』。
相手からどう思われるかを考えてから言葉を発しているのだ。
裏を返せば、人間というのは心象が悪くなることを極端に恐れている。相手から良く思われないことを、絶対に避けるべきだと考えている。
ならば、話は簡単だ。
俺も同じように振る舞えば敵視されることはない。
幸いにも、俺は相手の望むことを知ることができる。そうして心象を良くしていけば、村は異形の俺に対して驚くほど親切に接してくれるようになった。
親愛、だったか。
人間は自らと関りが深いものに対して強い感情を向ける。
そして、その気持ちを伝えるために贈り物をする文化があるということを知ったのは、村に潜り込んですぐのことだった。
「……名前?」
魔族は親に育てられるわけではない。
初めからそんなものは持ち合わせていない。
「そんなもの俺には──」
エカルラット。
何故だか、そんな言葉が頭に浮かんだ。
「……エカルラット」
「エルカラット?」
「違う、エカルラット」
「エルカラート?」
「だから違うと──」
「──分かりにくいからエルカラートで」
「おい、勝手に……いや、それでいい」
俺の発した名前は、人間たちには発音が難しかったらしい。
違う名前を受け入れたのは、正直名前などどうでもよかったというのと、人間の感情がどう動くのか分からなかったからだった。
人間は不安定な生き物だ。
感情を見ていて思う。判断が規則的じゃない。個体によってまばらで不均一。魔族のような側面も持ち合わせているのに、それ以上に衝動的に動くことが多い。
まだ力の弱かったころはそれがなんとも恐ろしかった。
『相手の真意を読む魔法』を以てしても、人間の行動原理を理解するには至らなかったのだ。
「ひとつ、疑問がある」
ある日。
村人の一人に話しかけた。
「最近、魔族の被害が増えていると噂になっているだろう? どうして俺のことを受け入れたんだ?」
「そりゃあ、エルカラートのことを信頼しているからだ」
「信頼…?」
聞いたことはある。
けど、よく分からない言葉だ。
「俺は魔族だ。そのことにお前たちも気付いているだろう。どうして俺が人を殺すと思わない?」
「エルカラートはそんなことしないだろう? 子供のころからの付き合いなんだ。それくらいは分かる」
「……」
「だって、山賊を殺して食べることはあっても、村の人間を襲ったことはないだろう? だから安心できるんだ。エルカラートはこの村を守ってくれるって」
人間ならば感動するだろうか?
受け入れてもらえたと、歓喜し喜びを嚙み締めるだろうか?
だが、魔族である俺には分からない。
人間には『信頼』という習性があるのだと理解するのがせいぜいだった。
(……だが、そうか、信頼。一度これを勝ち取ってしまえば、人間は魔族に対しても無条件に信用するようになるのか)
その日から、俺は人間の感情の動向に執心するようになったように思う。
村人は言った。
エルカラートは村の人間を襲わないのだと。
人間的に見て悪いことをしている山賊を目の前で食い殺しても、村の人間は俺を追い出そうとはしなかった。
もちろん、命を落とすという光景そのものに恐怖を抱いた人間はいた。
それを為した俺を恐れ、何も言わず距離を取ろうとする人間も。
だが、時間をかけて「あの人たちは悪い人間だから」「エルカラートは自分たちを守ってくれた」と認識を改めていき、俺に敵意を見せるようなことはなかった。
信頼とは、同族の命よりも優先されるものなのか。
(……ダメだな。人間は個体差が大きすぎる。考え方は似ていても同じものは一つとしてないから再現性がない。パターン化は不可能だ)
魔族らしいとは何か。
その答えは簡単に出せる。行動が同じだから、均一だから、パターン化されているから。
だが、人間らしいとは何か。
その答えは出せない。行動が違うから、不均一だから、似て非なるものだから。
もし、人間とは何かを答えるのならば…。
それは、具体例をすべて挙げることでしか正しく説明できないだろう。
「……」
頃合いか?
区切りをつけるにはちょうどいいだろう。そんな考えが頭をよぎる中……
「いいや、ダメだな。この村には『信頼』の積み重ねがある。これを切り捨てるのはあまりにもったいない」
否定する。
悪い傾向だ。思考が短絡的になっている。
時間はあるのだ。まだこの村で学ぶべきことは残っている。
「………ん? なんだか向こうが騒がしいな」
気になって人だかりができている方へ向かってみる。
人の間を縫うように進んでいくと、そこにいたのは
「助けてください。お願いします。あなた達を襲うつもりはなくて…」
「なんだ、魔族の子供じゃないか」
村人たちに囲まれて命乞いをする魔族。
それを、村人たちは困惑した様子で見ていた。
「おい、何があった」
「エルカラート様。それが、偶然ここに迷い込んだようで」
「襲われたり命を落としたりした者は?」
「いません」
「そうか…」
それがあるのに会話をする理由は、人間は会話をした対象に対して親愛の情を抱きやすいからだ。だから、あらかじめ魔法で分かっていることであっても、会話を交わすようにしている。
そして、子供の魔族を見る。
すると向こうも俺のことが気になっていたようで、村人たちと普通に話す俺を見て不思議に思っていた。
どうやら、命乞いをしていたのは数人の村人には勝てないと思っていたからのようだ。子供の魔族はまだ力も弱い。戦わない選択をするのは実に合理的だ。
そう俺が読み取っているうちに、子供の魔族は思考回路を巡らせ、そして結論付けた。
この村は魔族の脅威を知らない村で、今すぐに自分を排除することはないだろうと。そして、先に来ていた俺の機嫌さえとれば生き延びることができると。
「お願いします、死にたくない」
「いいやダメだ」
だがもちろん許可するわけにはいかない。
信頼が失われるのは困るのだ。まだ俺は、その全容を掴み切れてはいない。
ここで魔族を引き入れてしまえば、村はただじゃ済まない。
山賊や魔物を村に放つことと同じだ。そんなことをすれば、俺まで村を出なければいけなくなる。
「エルカラート様。助けてあげてはくれませんか?」
「……なに?」
それを言ったのはこの村の村長だった。
「お前、正気か?」
「ええ。正気ですとも」
「お前がいいといったところで、他の者はそうは思わんだろう」
「いいえ。エルカラート様、村の者はみな同じ気持ちです」
「……」
言われて、他の村人の顔を見る。
『かわいそう』
『何も悪いことをしてないのに』
『襲わないって言ってるし…』
『魔族とは言っても、あんな子供まで殺すのは…』
(なんだ、こいつらは…)
人間の考えていることが分かって、久しぶりに困惑した。
人間が、親しいものに親愛の情を向けるのは知っている。
そして反対に、自分を傷つけたり、あるいは顔も名前も知らない相手に対して、魔族でも舌を巻くほど冷酷になれることを知っている。
だが、初対面の魔族に対して親愛に似た感情を抱くのは知らない。
もしや仲間だとでも思っているのか? 初対面の魔族を?
「……正気とは思えない。ここで殺しておいた方が、絶対に安全だろうに。………何より、魔族は人を殺すのですよ?」
「分かっていますとも。ただ、エルカラート様はそうじゃなかった。それどころか、もう何十年もの間この村を守ってくださっている」
「……それは──」
「──わたしは、この魔族の子供がエルカラート様と重なって見えるのですよ。あの日、この村に初めてやってきたあなたに」
この魔族を俺と重ねている…?
たったそれだけで、村を危険に晒すというのか?
だが、心を読む限りでは他の村人も村長と似たような感情を大なり小なり抱いている。
村長の戯言ではない。口には出していないが、魔族を見逃したいという言葉は村人たちの総意と捉えた方がいい。
「……分かった。みんながそう言うのであれば」
ここで魔族を殺すのはみんなの心証を悪くする行為に当たる。
それは避けるべきだ。
そうして座り込んでいる魔族の子供に手を差し出す。
親愛を向ける相手に対しては、こうするべきだ。
「お前、名前は?」
「………ソリテール」
◆
魔族を誰が引き取るか、という話になり。
結局、俺が引き取ることになった。
人間の心理とはよく分からないもので、あんなに可哀そうだ、殺すのはちょっと、と親愛の情を向けていたのに、それを迎え入れるとなったら恐怖の感情が心に表れたのだ。
奇妙なことにどちらも本心。
恐怖と、もう一つの何らかの感情。矛盾するそれらが、葛藤して渦巻いていた。
「…これについては、また後々考えるか」
「……?」
俺の独り言にソリテールは首を傾げていた。
見なくても分かる。何を考えているか分からなくて、探っているのだろう。
「俺はエルカラート。この村に住んでいる魔族だ。相手の姿を視界に収めただけで、心を読むことができる」
「心を…?」
「ソリテール。お前の疑問に答えるならば、俺の行動は村人たちの心証を悪くしないためのものだ。考え方そのものは、魔族のものと何ら変わらん」
情報を整理しているのだろう。
ソリテールは俺の言った言葉を心の中で反芻しながら、疑問を投げた。
「エルカラート……様は…」
「呼び捨てでいい。お前に敬う気持ちなんてないだろう」
「エルカラートは、どうして村人たちのご機嫌取りをしているの?」
「なに…?」
「
「……」
確かに、人間を狩るという目的ならば十分だろう。
ソリテールの言っていることは正しい。
要は、相手を殺せるだけの油断を誘っているのに、どうして殺さないのかということだ。
くだらないごっこ遊びなど辞めてしまえと言っている。
「いいや、誤解があるな」
「誤解…?」
「実験をしているんだ。人間の信頼というのがどういうものなのか。全容はまだつかめていないが、最も人間が油断した状態であることは間違いない。それを引き出す方法があれば、知りたいと思っている」
信頼。
人間が最も油断した状態。
この2つの言葉がソリテールの中で統合で結ばれた。
「あれがフリッツ、あっちにいるのがルカ、その隣がエマで、少し離れたところにいるのが……」
「ねえ、どうして名前なんて覚える必要があるの?」
「そっちの方が人間の信頼を得やすいからだ。名前を呼び合うのは、親愛の証なんだそうだ」
「ふーん…」
ソリテールは興味がなさそうだった。
まあそれもそうだ。自分が異端であることは、自分がよく分かっている。
信頼を引き出すため。
俺の行動がそれに基づいているのだと説明して、ソリテールは理解の姿勢を取った。
だがそれは、勝手にやれというだけのもの。そういう考えもあるのかと思うだけで、俺の考えに同意し実践しようなどとは思っていない。
そして、そう思っていることに俺が気付いていると、ソリテールも気付いている。
「
だからなのか、すごく無遠慮だ。
人間同士ならば、すごく空気の読めない奴だと思われることだろう。
しかし、俺は魔族。
そのあたりのことは何とも思わない。
「ソリテールの魔法は……なんだ、まだ名前も付けていないのか」
「だってつまらないもの。私の魔法は魔力を高密度に圧縮してぶつけるだけ、これじゃあ魔法とも呼べないわ」
気持ちは分からないこともない。
魔族は、自身の魔力をその生涯をかけて磨いていく。
創意工夫を凝らし、術式を複雑化させ、魔法の高みへと昇り詰めていく。
だが、ソリテールの魔法は複雑さの欠片も無い。
創意工夫を凝らすことができないほど、単純明快なものだった。
「でも、これからもっと魔力が増えれば新しいことができるようになるかもしれない。今は思いつかないような使い道も、もしかしたら見つかるかもしれない。その時に改めて、私の魔法に名前を付けることにするわ」
「……そうか」
現状、どうやって自分の魔法を発展させればいいか道筋が見えない。
そこで、ソリテールが打ち出した方針は、とりあえず魔力量を増やすこと。そして、魔力コントロールの技術を高めていくことだった。
「だったら、練習台くらいにはなってやる」
「…っ!」
腕を振るう。
次の瞬間、ソリテールがバランスを崩してよろけた。
「今のは……私の魔法?」
「そうだ。術式が分かれば使うことはできる。俺の魔法は平和的なものだからな。このままでは戦い方を忘れてしまいそうだ」
術式が分かる、と聞いて、心が読めるならそうかと納得するソリテール。
あっさり自分の魔法を使われて、しかしその心には何の感情もわいていなかった。
◆
「ソリテールのお姉ちゃん、一緒に遊ぼう!」
ある日、ソリテールは村の子供に遊びを強請られていた。
何と答えていいか分からず、困ったようにこっちに視線を送ってきた。
「いいじゃないか、一緒に遊んでやれば。遊び方は、子供の方が教えてくれる」
「……」
きっと、ソリテールは断って欲しかったのだろう。
ただ、俺が信頼を気にしているから、言葉遣いを間違えるのはリスクだと判断して俺に判断を仰いだ。
だが、俺が許可したために逃げ道を失った。
何のために、とは内心思いつつも、その場を取り持つために子供の遊びに付き合うソリテール。敬称は使わなくていいと言ったが、やはり魔族は魔力の多寡で上下関係を決めるもの。俺の言葉を、ソリテールは命令のように捉えていた。
自身の魔法に対してどこまでもストイック。
魔族の中でもソリテールはその傾向は強く、センスもあったからか魔力コントロール技術はめきめきと上達していった。
現状では、俺の魔力量はソリテールの数倍はある。
だから、同じ魔法を使ってもこっちの方が出力は上だが、燃費の良さや応用性は向こうの方が上。このままいけば、魔力量の差を埋めるほどにまでソリテールは達するだろう。
だが、やはり人間関係の方は興味がないようだ。
俺に言われて何かしらの手伝いをすることはあるが、それだけ。自分から人間と関係を築こうとはしなった。
……実のところ、その理由は分かっている。それは──
「───いいや、あえて言うまい」
視線の先ではソリテールが花冠を作っていた。
子供たちにやり方を教えてもらって、手際よく作り上げていく。初めてやるだろうに器用なもので、子供たちの誰よりも早く花を編んでいた。
出来上がった花冠を、どうしたものかと眺める。
それを、子供の一人が手に取って、ソリテールの頭の上に乗せた。
「お姉ちゃん、嬉しい?」
「……ええ、もちろんうれしいわ」
「ほんとに? お顔が全然笑ってないよ?」
「え、えっと……こうかしら?」
その光景を村人たちは──子供たちの親は微笑ましい様子で見ていた。
心に浮かぶ感情は、親愛、愛らしい、いとおしい。そんなところか。
何にせよ、子供が楽しそうにしているのを心底喜ぶ気持ち。
そういう想いで満ち足りていた。
ちらり、と。
ソリテールがこちらを見る。
……あぁ、分かっているとも。
「さて、そろそろ行くか…」
◆
村から少し進んだ森の中。
山賊や魔物が出るので定期的に狩っているが、今日ここに来たのはそれが目的ではなかった。
「いるんだろう?」
そう確信を込めて呼べばそいつはあっさりと姿を現した。
大きな2対の角
片目が隠れた風貌
目玉があしらわれた黒い装束
同族だが……なんとも不気味な雰囲気だ。
「何の用だ。遠くから魔力を強めて挑発して」
「全知のシュラハトと言う」
「全知…? 何だそれは、聞いたこともない」
「当たり前だ。この名が人間たちに広まるのは、少なくともあと300年は後のことだ」
「300年…?」
意味が分からない。
そう思い心を覗くとそこには……読めない?
「エルカラート。お前の前に姿を現すにあたって、当然対策は取っている。今の
「……なるほど」
全知、か。
心を読めない相手は初めてだが、所詮は同族。
読むまでもなく、考えていることは大体分かるだろう。
だが、どうにも考えを見透かされるというのは不快だ。
解除を試みながら会話を進める。
「それで、何の用?」
「忠告をしに来た。お前が魔王様に出会うことがないように」
「魔王…? 魔族に王なんていないだろう?」
「あと数年のうちに分かることだ。魔王様は人類との共存を夢見て、人類と戦争を行う」
「はっはっは。仮にも魔族の王を名乗る者がそんなふざけたことを抜かすのか? 狂っているとしか思えない。魔族と人類の共存は不可能だ」
俺はそう言い切る。
それを聞いてなお、シュラハトは驚いた様子もない。
俺が今まさに、人間たちと共同生活をしていることを知っているだろうに。
「そもそも、あんたもあんただ。未来を知ることができる魔法を使えるのなら、そんな不毛なことはやめろと言ってやればいい」
「無駄ではない。1000年以上先の魔族のためには、この選択は最良だ」
「そうかよ。なら好きにすればいい。俺たちは魔族だ。何に時間を使ってもいい」
……この回答も知っていたのだろう。
まるで事務作業のように、淡々と会話が進んでいく。
「だが……そうだな。変幻のエルカラート」
「何だそれは?」
「人間たちにそう呼ばれるようになる。遅かれ早かれ」
何とも不思議な名前だ。
普通に考えたら、読心の~とか、心理の~、とかじゃないだろうか?
「それを俺に伝えて何をしたい?」
「今の一言でエルカラートが死ぬ未来はなくなった」
「……感謝でもしろと?」
「必要ない。これは、魔族の未来のための布石に過ぎない」
「ふーん、なんとも魔族らしくない奴だ」
今のは、素直な感想。
シュラハトはそこらの魔族の感性とはずれている。
かと言って、決して人間らしくはない。
「……で、目的はそれだけか?」
「最後に一つ。ソリテールと魔王様は未来で友人の関係になる」
「あいつが? 人類と共存したいとか言うような奴と?」
「そうだと言っている」
「信じられんな。あいつが共存を望むとでも?」
「そうではない。だが、人間に執心するようにのは確定事項だ」
「……」
まるで、未来を知っているように話す。
いや、実際に知っているのか。
その景色はどんなものなのか。
気になる気持ちはあるが、見ることは叶わない。
「時間だ」
そう言うと、シュラハトは立ち去っていく。
追いかけるつもりはない。それも知っているのだろうか、シュラハトの歩みは逃げるようではなかった。
だが、そのおかげで間に合った。
時間にして、きっかり3分12秒。
去り行くシュラハトの背。
その心理に移っていた光景は──
◆
村に戻った。
不思議な感覚だ。一度見た光景が目の前に広がっているのは。
血の匂い。
驚くほど静まり返った村。
家屋はぼろぼろに壊されていて、いくつかの家は火が燃え移り火事になっている。
「やっぱり、ソリテールの仕業か」
返り血だろうか。
服や顔に血がべっとりとついていた。
ソリテールを傷つけられるほど、この村の人間は強くない。
「あら、帰ったの?」
声を掛けるとソリテールはこちらを振り向いた。
魔力反応で分かっているだろうに。
「どうして村を焼いたんだ?」
「分かってるのに聞くの?」
「……別に、会話が不要なわけじゃない」
「そうかしら?
「……」
「まあいいわ。私のことを怖がらずに接してくる人間を見てふと思ったの。人間を殺そうって」
「魔族の
理由はない。殺意もない。
魔族とは、人間にそっくりなだけの生き物とは、こういうものだ。
「他人事みたいに。エルカラートだって魔族でしょう?」
親しくしていた人間。
長い時間を共有してきた人間。
思い出と呼べるような記憶を持っている相手。
そういう人間が命を落とした時、人間は泣くのだろうか。悲しみに暮れるのだろうか。怒りに震えるのだろうか。
──心を痛めるのだろうか?
だが、そんな感情が湧き上がる気配もない。
「ああ、確かに魔族だ」
炭〇〇「魔族は悲しい生き物だ」
【
端的に言えばシュラハトの劣化。
全知の範囲はまったく明かされていないが、全知を名乗るような奴がまさか人の心を知らないなんてことはないでしょう。
人を騙すことに関してはトップクラスの精度を誇る。まさに人類の天敵と言っていい。
【考察】ソリテールの幼少期
人間の研究をする異端の魔族ソリテール。
そんな彼女も最初は人間になんて興味なかったのではないかという説。魔族が人間の研究をするのは、豚や牛の生活について調べるのと同じようなもの。周囲からは何やってるんだと困惑されることでしょう。
そんな彼女が人間に興味を持ったきっかけ。それは、魔力をぶつけるだけの魔法と自身の魔法を卑下していることからも推察できるものがある。
【評価をつける魔法】
これを使うと作者が幸せになる①
使えば使うほど、フリーレンの二次創作が流行る(かもしれない)
【感想を書く魔法】
これを使うと作者が幸せになる②
みんなも書こう。勇者ヒンメルならそうする。