わたし、甘織れな子は、中学二年生の時に失敗した。
何をかと言えば、色々だけど……。
一番酷かったのは、人付き合い。
そのせいで、大切な友達を傷つけてしまった。
わたしだけならともかく、親友まで傷つけた。
そのことで悩んで、苦しんで。
こうして、引き篭もりをしている。
その子は、小さい時からの幼馴染だった。
いつも、れな子ちゃんれな子ちゃんって呼びながら、わたしの背中にピッタリくっついてた。
黒髪で、背が小さくて、わたしや妹以外の人相手には、オドオドしちゃう子。
みんなから、お人形さんみたいだって思われてた、中学生になっても小学生ぽさが抜けない女の子。
そんな子だから、助けてあげなきゃって、ずっと思ってた。
頼られてるって自覚はあったし、そのことは全然嫌じゃなく、むしろ嬉しくて。
わたしの目が明るいうちは、この子に近づく悪い奴は全員やっつけてあげるから、とか出来もしないかと思って、調子に乗ってったっけ。
……うん、そう、出来もしないことだった。
わたし、全然陽キャじゃなかった。
あの子のこと、護ってあげるどころか自分のイジメに巻き込んだ。
ずっと、苦しかった。
普通の人なら、他人に合わせて、もっと上手くできたんだって思う。
でも、私は人生が下手くそで、レールを踏み外してしまった。
もっと上手くできたはずなのにって、ずっと後悔してる。
そうしてウジウジしている間に、月日は流れていく。
気が付けば、一年が経っていた。
……でも、多分、そうしてることにも、飽きちゃったんだ。
人生が浪費されていく、わたしはこんな自分のままでいいの?
そんなことを、思い始めたのだから。
わたしって、なんだったんだろう。
そう思って、でもわからなくて。
ヒントが欲しくて、他の子は何してるんだろうってSNSとかで、小学生時代の友達とかを検索してみた。
すると、驚く程に、みんなキラキラしていた。
たくさんの夢、やりたいことに溢れていて、久しぶりに胸がジンとした。
暗い部屋で暗いことばかり考えていた自分とは違って、明るい場所を堂々と歩いている。
──良いなって、気持ちが過った。
わたしも、そうありたかったから。
そうなりたいって、心の底から思っていたから。
そうして、指は自然と、あの子のSNSを検索して。
あの子のアカウントは、一年前から何も投稿されてない。
繋がりを求めるSNSで、断絶が発生していた。
彼女が今、どうしているのか。
追う手段は、部屋にいる限りは存在しなくなっていた。
……気になって、しまった。
あれから一年、経ってる。
あの子はSNSに投稿してるみんなみたいに、変わったのか、そうでないのか。
キラキラしているSNS越しのみんなが、間接的に背中を押してくれた気がした。
結局、巻き込んじゃってごめんの一言さえ、伝えられてない。
関わりが怖い、他人が怖い。
他の人からどう思われているのか、想像するだけで震えてしまう。
「あやまら、なきゃ」
でも、外に出る理由なんて、それで十分だった。
例え、あの子がわたしに愛想つかせてても、それは謝らない理由にならない。
「──そよぎちゃん」
その名前を口にすると、不思議なことに、立ち上がることが苦じゃなくなっていた。
あれから、色々あった。
まず初めに、部屋を出て妹の遥奈に謝ると、何でかパーで頭を叩かれ続けた。
「今まで迷惑かけてごめん! 幾らでも叩いて良いから、だから協力してください!!」
モグラ叩き以上に苛烈なパーに無抵抗で、お願いしながら遥奈に縋り付くと、ポツリと一言。
「バカお姉ちゃん……。チャンスはもう一度だけ、だからね」
「遥奈先輩!」
「……センパイ呼ひ禁止。そよぎちゃんの、遥奈ママってのとレベル変わらないから」
「え、そよぎちゃんのママって、わたしだけじゃなかったの!?」
「バカ?」
遥奈から、ゴミを見る目で見下される。
でも、その色の籠った視線が嬉しい。
こんなお姉ちゃんなのに、まだ見捨ててないんだって分かって。
生まれ変わって、陽キャになって、やり直すんだ。
そうして、また、あの子に……そよぎちゃんに会える自分になる。
私の小さな一歩目を、遥奈はぶっきらぼうに手を引いて、導いてくれた。
陽キャで、運動神経があって、時々コンプレックスを感じるけど……誰よりも自慢の妹だった。
遥奈の助けを得て、見た目だけは陽キャっぽくなれた。
でも、鏡越しに笑うわたしは、困った笑顔をしてる。
これは陽キャっぽくない、遥奈に"キモ"と罵倒されるかもしれない。おのれ遥奈め。
そんなこと考えたら、鏡の私は普通になってた。
妹のナマイキは、陰キャによく効く内服薬なのか(蔑みの目が、悲しいくらいに良く効いてしまう)。
姉を何だと思っているのか。
もし遥奈に聞いてみても、"ゴミ"って吐き捨てられて終わりそう。
クッ、言い返せない!
このままでは、戦う前に(頭の中にいる)遥奈に心をへし折られかねない。
そんなナマイキな(脳内)妹に、私は姉の威厳を見せつける正論を叩きつけた。
でもさ、ゴミである私をラッピング(美容室連れて行ったり、服を一緒に選んでくれたり、化粧水まで拘ってくれた)していた遥奈は、様子のおかしい人になるよね!
……よし、判定勝ち。
ギリギリ遥奈(妄想)を論破することに成功した。
ふぅ、危ない危ない。
危うく、姉の尊厳を全部無くしちゃうところだった。
意気揚々と部屋に戻って、ピッとフォー君の電源を入れる。
するとフォー君は、頑張れってわたしを励ましてくれるみたいに、ブォーンと音を立ててくれた。
「ありがとうフォー君、わたし頑張るから!」
青色の電源ボタンが、ぴかーっと光ってる。
フォー君のエールだ、間違いない!
この一年、ずっとわたしを支え続けてくれた相方は、今日も行ってらっしゃいと励ましてくれた。
これで、甘織れな子は戦える!
フォー君が、ワイヤレスで元気を充電してくれたお陰で!
フォー君が愛おしくなって、その体を撫でる。
愛しい愛しいフォー君、ずっと一緒だからね。
ガチャリと、部屋の扉が開いた。
「お姉ちゃん、覚悟決めて連絡したんでしょ。グズってないでサッサと…………」
「あっ」
「は?」
愛しいフォー君との蜜月は、突如としてノックも無しに訪れた遥奈(本物)によって、打ち破られることになった。
私とフォー君との睦み合いを見た遥奈は、瞬く間にゴミを見る目になって。
「キモ」
「キモくないし!」
とんでもない冤罪だった。
私とフォー君は、こんなにも両思いなのに……。
そうして、始まる前から心を遥奈(邪智暴虐)にいた振られながらも、わたしは何とか待ち合わせの場所にたどり着いた。
──あの日の夕暮れ、最後にそよぎちゃんと歩いた河原に。
通学路だった、一緒に何度も歩いて帰った。
そよぎちゃんの笑い声が、何だか懐かしい。
一緒に笑って帰った日が、すごく遠くに感じる。
じゃり、と石が擦れる音がした。
誰かの足跡だ、ドクンと心臓が跳ね上がる。
最初に、何て声をかけようか。
考えてたのに、頭が真っ白になって分かんなくなる。
いや、ごめんなさいが一番最初だけど!
……でも、そのあとの会話、どうしよう。
一年前は、自然と何でも話せた。
でも、今は何を話せば良いのか分からない。
気まずさが胸の中でグルグルして、すごく落ち着かない。
それでも、足音は近づいてくる。
もうすぐそこまで、迫ってる。
必死に、お天気デッキ以外の会話デッキを構築する。
そよぎちゃんと気まずくなるなんて、絶対にムリだし!
慌てて、焦って、必死で、そうして──。
──ママか?
閃きは、やってきた。
今のわたしは、会話デッキ界のエジソンだ。
れな子ママデッキ、そよぎちゃん相手ならこれで戦える。
そよぎちゃんなら、乗ってくれるはず。
よし、いくぞ!
心臓がバクバクして、頭まで爆発しそうになりながら、足音の方へと振り向いた。
「──そよぎ、ちゃん?」
振り向いた先にいたのは、やっぱりそよぎちゃんだった。
肩までだった髪は、背中まで伸びている。
背は変わってなくて、あの日のまま。
けど、何かが変だった。
何かって、何が?
分からなかった、けどすぐに分かった。
「……久しぶり、れな子ちゃん」
いつも賑やかで、騒がしかったそよぎちゃんが、とっても静かなんだ。
そして、わたしや遥奈の前だと、明るく七色に変わってた表情は、殆ど変わらないで無表情のまま。
いや、よく見たら、ちょっとだけ口角が上がっている。
ほんのちょっとだけ、笑ってる、のかもしれない。
夕暮れが濃くなる、影が世界を覆っていく。
ぼんやりと視界が滲んで、世界とそよぎちゃんの境界が曖昧になる。
「どうして……」
最初は、怒ってるのかと思った。
怒ってるから、無表情になっちゃってるのかなって。
でも、違う。
そよぎちゃんが怒ってる時は、そんな感じにはならない。
そもそも、こんなそよぎちゃんは初めてだ。
わたしの知らないそよぎちゃんが、いま目の前に立っていた。
「私、強くは、なれなかった」
そよぎちゃんは、途切れとぎれに喋っていた。
喋り方を、どこかに無くしてしまったみたいに。
「でも、適応、できた」
表情も、もしかしたらそうなのかな。
何処か遠く、一年前に置いてきちゃったみたいに真っさらで。
「陰キャでも、学校に、存在できる」
その薄い微笑みが、どうしようもなく悲しい。
「ノラ猫に、なれば良いの。誰もいない場所で、日向ぼっこをしてる──そうしていれば、惨めじゃないから」
「っ、そよぎちゃん!」
居てもたってもいられなくなって。
そんな悲しいことばっかり、言ってほしくなくて。
そよぎちゃんを、抱きしめた。
ちっちゃくて、どうしたって細い身体を。
ボロボロと崩れていくそよぎちゃんの心を、かき集めるみたいに。
「ごめんっ、本当にごめんなさい! そよぎちゃんがずっと頑張っててくれたのに、わたし……っ」
頭で考えていたことが、全部吹き飛ぶ。
バカなこと、考えている場合じゃなかった。
遥奈から、聞いていた。
"そよぎちゃんはお姉ちゃんの居場所になるって、そう言ってたのに"って。
わたしが学校に来られるように、一人ぼっちにならないように、登校するまで待ち続けてくれたんだって。
……また、わたしのせいだ。
そよぎちゃん、無理して自分を変えたんだ。
耐えるために、自分の殻を何重にもして。
わたしを一人ぼっちにしないために、一人でいられるようになってしまった。
そんなのって、酷いよ……。
「これからは、一緒にいる。そよぎちゃん、だから……っ」
元のそよぎちゃんに、戻って。
抱きしめる力を強くして、無理しないでと伝える。
わたし、生まれ変わったから。
陽キャになって、そよぎちゃんを護るよって。
……返事ない、沈黙が耳を埋め立てる。
代わりに、トンと胸を押された。
ちょっとよろけて、抱きしめてたそよぎちゃんが、腕から抜け出して。
「れな子、ちゃん」
暮れる日に呑まれるようにして、そよぎちゃんは告げた。
「かわいく、なった」
「え?」
会話が繋がってない、意味が分からない。
でも、そよぎちゃんは、小さく笑っていた。
──何か、嫌な予感がする。
「キラキラ、してるね」
「そ、そうだよ、わたし生まれ変わったの!」
何か、言わなくちゃ。
言わないと、よくないことが起こる。
そんな気がして、変に焦る。
「陽キャになって、今度こそ失敗しない。みんなみたいに、素敵な人間になる。だから──」
言葉を手繰る、今度こそあなたを護るよって伝えるために。
でも、全部は言えなかった。
──よそぎちゃんの人差し指が、わたしの唇を塞いだから。
「私は、陽キャに、なれなかった」
小さな声で、囁くように。
そよぎちゃんの声が、風に乗って聞こえてくる。
「居場所に、なれなかった」
「そんなの違うよ! そよぎちゃんは大切な幼馴染で、わたしの隣が居場所で!!」
「──違う」
小さい声なのに、そよぎちゃんの声はハッキリ聞こえてしまう。
大声を出してるのはわたしなのに、小さな声に掻き消される。
実感みたいなものの差が、わたしの口を塞ぎにかかる。
「陽キャと陰キャは、住む世界が、違う」
その言葉で、頭が真っ白になる。
だって、それは分かる理屈だから。
何度も何度も、実感して、苦しくなって、心が折れた現実の話だから。
「今のれな子ちゃんは、すてき、可愛い。だから──」
川辺の縁で、そよぎちゃんはこのもなさそうに言った。
「ダメ、だよ」
「ダメって、なにが?」
言わせちゃダメだって、心が叫んでいる。
そのぎちゃんの言いたいことが分かるから、止めなきゃって思うのに。
……なのに、言葉が上手く出てこない。
「──私の隣は、ダメ」
だから、その言葉が出た時、何か大切なものが壊れた気がして。
「違う、そんなことない!」
必死に、否定しようとした。
絶対、そんなことないって、強く強く伝えたくて。
「陽キャは、そんなの関係ないんだから!!」
そうだ、陽キャは凄いんだ。
誰にだって優しくて、明るくて、楽しくて、それでいて素敵で無敵な生命体なんだ!
そよぎちゃんが凄いレベルの陰キャになっちゃっても、わたしが明るく照らすから、だから……っ。
「幼馴染の親友が、離れようとなんて、しないでよ!!!」
心からの、何よりの叫び。
ようやく立ち直ろうと思っているのに、今更バイバイなんておかしい。
「そよぎちゃんに見捨てられたら、わたしまた引き篭もるよ! 今度は2年、いや、3年は!」
無茶苦茶なこと、言っている自覚はある。
でも、ここでそよぎちゃんと別れたら、どこかに居なくなっちゃう気がしたから。
居なくならないでって、手を取って伝える。
あなたが必要ですって、心の底から主張する。
「わたしの人生、取り返しのつかないことになっちゃうけど良いのかな!!」
酷すぎる脅迫、そよぎちゃんに見限られても仕方ないって思えるくらいには。
でも、事実だし。
そよぎちゃんが見捨てたら、わたしは一人寂しく妹に見下されながら、部屋の片隅でフォー君を毎日抱いて寝る陰キャの女王になっちゃうよ! それでもいいの!!
グッと顔を近づける、目を逸らさせないために。
そよぎちゃんが、わたしのことが嫌いなら、仕方ない。
でも、そうじゃないって、信じてたから。
一年ぶりで、違う人みたいになってて、距離を空けようとしてくるけれど。
「そよぎちゃんはさ、わたしのこと、どう思ってる?」
それでも、人生で初めての友達なんだ。
変わった部分もある、雰囲気も違う。
けど、そよぎちゃんの今までが、全部無くなっちゃったなんて、そんなの信じない!
ジッと見つめると、そよぎちゃんは何度も目を瞬かせた。
そして、ポツリと一言。
「……ともだち」
やっぱり、変わってないところもあった。
嬉しくて、顔が綻んじゃう。
離れようってしたのも、わたしのことがイヤだからじゃない。
陽キャになる努力をしている邪魔をしたくなくて、一歩引こうとしただけなんだ。
そんなの、認めない。
変わるって決めたんだ、わたしは。
陽キャになる、ああなりたいって。
だから、そよぎちゃんの手を握る。
こういう時は、陽キャならこうするんだって信じて。
「友達なら、離れるのなんてダメ……ううん、ムリなんだからね!」
「…………ん」
そう、ムリなのだ。
友達が友達だから、友達じゃなくなろうとするなんて。
言葉にすると意味わかんないし、そんなの悲しいだけだから。
「1年間、一人ぼっちにしてごめんなさい。これからは、そよぎちゃんの側にいさせてください!」
罪悪感が、ないとは言えない。
わたしのせいでって気持ちも、勿論ある。
けど、それ以上に、わたしがそよぎちゃんと一緒にいたい。
この気持ちにウソを吐いたら、また何も言えない陰キャなわたしに戻ってしまう。
そよぎちゃんと、もう会えなくなる気がする。
ヤダなって、素直に思った。
だから、ワガママを押し通した。
陽キャならワガママも、きっと周囲を明るくするから。
夕陽が未練がましくさよならを告げる中、そよぎちゃんはジッと私の目を見つめた。
ぼんやりとしていた綺麗な目に、わたしがちゃんと映ってる。
「私は、今の私、別に、嫌いじゃ、ない。一年、頑張った私、だから」
「うん」
「陽キャには、なれない」
「うん」
「陰キャ、極めようって、思ってる」
「うん」
いや、それはどうかと思うけど。
そよぎちゃんの目に、光が灯っていた。
「それでも、良いの?」
「──良いに決まってるから!」
悪いわけない。誰かが何を言っても、そよぎちゃんは友達だって、言い続ける。
そんなわたしの気持ちは、たぶん伝わってくれた。
久しぶりに、昔のそよぎちゃんの笑みが浮かんだから。
「なら、私、れな子ちゃんの日陰に、なる。居場所には、なれなかった、けど。れな子ちゃんが、陽キャに疲れた時、休める場所に、なるよ」
堪らず、胸に感情が吹き荒れる。
「そよぎちゃん!!」
そよぎちゃんを、思いっきり抱きしめた。
小さい身体を、ギュッと、これでもかってくらいに。
「応援、してる。れな子ちゃんが、陽キャに、なるの」
「うん、わたし、立派な陽キャになる! そよぎちゃんが、友達に自慢できるみたいな!」
「今の私、友達は、れな子ちゃんと、遥奈ちゃん、だけ」
「妹にゴミ扱いされない姉にもなるから!」
「……れな子ちゃん、おかえり」
「ただいま、そよぎちゃん!」
おかえりって言葉が、すごく嬉しい。
あの日に無くなった続きが、帰ってきたって実感できて。
全部無くしちゃったかもって思ってたけど、取り戻せた。
これからも、少しずつ取り戻して、行きたいな……。
その日、そよぎちゃんと手を繋いで、歩いて帰った。
暮れた陽の代わりに、曖昧な星空が広がる。
あんまりハッキリ見えないけれど、一等星がキラリと輝く。
見つけただけなのに、それが手の中にある気がする。
星に手を伸ばしても無駄かもしれないけど、手を伸ばさないと掴めさえしないのかもしれない。
そんなことを思ったわたしは、まだ中学生だって実感できた。
秋が枯れ、冬が来る。
れな子ちゃんは、学校に来た。
背筋は丸まっていて、凄く気まずそうにしている。
イヤなひそひそ声だって、沢山囁かれている。
でも、逃げなかった。
れな子ちゃんは、戦うって決めたから。
覚悟を決めたれな子ちゃんは強いって、私と遥奈ちゃんは知っている。
やっばり、れな子ちゃんは凄いんだよ!
そうして、私とれな子ちゃんは息を殺して、卒業まで漕ぎ着けた。
れな子ちゃんが陽キャになりきるには、色々あった中学校は環境と状況が悪くて、そっと目立たないようにしていたけど。
良くないことだけど、文字通りにれな子ちゃんの逃げ場所になれて、ちょっぴり嬉しかった。
私、れな子ちゃんの役に立てたんだって。
我慢の季節は過ぎて。
私達は、地元から離れた、芦ケ谷高校って教学の学校に通うことになったんだ。
誰もいない場所で、一から始めるために。
れな子ちゃんは、気合い十分でそんな感じのピカピカ陽キャな女子高生になってた。
高校デビューの準備、バンタンだね?
一方の私は、髪が伸びるタイプの市松人形さんみたいになっちゃってたけど、陰キャだから何にも問題ないの!
最近会えてなかった遥奈ちゃんに会ったら、凄くドン引きされたけどね!
「行こっか、そよぎちゃん」
「ん」
れな子ちゃんを迎えに来て、新しい日を始める。
全部が、新しく始まる日を。
──高校生になる、初めの日を。
緊張して、ビクビクして、怖い気持ちもあるけれど。
でも、きっと今日から良い日になる。
少なくとも、れな子ちゃんのことなら、太鼓判を押して言えちゃいます。
だって、れな子ちゃん、良い日にしようって努力してるんだもん。
なら、きっとそうなんだって、信じたいよ。
「行ってきます」
「いってき、ます」
お空を見上げたら、お日様が眩しい。
れな子ちゃんみたいだって、思っちゃったのでした。
次回からは、明るい高校生活編に移行します。
評価バーに色が付いて、思わずニッコリしました。
応援ありがとうございます、これからも楽しんでいただけるように頑張ります!