個性「ニャン系妖怪」が往くヒーロー覇道 with転生掲示板 作:鋼色
「峰田くん。一緒に帰ろ?」
「っ!?!?お、オイラ!そこまで行くのは早いっていうか、覚悟できてないぞっ!でも、猫河が言うなら…」
「なんの話してるの?ヒーローになるための特訓するって言ったでしょ。あれだよ?」
「あ、はい、そうっすよね。オイラだって分かってましたとも」
絶対に訓練のこと以外を考えていた。それが見て取れる落胆具合につい笑みが溢れてしまう。
これこそ私が推す峰田実であるという認識と同時に、揶揄ってみたいという欲求が生まれる。
「そうなの?でも、ちょっと残念そうな顔を浮かべてたよね?」
「……い、いや、そんなことないけど?」
「眼泳いでるよ。んもう、どんなこと想像したの?」
「……っ、なんでもない!ほら、さっさと行くぞ!」
誤魔化すかのように教室を出る峰田くん。そこがまた可愛くて、心の内側で悶えながら着いていく。
っと、ダメだね。このままだと集中できない。うん、さっさと切り替えないと!
「それで、猫河。鍛えるってどんな訓練をするんだよ」
廊下を歩きながら、峰田くんが質問を挙げる。私だって彼の立場だったらそんな質問をすると思う。
ふっふっふ!私の鍛錬は随分と厳しいからね。ヒーヒー鳴いても止めないよ!ジバニャン直伝のスーパー鍛錬で強くしてあげる。
「ヒーローになるためには、個性を鍛えることが重要になってくる。でも、それよりも先に重要になってくるのが肉体!それじゃあ岩叩き行ってみよう〜!」
「お、おい……岩叩きって聞こえたんだが冗談だよな?」
「岩叩きであってるよ!拳で岩を壊せるようになったら強くなるよ!間違いなくね!」
「そりゃそうだろ!鍛えた増強個性が岩壊せるかだろ!!」
「私は、壊せるよ?昔は壊せなかったけど、今は壊せる。頑張ったら峰田くんにもできるよ。それとも、諦める?」
「オイラは……ヒーローになってモテるんだぁ!岩だろうが何だろうが壊してやる!」
その心意気に、つい笑みが漏れる。ただの下心ではここまでの意思は生まれない。下心以外にも、ちゃんとヒーローに憧れを持っているから……峰田実は強い。
さっきまでは可愛いとこばっかりだったのに、急にカッコ良くなりすぎでしょ。もっと見せて、私にもっと見せてね?
「うわーっ!お前の家ひろっ!」
「このぐらいじゃないと岩で鍛錬できないからね……。私は私なりに鍛錬するから、拳が限界になったら言ってね?回復させるから」
「猫河って回復もできんの?こわっ…」
あまりの万能加減に引かれてる気がするけど…気のせいだよね?気のせいだといいな。気のせいじゃなかったら、私…私…。
…ダメダメ!こんな思考はダメ!私の万能さは峰田くんを守れるように必死に鍛えてきた結果。
その結果、強さに引かれるのなら、それは正当な方法で努力できたっていう証明なの。こんなんでヘコたれちゃダメ!
今は、ジバニャンの課題を優先しなくちゃ。
「にゃんニャン!ジバニャン!!」
ジバニャンとの融合を果たし、猫耳が生える。片方が切り傷が生まれ、片方が健全な耳のまま。
赤い猫耳に感化されたのか、黒だった髪が赤に染まる。臀部からは二つの赤い尻尾が生える。
尻尾の先で静かに燃え続ける青い妖炎が、ジバニャンと私のエネルギーの合わなさ具合を示している。
さっき、教えられた通りに……エネルギーはお腹で回す。半人半妖と純妖怪の異なるエネルギー周期を合わせる。
深層心理で戦ったときに経験したエネルギーの周期に限りなく近づけ、私のエネルギーの線とジバニャンのエネルギーの線を一本線に……。
「ふぅ……ジバニャン・リミットスタイル」
身体能力はある程度落ち、しかしコントロール精度は上がってる。もっと一本線の精度が上がればリミットスタイルにする必要はないんだけど、今の私にはそれは無理。
だから、一本線をつなげた状態で出力を低下させる。暴走にも近しい状態からある程度は進歩したかな?
あとはこの一本線状態を頑張って維持できるようにしないとね。岩叩きだって継続して割れるようになったんだから、このぐらいは頑張らないとね。
「行くよ、ジバニャン!」
『任せるにゃん!』
足が地面を蹴る。土が抉れるようなジャンプは、肉体を宙に浮かばせている。圧倒的な妖怪の身体能力に苦笑しながら動く。
庭に生えている木々や岩岩を足場にしつつ、庭を駆け回る。元々の身体能力から考えると10倍の肉体差…かな。
それでも制御できてるのは、ジバニャンと私の二人のコントロールがあってこそ。それでもリミットスタイルでしか制御できないんだから、本気状態がどんなに恐ろしいか分かっちゃう。
うん、移動速度は分かった。次は、攻撃性だね。
拳だと……もちろん岩は割れる。そこから更に手加減して……岩は割れてない。コントロール面は十分。
これならヴィランを相手にしたとしても、殺すことはなさそう。ヒーローがヴィランを殺しちゃったら批判殺到だろうしね。
それと、このまま頑張ったら必殺技の【百烈肉球】も使えそう!期待できるね!
『妖術もにゃんよ!妖術があるだけで戦略性がガラリと変わる!それを覚えとくにゃん!』
分かってるよ。【回復の術】を覚えてから戦略の幅が広がったの、今でも記憶にあるよ。ジバニャンの妖術を覚えることができたら、もっと広がると思う。
でもなあ……!妖術の習得ってすごく難しいんだよ…!!この、論理を捏ねなきゃいけない感覚がむず痒いっていうかさ…!
「猫河〜!!」
峰田くんの言葉が耳に入る。ノーマル状態ですら聴覚が鋭いのに、ジバニャンと融合したことでさらに感覚が鋭くなった耳が拾う。
ここからだと歩いて15分ぐらい掛かるけど、今の私の身体能力なら一瞬でつける。待っててね、峰田くん!
速攻で駆けつけるから!
「大丈夫!?峰田くん!」
「猫河か……くぅ、拳が痛くて…」
「あぁ、なるよね。なるなる。私もなってたよ。今治すから待っててね」
得意とは決して言えない【回復の術】を発動して、峰田くんの拳を癒す。いきなり全体を癒すことはできないから、ちょっとづつ、少しづつ癒していく。
「猫河はさ、こんな辛いことを毎日してたのか?」
「あ、うん。毎日してたよ。それがどうしたの?」
「どうして、耐えられるんだ?回復できるとは言え、痛いだろ。痛いのなんて好き好んで受ける方が少ないじゃん。もしかして…」
「言っておくけど、Mじゃないよ?私だって痛いのやだし、できるなら傷つきたくない。私も一緒だよ。峰田くんと一緒だよ」
「じゃあ、なんでそんなに強いんだよ。オイラなんか、猫河がいなきゃやろうとなんて思えないのに。お前がいなきゃ、絶対に鍛えようとなんて思わなかったのに。そんなオイラと、お前のどこが一緒なんだ…?」
「…!それ、は……」