個性「ニャン系妖怪」が往くヒーロー覇道 with転生掲示板 作:鋼色
峰田くんとの特訓1日目が終了し、睡眠に入る。そして、私自身の深層心理に突入する。
「…えっと、なんでここにいるの?いや、私と個性の空間だからいても可笑しくないんだけどさ。まだ私は挑もうとは思ってないかな?」
「わたくしっちは挑みにきたわけじゃないにゃん。オマエの力になりにきたでうぃっす」
「…いい加減にするにゃん。うるさいのは我慢にゃけど、規律を乱すのは問題にゃん」
怒気が空間を統べる。人間では出せない、圧倒的なまでの威圧感が身体全体で感じてしまう。いつも気が抜けた感じだったから油断してたけど、ジバニャンは人外。
私たちの理解の外にある存在。それを強制的に体感させられている感じがする。
「落ち着けミャウ。妖気が漏れてる……紫姫が怖がってるミャウよ?」
「うぐっ……たしかに、オレっちが怒りすぎたにゃん。でも、ブチニャン。規律を破るのはダメにゃんよ。それは、紫姫の肉体を崩壊させる恐れがあるにゃん」
私の肉体は、超進化していると言ってもいい。他の人の個性よりも顕著に影響を受けるから、融合を行うごとに肉体が強くなっていく。
言い換えれば、私の肉体は妖怪に近づき、人間から離れていく。まあ別にそこは良いんだけど、問題はその影響。
その影響を一身で受けるから、今の体には不釣り合いなパワーが注ぎ込まれたら命が危ない。ジバニャンの力だってまだ十全に扱えていない。
ブチニャンの言葉は嬉しいけど、ジバニャンの意見に賛成。今の状態でブチニャンと融合したとして、私が無事でいられるという保証はない。
「んむ……だったらわたくしっちが鍛えるにゃん!それだったら解決でうぃす!」
「…それだったら、まだ良いにゃん。行くにゃんよ、紫姫」
「ぇ、あ、うん。にゃんニャン!ジバニャン!」
熱が、体を通る。昼に融合を行ったときよりも、妖気の巡りがいい気がする。なんか、親和性が高まっているって言うか。
コツコツ鍛えてきたときはこんな伸びは良くなかった。つまり、ジバニャンとの融合がここまで進歩させてる……ってことかな。
…鍛えててよかった。いきなり融合をやり始めてたら、体が壊れてた。やっぱ大事だね、チリツモ!!
「…!」
ジバニャンから教えてもらった「瞬天」のなんちゃってバージョン!本家よりかは爆発力が劣るけど、圧倒的な速度には違いない。
とりあえず、ぶん殴る!!
「いい速さ……でも!……イカヅチ!」
懐に侵入され、触れられた。肉球から体中を痺れさせる電流が流れる。電流によって硬直した肉体に拳が叩き込まれる。
……イカヅチの術……致命傷には至らないけど、いきなり喰らうとびっくりするね。
こっちだって妖術を使うんだから!ジバニャンの妖術、【火花の術】をイメージして、放つ!
「イカヅチ・改メ」
【火花の術】が炸裂してなお、ブチニャンは余裕な顔を浮かばせて立っている。
先ほどよりも妖気が高まり、他を押し潰さんと重圧が生じている。それに、肉体全体に電流を纏っている…。
あれは、いったい。私の知っている【いかづちの術】は相手に当てるためにあるもの。自分に使うものなんて、知らない…。
『イカヅチ・改メ……ニャン系妖怪の中でブチニャンだけが可能とした属性の自己強化にゃん。誰よりも妖術と向き合ってきたからこそ使える力。妖術を上達するなら、避けては通れない相手にゃん』
ジバニャンとの説明につい笑みが浮かぶ。相手は完全に格上で、私よりも多くの歳月を鍛錬に重ねてきている。
それでも、嬉しい。妖術で自身に強化しても出来なかった。無理なんだって諦めようとしたけど、諦める必要はないと言ってくれる。
目の前にこんなにもいいお手本がある。完全にモノにしている素晴らしき先輩がいる。これが目の前にあるのにやる気が出ないなんて甘い鍛え方はしていない…!
『……妖力の親和性が急激に増して…!?』
「怖いミャウね……どんどんジバニャンの潜在能力を引き出してるミャウ。まさにクレイジー、規格外ミャウ」
832:烏野の潔世一
これは……なるほど。ニャン系妖怪限定とはいえ、複数の妖怪の力を宿すなんて可笑しいと思った……そりゃそうか
833:名無しのニャン系転生者
?なにがわかったん?
834:烏野の潔世一
前々からずっと疑問だったんだ。それぞれのニャン系妖怪が出来ること、やれることが大きく違う。そんな個性あふれる集団が一つの特典にまとまっている。
835:名無しのニャン系転生者
あぁ……そういう。確かに、いくつもいるニャン系妖怪を一身で受けるのなんて、常人じゃ耐えられないな
836:烏野の潔世一
イッチが耐えられるのは、彼……波導の魔法使いと同じく、魂が大きすぎるんだ。だから、膨大な情報量が相手でも余裕で捌き切れる…!
そして、イッチの規格外なまでの進化速度は魂が関与しているんだ……
外野からの推測が飛び交っている。私の真実を探ろうとしているのは、中々どうして気分がいい。
長く、長く生きているスレ民たちに認められている。ドン引きされている、とも言ってもいい。
その実感が、私がまだ強くなれるという意識を呼び寄せている。
「瞬天!……からの、10連釘パンチ!!」
「ぐにっ……!!」
ブチニャンも構えていた。対応できるようにと、構えていた。けれど、私の、今の瞬天は自爆覚悟の圧倒的妖気にモノを言わせた加速。
自爆の爆発的加速にブチニャンは反応できない。
思いっきり吹き飛んで、赤と白の豆粒が見える。思ったよりも飛ばした猫妖怪を横目に、右足へと妖力を集中させる。
ほとんどぶっ壊れた右足を【回復の術】で直しているけど、ジリジリとしか治せない。やっぱりあの加速は無茶しすぎた。
……あの加速は必殺技の中でも奥の手として置くべきだね。助けるたびに足をぶっ壊しているヒーローなんてヒーローじゃない。
まだ力に振り回されてる。私の目標を達成するための力なのに、それを生かされていないんじゃ意味がない。
もっとジバニャンの力を乗りこなせ。こんなものじゃ、こんなものじゃない!私が信じる妖怪たちの力は!!
「…ニャーウィッス」
「ごふっ…!」
「紫姫、お前の弱点、大体わかったにゃん。自分の能力のことを特別だと思いすぎている。特別だと思っているから読みやすい。攻撃を防ぎやすい。……わたくしっちたちは、あくまでも紫姫の個性、身体能力の延長線上にある力でうぃっす。わたくしっちたちを特別扱いしている限り、勝てないんでニャーウィッス」
個性は身体能力の延長線上にある……それは、分かっていたはず。でも、心の底から理解できているかと聞かれれば別。
前世じゃなかった力を普通だと思い込むのは難易度が高い。早急に超常を通常へと変えることは大変難しい。
だったら、変えなければいい。能力を超常として認識し、偏った使い方をしてしまうのは、私の肉体が超常ではないと思っているから。
私はとっくに超常に片足を突っ込んでいる。種族は人間を逸脱し、半人半妖に……。だったら、特別だから偏った…なんて言い訳はできない。
私は、常に特別で荒れるポテンシャルを持っている。なら、なるの。今ここで、常態として特別になる…!
「…ニャーウィッス。まるで、常時瞬天を行っているかのような妖気の張り詰め具合にゃん…。ぬらりひょんやエンマ大王だってこんな変化なかったでうぃっす…!」
「余計なこと考えてる暇、あるの?」
「……!?」
身に余る妖気で体を軋むのを感じながら、全身を強化する。言うなれば全体に部分強化するような圧倒的荒技。
その荒技は、爆発的な加速を生み出した瞬天よりも速い。
その分、高エネルギーが体を破壊しているが、その度に【回復の術】で体を治す。さっきまでのチビチビ回復じゃなくて、エネルギーにモノを言わせた強制回復。
ちょっと後々不安だけど、今はどうでもいい。今この状態を、常に特別になるという意識のまま戦闘できたら新しい壁が開ける気がする。
「真拳イカヅチ…!」
【イカヅチ・改メ】と【いかづちの術】を合わせたパンチが迫り、顔面を穿つ。もろ、ストレートに入り、思いっきりノックバックをしたのちに倒れ込んでしまう。
痛い……けど、ダメージを受けたのは私だけじゃない。ちゃんと、カウンターは入れましたから。
「…!!そこで、火花の術を使うにゃんか!?」
「今の私じゃ、火花の術で改メは使えないからさ。強化じゃなくてカウンターに持って行こうかなって」
「……妖術でカウンターするって、自分の肉体を傷つけると同義でうぃっす。それを分かってやったにゃん?」
「当たり前じゃん。私、そんなに馬鹿じゃないよ?痛いけど、これならアナタにダメージを与えられる」
「……ヒバナ・ガードマンスタイルってところにゃんか」
「ヒバナ・ガードマンスタイル…ね。うんうん、良いじゃん!ふっふっふ!新スタイルでボコボコにしてあげるからね!」
「そいつは楽しみでうぃっすね」
構えるのは、手のひら。私は【火花の術】を集中させ、ブチニャンは【いかづちの術】を集中させる。
「ヒバナ……オーバーブレイク!」
「イカヅチ・真改メ!!」
【いかづちの術】と【火花の術】がぶつかり合った。その結果は、【火花の術】が優った。
けど、ギリギリだった。勝てるか負けるか、本当にその狭間にいた。
「でも、私の勝ちだ!」